
昨日のことになりますが、名古屋伏見にあるINAXギャラリーで開催されている、「
凝縮の美学 名車模型のモデラーたち 展」を見てきました。
展示してあるのは全てスクラッチビルドの車やバイクのため息が出るような精緻な模型ばかり。(スクラッチビルドというのは、量産されたキットを組み立てるのではなく、ゼロから作るという意味)
昨日はこの展示会に合わせて公演があり、作品を堪能した後に作品を提供しているスクラッチモデラーの一人、高梨廣孝氏の公演を聞く機会に恵まれました。
公演を聞くには事前の登録が必要だったんですが、聴講者は50名ほどで会場はほぼ満員。予想通り、私より若い人はわずか。ほとんどが高齢者。お婆さんもいたことには驚きましたが、これは関係者だったようです。そして、手話解説付き。事前に分かってたんでしょうね。やるなINAX。
会場の雰囲気は講演会というより、もう講義。皆さん、メモをとりながら真剣にお聞きでした。
タイトル画像は自身の作品で顔を隠した高梨氏。有名な(模型でなく本物の)バイクカメラマンに撮ってもらったお気に入りの写真だそうで、公演で配られたレジュメの表紙を飾っていました。
素顔はこんな人。
東京芸大で金属工芸を学び、日本楽器(現ヤマハ)に入社され、プロダクトデザインをしていらっしゃったそうで、退職後も大学で教授などもされていた方で、模型を抜きにしても立派な方です。
学生時代には金工技法の中でも鍛金を学ばれたそうで、それが現在の模型作りにも発揮されているということです。40代から模型を始め、一度中断された時があったそうですが、再開のきっかけは一冊の本。
Gerald A. Wingrove 著
The Complete Car Modeller 1
リンク先のアマゾンで、この本の価格を見て驚いてください。たかが1cmほどの厚みのペーパーバックですよ。2巻も出ているようですが、こちらもそこそこのお値段。
しかし、余程の自信がなければ”The Complete Car Modeller ”とは名乗れませんよねぇ。
実は今回の展示会に著者のジェラルド・A・ウイングローブ(名前からしてカッコいいな)氏の代表作が展示されてます。それがこれ。イスパノ・スイザです。
(あ、今回の模型の写真は全て私がiPhoneで撮ったものです。まさか撮影できるとは思わなかったもんですから、カメラは持っていきませんでした。こんなことならデジイチを持っていくんでした。)
美しい木製のボディーは説明するまでもないんですが、その表面をよく見てください。等間隔に点々と並んだものに気付かれるでしょうか。表面の木材に、約13000本ものピンが埋め込んであります。やはり”The Complete Car Modeller ”の名は伊達じゃない。
このウイングローブさん、2000年にはその業績が認められ、女王陛下からサーの称号をいただいておられます。模型でサーになれちゃうんですよ! 模型の歴史と社会の認知の差なんでしょうね。
高梨さんから話が逸れちゃいますが、ウイングローブさんの製作過程を紹介したサイトと動画を貼っておきます。基本的に高梨さんの手法も同様だと私は感じました。
MAKING COMPLEX SHAPES by GErald Wingrove MBE
あ、MBEは「サー」のことです。
講演会の最後には、最新作を披露され、写真を撮らせてもらいました。
このケースも高梨さんの自作です。家具に携わっていらっしゃった経歴があり、お手の物のようです。
高齢になって続けてる人が多いことも励みになったし、とても私の手の届くような技法ではありませんが、とにかく刺激に満ちた講演会でした。
他にもすばらしい作品がいっぱいありました。高梨さんの治具も見所((4)にあります)です。フォトギャラリーでご覧ください。
凝縮の美学 名車模型のモデラーたち 展(1)
凝縮の美学 名車模型のモデラーたち 展(2)
凝縮の美学 名車模型のモデラーたち 展(3)
凝縮の美学 名車模型のモデラーたち 展(4)
凝縮の美学 名車模型のモデラーたち 展(5)
凝縮の美学 名車模型のモデラーたち 展(6)
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模型 | 日記
Posted at
2012/01/22 00:12:52