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2012年06月30日

実は自殺は増えてない・・・抜書き(5)

実は自殺は増えてない・・・抜書き(5) 久しぶりの抜書きシリーズ。今回はタイトル画像の本、冨高辰一郎著「うつ病の常識はほんとうか」について書きたいと思います。

私達が子供の頃、「交通戦争」という言葉がありました。今では聞かなくなりましたね。当時は戦争に例えられるくらい交通事故死者が多かった。学校や地域でも交通安全教育が盛んでした。

下は昭和23年から平成22年までの交通事故死者の推移を含むグラフです社会実情データというサイトから引っ張ってきました。赤い太線が死者数です。



私が小学校6年生の頃、昭和45年あたりが交通事故死者数のピークで1万6千人を超えていますね。ところがその後、急激に死者数は減り、平成に入って一旦増加したものの平成5年から一貫して減少傾向です。死者数0が望ましいに決まってますが、減る傾向にあるのはいいことでしょう。ただ、グラフをよく見ると、平成15年あたりに交通事故発生件数と負傷者数の大きな山があったことが分かります。交通戦争時代を上回る数です。それにも関わらず死者は減り続けた。つまり、社会の交通安全意識が高まって交通事故件数が減ったとか、そんな理由ではなく、救急医療体制の充実が死者を減らせたんでしょうね。

あ、交通事故の話は今回取り上げる本とは何の関係もありません。ただ、昨今の毎年3万人程の自殺者数の報道を聞くにつけ、かつて「交通戦争」と呼ばれた頃の2倍もの人が自ら命を絶つのかと、毎回思うのです。最近のデータで比較すると、自殺者数は交通事故死亡者数の実に5倍! 一体何が彼らを死に向かわせるのか? 私ならずとも不安な気持ちに捕らわれる方も多いのではないでしょうか。



1995年から2011年までのわが国の世代別の自殺者数の推移を表したグラフです。上のグラフと同じサイトの別ページから引っ張ってきました。一番上の黒い線が自殺者の総数です。1997年から急激に増加し、それ以降、3万人クラスがずっと続いています。
世代別に見ていくと、ウッ! 最近は減少傾向が見えるとは言え、私の50代はかなり多い! 危ない時期なんだ。これを見るだけでも憂鬱な気分になってしまいます。

ところが、この自殺者数のデータも冷静に考えようという本がこの本です。



まず、人口の増加による自殺者の増加を考慮しようということで、人口10万人あたりの自殺者数の推移を見ようという提案です。
上のグラフの真ん中の水色の線が平均で、上の赤い色が男性、下の褐色が女性です。ウッ、このグラフも見るんじゃなかった。男ってホント、もろいなぁ。
それはさて置き、平均の水色の線を見てください。決して現在の水準が未経験のレベルではないことが分かります。ちょうど私が産まれた昭和33年(1958年)あたりの、人口10万人あたりの自殺者数は現在と同程度です。

総人口の変動による調整だけを加えればいいんでしょうか? それだけじゃ足りませんよね。10歳未満の自殺はほとんど0ですが、老人のそれは多い。過去に比べて現代は少子高齢化している。そう、世代構成の変化も考えなければなりません。世代構成の調整を加える作業を「標準化」と言うんだそうです。



上が標準化自殺者の推移を表したグラフ。1980年の世代構成に合わせたグラフになっています。真ん中あたりの水色の線が日本。表記が全部英語ですよね。どこから引っ張ってきたグラフだと思います? 何とOECDのサイトから。
グラフの出処はともかく、現在よりも1960年頃の方が自殺者が多かったことが分かります。著者によると、標準化して100年単位で見ると、自殺者はむしろ減少傾向と言えるそうです。

確かに自殺者が毎年3万人という絶対数は重い。本書も無策でいいと言っているわけではないんです。ただ、この数字も分析を加えれば驚くような結果ではないのではないか。冷静になろうよという主旨なんです。
本書にも書いてありますが、自殺やうつ病のニュースは、他の病気と違って、報道されれば報道されるほど増加する傾向がある。3万人という数字に打ちのめされていると、その気分に社会が呑み込まれ、もっと悪い結果を招きかねない。大騒ぎはやめましょうよってことなんです。

本書は、日本の自殺者数の時間的な変化だけでなく、世界的な傾向にも触れています。例えば上のグラフのギリシアを見てください。あの経済破綻のギリシアの自殺者数の少ないこと。ラテン気質だからって? 実は宗教が自殺者数に大きな影響を与えています。
自殺者が一番少ないのがイスラム圏。次にキリスト教のカトリック圏。その次がプロテスタント圏。最も多いのが仏教圏。教義による自殺のタブーが色濃く出る結果になっています。

日本全体がいきなりイスラム教やカトリックに改宗するなんてことはできません。できることがあるとすれば、幼い頃からの、命を大切にする価値観を植え付ける躾や教育でしょうね。もちろん効果が出るまでに長い時間がかかりますし、宗教を超えるような力もないでしょう。でもほとんど無宗教と言う他ない日本人に死を思いとどまらせるには、景気対策のような物理的な対策ではなく、心の支えを与えることだと思います。


< 追加資料 > 国勢調査 e-ガイド より


1995年の日本の人口ピラミッド


2010年の日本の人口ピラミッド



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Posted at 2012/06/30 01:57:03

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この記事へのコメント

2012年7月1日 0:24
はじめまして(だったと思います)。
えるさんつながりでお邪魔します。

たいへん興味深いです。
年を取るほど比率が上がるんですね。
最近個人的に高齢者の犯罪が目立つ気がするな、と思ってましたが、符合しました。
高齢になるほどストレスがかかると言うか、生きにくくなると言う事かもしれません。
また、50代の右肩下がりも注目したいです。
50代に起こっている変化を抽出して、全体に展開する事ができれば…と考えてしまいます。
自殺に対する意識も、確かにそうかもしれません。
自分も恐怖心こそ有れ、悪しき事と言う意識は希薄だったりします。

またお邪魔します。
ありがとうございました。
コメントへの返答
2012年7月1日 12:24
初めまして(多分)。少なくとも、しょういちごうさんのページは以前に拝見した覚えはありますね。

なかなか寄り付きがたいテーマのブログにコメントをいただき、ありがとうございます。
これを書くか書くまいか、正直迷いました。みんカラに限らず、ブログにするにはちょっと重いかなと。本来なら自分でホームページを立ち上げて語るべきテーマなのかも知れません。

> また、50代の右肩下がりも注目したいです。

これについては、追加資料の下のグラフをご覧ください。
実は単に団塊の世代が50代から60代に移行し、50代の人口が減ったからに過ぎません。50代が打たれ強くなったわけではないんです。

また、1997年から急に自殺者数が増えたのが私にも謎だったんですが、追加資料の上のグラフ(1995年の人口ピラミッド)を見ると、団塊の世代がそろそろ50代という自殺好発期(こういう言い方をするんだそうです)にさしかかろうとしており、このせいなのかも知れません。ただ、世代構成の調整を加えた後の標準化したグラフでも1997年に急に増えていますので、単にバブル崩壊の影響かも知れません。

また、覗いてやってください。



2012年7月4日 23:34
年代別の人口比率からいったら、増えてはいないんですね…

うつと聞くと対応にとても気を使ってしまいますが、人は誰も多かれ少なかれそういう一面は持ち合わせていると思います。
うつだと思い込ませるようないらん情報はあまり伝えてほしくないですね。

何にしろ、夢や希望の持てる社会であってほしいものです
コメントへの返答
2012年7月5日 0:31
この本に興味深い話が載っています。

国別の気分障害(うつ)や不安障害の有病率を調べると、アメリカとニュージランドが多い。この二つの国の共通点を調べると、処方薬のTVCMが解禁されていることが挙げられる。
つまり、日本で言うならパブロンやノーシンと同じように、毎日、うつ病の処方薬のCMが流れ、「憂鬱な気分が2週間以上続いていませんか?」とかやるらしいんです。それがかえってうつ病を増やしてるということらしい。
本末転倒ですね。

「妻が最近うつ気味で困る。どうしたらいいだろう」と同僚に聞かれた時、「気にしないこと!」と言ってやりました。

プロフィール

「この後の展開を見て子供たちは何を学ぶのか。結局、正しい正しくないではなく、「長い物には巻かれろ」が賢い選択であるという処世術を学ぶんだろうな。」
何シテル?   03/03 09:31
昔、メルマガで漫画のコラムを書いてました。
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