
昨年1月18日に「何シテル?」で「
東村アキコの「かくかくしかじか」がいい! とにかく、いい! 」って書いたのを覚えてる人は・・・いないだろうなぁ。
その東村アキコの「かくかくしかじか」が2015年のマンガ大賞の大賞(ややこしいけど。要するに1位ってこと)を受賞しました。パチパチパチ。
タイトル画像は授賞式の東村アキコ。“美人過ぎる漫画家”として有名らしいです。
みんカラのプロフィールにも書いてますが、2000年から2004年にかけて「コミックYOM」というメールマガジンで、月に1回、漫画に関するコラムを書いていました。
2001年1月13日に配信されたコラム「男と女の間には」では、私の少女漫画嫌いについて書いてます。
私の体は難病に侵されている。病名は少女漫画拒絶症候群。少女漫画を読もうと雑誌を広げると、最初に心理的に重い抵抗感を感じ、次にめまいがして血圧が下がり、手の力が抜けて持っていた本を落としそうになる。なんとかそれを乗り越え、先へ読み進もうとするのだが、私の右手は鉛のように重くなり、言うことを聞かなくなる。医師からは少女漫画を遠ざけるように言われ、半径1メートル以内には少女漫画を置かないようにしているのだが、時折、病状がいくらか回復したのではないかと、淡い期待をもって少女漫画を開いてみる。しかしやはり、数ページ捲るか捲らない内に病がぶり返し、少女漫画を手にしたことを後悔する。
てなことを書いてたわけですね。(恥ずかしい過去) それくらい少女漫画には抵抗がありました。とにかく体が受け付けない。そんな中でも当時どうにか読めたのは、佐々木倫子の「動物のお医者さん」(連載は「花とゆめ」)くらい。これはヒットしました。(単行本は計2000万部の売り上げですぜ、ダンナ!)覚えていらっしゃる方も多いでしょう。当時は日本中にシベリアンハスキーがあふれましたからね。今はどこへ行ったやら。
恋愛を描かない佐々木倫子の作品なら読めると言う男子は多かったようで、その後、佐々木倫子は少女漫画雑誌では描かなくなり、もっぱら青年誌で連載されるようになりました。「おたんこナース」だとか「チャンネルはそのまま!」の連載は「ビッグコミックスピリッツ」においてでした。こうなるともはや少女漫画とは言えませんが、どちらも抱腹絶倒の傑作です。
佐々木倫子以外で久しぶりに読める少女漫画に出会えたのは、KAT-TUNのコンサートのアッシーとして出かけた東京の時間つぶしのマンガ喫茶でのこと。きれいな装丁に魅かれて手に取った「ママはテンパリスト」。もうブースの中で笑いをこらえるのに必死でした。
「ママはテンパリスト」(通称ママテン)は、
ココで立ち読みできます。
その後、東村アキコには注目していました。東村アキコも佐々木倫子と同様に青年誌にも進出し次々に作品をヒットさせます。モーニングに連載された「おもに泣いてます」はテレビドラマに、「水母姫」は「あまちゃん」の能年玲奈が主演で映画に。売れっ子漫画家の一人と言っていいでしょう。
ただ・・・・、それらを読めたわけじゃないんですよね。現在もモーニングに「メロポンだし」が連載中で、ときどき目を通してみるんですが、これが読めない。どこが面白いのか分かんないんです。
見放しかけた東村アキコが再び私を振り向かせたのが「かくかくしかじか」。場所はやはりマンガ喫茶。
この作品は、東村アキコの高校生時代から現在までの自伝であり、私小説ならぬ私漫画といった体裁をとっています。そして、(言うのも恥ずかしい言葉ですが)青春の全てが詰まっています。根拠のない自信、肥大した自我、怠惰、独りよがり、無鉄砲、楽観 ・・・・。同義語を並べ立てたような気がしますが、とにかく作者の美化されない等身大の青春期が描かれ、おそらく誰しもが経験したであろう青春期の痛い思い出を思い起こさせる名作だと思います。漫画大賞も当然!
作者は幼いころから漫画家をめざしますが、それを親に言い出せず、なるべくそれに近い大学をということで美大入学をめざします。美大受験には実技、つまりデッサンの課題がある。アキコはその受験対策として家からバスを乗り継いで1時間以上かかる宮崎の海辺の片田舎にある日高美術教室に、週に5回以上通うことになります。この教室の先生がとにかく強烈な人で、出会いのコマを見ていただければ大体想像できると思いますが、風貌も行動もあの「巨人の星」の星一徹を思い出させる存在感。浮世離れした先生の価値観は「描く」ことが最上位であり、それ以外はない。
アキコは竹刀で小突かれながら、来る日も来る日も石膏像をデッサンします。実は私はこの辺を読んで私は強い違和感を持ちました。手塚治虫が正式にデッサンの勉強をしていないことにコンプレックスを持っていたと、何かの本で読んだ覚えがありますが、数年間、この先生のもとで厳しい指導を耐えてこの絵? 私は東村アキコの絵は決してうまいとは思えないのですが。
まあ、絵の上手下手はさておき、物語は主人公である作者本人とこの先生との交流を主軸にして、作者の友人たちや彼との交流や生活を描きながら、作者の出世物語としても読めます。
在学中に漫画家デビューを夢見ていたのに、結局アキコは美大に通う間に1枚も漫画を描かずにただ無為に怠惰に時間を過ごす日々。でもこの美大時代から卒業後にOLをしながらやっと重い腰を上げてデビューするまでのあたりが、漫画として一番面白い。
物語は1巻から先生が既にこの世の人ではないなとの気配を漂わせ、マンガ大賞の発表と前後して発売された最終巻の5巻では、予想通り先生の死が描かれ、こちらもホロリと・・・・。
間違いなく名作です。皆様にお勧めします。
かくかくしかじか立ち読みは
ココ。
あ、このブログを書くために資料として「東村アキコ解体新書」なる古本をネットで見つけ、発売時の定価より高いのを納得できないまま注文してみたらサイン本でした。
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2015/04/05 01:17:26