
これを見ないわけには行きません。
原作の漫画が2015年にマンガ大賞を受賞した時にブログにして皆さんにお勧めしましたが、それが映画化されたわけですからね。今回は”美大”を軸に感想を。
(ネタバレを含みますのでご注意を)
原作の漫画「かくかくしかじか」は作者である東村アキコの自伝的漫画。主人公の明子は将来は漫画家になることを夢見ていましたがそれを親に言い出せず、いくらかそれに近いであろうという理由で進学先として美大を選びます。美大は受験科目としてデッサンがあるからと、対策として宮崎の田舎にあるデッサンの教室に通うことになり、そこで出会った日高先生とのあれこれを描いたのが「かくかくしかじか」。
観ていて、自分でも忘れていた過去を思い出しました。
高校2年の時だったか、あるいは3年になってからもまだ少しは考えていたのかもう覚えていませんが、私も一時、美術系の大学への進学を考えていた時期があったんですよ。具体的に言うと九州芸工大。今調べると現在は九州大学に併合されて九州大学芸術工学部になってるんですね。
普通の受験勉強しかしていなかったし、さすがに純粋芸術の分野でどうにかなるような才能は無いことは分かっていました。だから「インダストリアルデザインとかなら何とかなるんじゃないか?」「国立だし、卒業後もそれなりの就職先はなんとかなるでしょ」なんて甘い考えを持っていたんですね。
九州芸工大も受験科目にデッサンがありました。高校の美術の授業でデッサンはやったことがありましたが、美術部に入っていたわけでもありません。おそらく九州芸工大を受験していたとしても落ちていたでしょう。
家でもその希望を親に言ったことがあり、親父は仕送りなども覚悟はしていたようですが、家の経済状況が気になっていましたし、やはりそこを卒業してちゃんと食えるんだろうか?ってことが気になり、折り合いを付けて、家から通える地元の大学の建築学科受験てことに落ち着いたわけです。
美大卒と言うと、思い浮かぶ二人がいます。
一人は実家の隣家のSさん。私より5歳ほど年長で、子供の頃はよく遊んでもらいました。東京の美大(武蔵美か多摩美?)に進学。私が中学生の頃にSさんが大学で描いたデッサンを見せてもらったことがあります。黒炭ではなく鉛筆画で、バケツのデッサンがあったことは覚えています。卒業後にどこに就職したのかはよく知りませんが、何年かして実家に戻ってきて、喫茶店をやってみたり、中古車販売をやってみたり・・・。経済的にも不安定なことがはた目にも分かりました。
もう一人はSさんとは真逆な人。日比野克彦。現東京芸大学長です。

私と日比野氏は同い年で、彼は岐阜市内の加納高校の美術科出身。ちょうど私の高校受験の時から岐阜県では学校群制度が始まり、私も加納高校に振り分けられる可能性がありました。私の中学時代の同級生で加納高校に行った友人には「体育の授業は美術科の日比野君と一緒にやったよ。」なんていう奴がいたりします。
ですから私も会ったことも無いのに、親近感だけは持っています。だけど、現東京芸大学長と言えば、あの日本画の平山郁夫の3代後のポストだし、日本の美術界の頂点と言ってもいいでしょう。とても私などが親近感を抱けるような存在ではないはず。恐れ多くて「日比野君」なんて呼べません。
そんな対極的な美大卒の二人を知っているわけですが、美大卒業生の大半はSさんのようなもんだと思っています。良くてどこかの学校の美術の先生。それだって求人がコンスタントにあるはずはありません。おそらくは美術と何の縁も無い仕事に就いている卒業生がほとんどじゃないでしょうか。
明子は先生に「高校の美術の先生の空きがあるから宮崎に帰ってこい」と言われて大学卒業後に宮崎に帰省しますが、「あ、あの話か、あれはダメになった。だからこの教室を手伝え。」と言われてプータローに。
親からは「お前をプータローにするために高い授業料払ってたんじゃない!」と叱られ、仕方なく父親の会社のコールセンターでクレーム対応の仕事に就きますが、お局様にいじめられたりしてこれが嫌で嫌でたまらない。時間がたっぷりあった大学時代には1枚も描かなかった漫画を、この仕事から抜け出すために描き始めます。
そこからの成功ストーリーは、映画では割とあっさりと描かれますが、この辺は原作漫画の方が高揚感があってよかったですね。ただ、集英社の担当の電話越しの声がだるくて面倒臭そうな声から、明子の漫画の人気と共に徐々に明るい声に変っていくのは映画ならではですね。
で、大学時代の彼(西村君)とは卒業後も交際は続きますすが、金沢と宮崎の遠距離恋愛は自然消滅。宮崎の明子と金沢の西村君の電話の場面があるんですが、(まだ携帯電話が普及する前なので)電話ボックスの中で受話器を持って話す西村君はネクタイにスーツ姿。はっきりとは描かれませんが美術とは関係のない仕事をしていることを匂わせています。
主人公明子役は絶賛お騒がせ中の永野芽都、日高先生役は大泉洋。配役が発表されたとき、永野芽都はよく知らなかったのでどうでもいいんですが、大泉洋には不安を覚えました。だって大泉洋と言えばどうしてもコミカル要素が出ちゃいますよね。でも原作の先生はそんな要素は全く無し。適役とは思えなかったんですよね。でもちゃんと先生でした。
聞けば、スケジュールがタイトで大泉洋はオファーを何度も断ったそうですが、それを原作者の東村アキコが頼み倒して引き受けてもらったそうな。
原作漫画第5集の表紙ですが、確かに大泉洋に似ていなくもない。
そしてね、永野芽都もずっと映画を観てると、「きれいだな」「色っぽいな」と思えて来ちゃうんですよね。映画はずるい。
そして、まあ、泣けますよね。泣けるように作ってあるもん。特にラストは。
こちらはメイキングを含む動画。原作者の東村アキコや西村君も登場してます。
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Posted at
2025/05/24 10:59:40