既に1週間経ってしまいましたが、以前からお話していたとおり、5日・6日と槍ヶ岳に登山に行ってまいりました。
こうして日記を書いてるってことは、無事に帰って来られたということですが、これを果たして無事と言っていいものかどうか・・・
天候は文句なしの好天! 写真もたくさん撮ってまいりました。ご覧ください。
まずは、登山ルートのご説明から。
名古屋を5日の午前0時に出発。午前4時頃、地図の左下にある岐阜県平湯の「あかんだな」というふざけた名の駐車場に到着。5時前まで仮眠。
登山ルートのスタート地点である上高地はご存知のようにマイカーは乗り入れできません。「あかんだな」から上高地まで、朝5時の始発バスで移動。
上高地から梓川に沿って上流方向に登ります。明神、徳沢、横尾、槍沢を経て槍ヶ岳山頂まで1時間ほどのところにある「殺生ヒュッテ」(この恐ろしげなヒュッテの名の由来については後程)に宿泊。翌朝は槍ヶ岳に登頂し、水色の「赤鎌」と呼ばれる尾根のルートを経て、行きと同じルートを上高地まで下山し、平湯の駐車場に戻り名古屋へ帰るという行程です。
メンバーは職場の同僚4人。フルマラソンからトライアスロンまでこなす今年退職の鉄人上司、登山は20年ぶりくらいの50代の私、40代の後輩二人。私以外の3人は毎年どこかの山に登っていて、槍ヶ岳も初めてじゃない人ばかり。結果がどうなったかは、自ずから想像できると思います。
いわずと知れた河童橋。左手が上高地の帝国ホテル。実は私にとっては初めての上高地。
朝もやを突いて、いざ出撃! 大勢の登山者がいることがお分かりいただけると思います。なにせ「表銀座」だそうですので。
木立の間に見えた槍の穂先。その名の通り、きれいにとんがった形をしています。
先ほど「ひたすら歩く」と書きましたが、そう、この辺は「登る」と言うより、まだ「歩く」でした。しかし、この時気づくべきだったんです。三千メートル級の山があんなに小さく見えるってことが何を意味するかを。
見難いと思いますが、右端が上高地、一番高い所が槍ヶ岳を示す断面図です。鉄人上司は今回のルートを「二次曲線」と称していましたが、上の図を見ていただければその意味もお分かりいただけると思います。初めは比較的平坦な道がダラダラと続きますが、槍ヶ岳に近づくにつれ急に勾配がきつくなることを示しています。
所々に雪渓も残っていました。このあたりから徐々に樹木が減り始め、岩場が多くなります。そして勾配も・・・。休憩のピッチが短くなり、私と後輩の一人が、他の二人から取り残され始めます。
雲とほとんど同じ高さまで上がってきました。もう、この辺になるとかなり疲労困憊しています。
ついに頂上の間近まで来たぞ! 見難いですが、右端中央に殺生ヒュッテも見えてきました。でも私の足はフラフラ。思うように足が上がらず、次の一歩が踏み出せない。ヒュッテは見えているのに果てしなく遠く感じられました。
いかにも”魔の山”って感じで写ってますが、曇っていたのは一瞬で、すぐに晴れました。
ヒュッテからみた槍ヶ岳。「待ってろよー、明日、登ってやるからなぁ!」
午後4時頃の写真ですが、この標高でこの時間だともう涼しいを通り越して”寒い”。ヒュッテに入ると、なんとストーブが赤々と燃えていました。私も持参のセーターを着込みました。
殺生ヒュッテの名は、槍ヶ岳の登山ルートを開いた男が猟師で、ここに建てた山小屋で獲物の皮を剥いだことに由来しているようです。その名のせいなのか、中途半端な位置のせいか、殺生ヒュッテはガラガラ。布団もたくさん空いていました。
倒れこむように布団に横になり、足を休めましたが太ももの筋肉痛は簡単には取れず、食事のために階段を下りるときにはこむら返りを起こすほどの疲労でした。
山小屋体験も初めてのことで、いろいろと驚くことがありました。まず、きれいに映るテレビがあること。ネットに繋がるパソコンがあること。docomoであれば携帯も通じること。softbankユーザーの私は、パソコンで家族に無事に山小屋までついたことを知らせました。
でも一番驚いたのは食事。思わず「えっ、これが?」と声を上げそうになるくらい質素。いや、粗末と言ったほうが正解か。山小屋でご馳走を期待しているわけではありませんが、これほどとは。おそらく食器を洗う水を節約するためだと思いますが、ステンレスの丸い皿に数種類のおかずが乗っていましたが、メインは鯖の粕漬け(?)。それも普通の半分くらい。ポテトサラダ少々。ケチャップで和えたマカロニ3本。他にも何かあったような気がしますが、どうでもいいようなものです。とにかくどれも少量。ご飯と味噌汁のお替りができたのがせめてもの救い。
同僚の話では、山小屋の食事はどこも豪華なものはないそうですが、ここのは特に質素なんだそうです。1泊2食、9,450円。
前夜は運転する可能性もあり禁酒。今夜こそ飲もうと心に決めていたのに疲労に勝てず爆睡。因みに350ml缶で500円。ソフトドリンクも同額なんで、ビールが割安。
ここで高山植物図鑑。9月に入ったとは言え、秋の気配は薄く、まだ多くの高山植物の花を見ることができました。
最後の紫の花をご存知でしょうか? あのトリカブトです。そこら中に生えてました。そんなことなら2・3本抜いてくればよかった。

朝焼けに染まる雲海。
山の端を越えて射してくる朝日で光の縞ができる。
朝日に染まる槍の穂先。「待ってろよ! 今、登ってやるからなぁ!」
朝食(これはまあ、普通だった)を済ませ、ザックを背負い、まずは30分ほど登ったところにある槍ヶ岳ヒュッテを目指します。このとき下山する団体(おそらくツアー客)とすれ違ったんですが、これが全員老人。槍ヶ岳山頂でご来光を拝み、下山するところだと思われましたが、みなさんお元気! お婆ちゃんも大勢いました。
登山と言うと中高年の趣味と思われる方も多いと思います。私もそう思っていましたし、実際、中高年の登山者は多いです。でも、若い登山者も決して少ないわけではありませんでした。
山頂に立つ人や、岩肌に張り付いている人が分かるでしょうか?
槍ヶ岳ヒュッテでザックを降ろし、カメラだけ持って、いざ山頂へ!
さすがに手を使わないと登れません。手を離したら、・・・・。
3180m! 山頂からの眺め!
私達の直後に、大学のワンダーフォーゲル部と思しき、女の娘一人(ちょっとかわいい)を含むグループが登ってきました。その娘が山頂に立った直後の第一声。
「ヤリーッ! めっちゃテンション上がるわぁ!」
なるほど、槍と「ヤリーッ」をかけてるのね。下界だったら聞いてるこっちが赤面するようなしょーもない駄洒落も、澄んだ空気の山頂でかわいい女の娘の口から発せられると妙に心に沁みますね(ホントか?)。今回の日記のタイトルにいただくことにしました。
因みに、docomoとauは槍ヶ岳山頂でも不安定ですが圏内です。我がsoftbankは朝だと言うのにアンテナ表示は一本も立たず(この日記を女性が読みませんように)。docomoとauユーザーなら登頂証拠写メを即時に送れるかも知れないってことです。
山頂は狭くて長く滞在すると後から登ってくる人達に迷惑がかかりそうなんで、名残を惜しみつつ20分ほどで降りました。
そして赤鎌と呼ばれる尾根伝いのルートで下山。
槍ヶ岳を振り返る。また来る機会はあるのか???
これが結構難所が多いスリル満点のルートでした。
登りに比べれば下りは楽だと、普通は考えますよね。ところが今回は下りも辛かった。降ろしたばかりの靴が足に合わず、「昨日からの筋肉痛+つま先の痛み」で苦痛に耐えながらの下山になってしまい、徐々に同僚らから遅れることになってしまいました。
辛い一人旅でした。昼食や休憩も含めてですが、12時間、22㎞歩き続けました。おそらく生涯で最も歩いた日じゃないでしょうか。
再び河童橋に戻ってきたのは、午後五時過ぎ。私のせいで駐車場行きの最終バスに乗れませんでした。仕方なく駐車場まではタクシーで。
平湯で温泉につかり、疲れを癒したんですが、そんなもんで私の筋肉痛は癒えるはずもなく、翌日は階段の上り下りもままならぬくらいの痛みで、現在も完全に痛みが去ったわけではありません。足の指の何本かは内出血で爪が黒くなってしまいました。
3千メートルを超える山に登り、なんとか無事に降りてきたわけですが、結構、一杯一杯の登山でした。三度も金華山に登り鍛錬したつもりでしたが、せいぜい、やらないよりマシ程度のことだったのかも知れません。
でも、下山直後は足をさすりながら「もう登るまい」と思っていたのに、今は痛みが遠のくと共にきれいな山の風景が思い出されます。
来年もまた、山に行くのか、オレ?