どうも。
毎度の如く手放す時にやるヤツです…長々としてますが、ご了承を…。
■概要
1986年に登場した、キャラバンの3代目モデルである。
キャラバンは元来商用車色が強いクルマだが、ソレを乗用向けとして豪華に仕立て上げたのが、このコーチというモデルである。
その仕立ては高級車セドリックをワンボックスに翻訳したような内容で、さながら豪華絢爛で、大人数を快適に移動させようとする企みである。
しかしながら、この豪華絢爛ワンボックスなるやつは、そのどれもが非力でお粗末な走りがそのキャラクターとそぐわないのもまた事実であった。
そこで、1990年のマイナーチェンジでセドリックと同じ強心臓を強引にブチ込み、同ジャンルのライバルはおろか、並のセダンなら食ってかかろうかという、いかにもバブル時代ならではの、なんでもアリをそのまま押しとしたようなクルマである。
■パッケージング、スタイル
全長×全幅×全高=4525×1725×1955㎜、ホイールベース2375㎜。
リムジンは、ショートボデーをベースとしたワンボックスなので、全長は現代のミニヴァンと比較すると、結構短く感じる上に、ホイールベースは前車のアイより180㎜も短いので、スペック上の数値だけで見ると実に滑稽な印象である。
このキャラバンコーチには、最上級で尚且つロングボデーのロイヤルというグレードが用意されている。
このロイヤルはロングボデーの他に、2列目に豪華なキャプテンシートを与えた7人乗りが特徴である。
そして今回のリムジンはその次に位置するグレードで、ショートボデーで、2列目がベンチシートの8人乗りではあるが、内装の素材や装備に関しては、ロイヤルに匹敵する仕立てが施されているのが特徴である。
余談ながら、このリムジンも最終モデルでキャプテンシートの7人乗りになってはいるものの、いかんせん販売期間が短く、現存する個体は中々稀少である。
最も多いのは、このリムジンの1つ下となる、GTクルーズというグレードになるが、これになると新車時価格も45万円下がるので、内装の仕立てやシートの生地がグッと下げられ、セドリックとローレル程のレベルで差が出て来るようになっている。
しかし、この時代の日産は、デザインという面においては抜きに出ており、豪華に仕立て上げることには極めて優れていたので、実に堂々とカッコ良く見えるのである。
また、全体からどうにもこうにもいかがわしい、「ワル」な雰囲気が出ており、この近寄り難い雰囲気も、また魅力である。
特に適度な丸みを帯びつつも、水平基調のフロントマスクは威圧感の塊である。
しかしながら、どこかしらエレガントな面もあり、他のワンボックスとは違った高級感を漂わせている。
更にこの中期型の格子の細かいフロントグリルが好みで、後期のグリルは僅かならのケバケバしい印象が残るように思う。最も好みの問題だが。
そして、そのフロントグリルには、キャラバンの頭文字である、Cをモチーフとしたであろうエンブレムが備わる。
しかしながら、このエンブレムの本来の由来は全くもって不明である。
両手で出来そうな形だとも思う。
日産の演出で憎らしいのが、このピラーエンブレムである。
最もこれは、セドリックのブロアムVIPのようなひと際特別な印象を与える為に備えられており、この演出は中々のものだと思っている。
しかしながら、経年劣化で金メッキ部分が剥がれるようで、この辺りは残念である。
今回のキャラバンには、純正オプションのリアスポイラーが装備されていた。
現代では珍しいウレタン製で、触感がかなりソフトなのが特徴である。
このリアスポイラーは、現在コレクターズアイテムとなっており、結構なプレミアが付き取引されている。
■装備、インテリア
初期型のインパネは、当時の日産らしい「絶壁インパネ」だったが、この中期以降のコーチでもビジネスワゴン的グレードを除くと、90年代前後の日産車ではトレンドとなる丸味を帯びたデザインへと変化し、一気に乗用車感を増している。
各スイッチの配置や操作性に大した難は無いものの、この時代の日産車はデザインを優先し過ぎ、インパネ周りの収納に乏しいのがネガティブなポイントとなる。
また、その後はバンとインパネを共用することもあり、悲しいかなこの射出成型のインパネはセドリック等の3リッタークラスセダン級と比較すると材質としては明らかにチープではある。
メーターは、可変ショックアブソーバーのモード表示以外に特段珍しい項目は無く、全体的にシンプルな構成となっている。
この面だけで言えば、前期にはデジパネの設定があり、その辺りでは豪華さや近未来感があったので、やや乏しい感じではある。
各スイッチ類は、メータークラスター右側にクルーズコントロールのメインスイッチ、ATのモードスイッチ、その上部に大き目で押しやすいフォグランプのスイッチが置かれている。
左側のレベライザースイッチはダミーで、以前のオーナーの好みでなんとなくハメ込んだだけのようだ。
この時代の日産車特有で、フォグランプはヘッドランプスイッチ連動では無いので、個別にスイッチ操作しなければならず、少々煩わしい。
そして、メータークラスター左側には可変ショックアブソーバーのモード切替スイッチと、リアワイパーのスイッチが配置される。
可変ショックアブソーバーに関しては、80㎞/h辺りでオートモードのままだと、車高を落としているせいか、終始揺り返しが収まらなくなってしまうものの、そこで意図的にハードへ変更すると、これが瞬時に収まる辺りに感心した。
最も、そのまま60㎞/h以下でハード固定のままだと、今度は突き上げが大きく、これまた乗り心地が悪いので、その際はこれまた意図的にオートモードへ戻すのがベストだと思う。
センタークラスター上段にはスイッチ類が集中している。
ハザードスイッチやデフォッガーのスイッチはC33ローレルやその他日産車と共用。
左側上段は、レオスタットのスイッチで、現在の自発光式のように大きく輝度が変化する訳では無いので、気持ちとしてはオマケ程度の内容だ。
2段目のフォグランプスイッチはダミーで、これまた前オーナーの遊び心の産物である。
3段目はリアエアコンの操作スイッチで、このボタンで操作を行うのは非常に煩わしく、このスイッチを積極的に扱おうという気は全くならない。
そこで、標準装備となる後席用リモコンを結果的に使用することとなる。詳細は後述。
最下段は2列目以降のルームランプ操作のメインスイッチで、恐らくバッテリー上がりや誤操作を防止しようという意図で装備されている。
しかし、どのドアを開けてもフロントドアのカーテシランプが点灯したままとなるのはいただけない。
これでは、スライドドアを開けたままキャンプやバーベキューを堪能しようとは到底ならず、終始バッテリー上がりに対する不安と板挟みのまま時を過ごす結果となる。
実際に、バーベキューで休憩室として、スライドドアを開け、場所を提供する場面もあったが、その際はフロントドアのカーテシランプの電球を外し対応する始末となった。全くもってナンセンスな話だ。
このキャラバン、本来はこの場所がオーディオスペースとなるが、前オーナーの好みで、エアコンパネルを上段から移設されている。
確かにオーディオ関係が上段にある方が、ナビゲーションシステムの搭載を前提とする現代では非常に理に適った改善だと思う。
反面、エアコン操作に僅かな支障が発生するものの、こういう時にレバー操作タイプのエアコンパネルの合理性が生きる結果となり、手探り操作性の良さを認識する結果となった。
更に本来はこの木目調センタークラスターが標準で、確かにこれで高級感は倍増し、ブラウンの内装色と非常にマッチしている。
全席の頭上には大型のルームランプに後席用の液晶エアコンパネル及びプラネタルーフのスイッチが一体化されている。
今となっては古めかしいが、このエアコンパネルの液晶表示は当時の目線で言えばかなり豪華に感じたことだろう。
また、面白いことにキャラバンはエアコンとヒーターが独立しているので、冷風を出しながら温風を出すということも可能ではあるが、結局のところ北風と太陽な場面は皆無で、ネタの1つとして楽しむこととなった。
運転席足元は、広くも無いが、狭いという印象も無く、まずまずというところであり、写真では一見狭そうなペダルレイアウトも意外や違和感の無い感じとなっている。
但しフットレストはやや小ぶりで、面積においてもう少々注文を付けたいところではある。
前席中央には大型のセンターコンソールが装備され、このアームレストが実に大きく使い勝手が良く、優雅な気分にさせてくれる。
このセンターコンソールの前端には、カーテンスイッチとミラースイッチを装備。
ミラーには当時としては珍しくヒーター機能が標準装備されており、さすが高級ワンボックスと言ったところだ。
前席天井にはプラネタルーフの1枚目…つまりガラスサンルーフを装備する。
機構としては手動チルトアップのみで、スライドや取り外し等という機能は無いが、シェードを外すことが出来るようにはなっている。
しかし、このシェードはパルプのような紙を積層したような構造で、経年劣化で非常に脆く、無理に取り外そうものなら簡単に割れてしまう。
また、外したところで今度は置き場に困ることとなり、結局外したのは興味本位で2回のみであったことを記述しておく。
室内幅の余裕を重視しているので、ドアは薄く、比例してトリムもペラペラでさながら軽自動車のようである。
バンに少々触感の良い生地を貼り付けてなんとか凌いだだけとも言える。
そこにパワーウインドウのスイッチ及び、室内幅一杯にシートを配置した為、スペース的にパワーシートスイッチがこんな場所に追いやられる結果となった。
慣れればこれが使いやすいのだが、初見でここにスイッチが配置されていると気付くのは困難である。
パワーシートはスライドとリクライニングのみで、リフター機能やランバーサポート等のギミックは未装備である。
ここでやっとシートの話題となるが、前席はシートクッションの厚みが薄く、長時間では左大腿部に僅かな違和感を生じることもあったが、おおむね上々で、この手としては中々のシートだ。
生地も上等で、経年で退色や擦れは見受けられるものの、昔の高級車と言ったこの雰囲気は中々だ。
また、シートバックの出来が良く、腰が痛くなるような場面は皆無で、ちょっとイイモノに乗っている…そんな感じを十分に感じる完成度だ。
反面、このクルマはセンターコンソールにやや幅を使い過ぎた感があり、シート幅があからさまに狭く、この辺りでマイナスポイントとなる。
しかしながら、ホールド性も良く、この時代の日産ならではで、シートの良さがいいクルマとしての結果となっているのだと思う。
不思議なのは、助手席シートにスライド機構は一切備わらない。
ロイヤルの場合、助手席の頭上後方に液晶テレビが備わるので、シートスライドが出来ないのは致し方無いのかもしれないが、こういう辺りが日産らしく煮詰めが足りていないと思わざるを得ないポイントである。
2列目のシートは豪華でゆったりとしており、移動時での特等席はやはりここだとなる。
しかしながら、やはりセンターアームレストの幅を取り過ぎ、左右シートの幅が狭いのが残念なところだ。
また、最大の欠点は足元が非常に狭く、写真左側シートの状態で最後端である。
最も、このV6は無理に搭載しているので、エンジンカバーが後方中央に向かい大きく出っ張っていたのであった。
これにより足元が狭いという、スペースが魅力のワンボックスとしては致命的な結果に繋がることとなった。
2列目のアームレストはこの通り大型で、確かに優雅な雰囲気にはなる。
しかし、操作レバーがあからさまにキノコのように生えており、この辺りがどうも安っぽく、どうにかならなかったのかと思ってしまう。
この辺りがやはり日産でこれまたツメの甘さを感じてしまうのである。
反面、3列目は非常に広大で、実は座るだけであればこの3列目が1番快適という、頓珍漢な構造となっている。
足元も全ての席で1番広く、足を組んでも更に余裕があり、ナゼこの足元の広さを2列目に均等配分することが出来なかったのかと、開発者に小一時間問いただしたい位である。
最も2列目は回転対座等のギミックを重視した結果なのかもしれないが、それにしてもそんなことが本質なら非常にお粗末な話ではある。
しかしながら、室内長が3290㎜もあるのは、非常に魅力的で、これはグランエースと同寸法である。
これにロングボデーのロイヤルとなると、その室内長は3520㎜に及び、近年の国産ミニヴァンにこれ程の室内長を持った車種は皆無なのだ。
室内が広大さがセールスポイントとなるワンボックスやミニヴァンでは、もうこれだけで代えがたい存在になるのは必至で、尚且つこのキャラバンはノーズが無いことにより、僅か4500㎜程度の全長でこの世界を味わうことが出来るのである。
そうなると本当に他のミニヴァンへシフトするのが中々に難しい。
強いて挙げるなら安全性…それだけだとも言える。
後席装備の話題をすると、このリモコンは中々で、寧ろコレが無くなるだけで車内の操作性は絶望的だと言ってもいい。
なにより後席周りの物理スイッチはほぼ無く、運転手が操作しないといけないのだから。しかも小さなスイッチを只でさえ揺れる車内で。
何気に有難いのはプラネタルーフのオートオープンである。
スイッチ1つで一気に開放されるのは、非常に便利で魅力的だ。
プラネタルーフは開口面積が大きいのは良いが、シェードを動かすと、デフレクターという風除けがあからさまに車内へと突出するのはやや興ざめである。
最も昭和の設計が露呈する箇所でもある。
そしてE24キャラバン/ホーミーはバンでこそ両側スライドドアのモデルがあるものの、コーチに関しては現代のミニヴァンとは違い、左側にのみスライドドアが備わる。
確かに利便性では一歩劣るものの、子供が一人で車道へ飛び出すのを防げることと、ドアが無い分室内装備を割り振るスペースとして活用可能なメリットがある。
かように、キャラバンの2列目右側はこのように電動リニアカーテンのスイッチとシガーソケット、そして気持ちながらの収納スペースが用意されている。
最もリニアカーテンに関しては、カーテンそのものが欠品、そして接点の調子が悪く、1箇所を除いてマトモに動作しない状況であった。
レールを取り外し、接点を磨けば復活しそうな様子もあり、タイミングを見て1度接点を掃除しようと企んでいたものの、結果的に未遂のまま終了してしまった。
この電動リニアカーテンのスイッチは、2列目右側だけでなく、3列目の両側にも備わる。
また、3列目左右には灰皿と立派なカップホルダーが用意されるものの、いかんせん位置が低過ぎる。
せめて5cm上部にあるだけでも利便性は大幅に向上するのだが…。
後席天井には大型のルームランプが設置される。
しかし、この個体に関しては、交換されていたLED球が暗過ぎ、この面積の大きさが全く生かされていなかった。
近似サイズで面発光のLED等を入れると面白そうではある。
そしてグレード名称リムジンは伊達では無く、各席に読書灯も備えられる。
その前にピッチングが激しく、この車内で移動中の読書は中々に至難ではある。
このキャラバン最大の魅力は、広大な室内に加え、それでいて尚十分な広さを持つラゲッジスペースにある。
3列フル乗車でも三輪車に3段の脚立を入れようが、その荷室には更に余裕がある。
グランエース同様の室内長は前述の通りであるが、果たしてそのグランエースにどれだけの荷室が備わるのか?
コレだけでもうキャラバンを選ぶ理由が出来てしまう。
大量に買い物をしたとしても、載るか否かの心配が皆無となってしまうのである。
数泊の家族旅行にコストコでの大量買い…我が家の用途では結局最後までその荷室を隙間なく埋め尽くすことは不可能だった訳だ。
もう日常用途の利便性を考慮すると、もうそれだけでキャラバンの満足度が高い。
実質、手放す最後の3ヶ月位は、燃費なんざ丸無視で週末の移動はキャラバンになっていたのだから…。
そしてこのキャラバンにはディーラーオプションの室内用キャリアを備えていた。
コイツは耐荷重5kgの範囲で頭上へ小物程度なら収納が可能ではあったが、結局前述のように荷室ですら埋め尽くす機会が訪れなかった訳だから、最後まで使うことは無いまま終了した。
余談ながら不自然な3列目ヘッドレストは、モニターを装備した社外品で、以前のオーナーが誤魔化す為に布を被せて誤魔化したというのがオチである。
この布を外すと合皮製のヘッドレストが露呈する訳だが、加水分解で表皮がボロボロと落ちる上、モニターの配線は根本から切られ、再利用を嫌がるかのような処置がなされており、意図的な細工であれば中々の悪質ではある。
コレはヘッドレストモニターなど序の口に過ぎず、バックカメラの配線や、デジタルルームミラーも取り付けていたようで、カメラの配線の根本からゴッソリと切断されていた。
お陰で再使用を試みようとも、得体の知れない配線加工やムリな切断を施した配線では、社外品を到底再使用する気にもなれず、結果として以前のオーナーが適当に施した各所の素人配線を処理するだけで終了してしまった。
結果として今でもガレージには、なんとか取り除いたムダな配線やトグルスイッチが頓挫している。
バックドアは、元々のベースがバンというコトもあり、室内側より操作が可能なインナーハンドルレバーが存在する。
そしてバックドアを閉める際に用いるハンドルに関しては、前オーナーが何かしらの車種より流用した、比較的長くて太い物が装着されている。
ナゼか、これに関してはしっかりと取り付けられている上に、非常に丁寧な仕上げで、純正と見間違うかのような出来の良さなのであった。
結局、最後まで何を流用したのか不明なままである。
■エンジン、メカニズム
ワンボックスなので、当然エンジンルームへアクセスするのはやや面倒である。
助手席ヘッドレストを取り外し、シートバックを前傾させた後、床板のフードロックを2箇所解除し、ヨッコラショの掛け声と同時に非常に重いフードを持ち上げる。
これは非常に重く、1度指を挟み悶絶している。
ようやっとそんな作業の後、床下より現れるのがこのエンジンである。
・VG30E…V型6気筒3000㏄OHC、155馬力、25.0kg-m。
このクルマ最大の魅力は、室内の広大さもさることながら、このユニットである。
恐らく元々設計視野に考慮されてないであろうエンジンベイに日産はこの強心臓を半ば強引にブチ込んだ。
その結果、当時の同クラスのライバル達に対し、おおよそ1.5倍の動力性能を只き出すに至った訳だが、この勢い余る感じがなんとも当時の日産らしい。
更にコストダウン等という考えすら無いのか、ヘッドカバーは新車時より赤で塗装されている辺り、コスパだタイパだと飛び交う現代では到底ありえない演出である。
そして、この出力と引き換えに、極悪の整備性と、これまた極悪と噂されるまでの燃費を叩き出した。
このエンジンはスペックの数字よりも想像以上に実用域のトルクが太く中々速い。
スロットルひと踏みで、V6ならではの独特の低音を響かせながら、1.8tもの巨体をグイグイと引っ張っていく様は、この手のワンボックスでは味わうことの出来ない快感がある。
そして、これだけで何かイイものに乗っている感じになる。
実燃費は平均で6.68㎞/L…当初のリッター3~4㎞という噂とは裏腹に意外と良好な数値を叩き出した。
乗り方にはコツがあるようで、無闇に踏むのではなく、1500~2000回転の領域で緩やかに加速していくのが良いようだ。
ついついこのトルク感に陶酔し、2500回転以上等で引っ張るから余計燃費も悪くなるのだろうし、また、車高を落としてエアロを巻いた個体だと、路面を気にして加減速を細かく繰り返すので燃費がガタ落ちという結果になるのだと思う。
後は太い社外マフラーを入れることで、排気抵抗が無くなり、折角のトルクが抜けるので踏まざるを得なくなり、結局のところ極悪燃費に辿り着くのだと思っている。
これに組み合わされる4速オートマは、オイルクーラーが装備されてない上、この大トルクに嵩む重量と、かなりの負担が掛かるようで、やはりよく壊れると言われている。
案の定、今回の個体も最後はこのオートマが音を上げた。
足まわりはフロントがトーションバースプリングのダブルウィッシュボーンで、リアはリーフリジッドという、典型的なトラックのそれである。
しかし、リアサスに関しては、リーフの枚数がバンより少ないので、多少乗り心地は良いらしい。
また、このリムジンでは減衰力が自動で切り替わるショックアブソーバーが装備されており、少なくとも多少はこれが効いている。
足まわりはこの通り元々の設計が堅牢の為、耐久性は十二分にある。
しかし、乗用車としてのコーチとして考えると、やはりオーバースペックだろう。
これにホイールはワークユーロラインの17インチを組み合わせた。
PCD139.7で6穴のホイールは、200系ハイエースが登場してからラインナップが一気に増加したものの、それでもやはり少数で、探すのに少々苦労を要した。
また、何も考えずタイヤを装着した状態で、ハイエースに履いていたものをそのまま購入した為に、扁平率で失敗し、妙に肉厚でアンバランスな印象を出してしまった。
但し、装着タイヤのピレリ・パワジーはロードノイズも少なく、中々の好印象であった。
更に以前のオーナーが遊び心で入れたのかは定かではないが、スリットローターに交換されていた。
最も、これが中々で、日常使用において制動力に全く不満が出ることは無く、寧ろ安定した効きで、この手の重量級には極めて有効であった。
■総評
実はその場のノリと、相場より安いという理由で購入したクルマだったので、当初は極悪燃費という噂の上、維持費も3リッターで高額の為、果たして維持が出来るのだろうか?
などという、ネガティブなイメージから付き合いがスタートしたものの、結果としてこの印象はまるっきり逆転し、過去に所有した車種の中ではかなり満足度の高い1台となったのである。
クルマの維持は人付き合いとほぼ同様で、当初は人当りが良かろうと、途中から本性を露にしてくる者もいれば、第一印象が今一つでも、後にふとしたキッカケで良さを見い出し、気付けば一生の友になることもしかりで実に面白い。
また、最終的な決定権は自身にあれど、何かしらの縁なのか、予想外の車種の話が転がり込み、結果的にその車種になったり、気に入っているのに、想定外のトラブルで疎遠になったり(つまり手放したり)と、これまた人との出会いに酷似している。
このキャラバンも然りで、出先での会話で耳にした話から、Xで仲介者とのDMがスムーズだった為、購入候補が6人もいたのに最終的には私の手元へとやってきた。
そしてコイツはイイヤツだとなると、嵐のように手元からいなくなってしまった。
1年2ヶ月の日々は心底楽しく、また所有出来るものなら乗りたい位に気に入ってしまったものの、恐らくもう2度と我が家のカーポートに収まることは無いだろう。
さて、このE24キャラバンコーチは確かに満足度も高く良いクルマではあったが、これを2025年に積極的に勧めるかと言われれば、全く持ってお勧めは出来ない。
その理由は、とにかく部品が無く、ローレルのように簡単に中古部品が手に入らないことがある。
私のように週末のレジャーカーとしてならともかく、日常のように乗りこなすのは中々に至難で、そういうことが可能なのは、長年E24にのめり込み、部品を大量にストックしている者や、メカに長けた者、どんな仕打ちを受けても(多数のトラブルや路上立ち往生等…)ビクともしないメンタルを持ち合わせている者だけである。
そしてここに日産の情勢がこのような状況であるので、部品が出たところで、この1年の間に販売価格が信じられないレベルで上げられてしまった。
もうこれにはどうにもならず、このような状況である以上、旧車はおろか、現行車に至るまで積極的に日産車自体をもう勧める気にはなれなくなっている。
ある意味とても良い時期にこのキャラバンを所有出来たのかもしれない。
余談ながら、あれだけキャラバンと言っていた息子は、未だにキャラバンと口にしているので、やはり余程気に入っていたのだろう。
しかし、現在はクラウンもとても気に入った様子で、今度はクラウンと何かにつけて連呼しており、駐車場へ行くとプリウスよりも真っ先に目に入る様だ。
この移り気なところ、やはり血は争えぬというとこか。