気が付けば8年…、計4台所有したにも関わらず、今日現在至るまで、特段レポートをアップしたことも無かった為、今回書いてみることにした次第である。
■概説
1988年12月16日発表、1989年1月に日産のミドルクラスを支えるセダンの1台であるローレルの6代目が発表された。
今回の車両はそのモデルライフの中でも1991年10月に追加された2500ccモデルであり、メダリスト25Vは通常のメダリスト25より、やや高級装備を奢ったグレードである。
このC33型ローレルは、従来型C32型より過剰な高級装備を排除した変わりに、内外装の素材の品質に拘り、ワンセグメント上の高級感を与えたのがトピックである。
また、従来モデルまであった、マークⅡ3兄弟の後追い感を辞め、ハイソカーの織成す高級という概念のベクトルを若干変化されることにより、独自のマーケットを手に入れた事によりソコソコのヒットを飛ばしている。
■スタイル、サイズ
全長4690mm、全幅1695mm、全高1365mm。
ボディ形状は4ドアピラーレスハードトップである。
当時の日産の売りであった、ピラーレス構造の4ドアセダンとして最後に発表されたモデルであり、またこのボディ形状を実現する為に、ベースのセフィーロで採用されていたトランクスルー機構を装備せず、さらにボディを70kg分補強している。
実際に解放感は抜群で個性的なのではあるが、ボディ剛性は残念ながらお粗末なもので、やはり走行する上で必要な構造を排除した代償は大きく、耐久性に難があるものである。
現在では衝突安全基準の問題により、絶対にこのような構造のものは採用されないであろうと考えればコレも個性ではある。
クラブS系を除くグレードはフード先端にマスコットが装着されるのだが、残念ながら周囲からは「偽レクサス」などと揶揄され、「コチラが本家本元」と修正しても、最早、焼け石に水状態で耳すら貸してくれない。
筆者は日々枕を涙で濡らす日々であることを付け加えておこう。
また、厄介なことに、上記のものに加え、フロントグリル内にもエンブレムを装備する。
クラブSの為にこのようなものにしたのかは分からないが、万が一フードマスコットが盗難されてもローレルであることを証明する為なのだろうか?
ところで、この時代の日産車は車体に社名を明記することを嫌ったのか、「NISSAN」と明記してあるのは、このリアガーニッシュが唯一で、しかも非常に分かりにくい。
コレは当時のシルビア、180SX、セフィーロ、スカイライン、その他諸々のほぼ全ての日産車に言える。
これまで散々嫌味のように書いてはいるが筆者はこのクルマで一番好きなのはその優雅なスタイルである。
コレはこのクルマの開発リーダーであった佐渡山氏がデザインにとても拘る方だったからであろう。
8年間全く飽きの来ないスタイルはいつ見てもワクワクするものがある。
■動力性能、乗り心地
エンジンはRB型2500ccツウィンカム、180馬力。
現在のこのクラスではまず考えられない高回転型エンジンで、低回転では本当に2500ccもあるのかと言う位にトルクの無いエンジンである。
但し、それは2500回転位までの話で、それ以降は面白い程にモリモリとパワーが出ると共に、非常に気持ちの良いフィーリングと音を示す。
元々、レスポンス&バランスという意味のこのRBエンジンは2500ccを基本として設計されたエンジンなのだが、このエンジンが発表された当時は、税制面の関係上、残念ながら2000ccまでしかラインナップされなかったのである。
そのこともあり、パワーバランスと車体のマッチングで考えればこのRB25がベストだと言える。
しかし、実際のところ、数あるRBエンジンの中でもフィーリングと音質では2000シングルカムのRB20Eが最もベストなのである。
全体的な出力では今一歩の感もあるが、6気筒ならではのシルキーさを体感したいのであればRBシングルカムもオススメしたい1台である。
燃費に関しては不思議な事に、シングルカム、ツウィンカム、ターボ、どれを取っても似たりよったりで、街乗りで7.5km/l、高速で12~13km/l位である。
ライバルのトヨタ1G系、JZ系に比べると明らかに悪く、この辺りは頭の痛いところである。
上記に組み合わされるミッションは、電子制御式の5速オートマティックなのだが、名ばかりのもので、非常にお粗末な作りである。
実際のところ、変速ショックも大きく、また愛好家の間では「ガラスのAT」と呼ばれる程に耐久性が低く、急な変速やATに高負荷を与えると簡単に壊れてしまう。
唯一、このATで褒められることは5速化により、100km/hでのエンジン回転数が2000回転と低めなことにより、車内が静寂に保たれることだ。
実際に、このATに嫌気が差し、マニュアル化をするユーザーも多いが、個人的にはこのクルマはゆったりとオートマティックで使用することを考えている為、このままのつもりだ。
足回りに関しては当時の日産が取り組んだ901活動での効果により、非常にしなやか且つ、粘り強いもので、さらにそれに加え非常に快適である。
その足回りのバランスの良さは現在でも十分に堪能でき、当時の日産が社内一丸となって開発されていた様子が思い起こされるような気持ちになる。
よくよく考えれば、スカイライン譲りのスポーツエンジンにシルビア譲りの足回り…非常に贅沢な組み合わせだ。
■室内、ユーティリティ
インテリアは当時のハイソカー路線とは一線を置いた、茶色基調で欧州調のジャグアーを意識したような内装である。
特にインパネは非常にスタイリッシュ且つ、素材を吟味したであろう上質なもので、デザイナー畑出身の佐渡山氏らしく、非常に凝った様子が伺える。
パネルには樹齢150年~200年の南米産のローズウッドを使用、このクラスにしてはまず考えられないであろう本木を使用している辺りにワンクラス上の質感を感じさせる。
実際に当時の同クラスではホンダインスパイアの最上級グレード、ギャランAMG位のもので、それ以上のセルシオやレジェンドのLクラスでやっと使用されるようなものであった。
さらに高級感を一層引き立てるのが、アナログ時計で、この辺りにはマセラーティからヒントを得たのかもしれない。
現在、やっとこのクラスでもこのようなアナログ時計を採用して高級感を向上させた車種があるものの、ローレルは20年前に採用していた辺り、佐渡山氏の拘りが感じ取れる部分であろう。
また、パッセンジャー側は前方がソフトパッドで覆われているのだが、コレは包まれ感を意識したであろうもので、実際に室内の質感向上に一役買っていてとても好感的だ。
ただ、残念なのはコンビネーションスイッチのレバー類の変色、エアコン吹出し口の変形で、この辺りはこの時代の日産車共通の悩みのようだ。
運転席はメダリスト25Vなるとパワーシートが標準装備される。
実際にポジションの微調整が可能な点は良いのだが、モーターを組み込んだ結果なのか、シート座面が一番低いポジションでも手動式に比べると明らかに高く、違和感がある。
自然なシートポジションを得たいのなら、実際のところ手動式の方が良いようだ。
助手席側は手動なれど、非常に凝った構造で、パートナーコンフォタブルシートと呼ばれるこれは、リクライニング時に座面も連動して動くと共に、シートバック上方がリクライニングとは別に最大で30度傾斜する機構を装備する。
実際にコレは非常に快適なもので、長距離走っても疲れないらしい。
らしい…と言うのは、運転手はボクだ状態であり、コレは今まで助手席に乗った者の意見である。
一つ問題があるとすればフロアが構造上の都合により、フラットで無いことであり、乗員によってはフットスペースに不満があるようだ。
コレに対して後席は非常にオーソドックスな作りで、さして特筆すべき点は無い。
それにしても、このクルマは見た目とは裏腹に、完全な2+2シーターであり、後席は足元のスペースが非常に狭く、実質のところ、4ドアのクーペと思って良い。
このクルマで大人4人が長距離移動するには残念ながら少々苦しいものがある。
トランクは底こそ浅いものの、奥行きはあり、実際に荷物は通常の生活を考えれば十分次第点である。
特筆すべき点はスペアタイヤトランク左側に設置されており、万が一の使用時でも、トランク内の荷物を降ろしさずに使用出来る点は非常にうれしいところである。
実際に使用頻度こそ低いものの、緊急時は一刻を争う場合もあり、そのような時には非常に有り難味を感じるだろう。
■装備、使い勝手
特段変わった装備も無いのだが、このグレードにはクルーズコントロールが装備されている。
コレは非常に便利で、実際に長距離移動に使用した際はかなり快適で必須とも言いたい装備だ。
ちなみに80km/h定速で使用すると、リッター辺り14.5km、
100km/h定速でリッター辺り12km位で走ることが出来る。
トランクオープナーはメダリスト25Vの場合、電磁式で、レバーで引っ張る場合のものと比べ、開閉は容易である。
一つ注文するならば、スイッチがもう一回り大きく、プッシュ式のものにしていたならば、ツメの長い女性でも容易に開けられたであろう。
今となっては時代を感じるものであるが、この車両はアクティブスピーカーが装備されている。
実際のところ、音質はなんとも言えず、所詮純正ではある。
また、この時代の日産車は、上はプレジデントから下はフィガロまで、専用のマスターキーが装備されている。
これは非常に所有する上で、特別且つ満足感を感じるもので、このような演出がこの時代特有のニクイとことではある。
■総括
計8年、4台に渡り、このクルマを所有してきている訳だが、当時の筆者がこのクルマにした条件は以下の通りである。
・憧れていた車種のうちの1台
・ピラーレスハードトップ且つ格好の良いスタイリング
・品の良い内装
・当時はVIP系ブームだった為、この手のセダンは女性ウケが良かった。
・安い、且つ解体屋で部品が豊富
・カスタマイズする場合、走りも出来れば、VIPも出来る為、途中で飽きた場合路線変更が可能
・気合の入った時代の日産車
思い出すだけでは上記のような非常にナンパな考えから所有を始めた。
しかし、所有をしていくに辺り、このクルマと刻む思い出は、年輪の増す木のようなもので、年々愛着が増して行くもので、このように長期に渡って乗って行くものだとは意外であった。
実際に数々の車種を所有したとしても、やはり一番座ってホッとするのはクラウンでもマークⅡでも無く、ローレルのコックピットであり、それは今後も変わらないであろう。
最後に、このクルマは他人には勧めたく無い1台である。
燃費は悪く、故障も多い、税金も高ければ、室内も狭いものであり、さらには当時に筆者が所有し始めた時代と違い、価格もそこまで安く無く、また部品も少ない。
そして女性受けも悪く、現在は「レクサスですか?」と聞かれればまだマシで、「どこのメーカーですか?」と聞かれる始末であり、まさにライバルのマークⅡ3兄弟と兵共が夢の跡状態である。
但し、本当に憧れであった、または所有したいクルマであるのであれば、これほど夢中になるクルマも珍しいもので、好きな人にはたまらないはずだ。
過去に、「ローレルを乗り継ぐ人が多いのはなぜだろう」というCMがあったが、実際に夢中になれば乗り継ぐケースが多い。
筆者がまさにそれであり、これまでも、そしてこれからも所有し続けて行くであろう1台と思われる。