今回はプリウスPHVの代車として、アクアを借用した為、ココにレポートしようと思う。
■概要
2011年にトヨタ自動車東日本より生産され、販売されたトヨタのラインナップ上ではヴィッツと並ぶセグメントのコンパクトカーである。
このアクアは発売と同時に日本の自動車マーケットでは爆発的に売れまくった経緯がある。
この背景に切っても切れない一部に、遠く離れた九州の地からでも大きく感じることが出来た、東日本大震災からの復興に向け、このアクアに注力したトヨタ自動車東日本の方々のマンパワーの気迫が込められた1台だと思っている。
勿論、多くのアクアユーザーはトヨタが発表したHVカーの1台として購入しているのかもしれないが、このクルマから少なくとも筆者は上記のマンパワー…すなわちアクアを起点に東北の経済・生命力を1日でも早く発信しようとワールドワイドにアピールしたトヨタマンを代表に、東北の人々のメッセージが込められた1台だと思っている。
発売から早くも7年が経過し、モデルライフ的にはやや古臭い点も見られなくもないが、その当時のパワーを今をも感じる1台である…その証拠として未だに国内月別販売台数の1、2を争っているのだ。
売れるからにはユーザーニーズやパッケージングは勿論、そのようなメーカーの熱意も少なからすの理由があると思う。
今回の個体は平成29年式で中期のラストモデル、恐らく代車として後期にマイナーチェンジした際の在庫車を代車にしたものと考えるのが妥当か。
走行距離は10000kmで、各所に馴染みも出ており、ベストコンディションと言える個体である。
■外観・パッケージング
・全長×全幅×全高(mm)=3995×1695×1455(mm)
スペック上から察するに全長×全幅の比率はかなり考慮された形跡が分かる。
特に全長は4mをギリギリ切る為にフェリー料金でリーズナブルになり、全幅の1695mmはこれまた5ナンバーサイズを死守し、ワールドワイドに発信しながらも、日本国内のユーザー層まで考慮した結果と言えるのではないだろうか?
そしてそのサイズの中で中々にスタイリッシュなデザインをしている。
燃費を追求する余りにスタイリッシュになったものの、センターピラー上部を頂点として、そこから下がって行くルーフラインは明らかに後席居住性を犠牲にしている為、現在ではこの点を重視するならヴィッツハイブリッドをメーカーとしても販売したいのだろう。
ディテール上での特徴としては、今回の個体は中期だが、アクアはマイナーチェンジ毎にヘッドライト下端のデザインがスッキリとして行き、筆者としては最新のアクアのヘッドライトが一番カッコイイと思っている。
また、一見単純に思えたルーフパネルだが、空気の流れを考慮したのか、独特なプレスラインが入っている。
とにかく低燃費を考えた結果なのだろうが、なんともストイックなモノだとも思う。
■室内、ユーティリティ
前席は外観と反し、日常使用において不満の無い広さを確保している。
シートはエントリーグレードのLの為、ヘッドレスト一体のハイヴァックタイプだが、このシートも適度なクッション性があり、通勤程度の使用であれば何の不満の無いものであった。
インパネ周りは登場から7年を経過しているが、未だに古さを見せない近未来的なデザインである。
しかしながら、エントリーグレードとは言え、余りにもプラスチック感が否めない。
後日、奇遇ながらこの個体より1つ上のSというグレードに乗ったのだが、ソチラはソフトパッドが部分的に覆われており、質感がグンと向上していた。
やはりトヨタはいつの時代もそうなのだが、この辺りの造り分けに長けたメーカーなのである。
インパネは奥行も適度、そして視界も予想に反しこれまた広々としており意外と取り回しも良い。
敷いて気になった点を言えば、エアコンのセンターベンチレーターがやや小ぶりな点だ。
もう少し大きくていかにも風を送るような形状のにしないとコレではスポット的にしか風が回らないのではないだろうか。
せめてサイドレジスター位に思い切った容量が欲しいと思う。
そして今回のLグレードに関しては、助手席側パワーウインドゥがオートでは無くなるどころか、なんと後席は昔ながらの手回し式なのである。
参考に、18歳の女性に見せたところ、「軽トラックでしか見たことがない」という、ジェネレーションギャップを感じるワードを頂いたことを付け加えておく。
メーターは言わずもがなセンターメーター方式。
最近の車種にしては珍しく、液晶画面は無く、昔ながらの蛍光管方式である。
肝心の視認性は適度なものであったが、平均燃費表示に関してはREADY ON状態からのデーターしか表示出来なかった点がやや惜しい。
給油後平均燃費の表示にした方がありがたいように思える。
そしてインパネ一等地には2DINのオーディオ、ナビスペース。
その右にハザードスイッチを上段に、メーターのオド・トリップスイッチ、時計の時間調整スイッチと続く。
どのスイッチも大きさは適度であると共に、リーチの範囲内にあるので操作性で気になる点は無かった。
その下にエアコンパネルがあるのだが、温度調整がダイヤルになっている点は非常に使い勝手が良い。
運転席の視線から見てもスイッチ類はスラントしている為、操作性は良い。
欲を言えば、風量・風向の調整もダイヤル式にして欲しいところである。
インパネ右側はスマートキー装着車であるならプッシュスタートボタンのある箇所ではあるが、Lグレードはオーソドックスな鍵なので、ブロックオフプレートで塞がれたデッドスペースとなっている。
ステアリングはトヨタ曰く「ユニバーサルデザイン」を謳った非円形のステアリングである。
合成皮革巻きでもない、ただの硬質樹脂で構成されたこのステアリングの触感は単純に硬質としか言えないものであり、お世辞にも触感が良いと言える内容ではなかった。
しかしながら、写真で見た感じでも一瞬で判断可能な楕円形ステアリングに起因する違和感は感じることが無かった。
実は後述しようと思いつつも、この項で余談ながらレポートすると、ステアリングフィールに関しては遊びが大きくヨー応答性にはやや乏しいものであった。
また、タイヤが起因するものなのか、またはパワステ制御が起因するものかもしれないが、右に操舵する時よち左に操舵する際の操舵力が気持ちながら軽かったのが印象的だ。
最も、この辺りは個体差や左右輪の空気圧も影響してくる為、参考にして頂きたい所存である。
そしてセンターコンソール下端に集中するスイッチ類にはトラクションコントロールのオフスイッチや、HVモードへの切り替えスイッチが装備されていた。
これらのスイッチは使用頻度こそ低いものの、、もう少々設置個所に有効な点はあったのではないだろうか?
前席両側にはバニティミラーが装備される。
しかしながら、あくまでミラーのみであり、照明の類は装備されていない辺りに上級車との差別化を感じるのである。
ステアリング前方に目を移すと、底が浅く、とりあえず小物を置いてくれと言わんばかりのトレイが用意されている。
当然、物入れにしか見えないのでユーザーは気にせずココに何かしらを置くだろう。
しかし、万が一の衝突時に底の浅いトレイに置いた物が飛散しケガの元となっておかしくはない。
コストも大事かもしれないが、せめてフタを設ける位の良心が欲しい。
助手席側に目をやると、これまたエアバッグ装備部下端に物入れが設けられているが、ココも同様である。
エアコンのサイドレジスターは往年のイタリア車を彷彿とさせる円形である。
確かにフルシャットが容易で使いやすく合理的。風量も十分だ。
それにしても、このクルマは安全についてはどうもコスト優先で無頓着なのであろうか?
今時には珍しく、軽自動車でさえ装備されているシートベルトショルダーアンカーすら無いのである。
グレード別装備なのであれば、こんなところを削るべきではないと思うのだが。
次に後席のドアを開けると、前述の通り今回のLグレードではパワーウインドウですら未装備で、これまた今では中々お目に掛かれないレギュレーターハンドルがある。
そしてこの辺りにも割り切りが見られるが、前後席ともドア上部のウェザーストリップはクリップが入って固定されているだけである。
通常、他のトヨタ車ならドアウェザーをハメ込む為のレールが設けられているのだが、ココをクリップのみで最低限の性能を確保している辺りに、見えない部分まで徹底的に他のトヨタ車と徹底的に割り切ってコスト計算していたりするのだ。
後席は写真の通り平板の物。とりあえず1時間程度の移動なら座るコトの出来る性能である。
試しに中央席に座ってみてもフロアがフラットな為、意外と座るコトは可能である。
しかしながら空力を考慮して斜めに下がったルーフライン故に慎重168cmの筆者で頭上にはコブシ1つ分のスペースしか無かったのである。
コレでは慎重175cmの人でギリギリ、180cmならヘッドライニングと接触、または閉鎖感がさぞかし大きいコトだろうと思う。
アクアの後席はあくまで隣町まで移動する為のエマージェンシー用だと思った方が適切だろう。
ちなみに、リア中央席のシートベルトは、天井中央を支点にセットする最近のクルマでは主流なタイプである。
実際に装着した感じではこのようになる。
装着して座ってみた感じも悪くはなかったが、実際に右リア席に人がいた場合、ベルトが右リア席の人の頭や肩に触れ、お互いに不快になりそうな気がするのだが…。
尚、後席用装備はかなり割り切られているが、辛うじてカップホルダーが2つ分設けられている。
ラゲージは見た目と反し、奥行きはあるが、これまた傾斜ルーフの影響で天地がやや厳しい。
この辺りの実用性はやはり今となってはヴィッツハイブリッドに軍配が上がるだろう。
そんな天地にやや厳しいラゲージスペースだが、スペアタイヤが装備されている辺りには良心を感じる。
昨今はパンク修理剤を搭載している車種が多い中、普段は重量物となってがいるが、やはり安心且つ信頼感が高いのはスペアタイヤだと思っている。
■動力性能
今回代車としてやってきたアクアLに搭載されるエンジン及びモーターは以下の通り。
1NZ-FXE…直列4気筒1500ccハイメカツインカム、74馬力、11.3kg-m。
1LM…61馬力、17.2kg-m。
この2つを合わせたシステム最高出力は100馬力。
車両重量は1050kgなのと、モーターによる加速力はかなりのもので、意外とアクアはこのスペックの予想を反してかなり軽快に走って行く。
街乗りから高速走行までストレス無く加速して行く辺り、最早スペックは昔ほどの参考にはならなくなっている。
スペックだけで見ていても分かりにくくなったのが最近のクルマの動力性能だと思う。
なんだかんだ書いてはいるが、ふと目に入って何か分からなかったものがある。
スロットルとエキゾーストの間にあった為、なんとなくEGR関係(排気ガス再循環装置)だとは想像こそ付いた為に調べてみたところ、どうやらコイツはEGRクーラーなる物らしい。
どうやらエキマニから戻されて高温になった排気ガスを冷却水が流れるこの弁当箱を通すコトにより温度が下がりインマニに再度流される(吸気温度は低い方が効率がイイ)ようである。
確かに当たり前かつ合理的な機構かもしれないが、このような技術を思いつく方に心底感動してしまう。
しかもそのようなテクノロジーを僅か170万円だかの小型車に採用してしまう。
このクルマは割り切られた車内装備と背反し、普段は気付かないこのような機構を織り交ぜているのである。
「車内装備代」というよりも「技術代」と考えると納得しそうになるが、シートベルトのショルダーアンカーを中心に「安全」を削るのはまた別ではないのだろうか。
コレに組み合わされるミッションはプリウス譲りの無段階変速機(CVT)なのだが、エレクトロシフトマチックのプリウスとが違い、一般的なゲート式に改められている。
実際にプリウスPHVオーナーである筆者も所有して更に思うが、やはりシフトはゲート式が分かりやすく適切である。
エレクトロシフトマチックなんてのは見た目のインパクトのみを狙ったものであり、使い勝手は全く持って宜しくはないのである。
直観的にも使い勝手でも便利なのはやはり旧来ながらのゲート式であり、技術者のエゴとも言えるような不条理なシフトレバーなんてものは不必要である。
アクアにしてもプリウスにしてもそうだが、紛らわしさを更に増すのが「B」レンジある。
クルマに興味がある、この「みんカラユーザー」からしたら信じられないかもしれないのだろうが、バックは通常「R」レンジである。
しかしながら、デイリーユーザーの大半は自動車に興味すら無いのは当たり前のコトである。
なので、「Bレンジ」は「バックのB」と思いBレンジに入れ、予想と反し車両は前進し前方の車両や障害物に向かい突っ込んで行くのが昨今のシフト入れ間違え事故の一般的なケースである。
実際に人や車両、設備が周りに無い広場へと移動し、写真のように実験をした。
DOS(ドライブ・オーバーライド・システム)
つまりはスロットルを開いたままたシフトをNレンジからRレンジ、又はDレンジに入れた際にエンジン回転数の上昇を抑制し追突を防ぐシステムを装備している。
コレはアクセルペダルとブレーキペダルを同時に踏んでしまった踏み間違いにも有効である。
但し、コレも保険的な装備…寧ろこのような装備が作動する時点で運転するコトを考えた方がイイとも思う。
敷いて言うのであれば、このように分かりにくいシフト配置やRやBを勘違いしてしまうメーカーにも責任があるのではないのか?
筆者として思うのは、ここは日本なのだから法整備なりなんなりしてシフト位置を漢字表記にしてもいいのではないのだろうか?
Rを「後」、Bを「微減」…なんて表示をしてもいいのではないのか?
足回りに関しては、フロントがストラットでリアがトレーリングアーム式という、このクラスでは一般的な機構。
タイヤは横浜ゴムのブルーアースS73。
サイズは165/70R14 81S。
やはりバネ下が軽いだけあり、動きはソコまで悪く無い。
適度にいなし、適度に動き普通な印象である。
しかしながら、遮音材が最低限であり、ロードノイズがやや大きく、日常での速度域においてもややフロア振動が目立つ傾向があった。
最もコレはタイヤの性能云々よりボディの構造的問題だと思う。
参考までにおおよそだが燃費は3日間使用してリッター辺り約26km。
JC08モードとは程遠い&実家の1200ccターボのゴルフⅦがリッター辺り19km辺りを記録するコトを思うと、コレと言ってアクアが優れているというのはやや言い難いとも思う。
実用性を犠牲にして数値を追求しての結果がこの数値だということを考慮しての数値がコレなのである。
勿論、ユーザーにより求める箇所が違う為、どちらが正しいや合理的やらの意見はそれぞれの為参考としておく。
参考までに、筆者が後席中央より車両中心部で騒音を測定。
運転手には20歳男性をパネラーとし、片側2車線の道路で制限速度限界の50kmで走行。
周囲には最低でも前後20mに他車両は走行していなかったもの。
左横方向30m位に高さ20mで5階建ての団地が建立している場所にて、シャープのアクオスR2を使用し、音量測定アプリにて測定。
結果は50km/hで平坦なアスファルト面を走行し63dbであった。
参考地とは言え、1500ccクラスのハッチバックでこの数値は妥当ではないかと思っている。
高遮音性ガラスを搭載した上級グレードでは、気持ちながらかもう少々静かなのではなかろうか。
■結論
デビュー当初より気付けば7年が経過するアクアではあるが、気付けば街中ではこのクルマが走る光景が日常となっている。
賛否は多々あるかと思うが、このクルマは実用性を2の次とするとスタイルは必ずしも悪くはないのだが、もう少々実用性を考えなかったのだろうか?
燃費という一つのスペックを重視した結果がコレであり、多くのユーザーはその数値だけを目にして購入した感じが漂っている。
メーカー自信もこの辺りは計算の範囲か、合理的な結果で出来たのかもしれないスタイルを売りには全くしておらず、結局のところ、ユーザーの中で印象に残ったのは「燃費」というキーワードだけである。
果たして次期アクアをメーカーはどうしたいのであろうか?
メーカーとしては「燃費」というキーワード・数値で売っただけであり、実際に次期モデルでのアピールポイントで悩んでいるのではないだろうか?
勿論ユーザーとして臨むのは「燃費が従来モデルよりもイイ」という1つのキーワードを望むのが大半なのであろうから。
この辺りは「ハイパワースペック」を売りとして80年代の名車だなんて語り継がれる車種のジレンマと同様ではないだろうか?
実際に日本車で永く続いている車種は「伝統ある高級感」や「永遠のベーシックカー」なるセンチュリーにクラウンやカローラなのだから。
センチュリー、クラウン、カローラがこのように代々続く理由は、数値に表れない付加価値があるからであろう。
すなわち伝統や数値に表現が出来ないイメージなのだから。
大してアクアは「燃費」というあからさまに数値で表現が可能なイメージでネーミングの年輪を刻むしかないのだから、エンジニアは常に「燃費」という数値で応えるしかないというレッテルに貼られるしかないのだと思う。
コレはアクアの親分のプリウスも似たような感じあるのだが、プリウスは燃費を追求すると共に時代の先進装備(燃費に加え環境というキーワードが有利か)を追求する辺り、まだアドバンテージがある。
アクアは親分のプリウスと相対して「燃費」でしか現状ではカラを破れないと言うことだ。
単体で見れば平均点な1台ではあるのだが、今後の未来を見据えるとアクアに課せられた使命はかなり重いコトだろう。
現状、月間販売数ランキングで上位ではあるが、このままで安泰ではない1台だとも思う。
新型には我々をアッと言わせる付加価値が欲しくなる1台だと思われる車であって欲しい。