概要
この度、長期テスト車、GX61マークⅡセダンに代わり一時的にやってきたL600ダイハツムーヴ。
登場から15年の節目となる今回、改めてムーヴの原点となるこの初代L600ムーヴを再評価してみた。
ムーヴの原点にその後のヒットとなる要因がどのくらい隠れているのだろうか。
スタイル、サイズ
全長3395mm、全幅1395mm、全高1620mm、ホイールベース2300mm。
軽自動車規格を目一杯に使ったサイズで、このサイズながら1.5リッターサイズに匹敵する居住空間を確保する。
デザインはイタリアのデザイン会社I.DE.Aとの合作で、フロントバンパーからAピラーに繋がるキャラクターラインを特徴とする。
ライバル車のスズキ・ワゴンRに対して、登場は2年程遅れているが、実際のところ開発はムーヴの方が先らしく、当時はまだ未知数だったこの手のトールワゴン市場に躊躇せず先に発表したスズキの決断は素晴らしいものがある。
しかし、ワゴンRの後発らしく、使い勝手は非常によく研究されており、横開きのハッチドアは初代からのムーヴのアイディンティティとなっており、今日まで続くダイハツのヒット作となっている。
動力性能
今回のテスト車は直列3気筒ツインカム12ヴァルヴ、659cc、3速オートマチックを搭載するグレードを提供していただいた。
エンジンはとても活発なもので、この手の車重の大きい車体をターボ付で無いにも関わらず、非常に軽快なペースで引っ張って行くもので、街中を快適に気持ちよくスムーズに走ってくれるのである。これには心底驚いた次第である。
しかし、惜しむらくはこれに搭載される3速ATの使い勝手が非常に悪く、理想通りのギヤ比が使われていない感があり、静粛性に欠ける。
エンジン回転数は60km/h時に3500回転、100km/h時に5500回転。
これだと非常にエンジンから車室内への透過音が大きく、乗員全てに疲労感を与えさせる。
当然の如く燃費も悪い。
このクルマに乗るならば、5速マニュアルで乗るのがベストだと言える。
当然ながらメルツェデスやジャグァーなどには及ぶまでも無く、例えアクセルを全開で踏もうと相手は一瞬で横から消えて、お星さまとなるだろう。
操縦性、乗り心地
このクルマは車体から想像するより遥かにソフトな足回りだ。
しかし、これが図らずしも良いと言うことでは無く、低速でのコーナー時でも乗員が大きなロールで投げ出されるかのような感覚があり非常に不愉快である。
それは、ブレーキング時でも例外では無く、少々強めのブレーキングを行なっただけで、乗員は前に投げ出されてしまう。
乗り心地を重視し過ぎた挙句、これだけの動力性能を持つこのクルマは、咄嗟な時の緊急回避が非常に恐ろしい。
少々コストを掛けてでも、ショックの減衰力を上げ、スタビライザーの径を太くした方が、遥かに良いと思うのだが。
これと同時にブレーキの改良も望まれる。
この手のクルマは基本、移動手段として使われるクルマなので2名乗車までだと気にはならないが、3名乗車になると同時に、非常にプアな感じとなり、実際に予想以上の制動距離が必要となった。
初期制動は非常に良い感じだが、その後のブレーキタッチについては少々改良が必要かと思われる。
居住空間
今回のL600ムーヴはこの手のトールワゴンとしてはまだ初期段階のクルマで、室内高に対して着座位置が非常に低すぎる感がある。
着座位置をもう4cm程アップするだけで、遥かに先の見通しが良くなり、運転するものに安心感を与える。
後席についても同様で、前席と着座位置がそれ程変わらず、もう一歩工夫して前席より2cm高くしても良かったのではないだろうか。
それだけで前が見渡せるようになり、乗員の圧迫感を抑えると共に、安心感も与え一石二鳥である。
このクルマはこれだけの室内空間を持ちながら、パッケージングが非常に下手で、この低い着座位置と相まって、とても無駄な頭上空間が発生してしまう。
これだと、ガラス面積がとても大きなものとなり、重心が高くなってしまう為、安定感に欠けるだけで無く、燃費も落ちてしまう。
さらにエアコンも効かず、悪循環ばかりである。
個人的には全高をあと7cm短縮するだけで、とても良いクルマに仕上がると思う。
コストも下がり良いこと尽くめだ。
感心するところは、収納に関して非常に精巧に考えられており、使いたいものが手の届く範囲にあり、とても重宝する。
それに加え前後席共に、足元の空間が広々としており、このような使い勝手の良さが後に続くムーヴのヒットの要因と思われる。
<写真>
L600ムーヴのインパネはL500ミラのインパネに専用のパネルを継ぎ足したもので、これだけで室内の広々感が生まれている。
インパネを共用することにより、コストダウンも可能となり、非常に良く出来たものとなっている。
<写真>
後席の足元空間も写真のように余裕である。
足元にコーラが落ちているが、それは気にせずに見ておくべきだと思う。
写真のコーラはディーラーオプションでも設定されず、最寄りのスーパー、コンビニ、自動販売機で購入が可能だ。
コンビニで購入する場合はセブンイレブンが他店より25円安い125円で購入できるので、セブンイレブンがオススメである。
結論
内容に酷評が多いかと思うこのムーヴだが、全体的に見れば非常に良く出来たクルマで、車種に拘りを持たないのであれば、これ1台でベストだといえる。
動力性能、足回り、室内空間、どれにしてもそうなのだが、街中をゆっくり流すのであればこれらは全く気にならず、敢えて評価するとしたら前述の点がマイナスと言えるだけだ。
普段の足として一度乗ってしまえば、このクルマが現在までヒットした理由が手に取るようにわかってしまい、このクルマだけあれば普段の生活において全く支障が無いとつい思ってしまう。
そう考えてしまうと、現在のクルマの主流が、このようになったのも致し方ないところではある。
<写真>
ぽくろ氏のムーヴと並べて撮った一枚。
ぽくろ氏がいつも我が家にやって来る時は全く何に乗ってくるのかが予想が点かない。
尚、ぽくろ氏のムーヴは雪すら無いのに常時スタッドレスという、大変漢仕様である。
Report : 特大痔 イボ恒