この度、我が家にやってきた比較的マトモな平成車。
今回は200km程度使用してみたところで色々と感じたことをレポートしてみようと思う。
■概要
2004年に実質的に老舗であったサニーの後継車という位置付けで世界戦略車として登場したのが今回レポートするこのティーダである。
ボディバリエーションは一般的な5ドアハッチバックと、登場後1ヶ月後に追加された4ドアセダンのティーダラティオが存在する。
この手のCセグメントクラスの中でも特に日本市場ではマーチ・キューブ等で使用されるBクラスプラットフォームを使用しつつ、高級感を出した素材や豊富な装備を追加することにより、上質感を出すことを特徴としている。
上記のようなプレミアム感と日本市場でも扱いやすい5ナンバーサイズであること等の様々な要因が寄与し、登場から8年が経とうとしている現在でも新車で購入可能なロングセラーモデルであり、又、世界で最も売れている日産車ということもあって人気のモデルでもある。
■パッケージング、スタイル
全長4205mm、全幅1695mm、全高1535mm昨今のこの手のクラスの中では日本市場を意識し、5ナンバーサイズの全幅を特徴としている。
実際に日本国内で取り廻すのはこのサイズがとても使いやすく、ライバルの3ナンバーコンパクトに比べると格段に運転が容易なことが利点である。
また、全高も高すぎず低すぎず正に「適度」という言葉が最も似合い、タワーパーキングにも駐車可能になっている。
スタイリングは登場から8年が経過した為、昨今のライバルと並べるといささか地味な感も否めないが、長年所有して使用する上では飽きやすいスタイルでは無く、満足感の持てる物となっている。
また、フロントピラーがライバルに比べ、比較的細く、また寝ていない為、非常に見切りも良く、乗降性も不満の無いものだ。
昨今の車種は一貫として安全性とボディ剛性を確保する為に非常にフロントピラーが太くなっていて、そして寝かせてあるものが多く、実際に様々な車種を運転する機会があるのだが、酷いものだと、あまりの太いピラーが妨げとなり、交差点で歩行者や車両が消えてしまうケースが多々ある。また、乗降性も悪く頭を打つ車種まである。
実際にピラーが死角となり、実際に歩行者と接触してしまったケースも廻りの人間でいたのだが、コレに関して一切メディアが干渉してこないのは甚だ疑問に思う。
■動力性能
エンジンはHR15DE型、1498cc、109馬力15.1kg-mである。
スペック的には大したこと無いのだが、コレに組み合わされるCVTが中々の出来で、2000回転も回していれば街中では十分にリード出来る性能を確保している。
さらに燃費も中々なもので、片道20kmの通勤でリッター辺り14.5km位であれば軽々と走ってしまう。
但し、ゴー&ストップの多い市街地では少々燃費が悪く、リッター12km位と考えて頂きたい。
少々残念なのは登坂時ではパンチが少々足りず、3000回転以上回すことになるのだが、残念なことにそれ以上だとエンジンが唸るだけで、またフィーリングも一気にガサツになる。
また燃費向上の為か、CVTの制御が少々雑で、20km/h以下の速度になると突然エンジンブレーキが抜けるような感覚になる。
コレに関しては慣れだとは思うが、初心者や高齢者の方が運転した場合少々冷や汗をかくかもしれない。
足回りに関しては、スカイラインで使用されたリップルコントロールダンパーというものを使用しており、綺麗な舗装面でフラット感が大きいものの、荒れた路面に入ると小刻みな突き上げが鼻に突く。
しかし、マーチをベースとしたBプラットフォームを使用したことを考慮すると十分に次第点であり、ティーダのキャラクターから見るとそのように感じるというとこであろう。
パワースティアリングに関しては、電動式を採用しているのだが、マーチ・キューブと比べると格段に進化している。
それでも油圧式と比べると操舵力にもうひと工夫欲しいのも事実であり、フィーリングも油圧式には及ばない。
■インテリア、使い勝手
インパネのデザインは非常に見切りの良いものであり、素材に関してもソフトパッドはシーマと同様の弾力性であったりと吟味されたものを使用している。
また、ヘッドライニングにもフェアレディZと同様の素材を使用していることもあり、このようなところにひとクラス上の上質感が現れているポイントである。
但し、室内各部の建付けに関してはやはりそこは日産クオリティであり、各部ピラーの隙間や段差はアラがかなり目立つのが残念である。
このクルマの最大のポイントと言ってよいのはやはりシートで、ティアナと同サイズのものが使用されている。
弾力性、サポート感共に優れ、また姿勢が適度に保たれる為に長時間運転しても疲れないのは実に素晴らしく、実際にLクラスセダンのものより良かったりする。
さらに開発者の苦労が見られるところが、シートのリフター及びリクライニングレバーを車両中央側に設置しているところである。
これに関しては、ティアナ同様の幅を実現するに辺り、シートをいかにして車内に適切に設置するかと検討したが故に出来た産物である。
一つ注文と付けるとなれば、シートのサポート部にアキレス(株)と開発したカプロンという人工皮革が使用されているが、この素材が耐久性に貧しく、破れやすいという欠点がある。
この辺りは次期モデルで検討して市場に還元して欲しいところである。
ティーダのさらに凄いところはこのシートの性能を後席の乗員にも均等に配備されたところで、この手のコンパクトカーにありがちな後席の補助席感覚を一切無くしたところである。
実際に大柄な人間が着座しても十分にスペースがあり、またリアシートがスライド&リクライニングするのも特筆ものである。
筆者の身長は168cmだが、このように後席の乗員が足が組めるコンパクトカーというものはありそうで少ない。
コレはシーマ同等の室内長を実現したところによる起因がとても大きく、またその相乗効果は以下にも表れる。
このようにリアシートを最大限後方にセットした場合でも、十分にトランクスペースがある。
この辺りは昨今の室内長ばかりを謳った軽トールワゴンでは絶対に出来ないことだ。
また、リアシートを最前方にセットした場合はウイングロード同等の荷室長を確保出来るのも凄いところである。
と、このように褒めるところが多いクルマでもあるが、問題点が全く無い訳ではない。
一番の問題はこのナビゲーションシステムで、2005年製でもあるに関わらず、DVDビデオ再生機能が一切装備されておらず、またスイッチ類の操作性が非常に悪い。
実際に使用しようと思えど、スイッチ類が非常に複雑で機能を全て完璧に使いこなす人間が一体いくら存在するのか?と、言いたくなる。
また、折角のサイドブラインドモニターもスイッチの配置が非常に悪く、そして、元の画面に戻そうとしてもどのスイッチを押して戻ればいいのかわかりにくいのが最大の欠点だ。
さらに、このバックモニター及びサイドブラインドモニターは画質調整をいくらしても映りが全く鮮明ではなく、使いにくい。
日産らしくツメの甘さを露呈するものの一つである。
今回の車両はインテリジェントキー付きなので使用しているが、コレはなかなか便利である。
但し、デザインを重視したのか他社メーカーのものに比べ、ボタンは格段に押しにくい。
以下は個人的意見だが、このようなインテリジェントキーが便利なことは認めるが、どうもドアは鍵で開け、エンジンで鍵で始動する方が、今からクルマを運転するのだという意識が付くような気がする。
なんとも安易でこれではまるで今からゲームを始めるような、なんとも車の運転を舐めて掛かっているような気がしなくもない。
クラシックカーよろしくクランク棒でエンジン始動の儀式をしろとまでは言わないが、これでは余りにも素っ気ないではないか…。
■結論
上記のように、運転の意識に欠く物に瞬間及び平均燃費計が装備されているのだが、これもまるでゲームのようにいかにもハイスコアを狙う感じで、ついついモニターに気が入ってしまう。
確かに環境、エコに関しても大事なことは間違いないのだが、いかにも車を運転するというより、運転させられている気になったのも確かだ。
しかし、このティーダと言うクルマ、かなり煮詰められていて、よく出来ている。
昔のホンダ車で良く言われていた言葉のひとつに「マンマキシマム・メカミニマム」というものがあった。
ティーダはまさにそれであり、シートを見ればわかる通り、このクルマには、乗員全員が均等に、且つ快適に移動をして欲しいというメッセージが込められているように思う。
贅沢を言えばもう一つ、これにファントゥドライブの要素を取り入れたらコレはさらに素晴らしいクルマになると思う。
それはただ単に、ハイパワーエンジンを投入したりすることでは無く、さらにフラット感を与え、路面追従性を上げたサスペンション機構を備えるとか、ステアリングインフォメーションを上げるとかそのようなもので、低グレード、高グレード関係無く、運転がより楽しくなるものになればさらにこのクルマのキャラクターはより一層引き立つものになるだろう。
何はともあれこのティーダ、興味さえあれば低予算で大きな満足感が得られる、文字通り「良い買い物」と言える1台である。