先日、約2週間代車にてフィールダーを借りたので、以下にレポートしようと思う。
■概要
2000年に9代目となったカローラのワゴンシリーズ。
このモデルより、ワゴンタイプにおいては、サブネームとして「フィールダー」の名称が与えられた。
現車は2004年のマイナーチェンジ後の後期型で1800ccのエンジンを搭載したSというグレードである。
年式は平成17年式で、距離は5万km台半ばの個体だ。
生産は関東自動車工業(現:トヨタ自動車東日本)でされている。
■エクステリア
全長×全幅×全高=4410×1695×1520(mm)
日本のファミリーカーの代表格と言えども、全幅は5ナンバーフルサイズに達しており、従来のカローラをイメージしているとその大きさには驚かされてしまう。
今回の後期型は前期のデザインよりもフロント周りがかなり落ち着いた印象になり、落ち着き過ぎた…悪く言えば少々ジジ臭い感じとなってしまっている。
リア周りは大きく変更されていないが、ステーションワゴンのパッケージングとして考察すると、可も無く不可も無く、極めてオーソドックスなものだ。
この点、ライバルであるY11ウイングロードの後期モデルはやや先進的で突飛な感じではあるが、若々しさという面においてはウイングロードに軍配が上がる。
しかし、一見地味なこのカローラフィールダーではあるが、NCV(ニューセンチュリーバリュー)と謳ったモデルであり、従来のカローラのパッケージと較べると遥かに進歩が伺える。
特にその進歩は室内のパッケージングから見て取れるので、以下をご覧頂きたい。
■インテリア
インパネは視界がとても広く、運転が非常にし易い。
フロントフード先端が見え難いのが少々困るところではあるが、日常使用においてはそこまで気になるレベルでは無い。
オーディオをインパネの一等地に配置したり、エアコンパネルも比較的インパネの上部に配置されるなど、使用性は旧モデルよりも格段に向上している。
特に使用頻度の高いスイッチ等は、比較的大きく、そして扱いやすい場所にあり、凄く良い。
しかしながら、マイナス面もあり、この時期のトヨタ車はインパネが変形しやすい模様で、この個体も例に漏れず、早くもインパネ上面が少しずつめくれてきてしまっている。
使用性において特に頂けない面は、エアコン噴出口の上下及び左右の調整がこのようにダイヤルを用いて操作しなければならず、直感的な操作が非常にやりにくい。
またダイヤルが小さい為、夜間等はつい探してしまい、走る物という面においての意識が少々欠けている。
前席シートはトヨタ車としては意外でかなり造りの設計である。
骨盤から肩甲骨においてしっかりとサポートし、長時間の運転が苦にならないのである。
ドラポジも比較的すんなりと決められるコトが可能で、リフターは座面だけではなく、シートバックも同時に上下調整が可能なもので、設計開発時にかなり力を入れているのが分かる。
しかしながら、残念なのが、ステアリング位置がやや遠く、もう少々手前にセットして欲しい。
チルト機構こそあれど、テレスコピック調整が無いので、ペダルに合わせるとステアリングが遠くなり、また、ステアリングに合わせると、ペダル配置が上手くいかない。
リアシートは中々の掛け心地で、運転席よりも座面が高く、見晴らし良く座るコトが可能で、綺麗な姿勢で座るコトが出来る。
リクライニング機構もあり、快適に移動するコトが可能だ。
ライバルのウイングロードはシートの設計においては全く及ばず、リアシートの足元がかなり窮屈である。
パッケージングを大きく変えたこのモデルでは、室内高に余裕がある為、頭上空間も十分にあり、パッケージングにおいては素晴らしく良い。
ただ、リアシートにおいて一つ注文を付けるのであれば、センターのシートベルトが2点式であること。
そして、シートベルトを収納する窪みが無いというコトである。
コレでは使用の際に探さなくてはならないケースが出てきたりする。
■装備、ユーティリティ
装備に関しては、最早カローラとは思えない程に大変贅沢なものである。
パワーウインドウに関しては全席オールオート機能付きで、またスイッチの配置が良く、アームレストから手を置いた位置から自然と操作が出来る。
灰皿はインパネ下面に位置し、横に幅広い設計だが、開き角がやや小さいのが気になる。
その上部には小物入れが装備される。
メーターはこれまた贅沢なオプティトロンメーターだが、照度が適度で、明るくも暗くも無く、使いやすく仕立てられている。
フロントピラーのガーニッシュはプラスチックではあるが、質感があり、安っぽさを感じない。
今回の個体はスマートキーシステム付きだが、あくまでスマートキーが使用出来るのはドアの開閉のみである。
エンジンの始動は従来通りに鍵を挿してキーシリンダーを回すタイプとなっている。
いつも思うコトだが、キーレスに関しては、特に便利とは思えない。
それよりも鍵を使ってドアを開ける、エンジンを始動するコトは筆者においては日常茶飯事であり、また、鍵を使用することにより、これから運転をするという意味で気が引き締まるのである。
センターコンソールは2段式の収納となっている。
収納する物の大きさや厚みで切り分けられるのは大変便利が良い。
また、コンソール前部は仕切りつきのものとなっており、ドリンクホルダーも兼ねている。
便利なのが、仕切りを外すコトが出来るので、比較的大き目な物を収納出来る。
助手席のシートを前に倒すと、シートバックテーブルが用意されている。
使用頻度はそんなに高くは無いだろうが、あると何かと重宝するだろう。
ラゲッジスペースは写真の通り、非常に広大であり、沢山の荷物を難なく収納出来る。
しかし、筆者は特に何も積むものが無く、仕方なくクロックスを置いてみたりした。
デッキサイド左右にはこのように収納スペースがあり、洗車時に使用するケミカル類を納めるのに最適だ。
更にはデッキアンダーの前後にも収納スペースがあり、前部には傘なんて置くといいだろう。
プラスチック製なので、濡れた物でも収納が容易だ。
後部の方は前部よりも更に広大であり、着替え等を収納するのにも適している。
筆者はこのように特売品の肉と刺身を置いてみたものの、それでも尚余り有るスペースで申し分ない。
ちなみに肉は牛肉だが豪州産で、刺身のサーモンはノルウェー産である。
勿論、刺身や寿司等は、可能な限りラムーの19時半からの半額セールを狙い購入するようにしている。
ヒラのサラリーマンはこのような箇所で生活を切り詰めないとやって行けないのが実情だ。
そんな特売品を収納してラゲージドアを閉めようとするが、バックドアハンドルは写真のようにややお粗末な感じではある。
また、右側にしか用意されておらず、左利きのユーザーにはやや使用性が悪い。
■動力性能
エンジンは1ZZ-FE…直列4気筒1800ccハイメカツインカム、132馬力、17.3kg-m。
1150kgの車両重量と相まって比較的軽い動きなのもあるが、低速寄りに振られた出力が街中においては非常に扱いやすく、クセの無い動力性能である。
高回転に関しても十二分に回り、フィールも4気筒にしてはかなり良いものになっている。
コレに組み合わされるミッションは4速のオートマチックで、変速ショックが非常に小さく素晴らしいものとなっている。
欠点を上げるとすれば、発進時にわざとトルコンを滑らせて増幅させていることと、スロットル開度に対し、バタフライをやや大きく開ける小細工をしているようで、いかにもパワーがあるような演出をさせる傾向にある。
コレは小排気量車にトヨタがやりがちなセッティングで、パワーがあると思わせる反面、ドライバビリティを悪化させる。
また、シフトレバーを高級感を持たせる為にゲート式にしてはいるものの、3レンジ以下の操作が非常に不自然且つ扱い辛いものとなっている。
足回りに関しては、適度に硬くしなやか…ではあるのだが、ダンパーが微少ストロークに弱い傾向があるようで、リアシートに座った場合、舗装の良い路面でも細かな揺れが発生する。
前後席に言えるコトは、この際にフロアの微振動が終始発生する傾向にある。
コーナリングに関しては、非常によく粘り、前後のロールバランスも自然で扱いやすいが、ステアリングの切れ角に対し、比較的大き目のヨーが発生する。
ステアフィールはカローラにしてはやや重めだが、適度ではある。
しかしながら、従来のカローラを乗り継いできたユーザーや、高齢のユーザーにとっては少々違和感を覚えるかもしれない。
ブレーキフィーリングは平均的なトヨタ車である。
尚、燃費は常時エアコンONでリッター13.7kmであった。
コレはかなり優秀と言える。
■総括
メリット、デメリット共に述べてはいるが、総合性能は非常に良く、かなり気に入ってしまった。
現行トヨタ車含め、21世紀以降のトヨタ車ではトップランクに入る実力である。
機会があれば所有したいと思う程に完成度が高いクルマだ。
所感だが、このカローラを見た後に現行のカローラを見ると、各部の質感の低下やアラが目立つ。
要因として、開発時の景気により、コストの掛け方に違いが生じているのが一つ。
もう一つは、プリウスのヒットにより、トヨタの代表格が変わってしまったコトにあると思われる。
実際にこの時代のカローラのクオリティは、現行のプリウスに引き継がれ、カローラはワンランク落とされたような感じが出ている。
生産工場がよりコスト管理や生産体制に厳しいダイハツの工場に移管したコトもあるだろう。
今年、カローラは紆余曲折ありながらも、そのブランドネームにおいて50周年を迎えた。
嘗てはファミリーカーの代名詞だった一つの車種が、時代の流れとは言え、シニア向けのベーシックセダンと言っても過言では無いキャラクターになってしまったコトは非常に残念なコトだ。
コレからのカローラの生き残る道は、現在のイメージを切り捨て、世相をリードするような大きな進化が無いと厳しいと思うのだがいかがだろうか。