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2009年06月20日

ハイブリッド車をハシゴ試乗:その2「トヨタのプリウス3」

ハイブリッド車をハシゴ試乗:その2「トヨタのプリウス3」 2代目ホンダ・インサイトに試乗したついでに、3代目トヨタ・プリウスにも試乗してきた。
そもそも僕には、プリウスに対する先入観がある。以前Yukizoさんに聞かされた「2代目プリウスに乗る友人の話」で生じた先入観だ。「生意気なぐらい速い」「スポーツ・カーみたい」「とんでもない加速をする」などなど。正直、最初のプリウスにロクな印象がなかったため、2代目プリウスは一度も運転したことがないままにモデル・ライフが終わってしまっていた。「2代目がそんなにスゴかったんなら3代目はどーなのよ?」という思いもあって、今度は出遅れないようにさっさと試乗してしまおうという思惑もチラッとあったりした。

 前置きはともかくとして3代目を襲名したトヨタのハイブリッド専用車、プリウスである。確か昨日の新聞記事では、発売開始からの1ヶ月間での受注が、想定販売台数の1年半分に相当する18万台になったと報じられていた気がする。割高だとか生産から廃棄までトータルで見れば必ずしもエコじゃないだとか色々ネガティブな話も聞こえてはくるが、車としてはドーなのよ、と試しに乗ってみることにしたわけだ。

 どうしても直前に乗ったインサイト2と比較してしまうのだけれど、プリウス3はあちらと違って「安いんだし、まぁこんなもんか」ということがない。フル・スペック・ハイブリッド、なんでも取り揃えてございます、満艦飾デコレーション。さすが大店(おおだな)の商売だけあって、実に可愛げがない。

 エクステリアの雰囲気は、基本的に先代のプリウス2を踏襲しているので割愛するとして、展示車両を眺めていて「ありゃりゃ」と思ったのが添付写真のインテリア。僕は2代目は、タクシーの客として1度乗ったきりなのだけれども、2代目の近未来SFっぽい(いささか子供じみた)運転席周りが、3代目では随分と常識的な方向に回帰してきている。僕はあのSFの宇宙船っぽい雰囲気が嫌いじゃなかったので、少しばかり期待を裏切られた感じがした。まぁでも、あれは遍く普及させる車でやる演出じゃあないよな……。
 それはともかく、内装のプラスチックの部材には金属表面を切削加工したときにできるヘア・ラインのような紋様がモールドされていたりと、ゼニをつぎ込んだ「立派に見せる演出」がそこかしこに施されている。これが大店の余裕というものか。

 さて実際に走らせて見てどうだったか、なのだが。
まず、始動の段階からして「車って言うより家電製品?パソコン?」という感じ。リモコン式のキーは、車内に置いておくだけでOKで、そこでインパネ上のスタート・ボタンを押すとプリウス3は『作動状態』に移行する。普通、自動車というもんはスタート・スイッチをONにするとエンジンがかかるのだけれども、こいつは違う。停止からのゼロ発進のように効率最悪の帯域ではガソリン・エンジンを使わせない制御をしているので、電源が入っても車内はシーンと静まり返ったままだ。ちょっと怖い。

 メーター・パネルだけが「いつでも走り出せます、ご主人様」と言った風情で点灯しているプリウスの、なんとも奇妙なレバーを運転席側に倒して手前「D」に引くと、車は「前に進め」の状態になる。逆に奥の「R」に押すと「後退せよ」になるようだ。ちなみに運転席側に倒さず真直ぐ後ろにレバーを引く「B」は、ブレーキ・モードとのこと。エンジン・ブレーキと回生ブレーキをより積極的に活用して速度を落とす仕掛けなのだとか。

 で、まぁ「D」を車に命じて(という気分になってくる)敷地から車道に出るのだが、基本的に内燃機関の車にしか乗ってない僕には、静かな電気モーターだけで車が動く状況というのが、かなりおっかない。と言うのも、エンストしてハンドルやブレーキのサーボがなくなった車が、それなりのスピードで動いている状況に感じられてしまうからだ。ブレーキとハンドルがどちらも効かないのは、それはそれは恐ろしいのである。
 運転している「ご主人様」はこんな具合で恐る恐るだと言うのに、この“クルマの形をしたロボット”3代目プリウスは実に静々粛々と、淡々と走る。プリウスは初代しか知らない僕にとっては「げ。プリウスのクセに普通の車になってやがる」という感じだ。初代で逐一イヤだった「普通の自動車と違う」クセの部分が、まるっきり姿を消している。本当に可愛げがない。

 それでも、少し乗っただけでクルマの雰囲気に大概慣れてしまったのは、これがトヨタの製品だからだろうか。「人に優しい」というか「万人受けする」というか、ともかく実に敷居が低い。これが「売れる商品作り」と言うものなんだなぁと密かに感心してしまったが、そんなことはともかく。程よく慣れてきたところで、助手席の販売員氏のセールス・トークに乗せられて、完全な電気自動車モードになる「EV」ボタンを始め、色々な機能を試してみた。
 内燃機関に染まりきった僕にEVモードは単なる違和感を超えて不気味ですらあったが、それにしてもこの車、実にそつがない。同じように空気抵抗を意識して車体が後方に向けてやや絞り込まれた形状を持つインサイト2が、そのため後部座席の頭上空間に顕著な不足があるのに対し、プリウス3にはそういう不手際がない。まぁ、2代目はタクシーにも採用されていたくらいだから当然と言えばその通りなんだけど、やっぱりトヨタ車ってスゲェなぁ。
 というか、インサイトとプリウスを続けて乗り比べちゃったら、全っっ然勝負になんない。「格が違う」としか言いようがない。敢えて例えれば、カローラ・バン(商用)とコロナくらいの違いがある感じだ。正札を見ると価格差はあるが、装備の内容まで含めて対比したら、それだって限りなくゼロに近い。

 それはともかく、僕が密かに期待していたプリウスの「速さ」なんだけど、これは残念ながら「常識的」な範囲のものだった。いや、初代とは違って確かにストレスなく加速して、そのうえ静かなもんで全然実感の伴わないまま制限速度をアッサリ超えちゃったかどうかは明言しないけど、まぁそんな按配なんだけど、少なくともYukizoさんに聞かされたような「生意気なくらい速い」と言うことはなかった。
 あとで販売員の青年にそのあたりの話を聞くと、先代プリウスは最大トルクが49kgf・cm以上あったのだと言う。なんだその大排気量車並みの数値は。そりゃとんでもない加速もするわ。でもって3代目ではその半分くらい、代わりに出力特性をより馬力側に振って、加速よりも最高速度を重視するセッティングに変更した由。
 なんでも輸出先の欧米で、先代は設計最高時速が170Km/hのためやや市場から不満の声が上がり、今回は180まで出るようにしたのだと言う。うーん、意外に最高速が伸びない車だったんだな。

 試乗のあと、ディーラーの店内で営業の青年からプリウス3についてあれこれ話を聞いた。最初のほうにも書いたとおり、もの凄く受注好調なのはいいのだけれど、喜んでばかりもいられないのだそうだ。それというのも、まずは生産が全然追いついていないこと。
 プリウスを製造できる拠点は、日本国内の2ヵ所だけで海外生産は皆無。そこで確か月産6千台だかを作っているのだけれども、うち3分の2は輸出仕様。まもなく北米での販売が始まるので、今は工場をフル稼働させて、北米販売のための在庫をせっせと蓄えているのではないか、との話だった。
 北米で期待ほど売れなければ、国内に振り向けられる台数が増えるかもしれないけれども、現状では今すぐ注文してもらっても納車は来年2月になる……従って利益計上も今上期ではなく下期になってしまう、のだそうだ。しかも台数ベースで見た場合、プリウスは彼の販売会社が売る車の実に65%を占めていて、残り20車種あわせても全体の35%にしかならない(!)という、なんともいびつな構成比になってしまっているのだそうだ。

 そしてなお悪いことに、以前マツダの偉い人が「プリウスやインサイトのような戦略的価格設定をしたら、マツダの経営体力ではもちません」と話していたのを裏付けるのだが、やはりプリウスは大変に利幅の薄い商品なのだそうだ。定価で販売しても、他のモデルで30~40万値引きしたのと同じくらいの利益しか出ないと言うのである。フツーだったら、扱いたくない商品ナンバー・ワンにランク付けられそうだが、その“厄介者”が販売台数全体の65%を占めるとなれば「わずか1ヶ月で18万台受注!」などという華々しい新聞見出しとは裏腹に、ハイブリッド車ビジネスが既にチキン・レースの様相を呈していることを窺わせる。マツダは本気でそんな市場に参入する気かね……。

 内燃機関を積んだ車とはかなり異質な、なんだかロボットっぽい車も面白かったが、それ以上に興味深い話を聞かせてもらって販社を後にした。慣れ親しんだ自分の車が発する、かなり自己主張の強い排気音を聞きながら、つい「やっぱりコレが自動車だよなぁ、クルマはこうでなくっちゃなぁ」と呟いてしまった。
ブログ一覧 | 日本の車 | 日記
Posted at 2009/06/21 06:41:29

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この記事へのコメント

2009年6月21日 8:59
いやー、これはこれはホンマにご苦労様でございました。(笑)

インサイトの方は04兄ィもコメントしてますが、惰眠さんのいう通り、何か微妙な違和感を感じるんですよね。トヨタの真似っぽくなろうが、フツーに作るなら徹底してやればいいのに、意固地になっておかしくなっているような気がします。

F1はヤメて、これからはECO1だそうですが、ロス・ブラウンに泣く泣く売ったマシンが爆勝しまくっているだけに、栗コーダーカルテット「帝国のマーチ」のように奏でられるT-SQUARE「TRUTH」があまりにも…。

プリウスの速さに関してですが、3代目は若干マイルドに味付けされているようですね。モーターは極低速トルクの立ち上がりが強烈ですが、この辺のコントロールも上手なようで、ウチの主治医(サーキット&峠大好きおじさん)が箱根で攻めると、アクセルベタ踏みで立ち上がっても、勝手に最高のトラクションに調整してくれる、つまりワインディングのイージーな速さもある、という事です。

2代目でイマイチだった高速燃費を改善すため、排気量アップとリダクションギアを奢りましたが、休日高速1000円時代とタイミングも良いですね。


あっ、そうか。インサイトはジムカーナとかミニサーキットなら…!(笑)
コメントへの返答
2009年6月21日 20:48
いやぁ、面白かったです。あのコメントを戴かなかったら、早速試してみよう!なんて思わなかったはずですし、焚きつけて下さって(笑)ありがとうございます。

しかし、アレはなんなんでしょうね。エコ・カー減税と補助金投入による政府の「トヨタ1社限定救済政策」に横槍を入れたかったがために、急造品で市場に急遽参入したというか……。

ところでそのブラウンGPですが、フェラーリやザウバー等々(トヨタも)全8チームで徒党を組んで、FIAのF1に三行半を突きつけましたね。「独自のチャンピオンシップを創設する」とまでぶち上げてるようで。
ホント、来期どうなっちゃうんだろう。

ちなみにインサイトでジムカーナというのは、Yukizoさん、ブラックですよ(笑)。「どこが変なのか、というより何もかもが全部、少しずつ変」な感じのする車でレースなんて、目隠しで障害物競走するようなものですよ……。
2009年6月21日 13:27
なるほど、やはりプリウスはトヨタは次世代エネルギー車で先行しているってイメージリーダーとしての車で、本来沢山売るつもりはなかったんでしょうね(笑)
多分にインサイトの戦略価格に釣られた面もあるんでしょうが、これにエコブームと税金優遇政策などが加わって、加速度的に恐ろしい事になりそうです。

マツダが参入する頃には少しは風向きが変わってるかも知れませんが…
コメントへの返答
2009年6月21日 21:30
僕の記憶では、初代プリウスは当時「完全に採算割れ」つまりメーカーの持ち出しで製造販売されている、との分析――ないしはウワサ――がアナリストなどから出されていました。と言うことは初代プリウスは、将来「ハイブリッド」が大きな商売になる(またはそこまで育てられる)との読みや自信のもとに打たれた布石で、その後モデル・チェンジのたびに「車格」と同時に売価も引き上げて、徐々に収支構造の正常化を図っていたと想像していいと思います。

これも想像ですが、トヨタの目論見としては今度の3代目で完全に収益バランスが他のモデルと同等になるところまで持っていくつもりだったと思うんですよ。そして、文字通りたくさん売る、と。
そこにホンダから思わぬ横槍が入ったもんで、発売直前に急遽「大幅な」売価引き下げを余儀なくされ、いびつな収支構造でのチキン・レースを続行しなければならなくなった……という感じじゃないでしょうか。

本来、プリウスに対してインサイトは「格下」なのですが、トヨタがその「格下」にさえ過敏に反応したのは、自分たちが育て上げた「ハイブリッド車」というマジック・ワードの破壊力を十分に理解していたから、という気がします。

ところで、今回インサイトにも試乗してふと感じたことなんですが、「あのレベルの商品」が、取り敢えず出だしで人気を博してよく売れた結果、マーケットはじきに「ハイブリッド車幻想」から醒めるかも知れません。

尤も「ハイブリッドはトヨタに限る!」と目黒のサンマのようなオチが待っている可能性も否定はできないのですが。
2009年6月21日 18:19
面白い!いつも興味深く、読ませていただいております。

>>マツダは本気で
これはほんとに心配です。開発責任のおえらい方が、半年前から踵を返して急にこんなこと言っちゃうもんだから。それくらい従来の予想に反して、ハイブリッド車の売れ方が「脅威」なのだと思います。加えて、ブランドイメージの低下?誰からも相手にされないことを恐れているのかしらん。マツダと日産の「ハイブリッド僻み」なCFを見るたびに、なんでこういう宣伝の仕方しかできないのかなぁ、と。

「ハイブリッド」(というかプリウス)に迎合する世の中が、一つ覚えにエコという商売に染まった日本が、とにかく気持ち悪いです。
コメントへの返答
2009年6月21日 22:00
ありがとうございます、励みになります。

実は本文には書かなかったんですが、ディーラーの兄さんはもう一つ深刻なことを言ってたんです。それは、ホンダのインサイト発表を受けて急遽「販売価格は」引き下げられたけれど、メーカーから販社への引渡し価格(仕切値って言うんでしたっけ?)は据え置きだったと言うことです。

好意的に見れば、出荷価格は既に下限ギリギリに設定されていて、これ以上引き下げる余地がない……のかも知れませんが、いずれにせよしわ寄せは販社に行っている訳で、マツダ本体もさることながら系列ディーラーの体力を考えると、参入の判断は「ハイブリッド地獄」に踏み入れることを意味するんじゃないかとの懸念が拭えません。そういえば「エコエコ……」とかって黒魔術の呪文がありましたっけ。

>>一つ覚えにエコという商売
知り合いの経済記者が「ハイブリッドってシンボリックで消費者(視聴者)に分かりやすいキー・ワードなんだけど、エコと言えばハイブリッド一辺倒の風潮になってしまったことには、自分らにも責任の一端がある」と白状してました。
「ハイブリッド=エコ」であるとしても、「エコ=ハイブリッド」というわけではないんですよね……。

それにしても日産とマツダのCMは、本当にヘタクソですねぇ~。相当、切迫した危機感に苛まれてるんだとは思いますが、あれはないですよ。メーカーの焦りが丸見えになるようなCM、やっちゃダメだと思うんですがねえ。

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