ユーノス500の6ヶ月点検を予約していたので、いつもの販社に足を運んだ。もともとは点検だけのつもりだったのだけれども――あんまり思い出したくないし公言したくもないのだが、土曜日に祖父の法事に出かけた際、ちょっと無理な切り返しをしようと思って後方の状況を見誤り、車のオシリをしたたかにぶっつけてしまったので、その修理の相談もしなければならなかったのだ。
「実は昨日ちょっとバンパーぶつけましてね~」なんて話をしながら改めて実況見分すると、おいおいおいおいおい!運転席側のブレーキ・ランプのレンズが割れて穴が開いてるじゃあーりませんか!バンパーの傷も、擦過傷なんて生易しいものじゃなくてしっかりひずんじゃっている。結構いい音立ててぶつかったもんな……。
交換のための見積をお願いして窓の外を見ると、試乗用に準備されている3代目デミオが、
前回見に来たときと違っている。白い車体のそれは、少し径の大きいホイールを履いていて、このまえちょっと乗った1300ccの標準車より少し精悍に見える。
「試乗車が入れ替わってますね?」と水を向けると、店舗間のローテーションで1500ccのスポルトが回ってきたんだと言われる。試乗してみるかと訊かれたのは願ったり叶ったり。見積を出してもらう合間に出かけてくることにした。
出発前に操作系のあらましを教えてもらう。
CVT(無段階変速機)を備えたこのデミオには、ハンドルの左右にそれぞれ2枚のフリップ(パドル)がついていて、それを操作することで事前に設定された任意の7段階のギア比を選択することができる。ギアを、ではなくギア比を、なのはCVT車だからだ。
この辺は普通のセミ・マニュアル式と同じなのだけれども、デミオ・スポルトがちょっと違うのは
そのままではマニュアル・モードにならないことだ。左ひざの脇に床から生えるセレクター・レバーには親指で押し込むボタンが大小二つついている。従来のマツダAT車ならば「HOLD(自動変速キャンセル)」にあたるボタンを押すと、添付写真にあるようにメーター内に「SS」の文字が点灯する。
これが何の略語なのか聞き忘れたが、SSモードではギア比が通常の自動変速時よりも若干ロー側に移り、変速するするのもエンジンがブン回ってからになるらしい。要するにスポーツ走行にあわせた自動変速パターンになる。
SSモードに入れた状態でハンドル脇のパドルを操作すると、ここで初めて手動変速モード(Mの文字が表示される)に切り替わるというわけだ。
ほほう、こいつは面白い。ちょっと長めに試乗したいなぁと思った気持ちが通じたのかどうか、今回も運転手単独でいってらっしゃい状態の上に「いつもの試乗コース云々」のお言葉がなかったことをこれ幸いと、ちょっとだけ既定のコースよりも足を伸ばすことにした。勿論、店内に他のお客さんがほとんどおらず、しかも見た感じデミオの商談をしているわけではなさそうなことを事前に観察した上でのことだ。
店を出て真っ先に気づいたのは「足が固い」と言うこと。ビシッと引き締まった感触が心地いい。……心地いいっていうか、まあちょっと乗り手を選ぶかな?という気もする。その一方で、椅子がヤワだ。
ホールドしないわけではないのだけれど、歯ごたえなく座面にずぶりと体が沈むような感じが頼りない。流石にカレスト座間でチョイ乗りしたさる国産リッター・カーのように遠心力で椅子の縁がグズグズと座屈して運転席から滑り落ちそうになるような醜態を晒すわけではないけれど、いささか腰に堪える。
椅子の問題は腰痛もちの僕にはちょっと深刻だけれども、気になったところはそれくらい。あとは精々、難癖レベルの「ウインカー・レバーの感触がガサツだなあ」とか「クリープ状態で(アクセルを踏まずに)動き出すと、ちょっとギクシャクするなぁ」と言った程度だ。ああ、あとタコメーターが小さすぎ。ちょっと見づらい。ステアリングのパワー・アシストが僕の好みからすると強すぎるけれど、まぁデミオと言う車の想定する顧客層だとか時代の趨勢からすれば仕方のない面もあるのだろう。
1300のデミオは「普通に乗るなら、まぁこれでもいいんじゃない?」といった感じだったけれど、1500のデミオは結構痛快で面白い。普通状態の変速パターンではさすがCVTだけあって特段ショックもなく普通に加速していく。排気音も、ムリに静かにしようとするのではなくて「スポルトだぞー」と自己主張している感じが微笑ましい。
幹線道路に出てSSモードを試してみると、低いギアで引っ張る変速パターンが、僕の普段の運転のリズムによく合う。と言うことは、燃費の上ではカタログ値よりも悪化させる要因になるのだろうけれども、これが結構心地いい。
先代のデミオは発売当初、ロードスターのハンドリングを受け継いだなんて広告で大言壮語して笑わせてくれたが、3代目のスポルトならば(少なくとも感触の面に限っていえば)NC型ロードスターと似た感じがしないこともない。
Mモードの手動変速も面白がって試したが、意外や猪口才な安全策が講じてあって6速と7速を試せなかった。都内の幹線道路を普通に流すような速度でハンドル脇のパドルをパタパタ叩いてシフト・アップを繰り返していくと、エンジンの回転数は当然ながらどんどん下がっていく。5速1000回転あたりまで落ちたところで、車がそれ以上のシフト・アップを受け付けなくなった。試しに信号待ちで停車しているときに同じことをしてみると、やはり1速から上がらない。なるほど、流体継手でない以上はギア比が高すぎればエンジンがストールする可能性だってあるわけで、確かにこういうフェイル・セーフはあってもいいかも知れない。
結構面白い車だなぁといい気分になって販社に戻り、車を停車しようとしてついうっかりやっちまった。停車寸前、反射的に左足が「クラッチを切ろう」と動いたのだ。踏んづけたペダルは、ブレーキ。停まる寸前のスピードだったけれど、当然ガクンとつんのめった。
ついでに……と言うか、今回販社に顔を出した主目的の一つであるユーノス500の修理見積も出来上がっていたので見ると、流石はバブル期に設計された金に糸目をつけない車だけのことはある。書面には工賃込みで11万円少々という金額が印字されていたのであった。
Posted at 2007/07/30 12:16:44 | |
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日本の車 | 日記