先月のゴルフⅦの車検の代車としてやってきたゴルフⅥ。
今回は一般道やワインディングを計150㎞の道のりを走ることとなった。
敢えて次期モデルとなるⅦと比較しつつ、その様子を記していくこととしよう。
■概要
フォルクスワーゲンが2008年に本国で発表、日本では翌年の2009年に登場した第6世代目のゴルフとなる。通称:ゴルフⅥ。
先代、ゴルフⅤのモデル後半にて大幅なテコ入れを施した影響からか、プラットフォームは踏襲、内外装のスキンチェンジに留まるような控え目なモデルチェンジとなっている。
現車は2010年式で一番ベーシックなグレードとなる、1.4コンフォートラインとなる。
■スタイル、サイズ
全長×全幅×全高=4210×1790×1485(㎜)
Ⅶと比較し全長は50㎜、全幅で10㎜程度小さいが乗ってみた印象、取り回しは変わらないように思えた。
デザインはやや丸みを帯びており、ココは好みと言える範疇ではあるが、エンジンフードに深いプレスラインが入り、ヘッドライトがよりシャープなⅦの方が筆者の好みではある。
しかしながら、ムダなラインが無くプレーンでクセの無いデザインのⅥも今時のムダなラインが縦横に駆け巡ったクルマよりも遥かにクルマらしく好感の持てるものだと言える。
リア周りを見ると、初代からのアイディンティティと言える「く」の字形状の骨太なクォーターピラーで一目でゴルフと分かるスタイルをしている。
このゴルフでもう10年オチなのだが古さを感じにくいところもこのクルマの良い所だと言えるだろう。
■インテリア、装備
室内も大きく言ってしまえばゴルフⅦと殆ど変わらず、各スイッチやレバー類もまるで同じ。
ただ、その時代のニーズに合わせて細部が変化しているのが違いと言えるか。
「改良」という文字通り、後のゴルフⅦではⅥのウィークポイントを徹底的に潰しこんでいるのがこのⅥを今回借りて理解した次第だ。
ドアを開けると当たり前のようにミラーヒータースイッチ組込みのコントロールスイッチ、パワーウインドウ、ドアロックと当たり前のようにように配置されている。
しかしながら時流に左右されたのか、各部照明は赤に点灯するのでいささか煩わしく感じた。
そしてシートは相変わらず絶品で、日常の使用域においては十分なもので、そして疲れない。
また、サイドサポートも機能は十分な上、張り出しは気にならない程度であり、乗降性もバツグンと、懐の深いシートとなっている。
インパネは大きく張り出し圧迫感のあるものでもなければ、奇をてらってラウンドしたようなデザインでも無く、遊び心はないものの、車両感覚が掴みやすい実用性に富んだものである。
メーターはアナログ式で視認性も良く見やすい。
但し、サブディスプレイはステアリングスイッチで操作するタイプではなく、メーター横のスイッチで操作しなければいけないので、使い勝手がやや悪い。
インパネ右横には欧州車ではポピュラーなダイヤル式のヘッドライトスイッチ。
その下には大きく使いやすいコインボックスがある。
サンバイザーは照明付きのこれまた一般的なタイプ。
照明自体はゴルフⅦのものと同型である。
ルームミラーは自動防眩式で照明もベーシックなもので極めて一般的。
そしてサングラスケースが備わるが、ゴルフⅦと比較すると開口角度が小さいので、サイズによっては入れ辛いかもしれない。
また、写真では分からないが、欧州車によくあるヘッドライニングの表皮オチがサングラスケースの手前にやや見られた。
しかしながら、10年オチのゴルフでもまだ小規模なので、クオリティは僅かながらアップしているのかもしれない。
国産車としては稀だがY50フーガも最近このような傾向がみられる。
センターコンソール前端に灰皿があるのは時代を感じるところ。
ゴルフⅦでは灰皿が消滅し、代わりに奥行がかなりあると共に、滑り止めを兼用した質の高いものになっている。
その後ろにはシフトレバー、サイドブレーキレバーとなる。
サイドブレーキがEPBではなくて手引き式になる辺りでやや一昔前のクルマと感じるところだろう。
写真では写り切れてないが、エアコンパネルはゴルフⅦの方が圧倒的に使いやすい。
特にゴルフⅦはダイヤル中央にAUTOボタンがある上に、炎天下に乗り込んだ際に重宝するMAX A/Cボタンがある(そしてクールダウン性能も高い)。
10年落ちなのとクリーンフィルターの汚れ具合もあるのだろうが、ゴルフⅥはやや効きが悪い場面が見られた。
その他、カップホルダーが手を自然と伸ばした位置よりも後ろにある為、やや使い勝手が悪い…但し、この辺りの使い勝手はゴルフⅦで改善された。
ただ、ゴルフⅥもⅦもドアポケットに格段に使いやすい(しかも全面が植毛貼りで異音が出ない)ドリンクホルダーがある為、ペットボトルの場合は中央のカップホルダーは使用頻度としてやや落ちるだろう。
後席はゆとりがあり、足元も広く居住性は非常に高い。
Ⅶではアームレストに装備されているカップホルダーは、Ⅵではコンソール後端に装備される。
ギミックとして凝っているのはⅥで、ペットボトルも確実にホールドする反面で取り出しやすさではアームレストに装備されるⅦに分がある。
しかしながら、Ⅶのカップホルダーはやや浅い。
この辺り一長一短、そしてこの辺りの装備の使い勝手は日本車の方が長けているように思う。
給油口はプラスチック製のリッドでプッシュで開閉するタイプ。
使用性はごく普通。
驚くべきはトランクルームでとにかく広大。
実際に計測こそしていないものの、目視でⅦよりⅥの方が遥かに広く、使い勝手も良い。
ラゲッジには12V ソケットが準備される。
この辺りココ数年の車種では2.1VのUSBソケットや100Vで1500Wコンセントが主流となりつつあり、ついに長年続いたソケットが過去の遺物となりそうである。
テールランプはLEDタイプ。
バックドアハンドルはVWで当たり前となっているエンブレムがハンドルになっているタイプである。
さて、ココでフロント側に回りエンジンフードを開けると、フードインシュレーターが経年劣化にやられ垂れさがっていた。
この辺りは欧州車の宿命か。
フードダンパーは未だ問題無く、片持ち支持ながらフード操作はスムーズであった。
■動力性能
CAX…直列4気筒1400㏄ターボ、122馬力、20.4kg-m。
Ⅶのコンフォートラインでは「ダウンサイジングターボ」と称し1200㏄になっているが、やはり排気量200㏄の差は十分にあり、パワー感は圧倒的にⅥである。
Ⅶでは100㎏もの軽量化を施し、確かに排気量の割には十分ともいえる軽快感は出しているが、やはりソレでも200㏄の差を埋めるまでは無い。
コレに組み合わされるミッションが7速DCT。
85000㎞走行ということもあり、ミッションの繋ぎでややギクシャクする場面があった。
アクセル開度で1/8、または1/4での発進時、2000回転以下で同様の開度での踏込みでジャダーが発生。
1度繋がれば高回転まで気持ちよく回り実用性は十二分。
燃費はリッター辺り13.5km。Ⅶではおおよそリッター17km位なので、ダウンサイジングターボの効果は燃費で現れたカタチとなる。
装着されるタイヤはミシュランプライマシー3。
サイズは205/55R16 91V。
借りた当日はドシャ降りの雨(久留米が冠水した数日後で相変わらずのゲリラ豪雨が連日続いていた)だったが、それなりのペースで走行してもウェットグリップが十分に確保されており、狙ったラインを安定して走行出来た。
案の定タイヤを後に見るとミシュランで、その後のワインディングでも十分なライントレースをしつつも、適度にサイドウォールはたわむので走行性能と乗り心地のバランスが両立されていた。
勿論、ボディのシッカリ感も強い。
しかし、足回りはⅦに比べやや粘らず、大きな入力に対しボトムが大きい場面もあった。無論、ココでは足回りのヘタリも十分に考えられるが、Ⅶのボディの軽さと設計年度の新しさは存分に効いていると思われる。
やはり「軽いはエライ」と言える。
■結論
2020年現在の視点で、しかも日本では辛うじて現行モデルと言えるⅦと比較した上でのゴルフⅥは十分とも言えるポテンシャルを持っていた。
ランニングコストでは日本車に劣る場面が多いのだが、それでもこのゴルフⅥを選ぶ価値は未だ十二分にあると思う。
程度が良くても比較的相場は手頃でいて、しかも古臭く見えないというのも嬉しい点だ。
2~3年程度、欧州車入門編で手頃に楽しむならゴルフⅥも最高の相棒になるのではないだろうか。