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イイね!
2008年03月18日

「もう、探すのをやめていい。サンテグジュペリを撃ったのは、私だ」

「もう、探すのをやめていい。サンテグジュペリを撃ったのは、私だ」 帰り支度をしながら職場の端末で新聞のオンライン版を見ていると「サンテグジュペリを墜としたパイロット、64年目の告白」みたいな感じの見出しが目に留まった。『星の王子さま』や『夜間飛行』で知られる、フランスの作家にしてパイロットだ。1944年の7月末日、ドイツ占領下の母国の偵察に単独で出て、そのまま消息を絶った。98年にマルセイユ沖で操業中の漁船が彼の腕輪を引き上げたことから乗機が海に没したことがほぼ確実視され、00年にはその残骸が引き上げられたものの、遺体は今も見つかっていない。多分、これからも見つからないだろう。

 新聞記事は、大きく分けて二種類あった。ロイター電を使った記事と、サンテグジュペリを撃墜したと目されるドイツ人に取材をしたル・フィガロの記事を使ったものだ。いずれにせよ、邦訳の過程で「ん?」という部分が出てくるので(今回の記事でも邦訳時に「不適切」な訳し方をした部分や、「書き足し」めいた妙な脚色部分が見つかった)、それぞれのオンライン版を直接確認することにした。フランス語はさすがに分らないので、自動翻訳を使って英文に直して読む。

 まあ、なんだ。職場で英文の外電記事を読みながら涙ぐむオッサンの姿というのは、非常に美しくない。美しくないのだが、それでも、彼の作品の大ファンであった当時24歳の青年パイロットが、自分が撃墜した相手が憧れのサンテグジュペリだったのではないかと恐れ、どうかそうではないようにと祈り続けて生きてきたこの64年を思うと、涙がこぼれそうになる。

 元ドイツ空軍のパイロットにしてZDF(テレビ局)スポーツ記者だった、現在88歳のホルスト・リッペルト氏がル・フィガロに語ったのは、同紙の雑誌部門が週明けに発売する新刊「サンテグジュペリ・最後の秘密」の取材に対してだったという。
 記事によると、リッペルト氏はこんなことを言っている。「(敵機を)発見したんで、もし(偵察行動を)やめないなら撃ち落してやるってつぶやいた。そして撃った。弾が命中して、敵機は海に落ちていった。パイロットは見えなかった。操縦していたのが誰かなんて、知ることは不可能だった。それがサンテグジュペリだったと知ったのは何日かあとになってからだ」と。けれども、それでも、リッペルト氏自身はサンテグジュペリを確認したわけではない。
 だから彼は言う「今でも、あのパイロットがサンテグジュペリであって欲しくないと願っている」。なぜなら「我々が若かったころ、みんな彼の本を読んでたんだ。みんな、彼の本が大好きだったんだ」。

 8年前、サンテグジュペリの偵察機の残骸がマルセイユ沖から引き上げられた折、近くからドイツ空軍のメッサーシュミットの破片もあわせて見つかった。そこで、そのメッサーシュミットの操縦者が誰かとドイツ国内でも人探しが行われた。ル・フィガロの記事は、その調査担当者にリッペルト氏がこう語ったと伝える。「もう、探すのをやめていい。サンテグジュペリを撃ったのは、私だ」と。

 1939年9月の独仏開戦までに出版されていたサンテグジュペリの著書は3タイトル。その処女作『南方郵便機』は、リッペルト氏9歳の頃の作品だ。恐らくは、彼が後にパイロットへの道を選ぶ動機付けにもなったことだろう。その憧れの作家を、自分が撃墜してしまったのかもしれない……。

 「それが戦争というもんなんだよ」といえば、勿論その通り。ああ、その通りだとも。戦争というのはそういうもんだ。そういうもんだからこそ、戦争なんかやっちゃあいけないんだ。小賢しい小理屈こねて「仕方なかった」なんて、言っちゃあいけないんだ。
 それでも戦争は起こる。起こるからこそ、やっちゃあいけないことなんだって思い続けなくちゃならない。それは「罪」なんだって思い続けなくちゃいけない。








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Posted at 2008/03/18 23:36:26

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この記事へのコメント

2008年3月19日 20:23
とても悲しい話ですね。サンテグジュペリがパイロットだったということも、第二次大戦で戦死したことも知ってましたが、こんな悲劇があったなんて。悲しすぎます。
コメントへの返答
2008年3月21日 10:41
どこにも、誰にも救いのない話で、神の作り給いしこの世界の残酷さをまざまざと見せ付けられる思いです。

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