2016年08月09日
違いの判らない男だから乗り比べてもわからないだろうなwww
数字に表れないクルマの性能の違いを評価する技…スバルドライビングアカデミー
データロガーや測定器の結果データには表れないが、乗ってみると挙動や操作感が違う。逆に、データは明らかに違うのに、運転しても違いを認識することができない。多くのエンジニアは、クルマの設計やセッティングでそんな問題にぶつかることがある。
1989年にレガシィが達成した10万km最高速度チャレンジのドライバーのひとりだった秋山轍氏(スバル研究実験センター 管理課 課長)は、「それはちがうんじゃないか」という。同じ条件、規定の測定条件でみているから計測できないのではないか。データが同じでも操作感が違うのは、計測条件や計測データが間違っている。データの違いが体感できないのも、データが違うところを見ているからではないか。
こういった設計、性能評価の感覚を研ぎ澄ますため、スバルではエンジニアも自らテストコースに出て、走行試験を行うという。このような設計思想をサポートするのが「スバルドライビングアカデミー」だ。秋山氏を始めプロフェッショナルなインストラクターが、エンジン、ブレーキ、EV車両、自動運転技術といったさまざまな設計部門からの精鋭にテストドライバーとしての感覚を伝授している。
例えば、オーバルコースによる高速走行での試験、ABSをONにしたまま、ABSを効かせずABSより短い距離で止まる練習、ウェットの低ミュー路を微妙なアクセルワークだけで定常旋回する練習、さまざまなプログラムをこなし、車の挙動と性能を把握するスキルを身につけている。
240km/h安定クルージングができるのが特殊ライセンスの条件…スバルドライビングアカデミー
「スバルドライビングアカデミー」は、エンジニアの走行性能評価技術を向上させるため開設された、社内教育プログラムのひとつ。チーフインストラクターには1989年のレガシィ10万km最高速度記録のドライバーも名を連ね、訓練を重ねている。
歴史的に開発エンジニアが走行テストや試作車両の組み付け・整備を行うスバルは、テストコースライセンスを取得すれば、だれでも開発車両の走行テスト、性能テストを行うことができる。ライセンスは初級に始まり、中速、高速、特殊とステップアップしていく。認定を受けるには、走行時間、テスト、上長の承認など規定があるが、例えば高速ライセンスは、オーバルバンクコースで220km/hの安定クルージングができるかどうかがひとつの目安だそうだ。これが、特殊になると240km/hの限界付近でのクルージングが目安となる。
もちろん、ただ高速クルージングができるだけではライセンスはとれない。ウェット路での定常回転、さまざまなコースで的確な操作と評価ができるか、ジムカーナによる車両のコントロールスキルとタイム計測など、かなりのスキルが要求される。
受講生の一人は「アカデミーでさまざまな条件での走行を繰り返すことで、実際のテスト走行で、限界付近での挙動を把握するのに心の余裕ができます」という。スバルの設計エンジニアは、実際の走行フィーリングと測定データを駆使して車両の開発を行っている。
アカデミーの開設は今年(2016年)からとなるそうだ。会社の協力のもと、オリジナルのカラーリングを施したWRX STIとBRZが教習車として用意され、アカデミー専用のレーシングスーツもデザインされた。7月には『86/BRZ』の12時間耐久レースにも出場するなど、積極的に活動を広げている。
また、受講生のテスト走行による性能評価は、9月に先行予約が開始される新型インプレッサの開発にも活用されている。
スバル、もうひとつのDNA…エンジニアは板金からサス交換までこなす
スバルは、8月6日、7日の2日間、栃木県の技術実験センターにおいて、今年からスタートさせた「スバルドライビングアカデミー(SDA)」の記者説明会を行った。同アカデミーは、エンジニアにもテストドライブによる高度な性能評価スキルを身につけさせるために設立された。
説明会では、アカデミーのインストラクター、受講生、ゲストスピーカーを交えたトークセッションが設定され、受講生に個別の話を聞くこともできた。
トークセッションは、インストラクターを代表して秋山轍氏(スバル研究実験センター管理課 課長)、受講生代表 中路智晴氏(車両研究実験第1部)、ゲストスピーカーはことし9月に先行受注を開始する新型インプレッサの開発責任者 阿部一博氏の3名で行われた。
秋山氏は、1989年にレガシィ10万km最高速記録を達成したときのドライバーの一人。このときも社員が一丸となって記録に挑戦したそうだが、「スバルは歴史的に、エンジニアの守備範囲が広い。航空機を作っているときから、図面も専門のドラフターではなく自分で引いていたそうで、自分も最初の配属はブレーキの設計部門だったが、そこでは板金から溶接まで自分でこなしていた」という。
中路氏も、実験部に移る前は設計部門だったが、当たり前のようにタイヤの組み付けやサスペンション交換などやらされたという。しかし、「この経験は設計にも多いに役立ち、実験部に移っても自分で思いついた改良点を、その場で部品を作り試したりできる。結果が思い通りだととてもうれしいので、つい楽しんでやってしまう」
ITの世界では、サービス開発やシステム開発がメインフレームなどから、ウェブ、モバイルデバイスに移ってきたため「フルスタックエンジニア」として、設計、開発、運用、ネットワーク・サーバー管理など幅広い分野の知識やスキルを持つことが有利とされている。スバルのスタイルはそれに近いといえるかもしれない。
阿部氏も車体構造設計の経験があり、いまは商品企画がメインとなっている。新型インプレッサの開発(およびスバルグローバルプラットフォーム:SGP)では、リアスタビライザーの片方を車体に取り付ける方式を採用している。通常は、リアアクスルのサブフレームに取り付けるものだが、片側が車体固定となると、組み立て工程が変わる。生産技術的には手間が増えたり、ラインを作りなおさなければならなくなるなど、採用にはハードルが高い設計だ。
しかし、藤貫哲郎氏(車両研究実験第1部 部長)他、現場からアイデアをだされ、実際乗ってみるとあきらかに動き、剛性感が違った(阿部氏)という。阿部氏によれば、藤貫氏や実験部の常とう手段らしく、乗ってみて体感してしまうと、予算やスケジュールの困難があっても「なんとかしたくなってしまう」と阿部氏は吐露する。
設計エンジニアだからといって、製図版やCADに張り付いているだけでないスバルらしい開発エピソードだろう。
トークセッション後、アカデミー受講生のひとり、桑原悟氏(車両研究実験第1部)にも、自らのテスト走行やSDAの取り組みが設計に役立った点を聞いた。桑原氏は、新型インプレッサでは操縦安定性や乗り心地を担当した。
モノコックのサイドフレームをリアのサイドメンバー部分まで変曲点や接合部がなく連続的につなげた設計、フロントサスのロアアームのクロスメンバー取り付け部、ハブとハウジングの締め付けトルク、といった点を挙げてくれた。ハブの締め付けトルクの調整は、大きな入力、操作ではあまり影響はないが、テストコースで微妙な操作で変化が現れる。この微妙な違いもSDAでの走行訓練があったから感じ取れたという。
スバルにテストドライバーはいない?…スバルドライビングアカデミー
車の開発において、試作車や実車による性能評価はテストドライバーが行うのが普通だ。しかし、スバルには「テストドライバーはいない」という。
そう語るのは、スバル 車両研究実験第一部 部長 藤貫哲郎氏。もちろんスバルにもテストドライバーはいる。藤貫氏の言葉の真意は、スバルでは設計エンジニアが自らハンドルを握り、開発車両の性能評価を行っており、エンジニアはテストドライバーでもあるということだ。
通常、開発車両の評価はテストドライバーが試乗や走行テストを行い、その結果をエンジニアに伝える。エンジニアは、それを考え、科学し、設計を完成させていく。性能評価のスキルと設計、エンジニアリングのスキルは別物で、それぞれをプロフェッショナルが担当するのには合理性があるし、効率がよい。
しかし、スバルは近年のクルマ作りで「安心感」 「走りの愉しさ」が何かを追求し、それを物理に置き換える(定量化、見える化)手法を強調している。そのためには設計者も自ら走り込み考える必要があると考えている。「ドライバーの評価能力以上のクルマは作れない」(藤貫氏)というわけだ。
現在、スバルにはテストコースで車を走らせ、評価するために、社内のライセンス制度が存在する。初級、中速、高速、特殊と4段階に分かれており、多くのエンジニアがライセンスを取得し、設計しながら自分でもテスト走行を行っている。
スバルは、もともとエンジニアが自分の設計や仮説を自分で運転して試す文化はあったという。そのためのテストコースライセンスというのに以前から存在した。しかし、初級から中速、中速から高速、さらに特殊と、ステップアップを支援するための制度やしくみはこれまで存在しなかった。
そこで、作り手にクルマの愉しさを知ってもらい、高度な車両評価能力を身につけてもらうため「スバルドライバイングアカデミー」を設立した。現在受講生は、各部門から選ばれた(もしくは立候補した)20人のエンジニアが、月1回の実技講習などを行っている。受講生はエンジン設計、車体設計、アイサイト設計、電動ユニット設計、自動運転技術のエンジニアと多岐にわたる。中には「みんなより遅いので」と、自主トレを行う受講生もおり、現在は、ほぼ毎週なんらかの活動を行っている。
ドライビングアカデミーってなんだろう?【SUBARU テックツアー 2016】
8月6日・7日の2日間にわたり、栃木県佐野市にあるスバル研究実験センター(SKC)にて、第1回SUBARU テックツアー 2016が開催されました。
テックツアーとは、スバルの歴史や取り組みをメディア向けにわかりやすく体感しながら学べるプログラムです。
第1回目となる今回は、スバルドライビングアカデミーについて、関係者のお話しや実際に走行するプログラムなどを体験できました。
私は昨年開催された「SUBARU FUN MEETING」に応募するも見事落選!(号泣)
スバリストの私としてはSKCは憧れの聖地の1つでした。今回、クリッカー編集長の小林さんと共にテックツアーに参加させていただき、念願のSKCデビューに成功しました。
到着してまず案内されたのは、なんとっ!!!私が一番見たかった「スバル技術資料館」。
ここにはスバルの歴代モデルや試験車両などが数多く保管されています。あまりにも夢中になりすぎて、プレゼンテーションに遅刻しそうに……(笑)
ここでの昇天話はまた後日。
プレゼンテーションでは、スバルのクルマ作りとスバルドライビングアカデミー(SDA)についての解説などが、SDAのチーフインストラクターでもある藤貫さんから行なわれました。
ドライビングアカデミーと聞いたときは、全社員が受ける研修のようなものを想像していました。しかし、想像とは違ってスバルの楽しい走りを生み出す源とも言える重要なものでした。
プレゼンテーションでは藤貫さんに加え、SKCの管理課 課長の秋山さん、新型インプレッサの開発責任者(PGM)の阿部さん、SDAのアカデミー生でもある車両研究実験 第一部の中路さんの4人による豪華フリートークも聞くことができました!
このフリートークのなかで、SDAの目的や設立の経緯、苦労話などが語られました。
SDAとは、エンジニアがドライビングスキルを磨くためのカリキュラム。初級・中級・高速・特殊と4段階のランクがあり、主なトレーニング内容は、車両整備の講習や心技体レクチャーといった静的なものから、高速走行やサーキット走行などの動的なものまであります。
なぜ、SDAが設立されたのか?それは、スバルにはテストドライバーが存在せず、エンジニア一人ひとりがテストドライバーとなって開発に携わっているそうです。
エンジニアが自ら乗って開発することによって、細かいニュアンスまで開発に織り込むことができ、スバルの安全性や走りに、さらに磨きがかかるのです。
テストドライバーが存在しないということは、スバルでは常識ですが他社では非常識と思われているとかいないとか……(笑)
とはいえ、スバルにはなくてはならないものに違いはありません。
今回テックツア―に参加したことで、スバルのクルマ作りに対するエンジニアたちの熱い想いを強く感じることができました。
変わりゆく時代の中でも、変わらない信頼を提供すること。まさに、「Confidence in Motion」とはこういうことだったのですね。
次回は実際にSDAのプログラム体験記を紹介しちゃいます!是非お楽しみに!
(文:岩本 佳美/写真:井元 貴幸)
走るエンジニアを育成する「スバル・ドライビングアカデミー」
2016年8月7日、スバルはメディア向けに「スバル・ドライビングアカデミー」の取材会をスバル研究実験センター(SKC)で開催し、その内容を公開した。これはスバルのブランド強化の取り組みの一環として、メディア向けの「テックツアー」の第1回目にもあたる。
テックツアーは、今後も様々なイベントが予定されており、これらのイベントの内容、スバルのクルマ造りの哲学や考えをメディアを通して一般の人々に知ってもらおうという、ブランド・コミュニケーションと位置付けられている。
■スバル・ドライビングアカデミーって何?
ところで今回のテーマである、耳新しい「スバル・ドライビングアカデミー(SDA)」とは何か? これは車両研究実験第一部の藤貫哲郎部長が主導して、2015年秋にスタートを切った社内のドライバー訓練システムの名称だ。ドライバー訓練というと、いわゆる運転テクニックを高めるといった意味に捉えられがちだが、実際の狙いはクルマを考えながら走らせること、つまりクルマの評価能力を向上させるということだ。
スバルを古くから知る人にとっては、操縦安定性を評価・実験する研究実験第四課などが有名だが、藤貫部長は、「スバルには他社のような計測や実験だけを担当するテストドライバーという職種は存在しません。昔からエンジニアが設計し、クルマに乗って実験するシステムが採られてきました」と独自な開発体制であることを語る。
だからスバル・ドライビングアカデミーは限られたテストドライバーやトップガンの育成ではなく、エンジニアのドライビング・スキルの育成が目的だ。もちろんこの背景には、熟練した運転スキル、評価能力を持つエンジニアがいた時代から世代交代しつつあるという社内の事情もありそうだ。
藤貫部長が、走るエンジニアを育成することにこだわるのは、「ドライバーの評価能力を上回るようなクルマは造れない」ということだ。だからより優れたクルマを造るためには、より高い評価能力を持つドライバー=エンジニアが必要という信念があるからだ。
そのため、スバル・ドライビングアカデミーの最終ゴールは、走りに関しての評価能力を持つエンジニアを多数育成することだが、もちろんそれは一朝一夕には不可能だ。現在はドライビングの基本的なスキルを高めることが集中的に行なわれている。運転スキルを高めることで、様々な運転状況の中で冷静にクルマを観察、考察するという次のステップに進むのだ。
ちなみにスバル社内のドライビング・ライセンスは、初級、中級、高速、特殊という4段階があり、スバル・ドライビングアカデミーは中級以上を対象にし、より上のクラスまで引き上げることを狙っている。現状では特殊ライセンスを所持しているのは数名だという。
また1期生ともいえる現在のスバル・ドライビングアカデミーの受講生は、実験部署だけでなく幅広い部署から選抜されている。各部署長の推薦で選抜されているという。
■デモンストレーションと実体験
今回のテックツアーでは、スバル・ドライビングアカデミーの受講生によるデモンストレーション走行と、メディアのための体験走行も行なわれた。使用されるクルマはWRX STIとBRZの2車種だ。これらのクルマには安全装備としてロールケージが組み込まれているが、それ以外はもちろん市販状態と同じ装備状態になっている。
体験走行のメニューとしては、ウエット低ミュー路での定常円旋回、ジムカーナ、高速周回路での140km/h、180km/hでの定速走行、ハードブレーキが選定されていた。ウエットの低ミュー路での定常円旋回では、アクセルの微妙なコントロール、ジムカーナではコーナリング時の効率的な減速や小回り操作を、高速周回路では、一定速度で進路を保つための微小なハンドル修正とアクセルのコントロール、ハード・ブレーキングは、ABSが作動する強いブレーキと、ABSを作動させないブレーキ・コントロールを体験するのが狙いで、スバル・ドライビングアカデミーでも行なわれている基本的なドライビング・メニューである。
今では設計部門はCADにより設計図面を作り、実験部門では超精密な計測が可能になっているが、現在のクルマに求められる付加価値、ドライビングプレジャーなどドライバーの五感に訴える官能性能は、最終的には人間の評価に依存している。
その人間の評価を、工学的な要素に置き換え、設計に還流させることがクルマ造りの基本であるが、スバル・ドライビングアカデミーは一見泥臭く見えるクルマ開発のループをきちんと構築するための意欲的な試みという印象を受けた。
クルマ好きがクルマ作りしてくれているんだろうね
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富士重工 | 日記
Posted at
2016/08/09 01:22:35
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