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2018年06月03日

次期型のSTIに繋がる部分もあるのだろう

次期型のSTIに繋がる部分もあるのだろう ニュルブルクリンク2018 クラス優勝したSUBARU WRX-STIマシン解説 隠された技を大公開

2018レースカーから探るSTIの先端技術 Vol.14

2018年5月12日~13日に開催されたニュルブルクリンク24時間レースで、スバルWRX-STIがSP3Tクラス優勝したが、レースの翌日サーキット近く、アデナウの街にあるスバルチームの拠点を訪ねてみた。そこで辰己英治総監督から、マシンについての詳細を聞くことができたのでお伝えしよう。<レポート:編集部>

autoproveでは2018年2月に群馬のSUBARUを取材し、マシンの外板が装着されていないストリップ状態でも取材できた。
※参考:2018ニュルWRX STIマシン ストリップ画像 ロスパワーを秘策で戦う
マシン開発は、このあと、外装を仕上げ、テストを繰り返していくことになるが、日々、進化し変更、改良が繰り返された。そしてSUBARUのテストコース以外では、富士スピードウエイでもテストを繰り返した。最終的な仕上げは、ドイツ・ニュルブルクリンクのテストデーとQFレースに参戦し、そこで最終チェックが行なわれた。

そして迎えた決勝レースでは、最初のドライバー交代の直後にトラブルが発生し、1時間弱のピットストップがあった。22時間近く経過したとき、濃霧による赤旗中断があり、約1時間後にレースが再開。
だが、あと少しでチェッカーというタイミングで今度はコース上でトラブルが発生した。だが、なんとかピットに戻り修復し、辛くも逃げ切りに成功するという、なんともドラマチックな展開があり、PCモニターでライブ中継を見ていた人は、かなりハラハラ・ドキドキしたことだろう。

圧巻は夜中のセッションの大雨。ポルシェ911GT3やメルセデスGT AMGなどのGT3が軒並みラップタイムを落とす中、順調に周回を重ね、序盤の遅れをみるみる取り返していくWRX-STIの走りだった。ヘビーレインで走行困難と思わせるような大雨の中、スバルWRX-STIはインターミディエイトの手彫り加工タイヤで爆走した。

レース全体が13分後半から14分台で周回している中、唯一11分30秒付近でWRX-STIは周回していた。全車のなかでも手元の集計ではトップ3のタイムで走行しており、驚異的な走りが続けられていたのだ。特に夜が明け山内選手のスティントでは周囲に対し4分以上速いラップも記録しており、非常に興奮したことを覚えている。

この、深夜から明け方にかけての雨中の激走は、、AWDであることがアドバンテージであることは、素人目にもわかる。だが、単にAWDだから速く走れたというのでは浅い。そのAWDにも多くの秘密、技が投入されていることを掘り下げてみよう。

■センターデフのLSD

WRX-STIはクラスを超える速さは証明したと思うが、その技術的なひとつのキーがセンターデフのLSDの存在だ。AWDにおける前後のトルク配分は41:59でややリヤよりのセッティング。このトルク配分は変更できないものの、LSDの効き具合を走行中にドライバーが変更できるようにしてある。


量産車のセンターデフは基本『AUTO制御』で、どちらかと言うと『安定性重視』、ニュル車はドライバースキルとの相関で決まるが、相当な『旋回性能追求指向』、としている違いがある。

トグルスイッチを上下に動かし、LSDのポジションはモニターに表示される。全部で9段階あり、数字が大きくなると効きが強くなる。強いと車両は安定方向にはなるがアンダーが出やすく曲がりにくくなる。反対に弱めると回頭性がよくなる理屈だ。

レースでは、路面がドライの時はメモリが「1」ないし「2」程度で回頭性を重視。操舵して方向が決まり、アクセルを開けた時に程よいLSD効果があれば、ぐんぐんインへ回頭する走りができる。反対に雨のときはメモリは「7」程度で走行していた。

ウエットでは曲がった後に滑りを止める必要があるから、LSDを強めに効かせるという具合にしていた。しかしながら、4人のドライバーにも走り方の違いがあるから、それぞれが自分にあったセッティングに変更できることも重要なポイントだ。

さらに、もうひとつの秘密はブレーキの前後バランス変更だ。レースカーであれば、マスターシリンダーを前後別々に装備しているため、前後の効き方のバランスはそこで調整しているが、WRX-STIは量産車ベースであるため、マスターシリンダーはひとつしかない。したがって前後バランスを変えることは不可能であり、調整もできない。

そのためWRX-STIには、プレッシャーバルブを別途設置し、前後バランスをドライバーの好みで変えられるように工夫がしてあるのだ。マシンはレース用に軽量化されているので、市販車と同じ前後のバランス状態では、リヤブレーキが簡単にロックしてしまう。そこで、このPバルブによって全部で7段階の調整が可能で、ドライであればメモリは「3」、ウエットでは「2」か「1」に変更する。するとABSの介入タイミングが変更され、リヤタイヤがロックするタイミングが変わる、というわけだ。

このPバルブとセンターデフのLSDの効きを各ドライバーの好みで、ドライバー自身が変更することでイメージ通りの走りができるわけで、結果的にはGT3マシンよりも速く走るという、信じがたい走行性能を見せつけることができたわけだ。もちろんドライバーのレベルが高いということもあるが、「ドライバーの好みに合わせる」「乗りやすいクルマづくり」という思考がマシンづくりに反映している部分も、開発者である辰己英治総監督の哲学でもあるのだろう。

■フロントフェンダー内からわかること

WRX-STIのマシンはタイヤの接地性が良く、路面にフラットに接地しているという。そのため、走行しているとタイヤの内側の温度が上がってくるので、エアを取り込みタイヤの内側を冷やすような空気の流れを作っている。

タイヤにはTPMSセンサーがホイールに内蔵されていて、タイヤのアウト側、イン側、センターの表面温度が計測できる。また、内圧も常時モニターしており、テレメトリーは禁止されていないため常時ピットに送信されている。このテレメトリーでは、他にエンジン回転、ギヤの位置、センターデフの位置、ABSのポジション、油温、水温、外気温、路面温度が計測されている。

こうしてタイヤの内側の温度を冷やす空気は、オーバーフェンダーにしてサイドステップのほうへ抜けるようにしてある。

ブレーキはブレンボ製で今季大型化した。また、アップライトは量産品ではなくワンオフ製作されたものとなっている。

■サスペンションとボディ剛性

フロントサスペンション周りにはアイディアが満載されていた。ニュル車のサスペンションでは、サス取り付け部構造に関し自由という、レギュレーションを利用し、ストロークを稼ぐために、レースカーとしては長いストラットが装着されている。そのため、アッパーマウント位置も見た目で分かるほど高い位置に取り付けられている。


ダンパーはダイヤルで減衰が変更できるタイプを使用しているが、セッティングが煮詰まると、ほぼ変更することはないという。

工夫が施されているのは、リンク関係とボディ剛性だ。フェンダーアーチ内のボディ側には市販車にも上下に走る骨があるが、そこが補強されている。見た目でわかるほどごっつい骨が上下につながっている。またフロント周り全体の剛性を上げるために、いくつもの溶接痕があった。

そして、サイドフレームとボディ取り付け部が市販車とは異なっていることにも気づく。リンク自体は市販車のアームを使っているものの、取り付け位置が変更されている。

通常車高を下げれば下げるほどアンチダイブが弱まり、ブレーキング時のノーズダイブが大きくなってしまうことを防ぐための処置がしてある。これは後輪も同じ考え方で処置し、アンチスコート、アンチリフト量が減少しないような配慮を加えている。

そのため、できるだけボディ全体が沈み込むような姿勢とするため、奥へ潜り込ませるような形で取り付けを行なっている。一般的には車高が下がった時の姿勢変化を抑えるためには、ダンパーやスプリングを硬くすることで対応する場合が多いが、WRX-STIはリンクの取り付け位置で対応し、ダンパーやスプリングは、しなやかさを持つサスペンションとしている。このあたりにニュルマシンの特長が見て取れる。

ジオメトリーとしてはバンプトーアウト方向なので、単純に車高を下げれば、ロールインになり、トーチェンジしてしまう。そのためにギヤボックスもノーマルの位置ではジオメトリーが取れなくなるので、クロスメンバーの中に潜らせる位置に変更している。ただし、ギヤボックス自体は市販車のものをそのまま使っている。

■空気の流れを作る空力効果と冷却効果

『空気の流れ』には空力と冷却という2つのタスクがあるが、WRX-STIは24時間連続レーシング走行を続けるために、さまざまなアイディアを盛り込んでいる。

まず、空力の点では以前お伝えしたレポートから大きく変更はなく、フロントのリップスポイラーでボディ下面に流す空気を取り入れ、エンジンルーム内の乱流を引き出し、その空気と一緒にボディ下面のフラット面を通過させて、ボディ後方へ押し流す。

正面左右の空気はカナードによってダウンフォースを作り、主にフロントタイヤの接地性を上げ、フロントフェンダー内の乱流は、オーバーフェンダーとボディサイドの隙間を使って後方へ流す。そしてリヤウイングは羽根の部分の下面のR形状と面積によってダウンフォースを生み、マシンを安定させるとというのが、エアロパッケージの構成要素だ。

ニュルブルクリンクに来てからの変更点では、リヤウイングの角度調整と支持剛性を上げるためにワイヤーを斜めに張り、テンションをかけた支持を1本追加してあった。

一方、冷却という点では、エンジンルーム内に多くの空気を取り入れる工夫をしているが、詳細は秘密!ということだった。それだけ、キーとなるポイントということだ。

そしてタービン本体の冷却、等速ジョイントの冷却も重要で、さらに言えばエンジン本体の冷却も重要項目だ。冷えているほど充填効率も上がりパワーが出せるからだ。そのため、たくさんのダクトを追加し、1℃でも2℃でも下げたいという狙いがある。

■インテリア

ドライビングにおいて、ひとつのキーとなっているのが、左足ブレーキだ。レーシングドライバーは左足でブレーキを踏む。カートと同じようにブレーキを踏みながらアクセルをあけることが一般的に行なわれているのだ。レーシングカートでも減速の時にブレーキを踏みながらアクセルをあおることで姿勢の乱れを防ぐことができるのを経験している人も多いと思うが、そうしたテクニックに似たことが使われているわけだ。

そのため、ブレーキペダルサイズを変更している。アクセルとクラッチの両ペダルは市販車と同じだが、ブレーキペダルは左に10mm、下へ20mm拡大し左足で踏みやすくしてある。

■スペシャルなタイヤ

最後にもうひとつ。装着するファルケンタイヤにも秘密があると思う。そこで住友ゴムのモータースポーツ部 開発担当の石橋隆志氏と久次米智之氏にも話を聞いた。

ご存知のように住友ゴムの開発しているタイヤの国内向けブランド名が「ダンロップ」で、欧州など国外では「ファルケン」というブランド名になる。そのファルケンタイヤがスバルWRX-STIのマシンに装着されているわけだ。そして、ニュルのこのレースで使用できるタイヤは市販のレース用タイヤというレギュレーションがあり、住友ゴムは、このWRX-STIで市販レース用タイヤを開発しているというわけだ。したがって、住友ゴムの開発スタッフも日本から、このレースに帯同して参戦していたのだ。

そして、雨中の激走を支えたレインタイヤだが、インターミディエイトのトレッドに手彫り加工したタイヤがこの日の雨にベストマッチしたタイヤだったということになる。このあたりも開発スタッフが目の前にいたということもいい方向に働いたのは間違いなく、そこで提供されたタイヤの最高の性能を引き出すことに成功したということだろう。

こうした様々なアイディアを盛り込んだWRX-STIは序盤と終盤にトラブルを発生しつつも、見事クラス優勝を飾った。ドライバーのレベルが高いことと合わせて、マシンのレベルも相当高いことがわかる。WRX-STIはSP3Tという2.0L以下+ターボというカテゴリーに参戦しているが、ライバルは、ゴルフ7-TCR、アウディTT 、オペル アストラであったが、他を全く寄せ付けない横綱レースだった。
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Posted at 2018/06/03 19:58:36

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