「想定内の進化」にとどまったインプレッサとプリウス【クリッカーオブザイヤー座談会 Vol.1】
2015年11月1日~2016年10月31日までに日本で発売された55台の中から、最も欲しい、優れているクルマを選ぶクリッカー・オブ・ザ・イヤー(CCOTY)。10点を入れたクルマについて各選考委員が座談会を行いましたのでリポートします。
司会(以下司):日本カー・オブ・ザ・イヤーのイヤカーに輝いたスバルインプレッサ。このインプレッサには2名の選考委員が10点をつけました。
A:新しいプラットフォームを採用したこと。そして200万円以下の価格で、アイサイトver.3や歩行者保護エアバッグを搭載できると証明したこと。これで、他のメーカーはもう安全装備は高いという言い訳ができなくなりましたから。この功績は大きいと思います。ただ、伊豆サイクルスポーツセンターのキレイな路面で試乗したときは素晴らしいと思ったのですが、名古屋から東京へロングドライブしたときは18インチの影響か、乗り心地が悪かったのはマイナスですけど。
B:完璧な10点ではないですけれど、新しいプラットフォームが生み出す走りの満足感は高いです。乗り心地は乗り比べてみると、17インチホイール装着車のほうが良い。18インチは硬すぎる。しかしトルクベクタリングは18インチホイール装着車しか採用されていないので、これは今後拡大してくれればもっと良い車になる。総合評価は相当高いと思います。これで水平対向じゃなければ……。
D:先代と比べると、ボディ剛性は相当高くなっているのは、走り出してすぐにわかります。私は17インチ装着車しか乗っていないのですけど、乗り心地は良かったです。そして静粛性は相当向上しています。
A:CVTは結構がんばったのだなと思います。
B:エンジン回転数と加速がリニアではないということにそろそろ慣れるべきではないかな。
C:ノートe-Powerにおいては全く関係ない話。CVTを評価しないのに、e-Powerを評価する人がいるのが理解に苦しみますね。それにしてもインプレッサはTV-CMが良いです。
A:愛ですか。
D:私は点数入れましたけど、せっかくプラットフォームを新しくしたのだから、エンジンも新型にしてもらいたかった。せっかくの新プラットフォームなのにエンジンに古さを感じます。
B:レギュラー化したことを評価しましょう。
C:デザインとかがんばったなぁと思うけど、マツダCX-5とか見てしまうと古さを感じてしまいます。あぁ、また一歩リードされたなと。
B:パット見てすぐにスバル車と分かる。それが価値かだと思います。統一性。これまでの国産車はこれがなかったですから。
D:ちょっと迫力不足な感じがしますけど。
A:名古屋から走って来たときに感じたのですけど、思ったよりまっすぐ走らないです。最初からアイサイトの力を織り込んでいるような感じです。
B:薄いタイヤを履いていることもあって、ステアリングを切ったときのクルマの動きがシャープすぎる。もっと緩いクルマがいいな。
C:私も点数入れていますけど、評価したポイントは歩行者保護エアバッグだけです。歩行者保護エアバックがこの価格でできると世の中に示したのは評価してあげたいです。最近のクルマはAピラーに超高張力鋼板を使用するようになり、攻撃性が強くなったから、歩行者保護エアバッグは必要でしょう。
B:歩行者エアバッグを付けることでボンネット高を下げられるので、デザインが変わる可能性あります。リトラクタブルヘッドランプ復活なんてことも……
C:それはいらないでしょ!
B:スーパーカー世代にはたまらない。
司:そのほかインプレッサで言いたいことありますか。
E:想定内すぎて、何もありません。
A:取り回しが変わらないとはいえ、40mmのボディの拡大はダメ。そろそろ、ボディの大型化を止めて高い安全性を確保すべきじゃないでしょうか。物理的な大きさというものがありますし。
B:もうボディを拡大して、安全性を高める時代は終わりにしないといけません。
D:新しいシャシー、高い安全性、そしてあの価格なら良いクルマといえます。
司:スバルインプレッサとCOTYを競ったのがトヨタプリウス。こちらはあまり点数が入っていませんが、いかがでしょうか。
B:進化は大きいと思いますし、燃費に特化している部分はスゴイですけれど。
C:プラットフォームは変わったと言いますが、走りや燃費自体はキャリーオーバー感が強いです。
F:デザインは新鮮だけど、全体としてインパクトが薄いです。
D:旧型と燃費テストしても、思ったより差が着かなかったのが残念。
C:パワーユニット自体が同じだから、大差がつくはずがない。本当はハイブリッドシステムも新しくしてもらいたかったけれど、THS-IIで40km/Lに届いたからからそれでいいやと思ってしまったのでしょう。
A:北米であまり売れていないと聞きます。
E:北米で売れていない理由はガソリン安だけではないでしょう。やはりデザインが厳しい。
F:一番の影響はガソリン安でしょう。消費という面からすれば良いのだけど。ガソリン価格の変化で購入するクルマをすぐに変えてしまいますから。
C:アメリカではハイブリッド車は優先ルートが走れないですから。
B:PHEVの発売が延期されたことの影響は大きかったかな。JC08モード燃費が20km/L以上のクルマは燃費で競争するのではなくて、もっとドライブフィールにこだわるべきだと思います。そろそろユーザーもハイブリッド車のカタログ燃費と実燃費の乖離には飽き飽きしているのかもしれませんね。
その2へ続く…
(クリッカー編集部)
【クリッカーオブザイヤー2016】スバル・インプレッサを10点としたワケ
「高くて良いモノ」は当たり前、「安くてイイモノ」こそ価値があるというと、白物家電じゃないんだからと言われそう。
「CCOTY(クリッカー・オブ・ザ・イヤー)」の投票、どうしても1000万円を超えるようなクルマに満点をつける気はせず、「そこそこ安くてイイモノ」を評価基準にして採点しました。
とはいえ、2016年の新車は不作でとくに上半期は寂しい状態でした。そんなリストの中から1位(10点)に選んだのはスバル・インプレッサ。
本音は「18インチ装着車は微少な揺れを常に伝える」、「高速域の直進安定性はVWゴルフの域には到達していない」、「CVTではなくATもしくはMTがあれば」などの突っ込み所もありますが、動的質感は日本車の念願であった欧州Cセグメントに追いついていて、静粛性の高さや実用車にふさわしいナチュラルなハンドリングは十分に満足できます。
さらに、安全装備も1.6L車でも抜かりはなく(トルクベクタリングのぞく)、先代よりも価格は多少上がったのも十分に納得できるところ。車両価格250万円出すならゴルフTSI Trendline(249万円)よりもインプレッサの方が装備は充実、価格もお得。
安心・安全で実用的なCセグメントとして欧州勢を含めても選ぶ価値は、マツダ・アクセラかインプレッサかというところ。
好みが分かれるデザインはインプレッサに限らずで、個人的には、実直過ぎる感もあります。それでも、相手がモデル末期とはいえベンチマークとしたVWゴルフも基本的には質実剛健な実用車。これからのさらなる熟成を期待させる存在です。
(文/塚田勝弘 写真/小林和久)
【意外なヒット】スバル レガシィ 初代…全面的な信頼をよせることはできなかった
なぜ期待されていなかったのか……。年末年始の読み物「意外なヒット」シリーズ。名前を聞けば誰もが知っているヒット作ながら、当初はそれほどの期待をされていなかったモデルを紹介しています。スバルの予想外ヒット車種として『レガシィ』があります。
レガシィと言えば、今でこそ名前が示す通り「後世に受け継がれてゆくもの」「遺産」として、現行型で6世代目となる大ヒット車種と広く認知されていますが、初代が発売された当初は今日の成功を誰も予想していませんでした。
レガシィが広く世に認知されるまでスバルの主力車種と言えば『レオーネ』であり、他メーカーに比べて垢抜けない雪国のおじさん車という印象を持たれていました。
そして当時のスバルの置かれていた状況は、バブル経済真っただ中だったにも関わらず、好景気とは程遠いものでした。好調だったアメリカ輸出への過度の依存により国内市場からは見放され、連日新聞紙面で他社による買収や吸収合併、倒産の危機が報道されるほどの厳しいものでした。
そんな中で久々に投入された新型車種であるレガシィは、主力車種の世代交代という冒険をしてまでレオーネの後継車にするわけにはいきませんでした。一定の評価を得てある程度の販売台数があったレオーネを捨て去ることはできず、レガシィを少し大型の上級セダンとして併売する戦略をとらざるをえませんでした。
当初はレオーネが世代交代するまでの中継ぎの意味も込めて発売されたレガシィでしたが、発売当初の1989年は折しもバブル経済の真っただ中、これまでより高級な大型車両の需要は高まりつつありました。同年10月にはワゴンに高出力なターボエンジンを搭載し、これまで実用一辺倒だったバン(ワゴン)の世界に「ツーリングワゴン」という新たなジャンルを生み出すことに成功します。
さらにはモータースポーツへの積極的な参戦によりスポーティなイメージはより強固なものとなります。レガシィといえばワゴン、高級スポーティワゴンといえばレガシィとして、これまでの雪国のレオーネ支持層以外の新たな顧客層を獲得することにも成功しました。
このレガシィの予想を裏切る大成功によりスバルは見事に持ち直し、その後レオーネは、『インプレッサ』によって世代交代を果たします。この時はすでにスバルの主力旗艦車種は、すっかりレガシィに取って代わっていました。
その後は広く知られているとおり、スバルの看板車種の座を27年間一度も明け渡すことなく、2014年には6世代目へと進化を果たしました。6代目ではツーリングワゴンが後継車種の『レヴォーグ』に継承され、セダンの「B4」とクロスオーバーSUVの「アウトバック」の2タイプによる展開となりました。これから先もレガシィのスピリットは後世まで引き継がれていくことでしょう。
【期待が外れた】スバル レヴォーグ…君しか愛していないって言ってたでしょ
ディスるわけではありません。ユーザーや関係者の期待は大きかった。しかし、しかし……。“残念な”モデルを紹介していきます。筆者はおなじみ岩貞るみこさん。年末年始の読み物「期待外れの車」シリーズ、好調。
ふれこみは、「国内専用モデル」だった。日本の市場にあわせ、日本の道で使いやすく、日本のユーザーの使い勝手に合わせたクルマ。もともとスバルのモノづくりは、ユーザーに迎合することなく、自分たちの作りたいものを作るという姿勢だ。ただ、それが突っ走りすぎて販売台数につながらないという側面も確かにあった。しかし、『レヴォーグ』。営業面での巻き返しをはかり、日本のユーザーに迎合ではなく「寄り添う」という姿勢を見せてきた。日本人のためにという一台だったはずなのだ。
ところが、実際のレヴォーグは、あれ? 大きい? たしかに『レガシィ・ツーリングワゴン』より全長が100mm短くなりましたよ。でも、4690mmってでかくない? 日本の細い道。昔からある狭い車庫。大きいクルマをとりまわすのが苦手な草食男子の増加。それらを考慮し、日本の使い勝手を本当に最優先したのかと問いたくなるサイズだ。あくまでも、「対レガシィ・ツーリングワゴン」の相対評価で縮んだだけで、絶対評価では、これ、大きすぎるってば。
そして私がいつもねちっこく言うインテリア。雑さ加減が、ここかしこにある。ほかのモデルから流用しなければならないフトコロ事情もあるだろう。けれどいまや部屋づくりに於いては、お金をかけずともIKEAもニトリもそのほかのブランドたちも、気持ちよく過ごせるインテリア家具や雑貨を展開している。ユーザーの生活は豊かになり、目は肥えているのだ。国内線用とつきつけてくるなら、もう少しがんばってほしかった。
と、思ったら、あれ? 2015年から欧州でも販売を開始している。さらにアジア~オセアニアでも売っているではないか。もしかして、これからもどんどん、販売地域を広げていくつもり? ちょっと待った。国内専用ではなかったのか。それって……、それって最初から、世界中で売る気だったでしょ。だから全長がそんな長さだったんでしょ。国内専用ですからって、君しか愛していないからって言っておきながら、うそつき! 真意のほどはわからないけれど、でも、そういわれても仕方ないよね。
実際問題としてスバルに限らず10年前のモデルから2回ないし3回フルモデルチェンジをするようなクルマであればサイズが全長も全幅も大きくなっている筈
そんでもって流行り廃りもあるからその時のトレンドを取り入れる
気が付けば軽自動車ですらタイヤのサイズが16インチとか装備してるもんね(BNR32も標準装着は16インチだったくらいですからって言いだすと横幅が~とか言われそうだけど)
衝突安全性と車内空間を両立させようとすればどうしてもサイズが大きくなってしまうのも今の時代には「致し方ない」部分だと思う
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2017/01/02 11:25:55