【新聞ウォッチ】欠陥エアバッグ問題で経営危機のタカタ、月内にも民事再生法申請へ
気になるニュース・気になる内幕---今日の朝刊(朝日、読売、毎日、産経、東京、日経の各紙・東京本社発行最終版)から注目の自動車関連記事をピックアップし、その内幕を分析するマスコミパトロール。
2017年6月16日付
●「日米韓連合」が優勢、東芝メモリ、ブロードコムを逆転、売却先、21日までに決定方針整(読売・10面)
●景気拡大53か月、戦後3番目、実感なきバブル超え(読売・12面)
●「官房副長官が指示」メール、獣医学部新設、加計有利の条件、文科省再調査(朝日・1面)
●「共謀罪」法成立、刑事司法の大転換点、民主主義の荒廃した姿(朝日・1面)
●トヨタ自動車がLINEと提携、「つながる車」開発(毎日・7面)
●米金利、8年半ぶり1%台、0.25%利上げ、保有資産も縮小(産経・2面)
●トヨタ労組体制刷新へ、11年ぶり委員長交代へ(産経・10面)
●ハリル監督が接触事故(産経・21面)
●タカタ民事再生法、月内にも申請で調整、負債1兆円超、製造業最大、米社傘下で再建、事業継続(日経・1面)
●車部品9割で即時撤廃、EU、対日関税で譲歩(日経・5面)
●スズキ、インド3000店体制へ、20年代前半1.5倍、農村に小型店(日経・14面)
●VAIO社長、吉田氏が就任(日経・14面)
●日本初の小型車専売店、メルセデス・ベンツ日本(日経・15面)
●VW不正車両2年保証延長、EUと合意(日経・15面)
ひとくちコメント
犯罪を計画段階から処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織的犯罪処罰法が野党の猛反対のなかで強行採決された。同じ日には安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」をめぐる文科省の再調査で「総理のご意向」と書かれた文書も見つかった。
相も変わらず永田町周辺の政治の世界がザワついているが、一方で企業問題に目を向けると「東芝メモリ」の売却先をめぐる攻防の話題が目白押し。そんな中、“賞味期限切れ”ともみられていた欠陥エアバッグの異常破裂問題で経営が悪化したタカタのニュースだが、きょうの日経が久しぶりに「タカタ民事再生法」との見出しで1面トップを飾っている。
記事によると、「タカタが民事再生法の適用申請に向け最終調整に入り、月内にも東京地裁に申し立てる」という。負債総額は1兆円を超えるとみられ、製造業の倒産としては、2016年に倒産したパナソニックプラズディスプレイの特別清算(負債総額は5000億円)や12年に倒産のエルビーダメモリ(同4480億円)を上回る規模になり、戦後最大となる見込みという。
法的整理を強く求めてきた自動車メーカーが「足並みをそろえたことで、高田重久会長兼社長ら創業家も法的整理案を受け入れざるを得ないと判断に至ったもようだ」とも伝えている。
米国でタカタ製エアバッグの異常破裂が原因で死傷事故が続出。タカタの大株主でもあるホンダが初のリコールを申請したのは2008年のことだった。
未だに明確な原因は明らかになっていないが、国内外の自動車メーカーを巻き込んだ大規模リコール問題は、裁判所の管理下で処理が進むことになる。目の上のタンコブだったタカタ問題も、足掛け10年の年月が流れてようやく収束に向けて新たな段階に入る。
「タカタ」はなぜ転落したのか。超優良メーカーが「民事再生法適用の申請へ」と報じられるまでの軌跡
欠陥エアバッグ問題で経営危機に陥った自動車部品メーカーのタカタが、東京地裁に民事再生法の適用を申請へ向けて最終調整に入ったと朝日新聞デジタルなどが伝えた。史上最大規模のリコール(回収・無償修理)によって、実質的な負債総額は1兆円を超えるとみられている。
タカタ製エアバッグの異常破裂を巡っては、因果関係が特定できないものも含め世界で17人が死亡。そのうちアメリカで11人が亡くなっており、今後も事故の被害者や遺族などからの訴訟で債務が膨らむ可能性がある。自動車メーカーからは、裁判所の管理の下で明確に負担額を決めておく法的整理を求める声が強まっていた。
日本が誇る超優良企業とされていた「タカタ」は、なぜ転落したのか。
●何が起きたのか
タカタに一体何が起きたのか、簡単に説明すると…
■タカタのエアバッグで2000年〜2008年の間に製造されたものに、破裂につながる不具合があった。
■タカタは不具合があることを認識しながらも数年間に渡り、事実を隠蔽して製造・販売を続けていた。
■アメリカで2014年にNYタイムズなどに大きく報じられ、大規模なリコールへ発展。
■最終的に負債額は1兆円を超える規模に膨らんでいるとみられている。
時系列でタカタをめぐって起きた出来事を紹介する。
●2000年頃~ 不具合のあるエアバッグが製造・出荷されはじめる
問題となった、不具合のあるエアバッグは、2000年〜2008年ごろアメリカ国内の工場で作られた。ホンダ、トヨタ自動車など国内外の10社の車に載っていたという。朝日新聞2014年11月7日の朝刊が伝えた。
●2004年 エアバッグの破裂を隠蔽?
タカタは、社内で行なったエアバッグの部品の試験で破裂につながる兆候が出た結果を隠蔽していた。タカタは、米アラバマ州でエアバッグが破裂した事例報告があった後、ミシガン州の米国本社で、通常の業務時間外に秘密裏にエアバッグの試験を行なった。試験では事故時にエアバッグを膨らませる「インフレーター」と呼ばれる部分にひびが入り、破裂につながる兆候が見つかった。だが、タカタの幹部はこのデータを消去させ、部品をゴミとして処分させていた。米ニューヨーク・タイムズが2014年11月7日に伝えた。産経ニュースなどによると、タカタはこの後の公聴会で、隠蔽の事実を否定した。
●2014年9月 米NYタイムズが隠蔽を報道
米ニューヨーク・タイムズがリコールの原因であったエアバッグの欠陥をホンダとタカタが長く認識していた、と報道。米国で大きな騒動に発展。米ニューヨーク・タイムズが9月12日に速報として伝えた(その後11月に詳報した)。
●2014年10月 集団訴訟へ
米高速道路交通安全局(NHTSA)はホンダがエアバッグの不具合に関連した死傷事故の報告を怠っていた可能性があるとして、調査を始めた。
米国内の消費者らは2015年2月、重要な情報を消費者に隠していたなどとして、タカタ、トヨタ、ホンダなど12社を相手取り、フロリダ州の連邦地裁に対し、損害賠償を求める集団訴訟を起こした。また、事故にあった被害者は公聴会で証言をした。
●2014年11月 公聴会に呼ばれる
タカタは、この問題について米議会公聴会に呼ばれた。公聴会には、タカタの品質管理を担当する東京本社品質本部の清水博シニア・バイス・プレジデントに加え、ホンダ、クライスラー幹部2人らが出席した。
米国ではこの時までに、タカタのエアバッグに関連したとみられる事故で5人の死亡が判明していた。公聴会では、米議員が5人全員の死亡についてタカタに「全面的な責任」を取るよう迫る場面があった。
これに対し清水氏は5人のうち2人の死亡事故についてはまだ調査中だと述べ、この時点で全責任を負う姿勢までは示さなかった。ただ死亡事故に関連し、エアバッグに異常があったことは認めた。
また、清水氏は被害者らに対する謝罪を述べたが、米メディアが報道した不具合の「隠蔽」については否定したと産経ニュースなどが伝えた。
タカタは「原因が特定されていない」ということを盾に対応を後手にしてきたことによって、米国メディアを中心に大きな批判を浴びた。また、公聴会にタカタの代表として出席した清水氏は取締役ですらなく、問題発覚以降、経営トップである高田重久・会長兼最高経営責任者(CEO)とステファン・ストッカー社長兼最高執行責任者(COO)が表舞台に一切姿を見せないことにも、不信感と批判が相次いだ。12月にストッカー氏は自ら社長を辞任した。
●2015年5月 エアバッグの不具合を認める
タカタが、これまでの姿勢を一転し、全面的にエアバッグの欠陥を認めた。米運輸省に対して全米で約3,400万台のリコール(回収・無償修理)を行うと合意。タカタが前面に出て、トヨタ自動車やホンダなど11社の自動車メーカーなどとリコールを進めるとした。米国で史上最大規模のリコールであった。
前年の11月に当局がリコール対象を全米に拡大するよう要求したが、タカタは「原因が特定されていない」などとして支払いを拒否していたため、ホンダなどが自主的にリコールを進めていた。2月にNHTSAが、当局の調査へのタカタの協力が「不十分」だとして罰金を科すと発表し、対立は深まっていた。
タカタの"全面降伏"に対して、米運輸長官は会見で「タカタは今まで欠陥を認めてこなかった。だが、今日それが変わった」と語ったという。
●2015年11月 ホンダが決別宣言
ホンダが、タカタ製エアバッグ部品を今後一切使わないと米国で発表。米国での集団訴訟の動きなどを受けて、「タカタと距離を置いていることをアピールする狙いがあったのでは」という見方もあり、「蜜月関係」ともされていたホンダとタカタが決別することになった。
●2017年1月 隠蔽を認め、和解金10億ドル(約1150億円)支払いで合意
米司法省はタカタが和解金10億ドル(約1150億円)を支払うことで同社と合意した。またタカタの元幹部3人が、製品の欠陥を知りながら隠蔽していたという詐欺罪で刑事訴追された。タカタ側は詐欺罪を認めた。
裁判所は、罰金と被害者補償基金、自動車メーカー向けの補償金を合計した約10億ドルの支払いを命じた。
●2017年4月 経営再建に向けて調整へ
タカタの主要債権者である自動車メーカーが、経営再建に向けた最終的な調整に入ったと朝日新聞デジタルなどが伝えた。
世界で1兆円超に上るリコール費用の大半を肩代わりするメーカーは、裁判所の関与のもと、公平に負担額を確定させる法的整理を主張したという。
タカタ、早ければ来週にも民事再生法申請へ=関係筋
[東京/ニューヨーク/ワシントン 16日 ロイター] - 欠陥エアバッグの大規模リコール(回収・無償修理)問題で経営が悪化しているタカタ<7312.T>が早ければ来週にも民事再生法の適用を東京地裁に申請する方向で準備に入った。複数の関係筋が15日までに明らかにした。負債総額は1兆円超とみられ、タカタは事業を継続しながら裁判所の管理下で再建を図ることになる。
関係筋によれば、米国子会社のTKホールディングス(ミシガン州)も日本の民事再生法に当たる米連邦破産法11条の適用を申請する方針。タカタは出資を伴う支援企業として中国・寧波均勝電子<600699.SS>傘下の米自動車部品メーカー、キー・セーフティ・システムズ(KSS)と協議を続けているが、日米での適用申請前にKSSとの最終合意に至らない可能性もあるという。
再建計画ではKSSがタカタのシートベルトなど主要な事業を総額2000億円弱で買収して新会社を設立。一方、リコール費用などの債務は旧会社に残し、債権者への弁済を担う。部品の安定供給を維持するため、取引金融機関はタカタの下請け会社などへの資金支援を続ける。
タカタ製エアバッグのリコール問題をめぐっては、関連事故で米国など海外で死亡者が16人、負傷者が180人超に上っている。リコール対象は世界で1億個規模に膨らみ、費用の総額も1兆円を超える見通し。
タカタはこれまで不具合の責任の所在が特定できておらず自動車メーカーとの費用負担の割合を「合理的に見積もるのは困難」としていた。そのため、ホンダ<7267.T>など国内外の自動車メーカー各社はリコール費用の大半を負担しており、今後は同費用を債権として届け出る予定だ。
タカタは昨年2月、弁護士などからなる外部専門家委員会を発足させ、再建計画の策定を委託。同委員会と最大債権者である自動車メーカーは、法的整理を前提としたKSS主導の再建策を練っていた。
しかし約6割の株式を保有する高田重久会長兼社長らタカタ創業家は、法的整理に踏み切れば下請け会社からの部品供給が滞るとして、日本のタカタについて裁判所の関与しない当事者間の話し合いによる私的整理を主張し続けてきた。
ただ、私的整理で大口債権者と合意できたとしても、事故の被害者などからの損害賠償請求による財務悪化は避けられず、創業家も法的整理を受け入れざるを得なくなったとみられる。
タカタの2017年3月期の連結決算は最終損益が795億円の赤字(前期は130億円の赤字)で3年連続の最終赤字だった。自己資本は約302億円。自己資本比率は前期の27.5%から17年3月期は7.0%と急減していた。
*内容を追加しました。
(Jessica DiNapoli,David Shepardson, 白木真紀)
まぁ、どちらにせよKSSって所も中国メーカーの傘下って事みたいだしやや胡散臭さがあるからそのまま潰れて全世界の自動車メーカーが大損をするって流れになりそうな気がするな~
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2017/06/17 22:04:19