新連載!インプレッサWRX STIの系譜(1) インプレッサWRX タイプRA(1992年)
以前に三菱 ランサーエボリューションの系譜を紹介したが、ライバルたるスバル・インプレッサWRX STIの系譜も紹介していこう。まずは、STI登場の前に初めてWRXの名が与えられた、1992年発表のモデルからだ。
WRXの名を冠した初号機。レース仕様のタイプRAも設定
「インプレッサWRX(E-CD9A SNGF):1992年10月発表・発売」
三菱同様、WRCで戦うには大きく重いレガシィに手こずっていたスバルは、1992年に誕生したインプレッサをWRC戦略車に仕上げるべく、レガシィで実績を上げてきたEJ20型2Lボクサーターボエンジンを搭載した「WRX」をシリーズの頂点に据えた。
改良されたEJ20型は、ダイレクトプッシュ式バルブ駆動、大容量高速型水冷ターボ、高出力タイプのタービンブレード、高効率空冷インタークーラーなどの採用により、レガシィRS用を20㎰/3.5kgm上回る240㎰/31.0kgmまでチューンされていた。
これをレガシィRSより110kg軽いボディと組み合わせてパワーウエイトレシオは5kg/psを達成。
さらに装備を簡略化したモータースポーツベース車、タイプRAは各部を強化したラリータイプサスを装備しながらも4.88kg/㎰の身軽さを実現して、戦闘力の高さを印象付けた。
4WDシステムはベベルギア式センターデフとビスカスLSDを一体化。前後の回転差が生じた時、通常50:50の前後トルク配分を自動制御する方式を採用。これにリア・ビスカスLSDを組み合わせて摩擦係数の低い路面での走破性と安定性を大幅に高めている。
WRXは93年の1000湖ラリーからWRCに参戦。初戦でA.バタネンが2位に入る活躍を見せた。熟成が進んだ翌94年はドライバーズ(C.サインツ)、マニュファクチャラーズともに2位に食い込み、トヨタ(セリカ)、三菱(ランエボ I)と世界の頂点で競える戦闘力の高さを見せつけている。
インプレッサWRXタイプRA(1992年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4340×1690×1405mm
●ホイールベース:2520mm
●重量:1170kg
●エンジン型式・種類:EJ20型・水平対向4 DOHCターボ
●排気量:1994cc
●最高出力:240ps/6000rpm
●最大トルク:31.0kgm/5000rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:205/55R15
●価格:210万8000円
インプレッサWRX STIの系譜<その2> インプレッサ WRX STi(1994年)
以前にランサーエボリューションの系譜を紹介したが、ライバルたるスバル・インプレッサWRX STIの系譜も紹介していこう。今回は、初めてSTiの名が冠された1994年のモデルだ。
月産わずか100台の受注生産車としてスタート
「インプレッサWRX STi(GC8):1994年1月発表・発売」
インプレッサWRXでハイパワーセダン市場に確固たる足場を築いたスバルは、WRCで英国プロドライブ社と連携してワークスチームを運営しているSTiが手がけたチューニングカー、WRX-STiを送り出す。
1994年9月末までの限定販売で、セダン/ワゴン合わせて月100台受注生産する改造車なのでJAF/FIAのホモロゲーション(公認)は取れないが、STiの魔力を知るファンにはこの上ない魅力的なモデルだった。
エンジンは鍛造ピストン&ピン、軽量ハイドロラッシュアジャスター、専用ECU、IC(インタークーラー)ウオータースプレー、大径マフラーなどの採用で、WRXより10㎰アップの250psを発生。トルクも31.5kgmまで強化されている。またワゴンにも同じエンジンが搭載されるのも魅力だった。
駆動系などはWRXと変わらないが、セダンの大型スポイラーやタイプRAと同じBSエクスペディアのタイヤがスタイリングに迫力を与えている。
94年11月にはタイプRAをベースにしたタイプRA STiが月50台の受注生産で登場する。エンジンは強化シリンダーヘッドを備え275ps/32.5kgmまでチューンされたが、技術的ハイライトはセンターデフにSTiオリジナルのDCCDが採用されたことだった。
これは遊星歯車式センターデフに電磁クラッチ式LSDを組み合わせたもので、センターデフのロック率をフリーからロックまでマニュアルで制御できるシステムのこと。これによりタイプRA STiは他を寄せ付けない圧倒的な運動性能を発揮することになる。
インプレッサ セダン WRX STi(1994年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4340×1690×1405mm
●ホイールベース:2520mm
●重量:1220kg
●エンジン型式・種類:EJ20型・水平対向4 DOHCターボ
●排気量:1994cc
●最高出力:250ps/6000rpm
●最大トルク:31.5kgm/3500rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:205/55R15
●価格:277万8000円
インプレッサWRX STIの系譜<その3>インプレッサWRX タイプRA STiバージョンII(1995年)
ランサーエボリューションとともに、WRC競走用ベースマシンにして公道最速を目指した究極のロードカー、スバル・インプレッサWRX STI。その系譜を紹介していこう。今回は、STiバージョンIIだ。
スバルファンに定着したSTiは、さらに速さを求めた
「インプレッサWRX タイプRA STiバージョンII(E-GC8/E-GF8):1995年8月発表・発売」
STiチューンの反響の大きさに触発されたスバルは、1995年にSTiバージョンIIを投入する。まだ翌年3月までの期間限定受注生産だったが、STiの手がけたスペシャルモデルは確実にユーザーの支持を集めていた。
グレード展開はセダン/ワゴンに加え、前年11月に鳴り物入りで登場したタイプRAの3種で、エンジンはタイプRA用にSTiがチューンした275ps/32.5kgm仕様のEJ20型ターボをワゴンを除く全車に搭載した(ワゴンは260ps/31.5kgm)。
想定される連続高負荷運転に対応するため、大容量水冷ターボは高出力タービンの採用と排気系の抵抗低減、大型空冷IC(インタークーラー)採用などの対策を実施。さらにタイプRAはICウオータースプレーを装備して熱対策に万全を期している。
駆動系はSTiバージョンIIにべベルギア式センターデフ付きフルタイム4WDを装備するが、タイプRAにはコンペティティブな使い方に備え、先代同様センターデフにDCCD/リアに機械式LSDを搭載して旋回性能とコントロール性を高めている。
同時にタイプRA専用オプションとして13:1のクイックステアリングギアボックスを設定して、素早い操作を可能にするなど、ラリーで勝つための装備が惜しみなく投入された。
インプレッサ555で戦った94年のWRCではドライバーズチャンピオンこそ逃したものの、マニュファクチャラーズチャンピオンの座を得るなど、輝かしい成績を残している。
インプレッサWRX タイプRA STiバージョンII(1995年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4340×1690×1405mm
●ホイールベース:2520mm
●重量:1200kg
●エンジン型式・種類:EJ20型・水平対向4 DOHCターボ
●排気量:1994cc
●最高出力:275ps/6500rpm
●最大トルク:32.5kgm/4000rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:205/50R16
●価格:272万8000円
インプレッサWRX STIの系譜<その4>インプレッサWRX STiバージョン III & IV(1996・97年)
ランサーエボリューションとともに、WRC競走用ベースマシンにして公道最速を目指した究極のロードカー、スバル・インプレッサWRX STIの系譜を紹介していこう。今回は、STiバージョンのIIIとIVだ。
バージョンIIIからカタログモデルに。クーペもラインアップ
「インプレッサWRX STiバージョン III(GC8型:1996年9月発売)/IV(GF8型:1997年9月発売)」
1995年のWRCでドライバーズ/マニュファクチャラーズのダブルタイトルを獲得して波に乗るスバルは、それまで改造車だったSTiバージョンをカタログモデルに昇格させる。
MASTER 4に進化したエンジンは最高出力が自主規制値の280psに到達した。しかしSTiバージョンIIIはメタルガスケット、鍛造モリブデンコートピストン、専の大流量ターボ、93φの大口径低背圧マフラーなどの採用でトルク値をベースのWRXより+1.5kgmとなる35kgmまで上げてきた。
レブリミットは7900rpmになり、高回転高出力型の性格をいっそう明確にしている。タイプRA STiのインタークーラー・ウオータースプレーがオートになったのもバージョンIIIからだ。
クイックシフトリンケージを採用した専用のトランスミッションは高出力化に合わせ強化型となり、トルクの増大に対応してリアデフおよびリアアクスルのサイズアップが図られている。
駆動系は変わらず、STiバージョンIIIがベベルギア式センターデフ+リアビスカスLSD、タイプRA STiバージョンIIIはDCCD+リア2ウエイ4ピニオンの機械式LSDの組み合わせを継続採用している。
1997年には、一部改良を受けてSTiバージョンIVに進化。エンジンは最大トルクが36kgmに達し、タイプRA STiのリアブレーキが15インチ対向2ポットになったほか、クーペのタイプR STiバージョンIVが新設定されたのがポイントだろう。
インプレッサ ワゴンWRX STiバージョンIII(1996年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4340×1690×1440mm
●ホイールベース:2520mm
●重量:1300kg
●エンジン型式・種類:EJ20型・水平対向4 DOHCターボ
●排気量:1994cc
●最高出力:280ps/6500rpm
●最大トルク:35.0kgm/4000rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:205/50R16
●価格:288万5000円
インプレッサWRX STIの系譜<その5>インプレッサWRX STiバージョンV(1998年)
ランサーエボリューションとともに、WRC競走用ベースマシンにして公道最速を目指した究極のロードカー、スバル・インプレッサWRX STIの系譜を紹介していく連載企画。今回は「STiバージョンV」だ。
WRCチャンプの実力を、そのまま市販車に移植
「インプレッサWRX STiバージョンV(GC8型:1998年9月発売)」
EJ20型エンジンのチューンを突き詰め、もはや大幅なトルクアップが望めなくなったバージョンVは、空力と操安の向上に力を注いだ。
空力ではエンジン及びブレーキの冷却効率を高めつつCd値を低減させた新デザインのフロントバンパー&フロントグリルや、高速走行時の操縦安定性を高めるWRカー タイプの大型リアスポイラーを採用。迫力あるスタイリングとするだけでなく、とくに高速域でのスタビリティを高めている。
一方、操縦安定性の向上にはボディ剛性アップやバネ下の軽量化に加え、初めて倒立式ストラットを採用したのがポイントだ。これにより剛性が通常のストラットの約3倍にアップし、コーナリング時の安定性が飛躍的に向上した。
さらにタイヤもタイプRAとRにブリヂストンのポテンザRE010を設定。強力なグリップを得て、コーナリングスピードは量産車最高レベルに達した。
これに従来型を継承するDCCD+リア機械式LSDでトラクションを確保し、ブレーキもフロントローターを標準のWRXより17mm大径の249mmφにして強力な制動力を実現し、動力性能の全体的な底上げを図っている。
フェーズIIとなったエンジンは、従来型の改良に加え、吸気ポート形状やカムプロフィール、インジェクターの変更などで低中速トルクを増強。出力/トルク値は変わらないがトルクの谷が改善され、加速性能が向上した。
トランスミッションはタイプRAとRにストロークを40mmに短縮したスーパークイックシフトが組み合わされている。
インプレッサWRX STiバージョンV(1998年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4340×1690×1405mm
●ホイールベース:2520mm
●重量:1250kg
●エンジン型式・種類:EJ20型・水平対向4 DOHCターボ
●排気量:1994cc
●最高出力:280ps/6500rpm
●最大トルク:36.0kgm/4000rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:205/50R16
●価格:291万9000円
インプレッサWRX STIの系譜<その6>インプレッサWRX STiバージョンVI(1999年)
ランサーエボリューションとともに、WRC競走用ベースマシンにして公道最速を目指した究極のロードカー、スバル・インプレッサWRX STIの系譜を紹介していこう。今回は第1世代の最終型、STiバージョンVIだ。
限界までチューンし尽くした第1世代WRX STiの最終型
「インプレッサWRX STiバージョンVI(GC8型:1999年9月発売)」
GC8系インプレッサをベースとした最終モデルとなるSTiバージョンVIは、メカニズム面での改良はやりつくした感があり、バージョンIから積み上げてきた性能向上策をすべて取り入れた上で、完全な調整を図る方向でチューニングされた。
エンジン、シャシ、空力向上策の集大成でもあり、最も完成されたGC8型のSTiバージョンと言ってもいい。
スバルは「バージョンVIとなるにあたって、ひとつの課題が高速走行時における空力性能のアップだった」と言い、STi全車のリアスポイラーの翼断面形状を一新してリアのダウンフォースを高めたほか、タイプRAを除くSTiモデルのフロントバンパー下部にアンダースポイラーを追加してリフトを低減させている。
さらに、車体の軽量化はもとより、フロントまわりの荷重を軽減して回頭性の向上に貢献する軽量なアルミボンネットを全車に採用。こうした細かい改良の積み重ねで、ハンドリングは一段と凄みを増した。
バージョンVでフェーズIIに進化したエンジンは、バージョンVIでも出力/トルク値は変わらないが、トルクの谷を解消した出力特性により発進・加速性能を向上させた長所を生かしきるため、タイプRAとタイプR STiは専用クロスレシオのトランスミッションを採用。さらにSTi全車にストロークを40mmに短縮したスーパークイックシフトが組み合わされた。
バージョンVIはGC8型STiの最後を飾るにふさわしい熟成されたモデルだったと言えるだろう。
インプレッサ・クーペWRX STiバージョンVI(1999年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4350×1690×1405mm
●ホイールベース:2520mm
●重量:1260kg
●エンジン型式・種類:EJ20型・水平対向4 DOHCターボ
●排気量:1994cc
●最高出力:280ps/6500rpm
●最大トルク:36.0kgm/4000rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:205/50R16
●価格:300万9000円
初代インプレッサは1992年スタートで2000年まで
2代目インプレッサは2000年から2007年
3代目インプレッサは2007年から2011年
(初代インプレッサXVが2010年から2012年)
4代目インプレッサで2011年から2016年
(2代目となるスバルXVが2012年から2017年)
WRX系がVA系として独立したのが2014年から
5代目インプレッサは2016年から
(XVは2017年に3代目となっています)
A型からスタートして初代インプレッサはC型がC1、C2と2年ありながらG型までありましたので
エンジン型もWRX STiでよく言われるEJ20G→EJ20K(マスターボクサー4)→EJ207(フェイズ2)とよく言われる遍歴もありますから
エンジンラインナップも
EJ15のSOHC
EJ16のSOHC
EJ18のSOHC
EJ20のSOHC
EJ20のDOHCでNA
EJ20のDOHCターボ(素のWRX)
EJ20のDOHCハイパワーターボ(STi用)
そして22B専用のEJ22のDOHCターボ
しかも初代インプレッサはスポーツワゴンに1.8の初期だけエアサス仕様のGFAって型式も存在したんですよ(初代レガシィ、2代目レガシィまではエアサス設定がありました)
2ドアクーペも初代インプレッサだけでしたからね…
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富士重工 | 日記
Posted at
2019/05/25 20:43:00