2019年07月17日
GT3シリーズとは別のアプローチ
WEC:新型911 RSRを発表したポルシェ、2019年型開発にあたってはターボ化も検討
ポルシェは7月6日、イギリス・グッドウッドで2019年型最新GTEカーとなるポルシェ911 RSRを公開したが、このマシンの開発段階では他メーカーと同様にエンジンのターボ化を議論したという。
WEC世界耐久選手権の2018/2019年“スーパーシーズン”、ドライバーとマニュファクチャラーのダブルタイトルを獲得したポルシェは先日、王者防衛のためのニューウェポンを世界初公開した。ポルシェ911 RSRというモデル名に変わりないが、この2019年型ではボディワークやコクピット周り、エンジン、エキゾーストの取り回しなど、さまざまな改良がなされている。
同モデルの開発にあたってポルシェは、伝統の水平対向6気筒自然吸気エンジンからターボエンジンへの切り替えも検討したという。
ポルシェGTのファクトリーモータースポーツ部門を束ねるパスカル・ツアリンデンは「そのアイディアは、2019年モデルの開発がスタートした2017年の段階で議題に上ったが、最終的に採用を見送ることにした」とSportscar365に語った。
このため、ポルシェはWECや北米のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権でライバルとなるフェラーリ、アストンマーティン、フォード、BMWが近年、ターボエンジンを搭載したGTEカーをリリースするなかで“NAフラット6”を継続している。
また、現行モデルのC7.Rでは自然吸気エンジンながら、シボレー・コルベットも次世代モデルではターボエンジンへの切り替えが行われることが予想されており、2020年までに、ポルシェはGTEマニュファクチャラー内で唯一のNAエンジン採用メーカーとなる見通しだ。
「我々は他社の動向についても議論をした。しかし、自然吸気でもターボエンジンと同じパフォーマンスを発揮できると判断した」とツアリンデン。
「私たちは自分たちが掲げたコンセプトに従うことにしたんだ。ターボを採用すれば、(補機類によって)クルマの重量が増してしまう。また、新しいシステムが追加されることになる。現時点よりクルマを複雑にする必要はなかった」
「我が社の市販ポルシェ911 GT3 RSに採用されているのは自然吸気エンジンだ。なので、この伝統を守ることにしたんだ」
■エキゾースト位置の変更による4つのメリット
2019年型ポルシェの特徴のひとつは、エキゾーストがリヤから後輪前方のサイド出しになった点だ。
この変更についてツアリンデンは4つの理由があると語り、「ひとつめはパッケージングとエアロダイナミクスを考えてのことだ。排気口をサイドに移すことでリヤの空間をより自由に使えるようにした」と説明した。
「ふたつめの理由は重量だ。リヤタイヤの前方という場所は、リヤアクスル前方に置かれるボクサーエンジンから最短距離の位置にある。(エキゾーストパイプが短ければ)その分だけクルマは軽くなる」
「そして、3つめはエンジントルクの増加を狙ったものだ。トルクを増すことでクルマのドライバビリティがわずかに向上している」
「また、従来型において我々はエキゾーストにダメージを与えるような、後方からの追突が増えていることを学んだ。サイド排気にすることで競合するマシンからのダメージがずっと抑えることができると考えたんだ」
また、彼ははボンネット上の給油ダクトのアプローチ変更についても言及。
「クルマを見てもらえれば分かるように、給油口を右側から左側に変更できるようになっている」とツアリンデン。
「エアロダイナミクスの観点からこの部分をみたとき、給油口のあるボンネット後部は開いていても、閉じていても大きな違いはないことが分かったんだ。そのため、両方とも開いたままにしておくことにした。デザイン的にもよくフィットしているしね」
ポルシェ、WEC&IMSA用”新型911RSR”をグッドウッドで公開
ポルシェはグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで、最新型のポルシェ911RSRを発表した。このマシンは、今年の9月にシルバーストンで開幕する、WEC(世界耐久選手権)の2019-2020シーズンにデビューし、LM-GTE Proクラスを戦う予定。2020年のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権にも投入されるという。
なおWECデビュー前の8月には大規模なテストプログラムが計画されている。
ポルシェのGTモータースポーツのボスであるパスカル・ズーリンデンは、この新型911RSRについて「95%が新設計だ」と語った。
「次の3年間のホモロゲーション期間に向けて、我々はマシンの開発において重要な進歩を遂げた。特にドライバビリティの複雑な部分、効率性、耐久性、そして作業性などについてだ」
「前のマシンから変わっていないのは、ヘッドライトやブレーキシステム、クラッチ、ドライバーズシート、サスペンションのパーツなどだ」
WECのスーパーシーズンでLM-GTE Proクラスでタイトルを獲得したケヴィン・エストレとミハエル・クリステンセンは、新シーズンも引き続き92号車をドライブする予定だ。また、ジャンマリア・ブルーニとリチャード・リエツのコンビが、引き続き91号車を走らせる。
なお今シーズン限りでフォードとBMWが同クラスから撤退。前述の2台のコンビは、フェラーリやアストンマーチンと覇権を争うことになる。
ポルシェが新型911 RSRを、WEC投入に先駆けグッドウッドで初公開!
Porsche 911 RSR
ポルシェ 911 RSR
LM-GTEクラスでの王座防衛が至上命題
ポルシェはFIA世界耐久選手権(WEC)のル・マンGTエンデュランス(LM-GTE)におけるタイトル防衛を目指し、2019-20年シーズンから新型「911 RSR」を投入する。「911 RSR」はヴァイザッハにおいてFIA GTE規定に則って開発されており、今年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードにおいて、世界初公開された。
先代「911 RSR」は2018-19年シーズンのWECにおいて、LM-GTEクラスのドライバーズ選手権とマニュファクチャラーズ選手権のダブルタイトルを獲得。さらに、2019年に開催されたル・マン・エンデュランス・クラシック、IMSAのセブリングとロード・アトラントなどでも勝利を飾っている。
成功した先代モデルを超えることを開発目標に
新型「911 RSR」を開発するあたって、多大なる成功を収めたレース活動からのフィードバックが積極的に投入されている。ポルシェ・モータースポーツ副社長のフリッツ・エンツィンガーは「911 RSR」の開発ターゲットを以下のように説明した。
「2017年に投入された先代『911 RSR』はWECだけでなく、北米やヨーロッパの耐久シリーズにおいて、20回以上のクラス優勝を達成しています。開発におけるターゲットは、成功したモデルにさらなる改良を施すことでした。ヴァイザッハのエンジニアは、この難しいミッションを完璧に成し遂げたと断言できます」
先代をベースにしながら95%が新設計
ポルシェのGTファクトリー・モータースポーツ部門のディレクター、パスカル・ズーリンデンは開発に際して全てのレース活動が詳細に分析されたことを明かした。
「我々は勝利に酔うようなことはありませんでした。今回、開発にあたり『911 RSR』を使用していたファクトリーチーム、プライベーターの参戦状況を分析しています。その結果、エンジニアはまだ開発の余地があると気がついたのです。今後3年間のホモロゲーション期間を想定し、ドライバビリティ、効率性、耐久性、メンテナンス性など、多岐にわたって大幅な進化を遂げています」
「新型『911 RSR』は実に95%が新しくなりました。キャリーオーバーされたのは、ヘッドライト、ブレーキシステム、クラッチ、ドライバーズシート、サスペンションパーツの一部くらいです。これまでのところ、テストは順調に進んでいます。すでにWECの2019-20年シーズン開幕が待ちきれないほどです」
ポルシェ・ワークス史上最も大きな排気量
搭載されるのは4194cc水平対向6気筒自然吸気ユニット。参戦する選手権によってリストリクター径が異なるものの、最高出力は約515hpを発揮する。
この新開発のエンジンは先代から排気量が200cc拡大し、ポルシェ・ワークス製911に搭載されるエンジンとしては過去最大となる。あらゆる回転域において安定したパワーを発揮し、剛性アップを果たした6速シーケンシャルギヤボックスを介してリヤを駆動する。また、エキゾーストパイプは2本に分かれ、リヤホイールハウス前方から側方排気される。
側方排気を採用したことで、リヤディフューザーのスペースが拡大。リヤウイングも含めて、ダウンフォースレベルは大幅に増加した。また、フロントからサイドにかけてリヤへと流れるエアフローが最適化されたことで、エアロダイナミクス効率とスタビリティも向上。この結果、レース中のタイヤ耐摩耗性能もアップしている。
耐久レースで重要なドライバビリティと整備性の進化
ポルシェは今回の「911 RSR」開発にあたり、耐久レースにおける最も大切な要素であるドライバビリティと整備性に重点を置いた。コクピットは居住性の向上を目指してレイアウトを刷新。ここは多くの参戦ドライバーからのフィードバックが活かされた形だ。
また、先代モデル同様にカーボンファイバー製ボディパネルは素早い交換が可能。耐久レースにおいて効率的なピットワークを実現する。F IA規定に準拠した最新安全デバイス、衝突安全性も確保された。
9月のシルバーストーン4時間レースで実戦デビュー
「我々は2017年以来、新型『911 RSR』のコンセプト作りをスタートしました。最初のデザインはCADを使用し、2018年8月にはヴァイザッハのプライベートトラックでシェイクダウンが行われています」と、ズーリンデンは初期の開発過程を説明する。
2018年9月からテストプログラムを拡大する一方、並行してポルシェの風洞施設でエアロダイナミクスの微調整も行われた。
「開発期間中のエポックな出来事として、2019年3月に行われたポール・リカール・サーキットでの長距離テストがあります。その場にはWECとIMSAを戦うファクトリーチームも参加し、ノートラブルで30時間を走行。6000kmものマイレージを稼いでいます。そして、2019年7月1日にFIAホモロゲーションも取得しました」と、ズーリンデンは付け加えた。
「911 RSR」は、グッドウッドでのお披露目に続き、9月1日に開幕するWEC 2019-20年シーズン開幕戦シルバーストーン4時間レースで、実戦デビューを飾る。
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ポルシェ | 日記
Posted at
2019/07/17 22:29:11
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