スバルの名機「EJ20」が30年の歴史に終止符! 現行ラインナップで「WRX STI」だけが搭載し続けた理由
■EJ20エンジンの生産が終了することでWRX STIも終了へ
クルマ好きの間で人気の高いスバル「WRX STI」が、2019年12月の末に受注を終了します。その後に生産も終えますが、同じWRXでも「S4」は引き続きラインナップされます。
なぜSTIのほうだけ生産が終了するのでしょうか。
STIのみが終了する理由は、S4とはエンジンが異なるからです。WRX STIは水平対向4気筒の「EJ20型」を搭載しており、トランスミッションは6速MTです。生産を続けるWRX S4は、「FA20型」のエンジンを搭載して、トランスミッションはCVT(無段変速AT)になります。
WRX STIに搭載されているEJ20型は、初代「レガシィ」も採用していた伝統的なエンジンです。ターボを装着して「インプレッサ WRX STI」などにも採用され、高性能なエンジンとして進化を重ねてきました。
この後、スバルは新世代の水平対向エンジンとして「FA20型」を開発します。これはスバルとトヨタが共同開発した「BRZ/86」にも搭載され、ターボ仕様は先代レガシィも採用しました。
2014年になると、現行WRXが登場して、S4にFA20型ターボを搭載しました。それなのにWRX STIは、前述のように設計の古いEJ20型ターボを選択しています。
なぜWRX STIに、わざわざ設計の古いEJ20型ターボを積んだのでしょうか。WRXの開発者は、次のように説明します。
「EJ20型は、ターボを装着する高性能エンジンとして、とても熟成されています。そして自分でチューニングをするユーザーにとっては、各種パーツが豊富にそろっていることも魅力です。
エンジンに手を加えるユーザーのことを考慮して、WRX STIには、あえて世代の古いEJ20型を搭載しました。CVTと組み合わせるWRX S4は、設計の新しいFA20型としています」
フルモデルチェンジをおこなう場合、排気量やターボの有無が共通であれば、グレードに応じて型式の異なるエンジンを搭載することはほとんどありません。
現行WRXはS4に新しいFA20型を搭載したので、通常であればSTIも同じエンジンを搭載した上で、過給圧を変えたり6速MTを組み合わせるでしょう。
そこを新旧2種類のエンジンを使い分けるところが、クルマ好きのニーズを綿密に汲み取るスバルらしさといえます。
■次期WRX STIのエンジンは「EJ20型ターボ」の進化版か!?
しかしEJ20型も、さすがに設計が古くなりました。排出ガス規制の対応ができず、EJ20型と併せてWRX STIも廃止することになりました。
気になるのは今後の展開でしょう。現行型のWRX STIは、前述のように2019年12月末に終了します。
そこでEJ20型ターボの集大成モデルとして、特別仕様車の「WRX STI EJ20ファイナルエディション」を限定555台で発売します。
内容は凝っていて、EJ20バランスドエンジンを搭載します。クラシックな雰囲気を感じさせるBBS鍛造19インチホイール、6ポットシルバーキャリパーなども装着します。
この特別仕様車も含めて完売すると、WRX STIはラインナップからはずれて、WRX S4のみを扱うことになります。そうなるとBRZとOEM車を除き、スバル車からは6速MTも消滅します。
そしてWRXは、2020年にフルモデルチェンジをおこなう予定です。プラットフォームは現行「インプレッサ」から採用が開始された新しいタイプで、次期「レヴォーグ」と共通性が多いですが、エンジンは異なります。
次期WRX STIは、独自のチューニングが施されたFA20型ターボを搭載するからです。現行WRX S4のFA20型ターボとは設定が違います。
このFA20型ターボは、EJ20型ターボの進化版と考えれば良いでしょう。モータースポーツで使われることを視野に入れ、チューニングのベースになり得るポテンシャルを持たせます。
現行型のWRX STIと同じく、ピストンやエンジンマウントの強化、大型インタークーラーの装着などをおこなう可能性も高いです。トランスミッションは、現行型のWRX STIと同様、6速MTになると思われます。
なお次期WRX S4は、新型レヴォーグにも採用される予定の新開発の1.8リッターターボを搭載する可能性が高いです。
次期WRXのボディスタイルは、視界を損なわない範囲で、鋭角的なデザインに進化します。従来型と同様、ミドルサイズの4ドアセダンなので、WRXの雰囲気が大きく変わることはないでしょう。進化というよりも「深化」を大切にするフルモデルチェンジをおこないます。
EJ20型が廃止されてFA20型になっても、スバルのクルマづくりは継承され続けます。

30年経過…

こうなると…
少数派「水平対向エンジン」なぜ残る? スバルとポルシェが続ける理由とは
■世界で2社だけが採用続ける「水平対向型エンジン」とは
スバルのEJ20型という水平対向型エンジンが、2019年末をもって生産終了となり、約30年の歴史に幕を閉じます。
現在、水平対向型エンジンを採用しているのは、バイクやOEM車を除くとスバルとポルシェの2社に限られますが、なぜ少数派のエンジンを使い続けているのでしょうか。
クルマのエンジンは、用途によっていくつかの分類があり、「直列型」「V型」「水平対向型」の3タイプに分けることができます。
現在、ほとんどの自動車メーカーが採用しているのが、シリンダーを一列に配置した「直列型」と左右交互のV型に配置した「V型」です。
対して、シリンダーを左右交互に配置する「水平対向型」は、前述のとおりスバルとポルシェだけになります。左右対称のピストンの動きがボクサーのパンチを打ち合う様子を連想させるため、「ボクサーエンジン」とも呼ばれています。
なぜ「水平対向型」を採用するメーカーが少ないかというと、エンジンの構造に関係し、「直列型」や「V型」に比べ、部品点数の多さや排気通路が複雑化するなど生産性が落ちるほか、燃費の悪さも問題となります。
また、水平型のため横幅が広くなるため、コンパクトカーなど車格が小さなクルマでは、エンジンルームに搭載することが困難なほか、メンテナンスの際の整備性も悪いです。
しかし、「水平対向型」には、クルマを走らせるうえでのメリットも多く存在します。具体的には、「低振動・低重心・高剛性・回転バランスの良さ」などが挙げられ、速さを競うモータスポーツなどの場面においては、低重心なクルマほど安定性が高くなり、コーナリング時などで有利に戦えます。
メリットもデメリットもある「水平対向型」ですが、スバルとポルシェの2社だけが採用しているのはなぜなのでしょうか。
スバルは、1966年に発売した「スバル1000」に「水平対向型」を搭載したことがきっかけで、現在まで開発・改良を重ねていくことになります。
現在は、軽自動車などのOEMを除く全車に採用され、1989年の初代レガシィから搭載されている「EJ型」、環境性能と走りを両立する新世代の「FB型」、さらなる低重心化を目指した「FA型」といういくつかの種類をラインナップ。
スバルは、いまでこそ大手自動車メーカーにならぶ知名度がありますが、以前までは小規模メーカーといわれていました。
そのため、ほかのメーカーとの違いを表現する方法のひとつとして、独自性がある「水平対向型」を採用することで、ユーザー獲得や固定ファン層を維持。それゆえ、自社開発のエンジンをひとつに絞ることで生産性も確保しています。
水平対向エンジンの開発を続ける理由について、スバルは次のように話します。
「水平対向エンジンは、スバルが考える理想のパワーユニットです。水平かつ左右対称に配置されたピストンが、互いの慣性力を打ち消し合うことで、振動の少ないスムーズなエンジンフィールを提供します。
また、スバル独自の4輪駆動システムとして『シンメトリカルAWD』がありますが、このシステムの特徴は水平対向エンジンを含めたパワートレイン全体が、エンジンと同じく左右対称に、かつ一直線上でレイアウトされているということです。
水平対向エンジンと、それを核としたシンメトリカルAWDは、『どんな道や環境でも、乗る人すべてが変わらない安心と愉しさを感じられる』というスバルの理想を叶える、独創的かつ合理的なコアテクノロジーなのです」
■水平対向は電動化が進むとどうなる?
スバル同様に「水平対向型エンジン」を採用しているのが、ドイツの自動車メーカー「ポルシェ」です。現在では「パナメーラ」や「カイエン」「マカン」以外のスポーツモデルに採用しています。
ポルシェの1号車として登場したポルシェ「356」に搭載されたエンジンは、空冷4気筒PHVの「水平対向型」でした。その後の「911シリーズ」にも「水平対向型」が採用され、現在にいたります。こうした「911=水平対向型」という伝統に加え、前述の『クルマを走らせるうえでのメリット』などと相まって「水平対向型」が採用され続けています。
従来、ポルシェの「ボクスター」「ケイマン」には、水平対向6気筒エンジンを搭載してきましたが、年々厳しくなる燃費規制やパワー・トルク向上の技術革新により、2016年から水平対向4気筒エンジンにシフトしたモデルも登場しています。
将来的には、さらなる燃費規制や電動化が予想されるなか、ポルシェは、2025年までに全モデルの50%を電動化すると宣言。2019年9月には、ポルシェ初の量産EV「タイカン」が発表され大きな話題となりました。
一方、スバルは「水平対向型」と電動技術を組み合わせた新開発のパワーユニット「e-BOXER」を展開。燃費の悪さをカバーするとともに、規制にも対応していくとしています。
同じ燃費の悪さで、一旦は姿を消したマツダの「ロータリーエンジン」は、モーターの発電用として新たに開発が進められ、近い将来には市販車に搭載して登場する予定です。
独自性をもつ「水平対向型」は、新たな形で進化を続けていくものと思われます。
両メーカー共にもっと効率が良くて優れたパワーユニットがあればそれに改める覚悟はある筈なんですけどね(座談会とかも含めてメーカーの人は昔から言っている)
そういう意味でポルシェは「タイカン」っていう一つの可能性を示した訳だし
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富士重工 | 日記
Posted at
2019/10/02 13:42:34