2020年02月28日
両車ともいつまでEJ20でいけるんかな
スーパーGT300に参戦するSUBARU BRZ GT300詳しい情報 2020年版
2020年のスーパーGT300に参戦するSUBARU BRZ GT300のマシン詳細がわかってきた。チーム体制については東京オートサロン2020で発表されているが、マシンの変更、改良点についても見えてきたのでお伝えしよう。
BRZ GT300のマシンは、R&Dスポーツのオリジナル設計、製造のシャシーにSUBARU/STIのパワートレーンを搭載するという従来の方法から変更なく、今季もJAF GTのレギュレーションの下、GT300クラスに参戦する。
今季のマシンはキャリーオーバーされるマシンではあるが、各部の剛性解析などをスバル/STIで行ない、4ヶ所ほどの局部剛性を上げている。さらに2020年シーズンはボディカラーを一新し、新鮮な気持ちで戦うことになった。ちなみに、これまでのBRZのシャシーは2年ごとに新車へと変更してきたが、今季は流用年となり、異例の3シーズン目に突入するが、変形など無いことを確認済での判断だ。
全領域での見直し
今季の目標は、トラブルを出さず、得意レースでは表彰台、厳しい環境でもポイントを取るといったメリハリをつけたシーズンとし、総合チャンピオンを目指していくと渋谷真総監督は言う。
そのためには、全領域での見直しがあり、戦略、マシンのハード、チーム体制など、このシーズンオフにシミュレーション、メーカーテストなどで熟成を重ねている。渋谷真氏が総監督に就任しての過去2シーズンでは、初年度はトップスピードの追求から、空力とマシンパフォーマンスの戦いがあった。2年目は、数々のデータを蓄積するシーズンとなり、シーズン後半ではマシンのセットアップの選択肢が増え、熟成度も高まってきたシーズンになったと言えよう。
ただ、これまでの2シーズンでは優勝もあるが、ノーポイントのレースも多く、またマシントラブルによるリタイヤもあった。そうした反省から総監督就任3年目の2020年シーズンは、全レースをリタイヤせず、得意とする鈴鹿、SUGO、オートポリスでは表彰台を獲得し、1回は優勝する。もてぎや富士のようにエンジンの差が出るようなレースではできるだけ上位でポイントを稼ぐという戦略が必要になってくる。
車両諸元変更
2020年シーズンの大きな変更点として、エンジンとミッションの搭載位置を下げたことがある。もちろんレギュレーションの範囲の中で、可能な限りフレームのギリギリまで搭載位置を下げ、水平対向エンジンが持つシンメトリーで低重心という特徴を最大限活かせるようにした。重心高とロールセンターの関係が従来と変わるため、このオフシーズンはそうしたセットアップにも注力したテストになっている。
重心高を下げることで、渋谷総監督は「デメリットになることは何もないと思います。これまでと同じバネでもロールが小さくなるのは、メリットですから、ドライバーは乗りやすくなると思います。シミュレーションでは500マイルレースを想定しますと8.4秒縮まる結果になりますが、それ以上にドライバーのフィーリングに貢献するだろうと思ってます」
さらに、オルタネーターを従来エンジン近くにレイアウトしていたが、これをリヤのミッション側へ移動している。これは熱対策という予防的な意味と、前後重量配分を少しでもバランス良くするための施策として変更を行なっている。そしてオルタネータの制御では、加速しているときなどに稼働しないよう最新の制御も盛り込んでいる。
少なからずエンジン関係でのトラブルでリタイヤしたレースがあったため、実は、2020年シーズンはパワーユニット関連の組織変更を行なっている。チームリーダーに過去、WRC、スーバーGT、ニュルブルクリンク、そしてアメリカでのレースにもパワーユニット開発として携わっていたベテランエンジニアがチームリーダーとして復帰している。
GT-3のFIAパフォーマンス・ウインドウ規定を見れば、レクサスRC-F GT3のピークパワーは609psもある。リストリクターで抑えられても550ps程度の出力が予測でき、そうしたエンジンと戦うEJ20ターボには厳しさがある。WRCで世界を席巻した当時のEJ型の出力はせいぜい370ps付近が想像でき、また現在のニュルマシンのWRX STIのEJ20も似たような出力なのだ。そこでスーパーGTではGT3と同様なパワーウェイトレシオにする必要があり、最低でも500ps以上発揮しなければレースにならないわけで、その厳しさは、乾いたタオルを絞っているのが想像できる。
一方、パドルシフトの圧力センサーのトラブルでリタイヤした第7戦SUGOの経緯から、ハーネスのサプライヤーを変更するなど電装系も一新し、その新メンバーの体制下で新しいパワーユニットがつくられている。
2017年のもてぎでは、ブレーキトラブルでリタイヤした過去がある。そのため18年の初頭からブレーキ容量をアップしてきたが、19年シーズンのデータを詳しく見ると、ブレーキ容量が不足したのはもてぎに限られることも見えてきた。つまり、他のサーキットでは従来の容量でも問題ないという結果だ。それは、ブレーキ容量の拡大イコール重量増になるわけで、今季はレースによってブレーキ容量を変更し軽量化してく計画となった。
さらに、ABSの制御変更も行なわれている。タイヤがタレてグリップが落ちてきたときのABSの制御が不安定になるという。そのため、ブレーキ容量の変更と合わせてABS制御の見直しも行なっている。
じつは、このブレーキ制御は空力も影響していることが分かっている。つまり、ブレーキングした時のマシンの姿勢変化によってダウンフォースが変わり、結果ABSの作動に不安定さが生まれてくるというものだ。そのため今季のエアロでは、そうしたことも念頭におき、ハードブレーキでもダウンフォースが抜けないように配慮されたものになっている。
そのエアロでは、流体解析を行ない、シミュレーションを繰り返しておりベストを探す研究が続けられている。とはいえ、18年シーズンのようにダウンフォースを削りドラッグも削りトップスピードを上げるという過去の挑戦から得た経験を活かし、19年シーズンはほぼエアロの問題は起きていない。もちろんダウンフォースは多ければ多いほどドライバーは安心するが、抵抗も増えていくわけだからバランスの取れたスペックが必要になるわけだ。
今季ではそうした流体解析からフロントのフロア下にあるスプリッターの形状変更で、フロントのダウンフォースとリヤのダウンフォースが良くなるデータを見つけている。しかし、渋谷総監督によると、流体解析で得たデータは、やはり机上のデータであり実際のレースで正解になるか?の確率は100%にはならないという。そのため、解析データをもとにしたサンプルを製作し、テスト、実戦投入という手順になるが、そのテストが勝手にできないスーパーGTのレギュレーションのため、難しさも残るという。
さらにリヤのディフューザーの解析結果では、現状の形状を変更したほうが良い結果になるデータも見つかったという。バンパー上面のディフューザーは不要だろうというのだ。その分、ガーニーの追加でダウンフォースとドラッグのバランスがよくなることがわかったということだ。
タイヤ戦争
そして、タイヤだ。各タイヤメーカーの争いの部分でもあり、19年シーズンは300kmレースでは4本無交換作戦にトライしていた。ブリヂストン、ヨコハマの無交換作戦は常套化しているため、ダンロップを履くBRZ GT300も挑戦した。しかし、実際4本無交換のレースもあったが、好結果とはいえないものだった。それは、まず予選で上位にいけない、そのため下位からの追い上げになるが、パフォーマンスは低く追い上げはできず、順位を落とさないレース展開になってしまうものだった。そのため20年シーズンでは、従来の得意な分野を伸ばす作戦に切り替えて戦う戦略変更をする。
つまり、ピークグリップを上げ1スティントでタイヤを使い切る。ピットストップでは4本交換を基本とする作戦だ。予選では得意なコースはポールポジションを狙い、厳しいコースでもできるだけ上位を狙う。そうすることで、決勝レースは上位で展開できることになり、2スティント目は各車タイムを上げられない中で、新品を履くBRZが上位を目指すという作戦だ。
理想を言えば、得意なコースではポールを取り、トップでドライバー交代をし2スティント目で、ピットストップで抜かれたマシンを抜き返す。悪くても3位までに入る。厳しいレースでも同様にできるだけ上位で決勝を走り、2スティント目は新品タイヤで追い上げてポイントを稼ぐという理想だ。
こうした戦略の変更、マシンの変更、スタッフ組織の変更を行ないSUBARU BRZ GT300はシリーズチャンピオンを狙っていく。
スバルNBRニュルブルクリンクチャレンジWRX STI 2020年仕様詳しい情報
2020年2月下旬、スバルWRX STIでニュルブルクリンク24時間レースに挑戦するマシンがベールを脱いだ。これまで当サイトでは開発初期からテストを追いかけてレポートしていきているが、いよいよ本番に向けての準備が最終段階になってきたので、お伝えしよう。
じつは、2月26日に富士スピードウェイで行なうシェイクダウンテストが公開予定だったが、その1週間前に行なわれた4回目のテストにも立ち会うことができたので、そこで得た情報からまず、お伝えしよう。
最終段階に
前回のテストは19年の年末12月25日に行なわれている。この時のテストのメインとなったのはロールセンターを上げ、トレッド幅の変更、アッカーマン・ジャントージオメトリーの見直しというのが操安上のハイライトで、ダイナミックテストではABSの制御変更と藦材の見直しなどが行なわれている。
他にもサメ肌塗装のテストやリヤウイングをスワンネックの吊り下げ式に変更、燃料タンクの形状変更、フロントフェンダーを含む空力デザインの見直しなどがあった。
関連記事:スバル/STI ニュルブルクリンクへの挑戦 2020仕様へWRX STIをモディファイ中
そして、この時に得たテスト結果を持ち帰り、その後はオートサロンへの展示などを経て2月中旬のテスト走行となった。
2月中旬のテスト
年末のテスト結果から、ハード部分で変更されたのはスタビライザーの変更だ。ロールセンターを上げ、リヤサブフレームのブッシュ変更などからボディへの入力が変化し、剛性感も変わってきているという。そのため、サスペンションを柔らかめの方向に変更し、スタビライザーも19年仕様より細めに変更するなどを行なっている。
他にもタービン、クロスメンバー、サスペンションなどが新品になり、アタリを出す意味も含めてテストが行なわれた。さらに、風洞テストも行なってデータが取れているため、新設計のリヤウイングの角度なども微調整のレベルにまでになってきていた。
そして、この日の目的のひとつにタイムアタックがあった。富士スピードウェイは毎年開発の基準となるコースで、もちろん群馬のスバルテストコースでの試走はしているものの、レーシングカーレベルになると本格的サーキットでのテストが重要だ。
その富士スピードウェイで、19年仕様では1分45秒532というタイムがベストであり、44秒台へ入るレベルにまで引き上げたいというのが、20年仕様の狙いであり、辰己総監督を始めチーム全員が目指しているタイムだ。富士でのベストタイムが更新できれば、本番のニュルのコースでもタイムを短縮できるという相関はあるようだ。そのため、この日は30分の占有走行枠を2枠確保してのテストだった。
しかし、残念なことに100Rの改修工事が行なわれたあとの処理がまだ十分ではなく、コース自体はきれいな舗装になったものの、工事での砂の処理が残り、コース上は非常にダスティな状況だったという。そのため、ドライバーも「100Rはダウンフォースが一番欲しい場所なので、リヤウイングの形状も含めて踏みたい場所です。だけど、あの状況だと滑っちゃうので、やめときました」と井口卓人選手はコメントしている。
結局、タイムアタックは取りやめにし、ハードパーツの確認、ニュルへ出向くスタッフのコミュニケーション確認などを行なうレベルで終了となってしまった。
そして次なるテストは、2月下旬に3日間連続テストを予定していて、その最終日に一般公開する予定を組んでいた。しかし、COVID19(新型コロナウイルス)の感染拡大を防ぐために、一般公開は中止されてしまいテストのみ行なわれていた。
そこには、20年仕様のカラーリングで登場したNBRマシンがあった。ボディはルーフ、ボンネット、ドアパネルが鮫肌塗装になり、リヤ周りはスポンサーステッカーが貼られ、部分的に鮫肌塗装になっている。
新デザインは、STIのカラーイメージを踏襲し、ボディカラーを新しくしている。このWRX STIは、3月に再び富士スピードウェイでテストを行なう予定だ。その時は最終仕様となり、4月の前哨戦QF戦に参戦し、本番の24時間レースという予定だ。
NBR20MY諸元
最後にSUBARU WRX STI NBRチャレンジのおさらいを少しお伝えしよう。20年仕様のWRX STIは18年から使われているので3年目となるが、毎年、ボディの改良も含め、全領域に渡り見直しが行なわれている。パワートレーンは2.0LターボでEJ型を使う。これをレース用にチューニングしているが、レギュレーションでエアリストリクターを装着して性能調整されている。また、スーパーGTのようにターボにアンチラグ(ミスファイヤリング)は採用していない。これはターボラグを嫌うより、燃費の悪化の影響が大きいため採用していない。
トランスミッションはヒューランド製のシーケンシャル6速ドグ・ミッションを搭載し、AWDで出場している。サブフレームはラリー用に改良されたタイプを流用しているが、サスペンションなどの基本レイアウトは市販車と同じままだ。全体にレース用に改造されてはいるが、市販車両からの変更は剛性や強度といったものは変更するが、基本骨格は市販車のままというスタイル。そのため補強用のスティフナーなどは、STIから競技用、あるいはチューニング用パーツとして販売されている。また、そうしたパーツの開発も兼ねているということもある。
燃料タンクは100Lを搭載。ニュルの給油方式は市中にあるガソリンスタンドで使われるノズルと同じタイプ。そのため、タンク内のエア抜きがよければノンストップで100L給油できるが、エア抜きが悪いと94L付近でいったん止まってしまうのだという。そのため、今季はタンク形状を変更し、99Lまでノンストップで入ることを確認している。これまでの実験ではバッチリとうまくいっているようで、ピットストップ時間も1回で十数秒は短縮できる。24時間レースで16回ピットインしたとして3分近く短縮できるわけで、単純に1ラップ多く走行できるようになるのだ。
タイヤはファルケンを使用。こちらはレギュレーションの影響もあるが、市販レーシングタイヤを使っている。スペシャルタイヤではなく市販のスリックタイヤだ。またレインはインターミディエイトとヘビーレインの2種類の使用が認められているので、そちらも市販レーシングレインを使っている。
スバル/STI、2020年レース参戦車両のシェイクダウン実施
スバルテクニカインターナショナル(STI)は2月26日、2020年のレース参戦車両スバル「WRX STI」(ニュルブルクリンク24時間レース)およびスバル「BRZ GT300」(SUPER GTシリーズ)のシェイクダウンを富士スピードウェイで実施した。
WRX STIは、5月21日から24日にドイツで行われるニュルブルクリンク24時間レースに参戦。SP3T(排気量2リットル以下のターボモデル)クラス3連覇、過去最高の総合順位18位以内を狙う。この目標を達成するための課題は、「予選タイムのクラスコースレコード(8分56秒)の更新」「全スティント9ラップ(約225km)」「過去最多周回数(146周の更新)」の3つ。
課題クリアのため、給油タイムロスを削減するシステムおよびEJ20エンジンの燃費の改善、サスペンションジオメトリ変更、ブレーキ性能の改善、空力性能の改善、リヤ部応答性の向上、タイヤおよびホイールの最適化などを実施。2019年秋より続けている開発テストで目標性能の達成を確認している。
ニュルブルクリンク24時間レースに出場するSUBARU/STIチームのドライバーは、カルロ・ヴァンダム(オランダ)、ティム・シュリック(ドイツ)、山内英輝、井口卓人の4名。チーム総監督はSTIの辰己英治が、チームを運営する監督はSTIの沢田拓也が担当する。
BRZ GT300は、SUPER GT GT300クラスのシリーズ優勝を狙う。目標達成のための技術的課題は「エンジンの耐久性・信頼性の向上、重心高の変更」「タイヤ特性の向上とメカニカルグリップの向上」「空力・制動性能の向上」の3つ。
課題クリアのため、EJ20水平対向ターボエンジンは設計・組み立て・運用管理方法を見直し、タービンや排気系に合わせた制御の適正化、パワーユニット全体の低重心化を実施した。特にBRZ最大の特徴であるコーナリリングスピードの速さを最大限に活かすため、エンジンからトランスアクスルまでを含むパワーユニット全体の搭載位置を下げるとともに、慣性モーメントのさらなる低減を図るため、車体カウルパネルの軽量化、電装補機類のレイアウト変更などを実施。また、住友ゴムとの共同開発体制を強化することでコース特性にマッチしたタイヤの開発を目指し、シャシー側も対地キャンバーの適正化を図るためのサスペンションジオメトリの改善、前後サスペンション取り付け部の剛性アップなどを実施している。
SUBASRU/STIのテクニカルパートナーであるR&D SPORTからSUPER GTシリーズにエントリーするSUBARU BRZ GT300は、井口卓人と山内英輝がドライブし、総監督はSTIの渋谷真が務める。
【ニュル24h耐久】まさかのナローボディ!? 3連覇を目指すスバルWRX STIがシェイクダウン!
軽量化のためにそこまでやるの?
2020年2月27日、STI(株式会社スバルテクニカインターナショナル)は今シーズンのニュルブルクリンク24時間レース(以下 NBR24H)と、SUPER GTシリーズの参戦に向け、富士スピードウェイにてマシンのシェイクダウンを行いました。じつはこのシェイクダウン、毎年報道機関向けに同社のレースに取り組む姿勢や体制、また今シーズンのマシンの技術的特徴などのプレゼンテーションを行う場でもあり、現場にはスポンサー企業をはじめとする関係者なども多く集まる賑やかなものでした。しかし、今年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のためイベント的な催しは一切取りやめとなり、一部選手とマシンの集合写真撮影などは行ったものの、粛々と今シーズンに向けた走行を重ねる本来のシェイクダウンのみとなりました。
NBR24Hには19年同様、「SUBARU WRX STI CHALLENGE 2020」と名付けられたWRX STIをベースにしたマシンで参戦します。基本的には19年のマシンを踏襲したものですが、SP3T(排気量2リットル以下のターボモデル)クラスでの3連覇を果たすべく変更箇所は多岐に渡ります。その内容は、サスペンションジオメトリや空力パーツの変更はもとより、軽量化のためフロントブレーキキャリパーを小型化したり全幅のナロー化に踏みきるなど、より洗練されたマシンとして進化しているようです。
また予選タイムでのクラスレコード(8分56秒)や過去最多周回数(146周)の更新など、その目標も多岐に渡りクラス優勝のみならず総合順位でも過去最高の18位以内を目指すという、非常に高いハードルを課した挑戦となっています。
まだまだ現役!? のEJ20
気になるパワーユニットですが、今回参戦するNBR24H参戦車両には19年の東京モーターショーで生産終了を告げたEJ20型が引き続き搭載されます。また今シーズンの開幕もしていない今、いささか時期尚早ではありますが今後の予定について伺ったところ、現行エンジンをベースに開発をしているとの話は伺えたものの、その時期やスペックはまだ発表できる段階ではないとのことです(まあ、当たり前ですね)。
20年間にも渡って世界のトップカテゴリーで戦い続け、数々の成功を収めてきたスバル。これを支え続けたパワーユニットの後継モデル開発となると、そのハードルがいかに高いかは想像を絶するものだと思います。一方で、WRCをはじめ様々なカテゴリーでの挑戦を途切れることなく続けてきたスバルの姿勢は、決して変わらないと明言していたことはファンにとっては朗報です。その活動を支える心臓部の登場はお預けとなりましたが、時代に即し、時代をリードし続ける次世代の戦うパワーユニットをじっくりと仕上げて欲しいものです。
と、話は少々先走りましたが、まずは自ら立てた数々の高いハードルを超えるべく開発を重ね、5月21日から24日にかけてドイツにて開催されるレースでの3連勝達成の報告を待ちたいと思います。
なお、チームの総監督は19年に引き続きSTIの辰己英治氏がつとめます。今回のシェイクダウンでは現在のスーパー耐久シリーズの前身となるN1耐久レースで、かつて辰己氏とともにレガシィRSで戦ったモータージャーナリスト桂 伸一氏が、2016年モデルの試走も行いました。桂氏はNBR24Hでのクラス優勝経験を持ち、ニュルブルクリンクのコースをよく知るドライバーの1人。走行後その運転フィーリングや旋回性能に対し、「これほどドライバーの意思に忠実な動きをするとは! ドライバーの負担がびっくりするくらい少ないマシンだ」と評しました。また「これほどレーシングマシンとしてモディファイしているのにもかかわらず、運動特性が量産車に極めて近く、そこにも感心した」とも。
スバル/STIが量産車ベースのマシンでこのレースにこだわる理由の一端が桂氏のコメントで浮き彫りになったようでした。
BRZのGT300も始動!
当日はNBR24Hのマシンのほか、今シーズンのスーパーGTを戦う「SUBARU BRZ GT300 2020」もシェイクダウンを行いました。こちらも昨年モデルの改良型で、搭載されるエンジンはEJ20型です。驚くことにSTIの発表ではエンジンの設計、組み立てから運用管理方法、そしてタービンや排気系に合わせた制御の見直しまで行われたとのことです。
スーパーGTは3月中に岡山国際サーキットと富士スピードウェイで合同テストを行い、4月11~12日に岡山国際サーキットで開幕戦が開催されます。世界中のFIA-GT3マシンがひしめくGT300クラスで、どんな戦いを見せてくれるのか。こちらも楽しみです。
<文&写真=高橋 学 text & photo by Manabu Takahashi>
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富士重工 | 日記
Posted at
2020/02/28 22:06:46
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