2020年04月26日
水平対向に拘らないっていうのも良いんだよね
【スーパーカー年代記 060】ポルシェ カレラGTは、V10エンジンを搭載して究極のスーパー ポルシェを目指した
クルマ好きなら一度は憧れたことがあるだろうスーパーカー。その黎明期から現代までをたどる連載企画。第60回は「ポルシェ カレラGT」だ。
ポルシェ カレラGT(2003-2006年)
2000年のパリ モーターショーでポルシェが発表したコンセプトカー「ポルシェ カレラGT」。その完成度の高さからして、市販化は間違いないないだろうと思われていたが、その車名のまま市販モデルが登場したのは、2003年のジュネーブ モーターショーだった。ポルシェのコードネームでは、タイプ980となる。
1970年代のレーシング ポルシェ、917をモチーフにしたといわれるスタイリングは、コンセプトカーと大きく変わることはなく、ライト類などのデザインが少し変更された程度。いちばんの違いは、デタッチャブルトップを採用したことだろうか。シャシはカーボンファイバー製のセンターモノコックに、リアのパワートレーンを搭載するためのサブフレームもカーボンファイバー製。当時としては最先端のカーボンモノコック構造だった。もちろん、ボディパネルにもカーボンファイバーが用いられていた。
コクピットの後ろにミッドシップ搭載されたエンジンは、68度のバンク角が与えられたV型10気筒DOHC。このエンジンはル・マン制覇のためにポルシェが開発していたものだが、諸般の事情で日の目を見なかったユニットだ。開発当初の排気量は5.5Lだったが、カレラGTには5.7Lにアップされて搭載された。潤滑方式はドライサンプで、燃料供給装置はボッシュ モトロニックME 7.1.1を採用。パワースペックは、最高出力は612ps、最大トルクは590Nmを発生した。
組み合わされたトランスミッションは6速MTで、最高速度は330km/hと公称された。リアエンドには速度感応式のウイングが備わり、車速が120km/h以上になると160mmアップしてダウンフォースを増し、高速時の安定性に寄与していた。ブレーキにはセラミック ディスクや6ポット キャリパーを採用し、超高速からの強大なストッピングパワーも与えられている。
インテリアでは、左右のシートをセパレートする大きなセンターコンソールが特徴的だが、このインテリアデザインは現在のパナメーラや911などと共通性を感じさせる。そのハイパフォーマンスから想像されるほど室内はレーシーではなく、いかにもポルシェらしい、快適装備も備えたハイクオリティな高級スーパースポーツカーといったイメージだった。
だがハイパフォーマンスゆえに限界が高く、しかも限界域でのコントロールには相当のスキルが必要とされた。まさに乗り手を選ぶスーパー ポルシェのカレラGTは1500台限定生産の予定だったが、2006年までに1270台しか生産されなかった。
ポルシェ カレラGT 主要諸元
●全長×全幅×全高:4631×1921×1166mm
●ホイールベース:2730mm
●重量:1380kg
●エンジン種類:68度V10 DOHC
●排気量:5733cc
●最高出力:612ps/8000rpm
●最大トルク:590Nm/5750rpm
●駆動方式:縦置きミッドシップRWD
●トランスミッション:6速MT
●タイヤサイズ:前265/35ZR19、後335/30ZR20
8400万円で落札! ポルシェ「カレラGT」の危険な魔力とは?
■「カレラGT」は、過去のコンペティションモデルへのリスペクトであり、未来への先進性を示した
ポルシェのタイプ980、後に「カレラGT」と呼ばれることになるミッドシップ・スーパースポーツのプロジェクトは、1990年代の中盤はすでに開始されていた。
1999年のパリ・サロンで、そのスタディ・モデルが公開されてから約4年後、ポルシェは世界を驚愕させる凄まじいスペックと掲げて、正式に生産型のカレラGTを2003年のジュネーブ・ショーで世界初公開した。
ちなみに、この年のジュネーブは、さまざまなライバルが競うかのようにデビューを果たした豪華絢爛なショーだったが、それでもカレラGTの華やかさは特筆に値するものだった。
カレラGTのスタイリングは、基本的にはスタディ・モデルから大きな変更を受けることなく、そのまま生産型に移行されたという印象が強い。フロントウインドウの傾斜角や灯火類のデザインなど、若干の手直しを受けている部分があるのも事実だが、それらはきわめて小さな変更と考えることができそうだ。
スタディ・モデル時に噂されていたクーペとタルガトップという2タイプのボディが設定されるという噂は誤りで、結局カレラGTには着脱式ルーフの1タイプのみとなった。
そのデザインは、ポルシェの手によるスーパースポーツの先進性を主張すると同時に、過去のコンペティション・モデルから多くのモチーフを得たと考えられるディテールにも満ち溢れている。
例えばフロントマスクをさらに精悍な印象とする丸型の4灯式ヘッドランプは、あの「917」から受け継がれたディテールであるし、またボリュームに富むフロントフェンダーの造形は、「718RSKパイダー」のそれを反映させたとポルシェは説明する。
もちろんエアロダイナミクスも当時としては世界最高峰のレベルにあった。リアエンドには車速が120km/hに達した時点で160mmライズアップする可変式のウイングが備えられ、さらにダウンフォースのほとんどはボディ下面のヴェンチュリートンネルで得る仕組みであった。
■走行距離たったの1200km! ほぼ新車ストック状態のカレラGTのプライスは?
カレラGTのインテリアは、ポルシェの流儀に従った、機能的で整然としたデザインに徹している。メーター類も5つの円形メーターを重ねてレイアウトした、ポルシェのカスタマーには見慣れたものである。
独特なセンターコンソールの造形は、カレラGTでは大きな特徴となっている部分で、6速MTのシフトノブがバルサ材で作られた円形のウッド製となっていることも見逃せない。これは往年の917が軽量化のためにバルサ材によるシフトノブを使用していたことに由来するものなのだ。
キャビン全体は、軽量で高剛性なCFRP素材によるひとつのタブとなっており、そのリアにはやはりカーボン製のサブフレームが接合されている。このサブフレームが特徴的なのは、上下に分割されたシェルの2ピース構造となっている点だ。
このサブフレームの挟むようにしてマウントされるのは、そもそもル・マン24時間レース参戦用に開発を進めていたものを基本とする、5.8リッターのV型10気筒40バルブエンジンや6速MT等々のパワーユニット一式である。
また搭載される電子制御デバイスは、ESP、ABS、ASR、ABDなどである。最高出力で612ps、最大トルクで590Nmという動力性能を考えれば、やや物足りないような印象もあるが、これでも当時は最先端の装備だった。
前後のサスペンションは、フロントがダブルトラックコントロールアームを用いたインボードタイプ。リアもデザインとしてはフロントと同様になる。装着されるタイヤはフロントが19インチ径、リアは20インチ径だ。
これらのメカニズムで0-100km/h加速は3.9秒、最高速は309km/hを達成している。
カレラGTのセールスは好調で、結果的に1270台の生産を記録したと、RMサザビーズは解説している。ちなみに今回、アメリア・アイランド・オークションに出品されたモデルは、走行距離がわずかに766マイル(約1226km)の個体だ。
オプションのフルブラック・インテリアとラゲッジ・セットを備え、2004年5月1日にポルシェのライプツィヒ工場から出荷された記録が残されている。
そのコンディションの素晴らしさから、落札価格は事前から大いに注目されたが、最終的な落札価格は78万6000ドル(約8410万2000円)という数字に落ち着いた。ちなみに新車価格は39万2300ユーロ(当時のレートで約5000万円)であったから、その人気や価値は順調に高まりを見せているようだ。
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ポルシェ | 日記
Posted at
2020/04/26 23:30:25
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