2020年04月30日
参加チームが減るのも問題だし、ドライバーもシート確保出来なくなるよね…
DTM、難局に直面…アウディが2020年シーズン限りでの離脱を発表
アウディが2020年シーズンを最後にDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)での活動を終えることを決定、発表した。シリーズ統括団体「ITR」への報告も27日に済ませたとしており、DTMはシリーズとして難局に直面する格好となった。
欧州を代表するハコ車カテゴリーのDTMは、2018年シーズンの時点ではアウディ、BMW、メルセデスの戦いとなっていた。同年限りでメルセデスが撤退するも、2019年は「Rモータースポーツ」という陣営がアストンマーティン・ブランドでマシンを仕立て参戦、3社競合の状態が維持されることに。同年11月には富士スピードウェイにて、車両規定共通化路線を進めてきたSUPER GT/GT500クラスとの特別交流戦も実施されている(アストン勢は不参戦)。
しかし今季2020年はアウディとBMWの2メーカーの戦いという構図になり、さらには新型コロナウイルス問題の影響でシーズンはまだ開幕していない状況。そこにアウディの今季限りでの活動終了という報がもたらされることになった。
アウディは今後、フォーミュラEとカスタマーレーシング(GT3など)の活動にさらに注力するとしているが、今回のDTM撤退を含むモータースポーツ活動見直しの背景には、やはり新型コロナウイルス問題による経済面への影響も加味されている旨がプレスリリースには記されている。
参戦メーカーの減少により(2021年はBMWのみに?)、DTMはシリーズとしての未来図を大きく描きかえる必要に迫られることとなるだろう。協調姿勢をとる日本のSUPER GTにも、なんらかの影響が及ぶ可能性がある。
新型コロナウイルス問題による経済の悪化は、これからこういったかたちで続々とモータースポーツ界に波及してくることが大いに予想されるところ。世界のあちこちで、予想もつかない大きな変動が起きる可能性もありそうだ。
なおDTMの2020年シーズンは、現段階で発表されているスケジュール案では7月10~12日に開幕する予定となっている。
アウディのDTM撤退にデュバル、フラインスら所属ドライバーがSNSでコメント「最後のシーズンを最高の形で終えたい!」
昨シーズンのドイツ・ツーリングカー選手権(DTM)でタイトルを総なめしたアウディが2020シーズンいっぱいで同シリーズからの撤退を表明した。新型コロナウイルスによる経済的な問題により、同社がレース活動を見直した結果下された決断だった。
この撤退発表をうけ、ロイック・デュバルやロビン・フラインスなどアウディでDTMを戦うドライバーが自身のSNSなどでコメントを発した。
日本でもレース経験があり、昨年11月に行なわれたスーパーGT×DTM特別交流戦にも参加したロイック・デュバル。彼は2016年にアウディのWEC撤退も経験しており、今回のDTM撤退の件に関しても人一倍重く受け止めている様子。公式発表の直後、自身の公式Twitterでこのように語った。
「(アウディが)2016年にLMP1プロジェクトを撤退する時以来の悲しいニュースだ。素敵なお別れにするべく、今は一刻も早くレースができるようなることを望んでいる」
また今年でDTM3年目となるロビン・フラインスもInstagramでコメント。アウディの撤退を悲しむとともに今季に向けた決意を新たにしていた。
「今日は残念なニュースがあった。2020年はアウディスポーツがDTMに参戦する最後のシーズンになる。この素晴らしいシリーズに参戦して今年で3年目。本当に開幕を楽しみにしている。記憶に残るシーズンにするとともに、高いポジションでフィニッシュしたい!」
そしてニコ・ミューラーは、アウディとともに戦う最後のシーズンを最高の形で終えたいと語るとともに、新型コロナウイルスの影響で開幕が大幅にずれ込んでいることに触れ、早くレースをしたいという切実な思いを綴っていた。
「今はとにかくコースに行ってレースがしたい。そして、この素晴らしい人たちと一緒に最終章となるシーズンを最高の形で終えたい!」
どうなるDTM!? アウディが2020年限りのDTMドイツ・ツーリングカー選手権の活動終了を発表
アウディは4月27日、今後のモータースポーツ活動に関するプレスリリースを発行し、今後の二酸化炭素排出量削減に向けた取り組みに向け、モータースポーツ活動を再編すると発表した。このなかでアウディは、新型コロナウイルス感染拡大の影響にも照らし、2020年シーズンを最後にDTMドイツ・ツーリングカー選手権の活動を終えると発表した。
2018年限りでメルセデスが撤退、そして2019年に参入したアストンマーティンの活動は1年で終わり、重大な局面を迎えているDTMに、さらに衝撃的なニュースが飛び込んできた。4月27日、アウディはブランドのモータースポーツ活動を再編し、今後はフォーミュラEとカスタマーレーシングに集中。DTM活動は2020年で終了するとDTMの運営組織であるITR e.Vに通知したと発表した。
旧DTMにも参戦していたアウディは、当初プライベーターのアプトがTTクーペでDTMに参戦。2004年からメーカーとして本格的に参戦し、近年はDTMをリードする存在として君臨していた。2019年までに23のタイトルを獲得し114勝を挙げている。
「アウディはDTMを形作り、DTMはアウディを形作ってきた。これは技術面でも情熱でも、モータースポーツにどんな力があるのかを示している」と語るのは、アウディAGのマーカス・デュイスマン取締役会長。
「このエネルギーを使い、スポーティーでサスティナブルな電気モビリティのプロバイダーへの変革を推進する。レーストラックにも力を注いでいきたい。フォーミュラEは、このための魅力的なプラットフォームだ」
今回の決定は、新型コロナウイルス感染拡大の影響による経済面も関係するとしているが、このアウディの決定により、2021年からのDTMにはBMWだけが取り残されるかたちとなってしまった。2メーカーだけによる戦いでもファンの関心低下は免れず、今後DTMがどうなっていくのか、そしてDTMと規定を同じくするスーパーGT GT500クラスにとっても、衝撃的な発表となった。
DTM:突然のアウディ撤退発表にBMWも衝撃「発展へともに努力をしていただけに非常に驚いた」
4月27日、DTMドイツ・ツーリングカー選手権に参戦するアウディが2020年限りでシリーズでの活動を終えると発表した。2020年からDTMはアウディとBMWのみの参戦で、2社のうち1社の撤退はシリーズの存続を揺るがす衝撃的な事件と言える。この発表に際し、ライバルのBMW、DMSBドイツ・モータースポーツ協会からも驚きのコメントが上がった。
長年シリーズの主役として活躍してきたアウディが、突如として2020年限りでのDTM活動終了を発表した。4月27日にアウディから発表された発表では、二酸化炭素排出量削減への取り組みと、新型コロナウイルス感染拡大の影響による経済的な側面を理由とした、モータースポーツ活動全体の再編のなかでの決定とされている。
この新型コロナウイルス禍のなか、現在ドイツの自動車メーカーは少しずつ段階的に製造ラインの稼働再開を始めてはいるものの、他業種と同様に深刻な経済的打撃を受けている。フォルクスワーゲン・グループ代表取締役のヘルベルト・ディースは、ドイツの公営放送ZDF局のインタビューのなかで「フォルクスワーゲングループ全体で1週間に失う金額は、固定費だけで約20憶ユーロ(約2300憶円)である」と述べている。深刻な状況のなかで、まずはグループ全体の経済基盤を立て直し、可能な限りのリストラを避けることが先決であるという状況がうかがえる。
とはいえ、この決定についてはライバルであるBMWにとっても寝耳に水だったよう。事前に告知されていなかったというBMWからは「アウディとITR e.Vとともに、常にDTMの将来について熱心に議論し、発展に努力をしていただけに、BMWグループとしては、アウディのDTMからの撤退の報には非常に驚いた」というコメントが発信されている。
また、DMSBドイツ・モータースポーツ協会のゲルト・エンサープレジデントからは、「ドイツのモータースポーツ界がおかれるコロナ禍の厳しい時期に発表されたアウディのDTM撤退は非常に衝撃を受けた」とコメントが出ている。
「早急にITRとともに、今後の新しい状況をどう乗り切るのか話し合うつもりだ」
2020年度の活動予算はすでにアウディスポーツへ分配されているだけに、今季のDTM活動は続けるものの、新型コロナウイルス禍のなかで果たしてDTMが行えるのかも含め、2021年に向けてDTMは非常に厳しい状況に置かれたと言っていいだろう。
アウディの2020年限りのDTM活動終了に衝撃。ITRベルガー代表「遺憾に思っている」
4月27日、アウディが今後のモータースポーツ活動を再編するなかで、2020年限りでのDTMドイツ・ツーリングカー選手権の活動終了を発表したが、この報せをうけDTMドイツ・ツーリングカー選手権を運営するITR e.Vのゲルハルト・ベルガー代表は声明を発表した。
第1期DTMの消滅後、2000年からスタートした第2期DTMは、シーズン当初から参戦したメルセデス、オペル(2005年に撤退)とアウディの戦いを軸にシリーズが展開されてきた。スーパーGT GT500クラスと車両規定統一に向けて動き出した2012年からはBMWも参入。ドイツの3メーカーによる戦いは高い人気を誇っていた。
しかし、2018年限りでメルセデスが活動を終えると、代わってプライベーターのRモータースポーツがアストンマーティン・バンテージを持ち込んだが、これも2019年限りで終了。DTMは2020年に向けアウディとBMWだけの戦いとなっていたが、今回アウディが二酸化炭素排出量削減と新型コロナウイルス感染拡大による経済面の影響によって、2020年限りの活動終了を発表したことにより、現段階で2021年にDTMに残されるのはBMWだけとなってしまった。
このアウディの決定をうけ、DTMを運営するITRは即座にベルガーの声明を発表した。「今日は、ドイツとすべてのヨーロッパのモータースポーツ界にとって困難な日となってしまった。2020年のシーズン終了後に、アウディがDTMから撤退すると決めたことを強く遺憾に思っている」とベルガーはコメントした。
「我々は(アウディの)取締役会の決定を尊重するが、短い期間での撤退決定の発表はITR、我々のパートナーのBMW、さらにチームに多くの課題を提示した。我々の関係と、新型コロナウイルス流行に直面するこの困難な状況を考えたとき、我々はもっと統一されたアプローチを望んでいた」
さらにベルガーは、「この決定は状況を悪化させ、いまやDTMの将来はパートナーとスポンサーが、この決定に対しどう反応するかに依存してしまっている」とアウディの決定により、DTMが苦境に立たされていることに対し、強めのコメントを残した。
「一方で、私はアウディがITRとのパートナーシップとともに、撤退を適切に、責任をもって完全に行うことを強く期待している」
「私はこれからの一年、何十万人ものファンに対し、スリリングでコンペティティブなレースを提供することを保証するために取り組んでいく。ただ、なるべく早い段階で、我々の参加するチーム、スポンサー、そしてDTMに依存し仕事をしている人たちの安心のための計画も作り上げたいと思っている」
2019年にはスーパーGT GT500クラスとの交流戦が実現するなど、順調かに見えたクラス1規定。スーパーGTでは変わらぬ盛り上がりをみせているが、今回のアウディの撤退決定によりDTMが今後どんな道を歩むのか、ベルガーとITRに対し大きな課題が突きつけられたと言っていいだろう。
DTMを運営するITR会長のゲルハルト・ベルガー、アウディ撤退に落胆「ドイツと欧州のモータースポーツにとって、大変厳しい日となった」
アウディが2020年シーズン限りでDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)から撤退することを発表した。
このことは、DTMにとって大打撃である。アストンマーチンを走らせていたR-モータースポーツが2019年限りで撤退。今季はアウディとBMWの2メーカーのみで戦われることになっていたDTM……そのうちアウディが参戦しないということは、現状ではBMWの1メーカーのみになってしまうということを意味する。
DTMを運営するITRのゲルハルト・ベルガー会長は、アウディ撤退のニュースを受け、DTMの将来が重要な局面に入ったことを認めた。
「本日は、ドイツとヨーロッパのモータースポーツにとって、大変厳しい日となった」
ベルガー会長はそう声明を発表している。
「2020年シーズン限りで、DTMから撤退するというアウディの決定を、深く残念に思っている。我々はアウディの立場を尊重するが、この発表はITR、パートナーであるBMW、および我々のチームに多くの課題を示すことになった」
「我々の関連性、そして新型コロナウイルスの大流行によって我々全員が直面する困難により、より統一されたアプローチが望まれていた」
「この決定により状況は悪化し、DTMの将来は我々のパートナーやスポンサーが、この決定にどう反応するかに大きく依存することになる。にもかかわらず、我々はアウディが計画された撤退を適切な形で、責任を持って、ITRと完全に協力して行なうことを強く期待している」
「私の約束は、今後1年間、そして多くのファンに対して、スリリングで競争力のあるシーズンを提供することを保証するということだ」
「しかしできるだけ早く、参加するチーム、スポンサー、およびDTMの仕事を担う全ての人たちのために、計画についての保証を作り出したい」
アウディは新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済的な影響を鑑み、2020年シーズン限りでのDTM撤退を決断。今後はフォーミュラEなど、他のカテゴリーに注力していくとしている。
アウディのDTM撤退でプロトタイプレースに転向か「LMDhに興味がある」とWRT代表
Wレーシングチーム(WRT)のビンセント・ボッセ代表は、アウディが2020年限りでDTMドイツ・ツーリングカー選手権を去ることを決めたことを受けて、ベルギーのチームが“LMDh”を将来のレースオプションのひとつに検討していることを明かし「興味がある」と述べた。
長年に渡ってアウディ陣営の一角としてGT3レースを戦うWRT。同チームは昨年、DTMに初挑戦し、ここでも他のアウディチームとともにRS5 DTMを走らせた。しかし4月27日に、ドイツメーカーが2021年以降のシリーズ参戦取りやめをアナウンスしたことで、プログラムの見直しを迫られることになった。
ボッセはEndurance-Infoのインタビューに対して、IMSAとACOフランス西部自動車クラブが合意した新しいグローバルプラットフォームとなるLMDhが、スパ24時間やニュルブルクリンク24時間、バサースト12時間などのGT3レースで多くの優勝を飾っているWRTにとって関心を抱かせるものだと語った。
しかし、数週間以内に予想されている同規定の技術的な詳細のアナウンスと、自動車メーカーの参加が明らかになるまで、WRTは正式にプログラムの移行ができないと強調した。
「以前からLMdh(の評価)に取り組んでいた」とボッセは説明する。
「もちろん、(レギュレーションの)完全な解決を待たなければならない。新しいプロトタイプカー規定は、実際にはGT3のコピーであり、成功すると考えるだけの充分な理由がある。ル・マン、デイトナ、セブリングでレースができる可能性があるのは素晴らしいことだ」
「このプラットフォームは、さまざまなメーカーにとって魅力だ。WRTも興味を持っている。しかし、その詳細を知るためには今は待つ必要があるんだ」
ボッセは2022年に登場する予定の新プラットフォームは、プラベーターチームが関与する点でGT3と同じように動きがとれるようになると考えている。これを裏付けるように多くのチームがLMDhを注視しており、その中にはWEC世界耐久選手権のLMP2クラスを戦うハイクラス・レーシングや、シグナテックも含まれる。
「これはIGTCインターコンチネンタルGTチャレンジに少し似ているが、LMDhではプロトタイプを使って世界中を回ることになるだろう」とボッセ。
「WRTのアイディアは、その中の主要レースでファクトリーサポート付きのクルマを走らせることだ」
「モータースポーツの将来は、自動車メーカーが100%出資するワークスプログラムに向かうよりも、ハイエンドのカスタマー間競争に向かう傾向にあると思う」
■DTMへの参加を「後悔していない」
現在、GT3をメインカテゴリーとして戦うWRTだが、プロトタイプレースに参戦した経験も持っている。
2016年にELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズにスポット参戦した同チームは、ローレンス・ファントール、ドリス・ファントール、ウィル・スティーブンスを起用したリジェJS P2・ジャッドを走らせ、総合2位表彰台を獲得した。
しかしながら、プログラムを移行した場合でもWRTがGT3を犠牲にすることはないという。
ボッセは「DTMには非常に優れたチームがある」があると語り「このツールは素晴らしいものだ」と続けた。
「また、今日のGT3も素晴らしいものであり、SROによって非常によく管理されている。我々がたとえ別の方向に進んでも、GT3を放棄することはないだろう」
アウディがDTMから撤退することに関して、ボッセはシリーズに参加したことを後悔していないと述べた。
チームはルーキーイヤーとなった2019年、ジョナサン・アバディーンとピエトロ・フィッティパルディを起用してアウディRS5 DTMを走らたが、2年目に向けてはエド・ジョーンズ、ファビオ・シェラー、元Rモータースポーツのフェルディナンド・ハプスブルグの3名をレギュラードライバーに指名している。
「(アウディの撤退)決定に驚いたとは言えないが、そのタイミングには驚ろかされた」とボッセ。
「DTNに来て(このような)リスクがあることは分かっていた。私たちは日本のメーカーがDTMに参入したいわけではなく、また、アストンマーティンが正式にDTMに関与していないことを理解した」
「しかし、私はDTMに参入したことを少しの間も後悔していない。より良いノートを書き終えるために、今はより意欲的になっているんだ」
突然のアウディDTM活動終了を考察。2021年からのDTMはどうなってしまうのか?
4月27日、DTMドイツ・ツーリングカー選手権に参戦するアウディが、2020年限りでのDTM活動の終了を発表した。2020年からアウディとBMWのみが参戦するDTMにおいて、2社のうち1社が撤退するのはシリーズにとっても大打撃とも言える出来事だ。新型コロナウイルス感染拡大の影響で取材もままならぬ状況ではあるが、現段階で得られる情報から、何が起きているのかと今後についてを考察した。
■突然のアウディ活動終了発表
DTMドイツ・ツーリングカー選手権は、1984年から1995年まで行われ、過激なハイテクデバイスとメーカー同士の争いで盛り上がった後、1996年にITC国際ツーリングカー選手権に発展。ただ費用高騰により、この年限りでシリーズは消滅。2000年に当時の失敗を踏まえ新たなかたちでDTMが生まれた。
第2期のDTMはメルセデスベンツ、オペルといった第1期に参戦したメーカーに加え、当初アプトのプライベート参戦というかたちだったアウディがワークスとして参戦した。ただ2005年にオペルが撤退した後、しばらくはメルセデスとアウディの戦いとなっていた。
当然2社の争いはファンにとっても訴求が難しい部分があり、メルセデスとアウディ、さらにDTM側が望んだのは第3、第4のメーカーだった。そこである意味で“誘われた”のがBMW。ただBMWはグローバルに、特に大きなマーケットであるアジア、アメリカにも訴求できるならば参戦の価値があり、車両開発のメリットがあるとしていた。
こうして生まれたのが、現在DTMとスーパーGT GT500クラスに採用されている車両規定の『クラス1』だ。当初この規定が生まれるにあたり、DTM側はスーパーGTと同時に北米のIMSAにも声をかけていたのは、BMWをはじめメーカーの希望があったのは間違いないだろう。
このクラス1規定は、第1期DTMの失敗を忘れていないDTM側と、車両開発のコストを下げプロモーションに活かしたいスーパーGTの意志もあり、現段階では多くの共通パーツを使用。コスト面ではまだ大きなものではあるが、この速さをもつレーシングカーとしては、かなり合理的なものになっている。空力面でもそれほど開発の余地はなく、唯一のハードルとも言えるエンジンは、スーパーGTを見ても分かるとおり、一度作れば改良を加えながら比較的長く使うことができる。
そんななかでアウディが下した活動終了のジャッジの要因は、公式は発表としては二酸化炭素排出量削減への取り組みのなかでのモータースポーツ活動再編と、新型コロナウイルス感染拡大の影響による経済的な側面が理由として挙げられている。
このなかでもやはり大きいのは、二酸化炭素排出量削減に関する問題だろう。ドイツでは2030年にはガソリン車の販売が禁じられる予定で、ここまでに代替エネルギー車にシフトしなければならない。特にフォルクスワーゲングループは、排ガス問題の影響が色濃く残っており、この問題にはセンシティブだ。すでにフォルクスワーゲンブランドでは、内燃機関のレーシングカーの生産を行わないことを発表している。グループ内のアウディが近い選択を強いられても不思議ではない。
当然同様の問題はBMWにも降りかかっているだけでなく、ヨーロッパのモータースポーツ界全体に重くのしかかっている。音とスピードが魅力のモータースポーツのなかで、電気自動車にシフトしないまでも、ある意味“免罪符”とも言えるのはハイブリッドユニットを積むことで、DTMでもここ1~2年ハイブリッドの噂がささやかれていた。
すでにクラス1規定の車両では、スーパーGTのホンダNSXコンセプト-GTがハイブリッドを積んでいたこともあり、技術的には不可能なことではなかっただろう。ただそれでも、ハイブリッド投入を待たずして活動終了の決定が下されたのは、“ハイブリッドでは足りない”事情がアウディのなかでもあったのだと推測される。新型コロナウイルスによる経済減速もその事情のひとつだろう。
■「ワークスありき」だったDTM
とはいえ、ドイツ国内では地上波でもテレビ中継され、毎戦数万人の観衆を集めるほどの人気を誇るDTMだけに、その活動を終えるというアウディの決断はやはり衝撃的だ。この決断によって、シリーズには本来“誘われた”ようなかたちのBMWだけが取り残される結果となってしまった。
2020年にDTMに参戦を予定している台数はアウディがワークス6名、プライベーターのWRTが3名の合計9名。BMWがワークス6名、プライベーターが1名の計7名だ。現段階でWRTの活動がどうなるかは触れられていないが、もしWRTが出場しないとなると7台のBMWが走るだけのレースになってしまう。台数を増やしたとしても、BMWにとってはまったく魅力もないだろう。
では代わりのメーカーが参入するかといえば、それも厳しい状況だ。ヨーロッパにはDTMに参戦できるほど体力があるメーカーがあるともあまり思えず、すでにマシンをもっている日本の3メーカーも、2019年にクラス1車両を公開した際、オートスポーツからの質問に対し、いずれもDTMへの参入について「意志はない」と明言している。マーケティングの面からもそこまで効果はないだろう。
ちなみに近年のDTMは、車両面ではかなりコストが抑制されていたものの、それ以外の面では行きすぎとも思えるような“プロモーション競争”が白熱していたのも問題点のひとつだ。また特に状況を難しくしていたのは、“DTMはワークス活動で行うもの”というドイツメーカーの考え方だ。
スーパーGTでは、過当なメーカーの参入を避けるべく、基本的にチームがメーカーの支援を受けながら参戦するスタイルがとられている。ドライバー決定等にメーカーの意向が関わることはあるものの、あくまで主体はチームで、カラーリングを決めたりピット内の設備をどうするのかも多くはチームの裁量だ。さらに言えば、チームはGT300に活動の場を移すこともできる。
しかしDTMは、あくまでメーカーが主体。各チームは、メーカーの意匠に完全に則った設備でピットを用意し、カラーリングもメーカー内はすべて共通。またプロモーションも大規模で、モーターショーのメーカーブースのような建築物が毎戦建ち並ぶ。それがDTMの良さでもあったものの、やはり非常に多くのコストがかかっていたはずだ。
2019年からDTMはプライベーターの参加も受け入れるかたちとなっているが、やはりDTMは“ワークスがやるレース”という印象は拭えずにいる。メーカー自らガソリンを使うレースに巨額の投資を行っていくのは、やはりアウディ、そしてフォルクスワーゲングループにとっては不可能だったのではないだろうか。
■DTMの今後は。GT3やTCRへの転換は困難
では今後、DTMはどうなっていくのだろうか。いくつかのパターンが考えられるが、どれも多くの課題があるだろう。
・GT3への転換
ネット上にはGT3カーに切り替えればいいという案も聞かれるが、ほぼ可能性はないだろう。そもそも、ヨーロッパではカテゴリーごとの区別が明確で、ツーリングカーレースはツーリングカーレース、スポーツカーレースはスポーツカーレースなのだ。一時、GTアソシエイションの坂東正明代表が「ル・マン24時間にGT500のチャンピオンを出させて欲しい」とアプローチしたことがあるが、当時すでにGT500とDTMと規定統一の話が進んでおり、ル・マン側の認識は「GT500はツーリングカーではないのか?」というものだったくらいだ(これはこれで認識不足なのだが)。
またすでに、ドイツにはADAC GTマスターズという非常に盛況なGT3カーレースが存在する。ヨーロッパ全体に舞台を広げたところで、こちらも盛況のGTワールドチャレンジ・ヨーロッパがあり、今さら新しいGT3レースが生まれたところでニーズはほぼないだろう。
ちなみに坂東代表は「ドイツでもスーパーGTをやればいい」と語ったこともある。DTMマシンにADAC GTマスターズのGT3カーを混走させれば、GT500とGT300が混走するスーパーGTのようなレースができあがる。6台のBMWとGT3が混走すればレースにはなるかもしれないが、ただこれもまた、ヨーロッパの文化を考えるとハードルは高い。DTMはワークスによるツーリングカーレース。ADAC GTマスターズはカスタマーによるGTカーレースだからだ。
さらに言えば、ドイツメーカーは自社内の“序列”が崩れることは嫌う。例えばDTMカーのアウディRS5 DTMが、やすやすと自社を代表するスポーツカーのアウディR8 LMSを抜いていくことはメーカー内ではあり得ない構図だという認識が強い。
・TCRへの転換
DTMがツーリングカーレースとして継続するならば、近年世界的に隆盛を誇っているリーズナブルなTCR規定を採用するという手段もあるかもしれない。しかしこちらもまた、ドイツ国内にはTCRジャーマニーというシリーズがあり、隆盛を誇っている。
同じカテゴリーのレースを立ち上げたところで、あまりファンやスポンサーへの訴求はないだろう。またこれまでDTMを見慣れてきたファンにとってTCRはやはり別物。そもそもTCRはカスタマー向けレーシングカーであり、DTM自体の収益構造が根本から変わってくるはずだ。
・BMWだけで1~2年をしのぐ&日本メーカーやプライベートアウディの参戦を促す
アウディの撤退により、残されるかたちとなったのはBMWのみとなってしまうが、BMWの6~8台のレースで開催数を減らし1年、もしくは2年をやり過ごしつつ、新規参戦メーカーを募ったり、なんとかアウディがプライベーターの使用を認めるよう要求する案も考えられるだろう。
またその間、非常に困難かもしれないが、年に1~2度でもスーパーGTマシンを招聘しファンの関心をつなぎ止めるということも手かもしれない。少なくとも、BMWとしては現行のM4 DTMは2019年にデビューしたマシンで、3年間は使いたい意向があるはずだ。
とはいえ、これらはあくまでファン目線の期待でしかない。先述のとおりヨーロッパは今後ガソリンエンジンを使用することが非常に難しくなってくる。1~2年待っても別のメーカーが登場するのは考えづらい。
・E-DTMへの転換
現行のクラス1規定は、シルエットフォーミュラとしては優れたシャシーで、メーカーや車種ごとの不公平が極力生まれないような規定となっている。非常に困難な道程とは思うが、これをベースとして1~2年の準備期間をおき、クラス1シャシーと電気エネルギーを使ったレースに転換することが5~10年先を見据えると考え得る選択肢かもしれない。
クラス1規定は市販車の形状を色濃く残すことができるだけに、ドイツ各メーカーが参戦するフォーミュラEの知見を活かし、うまく開発することができればふたたびメーカーの興味を呼び戻し、さらなる参戦メーカーを呼ぶことができるかもしれない。もちろんハードルは非常に高い上に、スーパーGTとのコラボレーションはふたたび絶たれてしまうかもしれないが、現段階では最も困難ながら有効な方策ではないだろうか。
いずれにしろ、アウディの活動終了によりDTMの2020年は大きな歴史の転換点となってしまった。今後DTMがどんな方策を繰り出すのか、注視しなければならないだろう。
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AUDI | 日記
Posted at
2020/04/30 21:25:22
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