2020年06月16日
1トンの車重でBMWのエンジンなら大パワーだなぁ〜
【4気筒モーガン史上最高】モーガン・プラス・フォーへ試乗 BMW製ユニット採用 前編
モダンなメーカーへ進化したモーガン
text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
英国の老舗、モーガンはすっかりモダンな自動車メーカーへと生まれ変わったようだ。とても感銘深い。
モデルレンジのトップに位置する、BMW製6気筒エンジンを搭載したプラス・シックスに試乗したのは、2019年の6月だった。CXと名付けられた、まったく新しいアルミニウム製のモノコックは、モーガンの新時代を告げるものだった。
それからおよそ1年。今度は、プラス・フォーへ試乗する時がやってきた。新しいモーガンのマーケティング・ツールとして、個人向けの残価設定ローンのような金融プランが、英国では用意されている。
真新しいクラシカルなロードスターが、英国では手頃な価格で乗れてしまう。エントリーグレードのポルシェ718ボクスターや、アウディTTSロードスターより安価に、モーガン・プラス・フォーを楽しむことができる。
興味を抱く読者もいるだろう。とても強気な残価設定額に、そのからくりがある。一括で買う場合でも、プラス・フォーの価格はプラス・シックスよりは安い。
だが、古くからのモーガン愛好家は、4気筒エンジンを搭載した新モデルが6万ポンド(792万円)以上だと聞いて、どう感じるだろう。かなり高めの設定に思える。6万2995ポンド(831万円)という英国価格で提供されるのだ。
110年の歴史を持つブランドのモーガン。プラス・フォーは、4気筒エンジンを搭載した伝統的なモデルとは、まったく異なる個性と性能を備えている。
太陽光を浴びながら宛もなく周遊する
プラス・フォーの動的性能は、大幅に引き上げられた。操縦性や洗練性も、間違いなく進化している。それでも、モーガンらしさは残っている。個性的で憎めない。最新モデルであっても、現代的なスポーツカーほど垢抜けてはいないし、角も残っている。
筆者には、2シーター版の、初代ランドローバー・ディフェンダーといった印象を受ける。良い意味でも、良くない意味でも。カタチはまったく異なるけれど。
新しいモーガン・フォーにも、現代的なクルマのようにドアが付く。狭い車内からはみ出る右腕のために、部分的に取り外すこともできる。かなり簡単に。
モーガン・プラス・フォーにぴったりなドライビング・スタイルは、ドアの上半分を取り外し、ソフトトップを開いた状態だろう。優しい太陽光を浴びながら、特に宛もなく地図に広がるルートを周遊するのが良い。
キャビンは、プラス・シックスよりやや狭く感じられるが、身長の高いドライバーが快適に座れるだけの空間は確保されている。ダッシュボードや操作系のレイアウトは、基本的にプラス・シックスと同じ。
デザインはシンプルで運転しやすい。見た目も良い。スピードメーターはダッシュボード中央の助手席側にあって、不自然に遠い。
インテリアの素材や仕上げは、全般的に良好。メーターやスイッチ類など、あちこちにレトロ・スタイルのデザインが適用され、見惚れてしまう。
258psのBMW製4気筒ターボ
荷室は明らかに狭い。背もたれの後ろに設けられた小さな空間だけだが、小さな旅行かばん2個なら、積み込むのに充分な容量はある。
プラス・フォーは、プラス・シックスと並行して開発された別モデル。エンジンは、プラス・シックスの、BMW M340i譲りの直列6気筒ターボと8速ATではなく、BMW 330i譲りのB48型と呼ばれる2.0L 4気筒ターボを搭載する。最高出力は258psだ。
プラス・フォーではATだけでなくMTも選べる。MTの方がやや価格は安いが、最大トルクはAT版の40.7kg-mから若干低められ、35.6kg-mとなる。加速もそのぶん穏やか。
だとしても、最高出力は258psもあり、0-100km/h加速は5.2秒と充分に鋭い。一般道では、望み通りの活発な走りを楽しめる。ライバルの4気筒エンジンのスポーツカーと並んでも、負けない俊足の持ち主だといえるだろう。
エグゾースト・ノートは荒々しく、気迫を感じさせるもの。ワイヤーホイールを包むタイヤは15インチで、幅は205。太いトルクはタイヤを充分に負かすことができる。ハンドリングも快活だ。
今回はモーガン・プラス・フォーのAT版とMT版、両方を試乗することができた。マニュアルの方は、プラス・シックスのドライビング体験で欠けていた部分を備えている点が嬉しい。
このタイプのスポーツカーの場合、ドライバーはできるだけクルマと身体的につながっていた方が楽しい。タイヤからの情報量も、多い方が望ましい。
この続きは後編にて。
【4気筒モーガン史上最高】モーガン・プラス・フォーへ試乗 BMW製ユニット採用 後編
選ぶならMTでワイヤーホイール
text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
モーガン・プラス・フォーのMTは、操作感はやや重いものの、過度な反発や渋さがあるわけではない。日常的な速度域でも、クルマとの一体感を強めてくれる大切な要素になっている。
クラッチペダルを踏み込む重さは適切で、つながりも漸進的。シンプルに、操作する楽しさがある。
一方でATの方は、ドライブに入れたままだとやや変速が忙しない。どこか、クルマが勝手に走っているような感覚すらある。クラシカルな雰囲気のモーガンだけに、少し奇妙だ。
試乗車は、停止中のクリープの効きも強いようだった。信号などでクルマを停めたら、想像以上に強くブレーキペダルを踏んでいないと、勝手に前へ進んでしまうほど。筆者なら、間違いなくオートマではなく、マニュアルを選ぶだろう。
モーガンでは、追加費用でオプションのアルミホイールも用意している。だが、ワイヤーホイールも充分に素敵に思う。余計なお金も掛からない。
標準の15インチのワイヤーホイールでも、充分なグリップ力を生んでくれる。サイドウオールも分厚いから、乗り心地の面でも有利だ。
プラス・シックスと比べるとパワーで劣るプラス・フォーだが、公道で許される速度域でも、充分に甘美なハンドリングを楽しめることが強み。プラス・シックスでは味わえなかった。
理由の1つに、シャシーの幅の狭さがある。プラス・シックスより全幅は78mm狭い。加えて軽量なエンジンのおかげで、フロントが軽いということもあるだろう。タイヤの幅も狭く、よりデリケートな操縦性を得ている。
郊外の一般道ペースがスイートスポット
市街地の速度域でも、プラス・フォーはとても気持ち良い。操作系の重みと反応は一貫性があり、とても穏やか。低速域での乗り心地にも優れている。
英国の郊外では一般的な流れとなる、80km/hくらいまで速度を上げると、モーガンは本領を発揮しはじめる。自信を持って、ドライバーはプラス・フォーを導いていける。フロントタイヤはステアリングホイールから離れた位置にあるが、それを感じさせない。
速度が上がると、操縦性も乗り心地も、流暢さが増す。トルクは太く、クルージングも容易。ドアからの風切り音も少なく、フロントガラスは気流を頭上へ流してくれる。
運転が楽しく、過度な速度域に踏み込む必要もない。リスクも小さい。モーガン・プラス・フォーに残る、クラシックスポーツらしさだといえる。
そこからさらに速度域が上がると、心地よさが薄まってしまう。荒れた路面では、乗り心地がギクシャクしてくる。プラス・シックスと同様に。
サスペンションのストロークが、大きな入力に対応できるほど充分ではないのだろう。バンプストップを打つことも多く、シャシーへ掛かるストレスも大きいはず。乗り心地の悪化に合わせるかのように、操縦性のスムーズさも落ちていく。
ステアリングのレシオはスローで、コーナーの頂点では探るように切り増しが求められる。ある速度域を越えると、攻め込むほどに、俊敏性が不足していることが見えてくる。
モーガン製4気筒モデルでは過去最高
数時間の試乗ではあったが、オープンで2シーターのロードスターとして、モーガン・プラス・フォーもクルマとしての妥協が求められる。遠方への自動車旅行は難しいし、日常的な足にもなりにくい。
モーガン・プラス・フォーは、穏やかなスピードで、特別なドライブの時間を楽しむためのクルマだ。むしろ、モーガンが提供するモデルの中で見れば、プラス・フォーは最高といえる完成度を備えている。
価格は6万ポンド(792万円)を超えているが、クルマとしての制限が足かせになることはないはず。これ以上モーガンに求めるものはない、と思わせるほど説得力がある。
筆者の記憶にある限り、これまでのモーガン製4気筒モデルの中で、プラス・フォーに並べるクルマは存在しなかった。確かに価格は安くはない。しかし、モーガンを理解できるドライバーにとっては、正当化できる金額といえるだろう。
モーガン・プラス・フォー(英国仕様)のスペック
価格:6万2995ポンド(831万円)
全長:3830mm
全幅:1650mm
全高:1250mm
最高速度:239km/h
0-100km/h加速:5.2秒
燃費:13.8km/L
CO2排出量:165g/km
乾燥重量:1013kg
パワートレイン:直列4気筒1998ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:258ps/5500rpm
最大トルク:35.6kg-m/1000-5000rpm
ギアボックス:6速マニュアル
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Posted at
2020/06/16 22:20:07
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