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2020年07月26日

公道は走れるけどレンシュポルトは伊達ではないでしょ?どちらの代だったとしても

公道は走れるけどレンシュポルトは伊達ではないでしょ?どちらの代だったとしても 【ヒットの法則296】ポルシェ 911 GT3 RSは公道で味わうことのできるレーシングカーだった

ポルシェを語る時、レースを抜きにすることはできない。ポルシェはその誕生以来、プライベートドライバーにリーズナブルな価格でレース参戦車両を提供してきたが、2006年には997型911でも「GT3 RS」を投入している。もちろんレース参戦を前提とした車両なのだが、それを一般道で誰にでも味わわせてしまうところがまた、ポルシェのポルシェたるゆえんでもある。今回は2007年に行ったこのGT3 RSの試乗の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年4月号より)

プライベート レーシングドライバーのためのRSシリーズ
ポルシェは、その誕生時点から「フォルクス・シュポルト(民衆スポーツ)」と呼ばれている。それゆえにその後のレーシングカーの作製にあたっては、もちろんホモロゲーションという規定はあったにせよ、自らのモータースポーツ参戦に際してプライベートドライバーに比較的リーズナブルな価格で同じレベルのレーシングスポーツカーを販売していた。

もっともよく知られているのがポルシェ904カレラGTSである。1963年から64年の間に生産されたこのミッドシップ・ポルシェは、日本GPで疾走して日本でもすっかり有名になった。そして1972年にはいわゆるナナサン・カレラ、911 2.7RSが発表され、1978年に911 3.0SC RSが登場した。

そしてこの辺りから業績不振もあってしばらくお休みがあり、1988年の964、そして1993年の993で空冷最後のRSが登場する。そして1999年に水冷996が発表され、このモデルをベースにRSの直系であるクラブスポーツ「GT3」が市場に送り込まれたのである。さらに2003年4月にはいよいよ「RS」の称号が与えられたGT3 RSが発表され、これで未来に向けてプライベート・レーシングドライバーのためのRSシリーズが継承されることが明らかになったのである。

今回、ロードインプレッションに借り出したのはこのRS直系のGT3 RS、ベースはもちろん最新の997である。エンジンはターボと同じベースのボア×ストローク100×76.4mmで総排気量は3600cc、最高出力415ps/7600rpm、最大トルク405Nm/5500rpmだ。

さて、シュツットガルトへ到着すると、いやな予感は的中した。これまでポルシェの高性能モデル、特にRSをテストする時に決まって雨が降ったり、ひどいときには雪までが降ったりすることもあった。そして今回はどんよりと曇った空から、いまにも雨が降り出しそうな勢いであった。

いつもは優しいポルシェの広報担当ミヒャエル・バウマン氏もさすがに「雨が降ったら貸し出しはできない」と、きっぱりと言っており、低く垂れ込めた雲を見上げながらキーを渡す時も、とても心配そう。「このカタチのまま返して欲しい」と冗談とも言えない冗談を発している。

しかし、やや救いというか、安心なのはこのクルマに乗るのが2度目だったこと。最初の予行演習ではドライで、かなりのインフォメーションは集っていた。なぜそんなにナーバスなのかといえば、このGT3 RSに装着されているタイヤを見ていただければわかる。フロント(235/35ZR19)、そしてリア(305/30ZR19)に装備されるミシュランのパイロットスポーツ・クラブのプロフィールは3本の浅い溝の他に、まるでネコが引っ掻いた痕のようなパターンしかない。しかも、この日の外気温度は8.5度だ。

案の定、ポルシェの駐車場を出たところですぐにズリッと来る。タイヤが暖まらないと、まるで泡だらけの銭湯の中を下駄で駆けているようだ。仕方ないので、午前中はスタジオでスタティックな撮影と観察に専念する。

GT3をベースにしたこのRSのもっとも大きな特徴は、ボディである。GT3がスタンダードカレラ、つまり後輪駆動ボディを使っているのに対して、このGT3 RSはカレラ4やターボなど4WDモデルと同じボディを使っている。そのためにリアが44mm広がっている。そしてこのワイドなリアには巨大な固定式カーボン製リアウイングがある。一見すると調整が可能なようだが、公道バージョンでは認可されないので一応ボルトで止まっている。

しかしこうした空力的付加物、そしてワイドになったボディの結果、空気抵抗はやや大きくなっており、Cd値はスタンダードGT3の0.29から0.30へとわずかに落ちている。また、このテスト車に装備されているのはオプションのPCCB(ポルシェ・セラミック・コンポジット・ブレーキ)で、フロントが380mm、リアが350mm、共にドリルド・ベンチレーテッドタイプである。また黄色いキャリパーは強固なアルミ製のモノブロックタイプでフロントに各6個、リアには各4個のピストンを装備する。

巨大なリアウイングの効果で超高速では路面に張り付くよう
雨も上がり、撮影も済んだので、いよいよ出発である。後部にボディ同色のロールケージが張り巡らされた室内は、レザーとアルカンタラで真っ黒、もちろんリアシートも取り外されている。左右で24kgの軽量化に貢献しているレカロ製シートに身体を預け、シートベルトを締め上げると観念して出発直前のコクピットの観察を開始する。

リムの上部中央にテーピングしてあるバックスキンのステアリングホイールの向こう正面には8400rpmからレッドゾーンのタコメーター、その左が350km/hまでスケールの広がったスピードメーターが目に入る。

ふだん乗っている乗用車と較べると、まるで壁を押すような感じの重いクラッチペダルを踏み込み、左手でイングニッションキーを回すと、金属的なクランキングの後、グアーンとボクサーが目覚める。やや抵抗のある、それでいてなぜかメリハリのないシフトフィールを持つシフトレバーをローに押しこみ、スロットルペダルとクラッチペダルを慎重にシンクロさせる。一瞬クラッチの反発力に負けそうになりストールしそうになったので、スロットルを少し踏み込んで、蹴飛ばされるように発進、間もなく「次はクラッチミートをちゃんとしろよ」と警告されようにキャビンにはクラッチディスクの焼けた匂いが充満する。

しかし、その後は別に難しくはない。2速、3速と軽く流しながら、まるで洗濯板の上に座って階段を滑り下りるような硬さを我慢しながら目的の81号線へ向かう。シュツットガルトからスイスへ向かうアウトバーンは比較的空いており、速度制限が解除されている区間も長いのだ。前方が空いたのを見計らってスロットルを開くと、タコメーターの針はまるで風に吹き飛ばされたような勢いで上昇する。

キャビンの中は金属的なギアノイズとボクサーの爆発音で充満する。スタートから100km/hまではわずか4.2秒、ひと呼吸する間だ。そしてそのまま3速ヘシフトアップすると、8.5秒後には160km/h、またその4.8秒後には200km/hに達する。

実は、この頃になると路面からの突き上げは少なくなってくる。そしてメーター読みで300km/hは、特に緊張感なく何度か達することができた。フロントのリップスポイラー、そして巨大なリアウイングのお陰で、RSは路面に吸い付くように安定している。

もちろんこのスピードだと前方のクルマはすべて停止している、あるいはゆっくり移動しているように見えるので、すぐにブレーキに足が届く態勢でいなければならない。もっともポルシェのブレーキの制動力とそのがっしりした剛性感には定評があり、如何なるスピードからも安心してフルブレーキを掛けることができる。もちろん姿勢が乱れることなど皆無だ。

残念ながらこの日、計画していた山間路はまだ雨に濡れており、また落ち葉も多いので、ワインディングのインプレッションは諦めたが、後日のテストで驚くほどのコーナリング能力を確かめることができた。わずか34mm拡大されたリアトレッドだが、コーナリングフォースは凄まじく、バケットシートに収まっていても左足で強く身体を支えていないと、押し倒されそうになるほどだった。

このGT3 RSはポルシェのモータースポーツに対する一般ドライバーへの態度がよく現れている。購入ドライバーはそのままACO、FIA-GT、あるいはIMSAのイベントにすべて参加することができるようにホモロゲーションされ、さらに開催されるコースに合わせてシャシのアジャストも比較的簡単にできるようになっているのだ。

これらの内容を考えるとポルシェのロードゴーイングレーサーは、やはり多くの人たちに幅広くモータースポーツを楽しんでもらおうという考えに立っていることがよくわかる。サーキットに現れる多くのプライベーター達が、ポルシェを選んでいるのは単なる偶然ではないのだ。(文:木村好宏/Motor Magazine 2007年4月号より)

ポルシェ 911 GT3 RS 主要諸元
●全長×全幅×全高:4460×1852×1280mm
●ホイールベース:2360mm
●車両重量:1375kg (DIN)
●エンジン:対6DOHC
●排気量:3600cc
●最高出力:415ps/7600rpm
●最大トルク:405Nm/5500rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:RR
●最高速:310km/h
●0-100km/h加速:4.2秒
※欧州仕様


ポルシェ911 GT3 RSをニュルブルクリンクで試乗:前編。清水和夫が新コースでバトルを展開!【Playback GENROQ 2018】

Porsche 911 GT3 RS

ポルシェ911 GT3 RS

水平対向6気筒NAエンジンが生む9000rpmの旋律

ダウンサイズターボ化が進む911のラインナップにおいて頑にNAを貫くGT3。その最高峰であるRSが新たに生まれ変わった。4リッターのNAエンジンは歴代最高である520psを達成。そのパワフルさと速さ、そして9000rpmまで回りきるフラット6。現代のスーパースポーツカーとしては珍しいほどのピュアな快感がここにある。911シリーズきっての辛口モデルを、清水和夫と島下泰久が試乗インプレッション。本記事では清水和夫氏のレポートをお届けする。

「路面に吸い付くような安定感。最高のステージで鍛えた走りは本物だ」

昨年、ポルシェのモータースポーツ&GTカーの担当副社長であるフランク=シュテッフェン・ヴァリザー博士から聞いた話だが、GT2 RSがニュルブルクリンクのノルトシュライフェで出したタイム、6分47秒はコンピューターによるシミュレーションよりも速かったそうだ。

今回の主役であるGT3 RSはNAだから、絶対的なトルクはGT2 RSに敵わない。しかしGT3 RSの開発チームはシャシーを徹底的に煮詰めることで、7分前後のタイムで走れるだろうと予測していたという。991後期型GT3が7分12秒を叩き出していることもあり、希望的な意味もあったようだが、いざ実際のアタックでGT3 RSは何と6分56秒をマークしたのだ。

「ニュルブルクリンクGPコース(新コース)で試す」

その時のインカー動画を見たのだが、ケッセルヘン(Kesselchen)コーナーを過ぎたセクションでの走りには驚いた。ゆるく左に曲がった超高速コーナーで、どのマシンもスロットル全開で加速する。そしてその先にややタイトな左コーナーがあり、ここはプロドライバーでも思わず減速してしまうコーナーだ。GT3 RSは240km/h近いスピードが出ていたのだが、この左コーナーをスロットル全開でクリアしたのだ。新型GT3 RSが恐ろしいポテンシャルを持っていることは、この映像だけでも十分に理解できた。そのマシンを、いよいよニュルブルクリンクGPコース(新コース)で実際に試す機会が訪れたのだ。

GT3 RSに装着されるタイヤはミシュランとダンロップだが、開発スタッフによると、サーキットではミシュランが、オールラウンドではダンロップが最適らしい。ちなみに今回のテストカーはすべてミシュランの秘密兵器となる「パイロット・カップ2R」という、まだ未発表の最新タイヤを装着。これでGT3 RSでマイナス5秒、GT2 RSでマイナス3秒のタイム短縮が期待できるそうだ。つまり他のタイヤであれば6分56秒のタイムが約7分01秒、ということか・・・。

「インストラクターに追従する試乗は、実際はバトルのようなもの」

サーキット走行はカー・トゥ・カーの2台のカルガモ走行で行われる。インストラクターが運転するGT2 RSに私のGT3 RSが追従するという形式だが、実際はバトルのようなものなのだ。

いざコースインし、メインストレートから1コーナーに向けてブレーキング。ここは若干下りながらのフルブレーキだが、スマートフォンで計測すると1.4Gくらいを表示している。多少リヤ荷重が減るのだが、ブレーキングスタビリティはびくともしない。ブレーキローターはもちろんPCCBだが、初期制動も踏み込んでいったときのリニアな効き具合もほれぼれするほどだ。このブレーキ性能こそが、リヤエンジンの911が世界最速を誇れる理由ではないだろうか。続いて超タイトな右コーナーから連続するS字カーブをクリアする。加速が鋭いので、2速ギヤは要注意。簡単にリヤが滑るだろうと思いきや、意外にもよく粘る。グリップレベルは相当に高いようだ。

「180km/hのコーナリングでの挙動も実に安定している」

さて、ここからGPコースの見どころとなる、下りながらの中速コーナーをクリアし、ボトムに位置するヘアピンまで一気に下る。ドライビングに集中したいので、Dレンジで走る。シフトアップはPDK任せ、シフトダウンはパドルを使った。

ボトムのヘアピンでは2度目の2速ギヤの出番だ。バンクがついているので、早目にスロットルを開けられるのだが、その先には高速シケインが待ち受ける。3速で9000rpm近くまで回して4速にシフトアップ。そのタイミングでステアリングを切り込む。縁石をスムーズにカットし、最小限の舵角でクリア。サスペンションが上下に大きくストロークするが、挙動は乱れない。さすがニュルのオールドコースで鍛えたシャシー性能だ。冒頭に述べたオールドコースの240km/hのコーナリングとは絶対速度が異なるが、180km/hのコーナリングでの挙動も実に安定している。

「その実力は数字で表される以上に素晴らしい」

4リッターのフラット6は991前期型から採用されているが、その内容はまるで別物だ。6000rpmくらいからのレスポンスとエンジン音でその違いが分かる。最後は約230km/hの右コーナーが待ち受ける。ここをスロットル全開でいくにはフロントのグリップがもう少し欲しい気もした。だが、スピードが高まるほどに路面に吸い付くような安定感は、前期型よりも明らかに進化している。

20psアップを果たした新型GT3 RSだが、その実力は数字で表される以上に素晴らしい。クルマとドライバーを鍛える最高のステージ、ニュルブルクリンクオールドコースで磨き上げた走りは、やはり本物だ。タイムが7分01秒であったとしても、その価値はまったく揺るぎない。

REPORT/清水和夫(Kazuo SHIMIZU)

PHOTO/Porsche AG

【SPECIFICATIONS】

ポルシェ911 GT3 RS

ボディサイズ:全長4557 全幅1880 全高1297mm
ホイールベース:2453mm
車両重量:1430kg
エンジン:水平対向6気筒DOHC
総排気量:3996cc

最高出力:383kW(520ps)/8250rpm
最大トルク:470Nm(47.9kgm)/6000rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前265/35ZR20(9.5J) 後325/30ZR21(12.5J)
最高速度:312km/h

0-100km/h加速:3.2秒
燃料消費率:12.8リッター/100km
CO2排出量:291g/km
車両本体価格:2692万円

※GENROQ 2018年 7月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。



ポルシェ911 GT3 RSをニュルブルクリンクで試乗:後編。北コースを島下泰久が全開アタック!【Playback GENROQ 2018】

Porsche 911 GT3 RS

ポルシェ911 GT3 RS

聖地・ニュルブルクリンクでポテンシャルを暴く

ダウンサイズターボ化が進む911のラインナップにおいて頑にNAを貫くGT3。その最高峰であるRSが新たに生まれ変わった。4リッターのNAエンジンは歴代最高である520psを達成。そのパワフルさと速さ、そして9000rpmまで回りきるフラット6。現代のスーパースポーツカーとしては珍しいほどのピュアな快感がここにある。911シリーズきっての辛口モデルを、清水和夫と島下泰久が試乗インプレッション。本記事では島下泰久氏のレポートをお届けする。

「ひたすらに走りを突き詰める姿勢。この精神性はレーシングカーそのものだ」

ニュルブルクリンク北コースのラップタイムは驚愕の6分56秒4。先代から実に24秒も削り取る速さを引っ提げて登場した新型ポルシェ911GT3 RSは、そのタイムアップぶりからも解るように、ハードウェアを大幅に進化させてきた。

もっとも解りやすいところで言えば、最高出力は20ps増の520psに達している。先代と同じく水平対向6気筒4リッター自然吸気ではあるが、このエンジンは昨年登場したGT3から使われている新設計ユニットで、その基本設計は911GT3カップや911GT3 R、911RSRといったレーシングマシン用とも共有している。

最高許容回転数はGT3と同じく9000rpm。では、どのようにしてプラス20psを得ているのかと言えば、GT3 RSはターボボディの採用によりリヤフェンダーがワイド化され、エアダクトも開いている。そのため、より容量の大きな吸気系を再設計することができ、高回転域での一層のパワーアップが可能になったのだという。

「さらに30kgの軽量化を実現するヴァイザッハ パッケージも設定」

当然、ターボボディの目的はそれだけではなく、拡げられたフェンダーの内側には前20インチ/後21インチのよりワイドなタイヤが収まる。ボディは軽量化のためCFRP製のフロントフードやフェンダー、マグネシウム製ルーフなどを採用。強力なダウンフォースを稼ぎ出すべく、さらに前方に突き出したリップスポイラー、ブレーキ冷却とドラッグ低減に貢献するボンネット上のNACAダクト、これもCFRP製の固定式大型リヤスポイラーなどの専用空力パーツで武装している。

シャシーのアップデートはGT2 RSに準じたかたちだ。ほとんどのゴムブッシュはユニボールジョイントに置き換えられ、スプリングレートはGT2 RSと同等、つまり先代のほぼ倍にまで高められている。

GT2 RSに倣って、CFRP製のルーフや前後アンチロールバー、そしてシフトパドルに、チタン製のロールケージパーツなどを盛り込んで、さらに30kgの軽量化を実現するヴァイザッハ パッケージも設定された。また、公道走行可能ながらドライグリップに特化したトラック用タイヤも、この6月よりポルシェセンターで用意されるという。改めて言うまでもなく、6分56秒4を叩き出したのは、この仕様である。

「この快感の海に放り込まれたら、慎重に行くなんて無理な話」

ニュルブルクリンク グランプリコースでの我々の試乗の機会に用意されていたのはノーマルのPCCB付きという仕様だった。ほぼ10年ぶりに走るコース。最初は慎重に行く、つもりだったのだが・・・。

コースインしてアクセルをさらに踏み込んでいくと、自然吸気フラット6の刺激的なサウンドとレスポンスで、一気にアドレナリンが湧き出してしまった。回転が上昇するにつれてリニアにパワーが高まっていき、ほとんどがターボ化されてしまった最近のハイパフォーマンスカーなら、そろそろ頭打ちになる7000rpmを超えてもなお、ますます勢いに拍車がかかってくる。

そう、まさにここからがハイライト。GT3以上に迫力あるサウンド、そして圧倒的なパワーを炸裂させながら一気に9000rpmまで達するのだ。PDKの変速タイミング、そしてスピードも完璧で、Dレンジのままで旨味を余さず堪能できる。この快感の海に放り込まれたら、慎重に行くなんて無理な話である。

「RS=レンシュポルトの伝統は、ここに完璧に継承されている」

そうは言うものの、当然ながら無理は禁物だ。トレッドが拡大され、タイヤもワイドになり、しかもサスペンションにはユニボールが多用されていることから、コーナリングはシビアさを増している。直接比較できたわけではないが、GT3ではバケットシートのホールド性には問題を感じなかったのに、このGT3 RSではシートの中で身体が動いてしまって難儀したことを考えれば、速さは間違いなく増しているのだろう。しかし、その領域はナイフエッジのように狭く、少しでも行き過ぎるとPSMがオンのままであるにも関わらずリヤが結構な勢いと量で滑り出す。ドライバーの側も、より神経を研ぎ澄ませてクルマと対峙する必要がある。スペックが向上したからと言って、自動的に速く走ってくれるわけではないのだ。

サーキットをエンジョイするというより、コンマ1秒でもタイムを削り取るべくひたすらに走りを突き詰める。GT3 RSは、ドライバーにそういう姿勢を求めてくるクルマである。この精神性は、まさにレーシングカーそのものだと言っていい。

RS=レンシュポルトの伝統は、ここに完璧に継承されている。そうした走りの世界に浸ることに無上の歓びを感じる、ストイックでファナティックな人たちにとって、この新しい911 GT3 RSはこの上ない1台となるだろう。

REPORT/島下泰久(Yasuhisa SHIMASHITA)

PHOTO/Porsche AG

【SPECIFICATIONS】

ポルシェ911 GT3 RS

ボディサイズ:全長4557 全幅1880 全高1297mm
ホイールベース:2453mm
車両重量:1430kg
エンジン:水平対向6気筒DOHC
総排気量:3996cc

最高出力:383kW(520ps)/8250rpm
最大トルク:470Nm(47.9kgm)/6000rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前265/35ZR20(9.5J) 後325/30ZR21(12.5J)
最高速度:312km/h

0-100km/h加速:3.2秒
燃料消費率:12.8リッター/100km
CO2排出量:291g/km
車両本体価格:2692万円

※GENROQ 2018年 7月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。
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Posted at 2020/07/26 22:56:57

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