2020年09月17日
流石にスバルで電動ターボとか可変ターボは採用まだまだ無いだろうしな〜
燃費規制にどう対応? スバル 水平対向エンジンの危機と新たな可能性
鍵は新型レヴォーグの新しい水平対向エンジンにあり!?
昨今、いっそう規制が強化されるなかで、燃費の悪い車種は存続の危機に瀕している。この燃費規制はメーカーの総量規制となるため、ハイブリッド車など燃費の良いモデルを多数展開するメーカーが有利に。
一方で、ラインナップ全体で燃費の良いハイブリッドなどが少ないメーカーにとっては厳しい規制となる。
そのクルマ作りは高く評価されつつも、燃費に特化したモデルがないスバル。同車を象徴する、独自の水平対向エンジンは今後どうなるのか? 国沢光宏氏が解説する。
文:国沢光宏、写真:スバル、トヨタ、撮影:池ノ平昌信
【画像ギャラリー】事前予約開始!! 2020年10月15日発表の新型レヴォーグをみる
スバルにとって厳しい「企業間平均燃費」
スバルはフォレスターなどにマイルドHVのe-BOXERをラインナップするが、WLTC燃費は14.0km/Lと、爆発的に燃費の良いモデルが少ないことが課題
2020年から『CAFE』(企業平均燃費)と呼ばれる厳しい燃費規制が始まっているなか、スバルはCAFE基準に到達していない新型レヴォーグを発表した。
ちなみに、新型レヴォーグのJC08燃費は16.6km/L。2020年CAFE規制値をみると、商用車などを除き販売しているクルマ全ての平均燃費を20.3km/L(JC08相当)にしなければならない。
プリウスを始めとするハイブリッド車やコンパクトカーを保有しているトヨタ
2020年規制、ハイブリッド車やコンパクトカーが多いトヨタ優位なことはイメージできると思う。けれどスバルにとって厳しい。
燃費の良いコンパクトカーを全廃。本格的なハイブリッド車の開発着手は早かったのだけれど凍結。
電気自動車も日産や三菱自動車より早いタイミングで取り組んだけれど、これまた電池技術を日産に売却して諦めた。なぜか。技術系の役員が(すでに引退している)、パワーユニットにまったくお金を掛けなかったためです。
現在のラインナップ、燃費規制が緩いアメリカ市場をメインに考えたモデルばかり。結果、8月以降、レヴォーグを除きスバルで生産しているモデルの受注を中止している。2020年規制に対する何らかの対応をしているのだと思う。
新しい水平対向エンジンはハイブリッドやPHV化も視野に
新型レヴォーグは、2020年8月20日より予約開始し、正式発表は10月15日、発売開始は11月となる予定である。
ちなみに2020年規制をクリアできない場合、表向きは「1車種につき100万円の未達金」を払えばいいのだけれど、国交省ってそんな甘くない。「認可しない」という強い権力を持つからだ。
ここからは推測ベースになるけれど、2020年規制クリアができていない新型レヴォーグを認可する代わり、新しいパワーユニット戦略を提示したんだろう。
そのヒントが新型レヴォーグに搭載されている新設計の『CB18』にあるという。あまり詳しく紹介されていないCB18ながら、じっくり見ると興味深い。
新世代水平対向4気筒エンジン「CB18」 燃費はJC08モードで16.6km/L(従来型燃費:16.0km/L)
最大の特徴は、ボアピッチ(シリンダー中心の距離)を短くしている点にある。ボアピッチ変えると生産設備まで変更しなければならず、文字通りのフルモデルチェンジ。
なぜ巨額の投資をおこないボアピッチを短くしたかといえば、おそらくエンジンの後方にハイブリッドユニット+変速機を設けるためです。
今までのFBエンジンだとハイブリッドシステムを組み込んだらエンジン前端とミッション後端の長さが過大になる。そこでボアピッチを詰め=エンジン全長を短くしたワケ。何と40mmも短くなった!
新型レヴォーグには1.8Lボクサー直噴ターボ(177ps/300Nm)と新型リニアトロニックが採用された
トヨタと同じようなハイブリッドを開発するのなら、ターボ付けない1800ccにすればよかろう。CB18エンジン、ターボでも熱効率40%に達している。開発目標を聞いていると、トヨタや日産、ホンダの新世代エンジンと互角。
また、従来通りの駆動系を使える構造のため、後輪にモーター使う4WDでなく本格的なフルタイムも実現可能だ。
参考までに書いておくと、新型レヴォーグと同じサイズのボディ+ほとんど同じ出力のSKYACTIV-Xを搭載するCX-30の燃費は、WLTCで15.8km/L。
CX-30(SKYACTIV-X搭載)の燃費:WLTC 15.8km/L
同13.7km/Lの新型レヴォーグにSKYACTIV-Xと同じくマイルドハイブリッドを組んだら、けっこう近い燃費になると思う。CB18のポテンシャルって素晴らしい!
ということで、おそらくスバルは新世代のCBエンジンをさまざまな車種に搭載していくのだろう。
もちろん、本格的なハイブリッドやPHVもラインナップに含むに違いない。遠からずCAFE2020年規制の20.3km/Lに到達するという「将来図」を国交省に提出しているんだと思う。じゃなければ新型レヴォーグの認可を出さない。
レヴォーグの新エンジンはパワー面でもポテンシャルあり
さて、ここまでは環境問題を重視するジャーナリストとしての評価です。クルマ好きのポジションからCB18を見るとどうか?
意外や意外! CB18はパワーも出せるエンジン設計になっているそうな。
従来型レヴォーグに搭載されていたFB16はギリギリの強度設計になっており、パワーアップの余地なし。そのまま乗るしか無かった。
けれどCB18は、名機EJ20と同じくパワーアップの余地を残す。おそらくロムチューンだけで200馬力/320Nmくらいまで出せるんじゃなかろうか。
タービンをワンサイズ上げれば、さらにパワーアップ可能だと思う。200馬力出せたら初期型レガシィGTと同じ出力になる。けっこう楽しめるパワーユニットに育つ。面白そうですね!
少数派の水平対向エンジン【スバルの特徴?低重心化?メリットは?デメリットは?】
クルマの父が発明した水平対向エンジン
水平対向エンジンを発明したのは、自動車を発明したあのカール・ベンツといわれています。カール・ベンツは1879年にエンジンの特許、1886年に自動車の特許を取得しています。ベンツが水平対向エンジンの特許を取得したのは自動車の特許取得から10年後の1896年です。
水平対向エンジンの最大の特徴は、エンジンを真上から見たときに2つのピストンが向かいあうように配置されていることです。クランクシャフトにはコネクティングロッドを介してピストンが接続されています。そのクランクシャフトとコネクティングロッドが接続される部分をクランクピンと呼びます。水平対向エンジンの場合は1-2番、3-4番、4-5番というように向かい合うピストンが対となっています。この対の部分のクランクの角度は必ず180度の位置で配置されます。ですので、対になったピストンは同じ動きをします。片方が上死点ならもう片方も上死点です。180度の位相で180度開いたシリンダー配置のためです。
一方、同じ180度開いたシリンダー配置でも向かい合う2つのピストンがクランクピンを共有する方式もあります。クランクピンを共有するのはV型エンジンと言われます。通常は90度や60度のバンク角を用いますが、なかには180度のバンク角(つまり水平対向と同じ配置)を使うこともあります。この場合、向かい合う2つのピストンに位相差はなく、それを180度に左右振り分けるので、対のエンジンの動きは180度ずれて片方が上死点ならもう片方が下死点となります。ですので、水平対向エンジンと180度V型エンジンは似て非なるものです。
メリットは振動を打ち消す動きと低重心
向かい合う一対だけを見て見ましょう。右側ピストンが下がる(つまり左に向かっている)ときは、左側ピストンも下がる(つまり右に向かっている)ので、クランクピンにかかる力が打ち消し合うため振動が出にくいというメリットがあります。そしてそのレイアウト上の特徴からエンジンの重心高を下げられるというメリットもあります。また、直列エンジンでは片側が吸気、片側が排気となるので左右重量バランスが取りづらいのですが、水平対向エンジンは左右が対称となるので、左右の重量バランスは取りやすくなります。
デメリットは制限の多いこと
水平対向エンジンのデメリットは制限の多さと言えます。たとえばエンジンのストロークを伸ばそうとした場合、水平対向は左右どちらも伸ばさないとなりません。クルマのボディ幅には制限があるので、むやみにストロークを伸ばすことができず、エンジンのロングストローク化が難しいのです。ショートストロークビッグボアの高回転型ハイパワーエンジンは作りやすいのですが、現代のように燃費重視のハイトルクエンジンは難しくなります。
また同様に左右に大きく開くエンジンレイアウトとなるため、点火プラグにアクセスするのも大変な作業でメンテナンス面での手間もかかることが多くなっています。直列エンジンやV型エンジンでは、クルマにエンジンを載せたままでシリンダーヘッドカバーを外すことができますが、水平対向エンジンの場合はスペース的な余裕の面などの問題で、エンジンを下ろさないとならないことが多いのが実情です。
こうした制約の多い水平対向エンジンですが、水平対向エンジンでなければできない左右シンメトリーレイアウトや、低重心化が得られるために、スバルやポルシェでは使い続けられているのです。
新型レヴォーグもインプレッサも電動化せず! エンジン主流にスバリストは喜ぶがスバルの未来は大丈夫か?
スバル全体の売上の7割はアメリカ市場向け
SUBARUから、電動化の動きは限定的にしか聞こえてこない。国内向けの次期レヴォーグも、ガソリンエンジン車が中心になるようだ。世界的に電動化の動きがあるなかで、ガソリンエンジンにこだわるスバルは、この先をどのように見ているのだろう。
今年4~6月の決算報告を見ると、新型コロナウイルスの影響があるのはもちろんとして、国内外でのスバル車の販売状況は、米国が主力であることが改めて浮き彫りになる。米国での販売台数は、全体の73%近くを占める。それに対し国内は軽自動車を含めても約14%、欧州は2.2%でしかない。中国も約4.5%といったところだ。
これに対し、電動化を厳しく規制しているのは、米国ではカリフォルニア州のZEV(ゼロ・エミッション・ヴィークル)であり、カリフォルニア州に追従してほかの9州で実施される方向ではあるが、米国50州全土の規制ではない。欧州は来年から二酸化炭素(CO2)排出量規制が強化され、中国ではNEV(ニュー・エナジー・ヴィークル)規制が施行されている。
欧州のCO2規制は来年から強化されるので、欧州の自動車メーカーは電動化を急ぐが、SUBARUにとっては2.2%しか売れていないのなら、クレジットと呼ばれる反則金を支払うことで済ませたほうが安上がりかもしれない。2000年以降、欧州でディーゼルターボエンジンが人気を呼び、SUBARUも独自に水平対向のディーゼルターボエンジンを開発したが、結局販売台数が限られるので現在はディーゼルエンジンから撤退している。電動化で、その二の舞を踏みたくないということだろう。
中国では欧州の約2倍の台数を売っているが、それでも米国の4.5%でしかないのなら、そのために電動化への投資をしないほうが無難ということだろう。こちらも、クレジットを支払うほうが安上がりかもしれない。
日本は、燃費基準の達成に奨励策はあるが、罰金はないので、無理をする必要はない。なおかつ、マンションなど集合住宅の管理組合問題があり、駐車場に普通充電設備を設置できない状況が過去10年間解消されずにいる。そこに無理に電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)を導入しても、苦労するだけという判断だろう。
カリフォルニア州のZEVについても、全米での販売の1割ほどでしかないようなので、トヨタと協力してPHEVを準備できればクレジットの負担を軽減できるし、世界的な収支を見れば、ガソリンエンジンだけで乗り切ったほうが得策という算盤が働いているのだと思う。
電動化は今後の自動車開発の肝になっていく
企業経営から見れば、正しいかもしれない。だが、この先、スバルを選ぶ理由がどこにあるかといえば、見通せないところもある。一般的な消費者にとって、水平対向エンジンである意味はほぼないといっていい。アイサイトにしても、他メーカーの運転支援機能が進歩を続けることにより、その差が見えにくかったり、感じにくかったりするだろう。しかも、自動運転を目指してはおらず、安全対策の延長として自動運転も可能という開発姿勢なので、自動運転が実現したら社会がどう変わるかという視点はない。
消費者の目線からすれば、電動化することで日産にプロパイロット2.0のようなハンズオフ走行が可能になったり、HVでありながらワンペダル運転ができたりするe-POWERドライブが、楽であったり快適であったりしてよいと思うのではないか。運転の喜びは、単に速度を出したり、性能の限界で走らせたりすることだけではない。
なおかつ電動化は環境対応だけでなく、静粛性を含めた乗り心地の向上や、移動を楽に、安全にこなせる性能向上にも効果を持つ。そうした総合力が高まることが、消費者の願いであり、そのメーカーを選ぶ理由になっていくだろう。
時代は環境が表看板となっているが、電動化の裏にはクルマの総合性能をエンジン車より高める多様な素質が隠されている。そこに、消費者も気づくだろう。そのとき、スバルを選ぶ理由が残っているかどうかはわからない。
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富士重工 | 日記
Posted at
2020/09/17 22:51:15
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