【あのラリーカーが蘇った?】ランチア037、500馬力超の現代風マシンに 37台限定 価格は6000万円以上
伝説的なMRのラリーマシン
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)
text:Felix Page(フェリックス・ペイジ)
イタリアのキメラ・オートモーティブ社は、史上最も成功したラリーカーの1つであるランチア037を大幅に近代化・アップグレードしたモデル「Evo37」を発表した。
世界ラリー選手権(WRC)で優勝した最後の後輪駆動車として知られる、ランチアの恐るべきミドエンジン車をベースに開発されたレストモッドだ。
キメラはEvo37を「1980年代のWRCの伝説的なクルマへのオマージュ」としている。
開発プロジェクトは、エンジニアのセルジオ・リモーネとヴィットリオ・ロベルティ、2度のWRCチャンピオンに輝いたミキ・ビアシオンなど、オリジナルのランチアに携わったサプライヤーやエンジニアの貢献により完成した。
037と同様に、Evo37もランチア・ベータ・モンテカルロのシャシーをベースに、フロントとリアに新しくスペースフレーム・セクションを追加している。
オーリンズ製のアジャスタブル・ショック、ブレンボ製の高性能ブレーキ、ピレリ製のスポーツ・タイヤなど、シャシーは全面的に改良されている。
デザインはオリジナルに忠実
車両重量は明らかにされていないが、パワーウェイトレシオが1ps/2kgであることから、約1トンになるものと思われる。
総出力は、オリジナルの037の約2倍に上る。
エンジンは標準仕様のブロックをベースに、1980年代にランチアのモータースポーツ・パワートレイン・プログラムを監督した著名なイタリア人エンジニア、クラウディオ・ロンバルディの監修のもと、さまざまな改良が加えられている。
キメラの発表によると、ターボチャージャー付き4気筒ユニットの出力は505psと56.0kg-mで、性能の詳細はまだ明らかにされていないが、0-100km/h加速は約4.0秒、最高速度は数百km/hに達するという。
全体的なデザインはオリジナルをほぼ踏襲しているが、ラリースタイルのホイールや、特徴的なクワッド・ヘッドライトのデザインが微妙に変更され、LEDが使われている。
ボンネットとリアデッキのデザインも刷新され、前後のオーバーハングはわずかに短くなっている。
インテリアは高級仕様?
インテリアでは、カーボンファイバーやアルカンターラを使用するなど、1980年代のオリジナルモデルとは一線を画している。ただし、油圧式ハンドブレーキ、アナログメーター、4点式レーシング・ハーネスなど、ラリーの伝統を受け継いだ仕様となっている。
キメラは、このモデルを37台製造する予定で、価格は41万4000ポンド(6378万円)からとなっており、すでに11台が販売されているという。
7月に英国で開催されるグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで一般公開された後、9月から顧客への納車が開始される予定だ。
ランチア・ラリー037が現代に蘇る!? キメラEVO37登場!
5月22日、イタリアのカロッツェリアであるキメラ・アウトモビリは、ランチア「ラリー037」をモチーフにした「EVO37」を発表した。
価格は6000万円超
キメラ・アウトモビリは、ヨーロッパラリー選手権などへの参戦経験を有するプロ・ドライバーのルカ・ベッティが、イタリア・クーネオで創業したカロッツェリアだ。同社初のプロジェクトとして誕生したのがEVO37である。
EVO37は、ランチアが開発したラリー・マシンの「ラリー037」にオマージュを捧げるべく企画された。開発には、ランチアのドライバーとして2度のWRC(世界ラリー選手権)チャンピオンに輝いたミキ・ビアシオン氏を含む、当時のスタッフ陣が関わったという。
EVO37は、ラリー037とおなじく「ベータ・モンテカルロ」がベースだ。ただし、前後の管状フレームはEVO37オリジナルになる。4灯のヘッドランプはLEDにアップデートされた。パーツ製作には最新の3Dプリンターも使われたという。
足まわりは、オーリンズ製のショックアブソーバーやブレンボ製のカーボンセラミックブレーキを採用。タイヤはピレリ製のランフラットタイプで、フロントが245/35R18、リアが295/30R19の前後異径になる。
搭載する2.1リッター直列4気筒ガソリンターボ・エンジンは、505ps/7000~7250rpmと550Nm/2000rpmを発揮、6MTを介しリアを駆動する。0~100km/hの加速タイムは約4.0秒をうたう。
内装の詳細は明かされていないが、カーボンファイバーと人工皮革「アルカンターラ」を各所に使うという。アナログメーターやハンドブレーキなどのデザインはラリー037をモチーフにしているそうだ。
EVO37は37台限定で販売されるが、すでに11台は成約済みという。価格は48万ユーロ(約6400万円)から。
文・稲垣邦康(GQ)
EVO37の海外記事を流し読みしてみた感じエンジンに関してはターボのみではなくスーパーチャージャー+ターボチャージャーの筈
これは「ランチア037のニューエディション」|37台限定の「キメラEVO37」
伝説的ともいえる名車、ランチア037が北イタリアのクーネオでレストモッドマシンとして復活した。このプロジェクトを推進しているのは、ルカ・ベッティが率いるキメラ・アウトモビリだ。
キメラのEVO37は、ランチア037の開発に深く関わった人々の協力を得て、最新の技術を用いて一段上のレベルに引き上げられた「ランチア037のニューエディション」と考えていただきたい。レプリカでも“コンティニュエーション”でもなく、“エボリューション”だからこそ、“EVO”と名付けられたのだ。また、"37”という数字は、伝説のランチアを思い起こさせるだけでなく、キメラ・アウトモビリ社が予定しているこの車の生産台数も表している。人によっては随分と野心的に思うかもしれないが、48万ユーロ(約6400万円)という価格でも、すでに11台が先行販売されている。EVO37は7月に開催されるフェスティバルオブスピードで正式に発表され、9月に最初の車が納車される予定だ。
ルカ・ベッティは、過去に多くのラリーを走り、その他にもモータースポーツに深く携わってきた人物である。また後輪駆動のグループBラリーの生きる伝説であり、ランチア037には4輪駆動の相手をすべて打ち負かして世界タイトルを獲得したマシンとして神聖な敬意を抱いているという。ベッティは、この車の開発のために、オリジナルの開発チームから有名な人物を集めた。セルジオ・リモーネ(シャシーとセットアップ)、クラウディオ・ロンバルディ(エンジン)、ヴィットリオ・ロベルティとフランコ・イノチェンティ(生産工程と材料)といった人物である。
キメラはEVO37のベース車両として、当時の037のベースにもなったベータ・モンテカルロを使用している。オリジナルのマシンは、シャシー中央にモノコックがあり、フロントとリアにサスペンションと駆動系の構造が分かれていた。しかしキメラでは、同じセントラル・ケージを採用しているが、ランチア・デルタS4に似たより強固で剛性の高いチューブラー・シャシーに組み込まれている。そしてサスペンションとステアリングは、S4とデルタ・インテグラーレのものが使用されている。
EVO37には、カーボン、ケブラー、チタン、そしてもちろんスチールやアルミニウムといった最先端の素材がふんだんに使用されている。キメラの車重はまだ発表されていが、想像を絶する性能を持っていることは間違いないだろう。最高出力は500ps、最大トルクは580Nmで、そのうち400Nmは2000rpmで発揮される。もちろん、6段マニュアルギアボックスを介して、後輪にのみ供給されるようになっている。
このエンジンは、ブロックこそ037と共通のものを使用してるが、それ以外のすべての部分は、マルティーニ・レーシングチームが開発してきたすべてのエンジンの生みの親であるクラウディオ・ロンバルディの指揮のもと、イタルテクニカによって再設計・構築されている。もちろん、パワートレインは伝説に忠実で、ターボとルーツ型スーパーチャージャー(電磁クラッチ付き)の両方を備えた2150ccの4気筒である。
037のポリエステルボディをカーボンファイバーでそっくりそのままコピーするといったことはされなかったが、キメラデルタS4やデルタ・インテグラーレの要素が取り入れられ、特にホイール周りにそれが顕著に表れている。またノーズには、ギリシャ神話に登場するライオンの頭と翼を持ち、火を噴く怪物であるキメラのロゴが描かれている。
キメラ・アウトモビリのCEOであるルカ・ベッティは、1978年にクーネオで生まれ、彼の両親は、1970年代から1980年代にかけてモータースポーツに深く関わっており、それがルカの大きな情熱の原体験にもなっている。彼15年間にわたりがモータースポーツの世界で活躍し、数々の成功を収めてきた。そんな元ランチアのワークスドライバーであり、世界選手権ラリーで17回の優勝経験を持つベッティがテストドライバーを務めるEV037の走行性については何も心配する必要はない。また、EVO37のシャシーセットアップとチューニングを担当するのは、他でもないミキ・ビアシオンなのだ。
ラリーストであれば一度は攻めてみたいマシンであることは間違いない。
Kimera Automobili
www.kimera-automobili.com
まとめ:オクタン日本版編集部 Words:Ton Roks Images: Kimera Automobili
約6400万円で伝説のランチア「037ラリー」がレストモッドで蘇る! 「キメラEVO37」プロジェクトの全容とは
■当時のスタッフが再集結してつくった「キメラEVO37」
昨今のクラシックカー業界でしばしば登場する「レストモッド」という言葉。旧いクルマを修復するにあたり、現代のコンポーネンツやテクノロジーを投入することで、現代スタイリングや使用状況に合わせて、よりモダナイズを図られたクラシックカーを指している。
このほどイタリアから産声を上げた「キメラEVO37」も、そのひとつとされているようだ。しかし、そのオリジナルであるランチア「037ラリー」が40年前に開発された時と同じ手法で、しかも同じメンバーが創りあげたという驚きの1台は、いわゆる「レストモッド」の常識を根本から覆すものとも映る。
話題のキメラEVO37について、現在判明している限りの全容を、VAGUEで解説しよう。
●そのオリジンは、グループB時代最初のチャンピオンマシン
キメラEVO37の話題に進む前に、まずはオリジナルにしてオマージュの対象であるランチア037ラリーについて解説しよう。
037ラリーが唯一最大の目的としていたのは、いまも昔も大人気を誇り、とくに当時はメーカーの存亡も左右した「世界ラリー選手権(WRC)」の勝利である。1982年から施行されることになったFIAスポーツ規約「グループB」は、参加を希望する自動車メーカーが連続した1年間に200台を生産すれば、純然たる競技車両であってもホモロゲートを受けることができる。
そこでランチアと開発を主導したアバルトは、既存のミッドシップ2座スポーツカー「ベータ・モンテカルロ」を、すでに実績のあるメカニズムで再構成することでラリーマシンに仕立て直すことにした。
並み居るグループBラリーカーのなかでも群を抜いて美しいといわれるボディデザインは、ベース車たるモンテカルロと同じく名門ピニンファリーナによるもの。モンテカルロのセンターモノコック前後に鋼管製のサブフレームを組み上げ、そのサブフレームに各メカニカルパーツと新規デザインの専用カウルを組み合わせる成り立ちとされた。
シャシ開発には、イタリアのスーパーカーおよびレーシングカーのレジェンド、ジャンパオロ・ダラーラ氏の率いる「ダラーラ・アウトモービリ」社が密接に関与したとされている。
そしてパワーユニットは、「ランプレーディ・ユニット」と呼ばれる直列4気筒16バルブを採用。この時期の高性能車では、すでにターボ過給がトレンドとなっていたのだが、絶対的パワーよりもレスポンスを重視して「コンプレッソーレ・ヴォルメトリコ」と称するルーツ式スーパーチャージャーが組み合わされることになった。
かくして、ランチアとアバルト、そしてピニンファリーナ。3社の歴史的コラボレーションによる037ラリーは1982年4月のトリノ・ショーにてワールドプレミア。また発表とほぼ時を同じくして、FIAホモロゲート取得に必要とされる200台の量産も開始されていた。
そして、グループB規定でのフルエントリーが開始された1983年シーズンの初戦モンテカルロにて、037ラリーはさっそく輝かしい1-2フィニッシュを果たす。さらにワークスチーム「ランチア・スクアドラ・コルセ」が擁する037ラリーは、このシーズンに宿敵「アウディ・クワトロ」との熾烈なタイトル争いを展開。その高い信頼性とドライバビリティを武器に、伝説のグループBが年間チャンピオンシップの最上クラスとして規定された最初のシーズンで、WRC製造者部門タイトルを見事に獲得して見せたのだ。
■夢の1台は、およそ6400万円から
キメラEVO 037プロジェクトの仕掛人は、前世紀末から2017年までイタリア国内戦やERC(欧州ラリー選手権)などで優勝を含む活躍を果たした元ラリードライバー、ルカ・ベッティ氏が率いる「キメラ・アウトモービリ(Kimera Automobili)」社である。
もともと、自身のラリーマシンのメンテナンスをおこなうレーシングガレージ「Kimera motorsport」として2008年に創業したのち、2013年ごろからランチア「デルタS4」や「037ラリー」を手掛けるレストレーションファクトリーへと業態を変え、現在のキメラ・アウトモービリが誕生したという。
●キメラEO37プロジェクトに結集した“レジェンド”とは?
そして、ここで複数のデルタS4や037ラリーと接することによってベッティ氏が抱いた「本質とスピリットをそのままに037を進化させたい」という熱い想いが、EVO37プロジェクト始動の動機になったとのことである。
そんな経緯から生まれたキメラEVO37ながら、FIAグループBの求める200台+αしか作られていない本物のランチア037ラリーをレストモッド化したものではなく、037のベース車両、つまりより生産台数の多い「ベータ・モンテカルロ(前期)」/「モンテカルロ(後期)」をドナーとし、現代的な要素を加えながら事実上の新規開発をおこなったものといえる。
そのアプローチは、オリジナルの037ラリーが開発されたときと同じ手法をとる。ベータ・モンテカルロのキャビン周辺のモノコックを補強して使用し、前後にサブフレームとボディカウルを組み合わせる。ただし、オリジナルの037ラリーの前後カウルはFRP製だったが、キメラEVO37のカウルはカーボンファイバー製とされ、モノコック+サブフレームの剛性アップも図られているようだ。
パワーユニットは、オリジナル037ラリーに搭載された、古き良きランプレーディ直列4気筒DOHC16バルブをリファインした2.1リッターエンジン。ランチア技術陣を長きにわたり支えてきたエンジニアで、かつて037ラリーのランチア側責任者でもあったクラウディオ・ロンバルディ氏の指導のもと、大幅に再設計されたとのことである。
オリジナル037ラリーの特徴であったルーツ式スーパーチャージャーに加えて、ターボチャージャーも組み合わせられた。つまり、037の後継車「デルタS4」と同じくツインチャージャーとされたこのエンジンは、最高出力505ps、最大トルク550Nmを発生する。
037ラリーが市販版で205ps、WRCを闘った最終進化版でも350ps前後といわれていたことからすると、まさに40年分の技術進化を物語るモンスター級ユニットといえよう。
また、カップリングされるトランスミッションは6速マニュアルに加えて、パドル操作式の6速シーケンシャルも選択可能とのことで、これもまた21世紀のスーパースポーツとしての資質をアピールしている。
さらに、ダブルウィッシュボーンシステムなどのメカニカルコンポーネンツは、モータースポーツの分野では定評のあるオーリンズ社が設計し、ブレーキにはブレンボ社製のカーボンセラミックを採用。格段に増強されたパワーに備えて、ホイールサイズはフロント18インチ/リア19インチと大幅にスケールアップされた。
そして、このキメラEVO37における最大のトピックとして挙げたいのは、前述のロンバルディ氏をはじめとし、ランチア037ラリーに携わってきたデザイナーやエンジニアたちとの密接なコラボレーションのもとに開発されたことだろう。
シャシの設計とセットアップは、かつてアバルトで数多くのラリーカーの開発を主導したセルジオ・リモーネ氏。車両の製造プロセスとマテリアル調達を担当したヴィットリオ・ロベルティ氏とフランコ・イノチェンティ氏も、かつて037ラリー開発に参画したエンジニアだ。さらにテストドライバーは、ランチア「デルタ・インテグラーレ」とともにWRCで大活躍したラリードライバーのミキ・ビアジオン氏。これら「レジェンド」勢ぞろいの豪華チームによって、EVO37プロジェクトは完成されたのだ。
安易な「レストモッド」とは一線を画した、ランチア037ラリーの生まれ変わり。そして古き良きイタリア自動車界へのオマージュともいうべきこのキメラEVO37は、その名にちなんで37台を限定製作するとのことである。オプションや特注を除くベーシック価格は、48万ユーロ(約6430万円)とかなりの高額ながら、すでに11台は予約済と公表されており、1台目はまもなくオーナーのもとに納車されるという。
また、2021年9月に英国で開催される予定の「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」にて、初めて実走披露がおこなわれることも決定しているという。
6400万円でもバーゲン価格?「ランチア037ラリー」復刻モデルが「本物を超える」完成度だった
最近流行のレストモッドスタイルで「復刻」
知人と電話しているときのこと。たわいもない会話の途中で「そういえば、ランチア037ラリーが復活するらしいよ。それも名だたるメンバーが仕立て上げているから相当な作り込みらしい」という話が上がってきた。早速教えてもらったHPにアクセスをすると言葉を失った。最近流行のレストモッドスタイルではあるものの、かつてのランチア・ラリーそのものだからだ。
ランチア・ラリーとはどんなクルマだったのか?
クルマ好きには説明が不要かもしれないが、あらためて解説をすると1982年から始まるGr.BカテゴリーのWRCに参戦をするためのマシンとして登場したのがランチア・ラリーだ。シャーシはランボルギーニ・ミウラやBMW M1の設計も手掛けたジャンパオロ・ダラーラ、エンジンはアバルト製、ボディはフェラーリのデザインも担当しているピニンファリーナという豪華な陣容で、競技用に開発されたとは思えない美しいスタイリングを持つ。
ちなみに開発車両コードには「SE037」が付けられ、マニアから「037ラリー」とも呼ばれる理由は、これに由来するもの。その037ラリーを、イタリア人のラリードライバーであり起業家でもあるルカ・ベッティが率いるキメラ・オートモーティブ社が現代版としてモディファイしたモデルが「EVO37」。5月22日に発表されたものだ。
最新技術を惜しみなく採用
それもただ復刻するだけではなく、冒頭でも少し触れたがレストモッド、つまりはレストアとモディファイをかけ合わせた造語で、古き良きデザインの魅力を殺すことなく、随所に最新のテクノロジーを附合させて作り上げたものなのだ。当時の弱点を改良したモデルと言っても過言ではない。 アメリカ車などでよく見かけるスタイルだが、最近ではフェラーリ250GT SWBのレストモッドスタイルが発表されるなど、クルマ好きに密かに注目されているジャンルだ。
開発メンバーは当時も関与していたメンバーが参加
この開発プロジェクトを実現するために開発メンバーにはオリジナルの037ラリーに深く関わったメンバーが協力をしている。当時、ランチア・アバルトのラリー部門のボスであり、037ラリーの開発者でもあったセルジオ・リモーネがシャーシとセットアップを担当。エンジンはランチアのエンジニアとして活躍したクラウディオ・ロンバルディ、生産工程と構造材料はヴィットリオ・ロベルティとフランコ・イノチェンティによって進められた。
そしてマシンのテストを行うのは、1988年と1989年に2度のWRCチャンピオンに輝いたミキ・ビアジオンというのだから、本気度がうかがえる。
ボディはフルカーボン&LED化されたヘッドライトが特徴的
エクステリアは4灯のヘッドライトがLED化され、グリルやフォグライトリムにカーボンパーツが奢られている点を除けば、まさに037ラリーそのもの。エンジンルームの左右にあるエアインテークや、フロントカウルにパワーバルジ風のコブが付くのも変わらない。
ちなみにミッドシップなのになぜフロントフードにパワーバルジがあるのかご存じだろうか? フタを開けるとテンパータイヤとジャッキ、工具などが収められるトランクスペースパンクなのだが、実はバーストやパンクをした際に装着していた16インチタイヤを収納するためのクリアランス(=バルジ)なのだという。
ルーフはふたつのコブがあるダブルバブル形状で、ミラーもビタローニ・カリフォルニア風なタイプが装着される。ピニンファリーナが描く曲線こそないものの、張り出したブリスターフェンダーは迫力がある。
リヤ周りはワークスカーを彷彿させるスポイラーが特徴的だ。しかもリヤカウル一体型となっているのだから驚く。テールレンズはオリジナルのストラダーレの長方形型ではなく、いわゆるワークスマシンを彷彿させる丸形を採用しLED化されている。マフラーはディフューザーに埋め込まれた4本出しとなっている。
また、オリジナルのモデルでは前後のカウルなどにグラスファイバーを採用していたが、EVO37ではカーボンファイバーで作られている。
ちなみにボディ寸法はオリジナルの037ラリーが、全長×全幅×全高=3915×1850×1245(mm)となり、ホイールベースが2440mmとなっていた。EVO37では全長×全幅×全高=4055×1905×1200(mm)でホイールベースが2520mmと拡大はしているが、スタイリングは維持されている。
ホイールはワークスカーに装着していたスピードラインのデザインに似ており、補強のリブがスポークで再現されている。さらに恐らくはオプション設定になるが、ホイールベンチレーターも選べそうだ。
インテリアは競技マシンそのもの
インテリアについてはEVO37のコクピットの写真こそ公表はされていないものの、技術仕様書によると037ラリーと同じ構造のダッシュボードとセンタートンネルを採用しているようだ。(写真は037ラリー) ダッシュボードにはカーボンファイバーを使用し、エッヂ部分にはアルカンターラやレザーを採用することで80年代、90年代のランチアのスポーツカーを演出。オリジナルの037ラリーには16個のサーキットブレーカーが備えられていたが、EVO37も赤いボタンを使ってクルマのさまざまな電子設定をアナログ的に行うことができるよう、ダッシュボードに赤いボタンが備えられているという。
また、計器類はすべてアナログで表示され、ランチアのレーシングカーを参考にデザインがなされているという。シートの形状はデルタS4のものを踏襲しアルカンターラとレザーの2種類のシートを用意。4点式シートベルトが組み込まれている。
ちなみに、ハンドブレーキは油圧式になる予定とのこと。まさに競技車両といったスパルタンな内容となっている。
シャーシはオリジナル同様にベータ・モンテカルロを使用
シャーシは元の037ラリーと同様に、ランチア・ベータ・モンテカルロのセンター・モノコックをベースとし、その前後に最近の技術で加工されたクロムモリブデン製のチューブラーフレームを溶接している再設計のオリジナル品だ。クルマ好きなら、このフレームだけでもずっと眺めていたくなる構造美だ。
サスペンションは当時と同じダブルウィッシュボーン式。リヤにはホモロゲーションモデルで話題でもあった4本のダンパーが据えられているレイアウトを維持しながらも、完全に再設計がされている。オーリンズ製の車高調整機能付きが与えられ、タイヤはピレリが装着されるものだ。
サイズはフロントが245/35R18、リヤが295/30R19と偏平タイヤになっている。またブレーキはブレンボ製で、フロント・リヤともに365mmのベンチレーテッドディスク。素材はスチールかカーボンセラミックブレーキを選択することが可能だという。
走ることを目的として登場しただけのことのことはあり、スチールとアルミニウムだけではなくカーボンやケブラー、チタンなど軽量化と剛性の向上を目的とした素材が多く使用されている。
ロンバルディが関与したエンジン
今回の目玉ともいえるのがカウル越しに見えるオリジナル同様に縦置きされたエンジンだ。最近のクルマはブラックボックスだらけだが、EVO37はどこか懐かしい。カムカバーが剥き出しでオリジナルの037ラリーの雰囲気がちりばめられている。 搭載されるエンジンはロンバルディの指導のもと、イタルテクニカによってゼロから再設計された2150ccの直列4気筒DOHCターボ+ルーツ式スーパーチャージャー(電磁クラッチ付き)を搭載。まるでデルタS4のような組み合わせであるエンジンの最高出力は505ps/7000~7250rpm、最大トルクは550N・m/2000rpmを発揮する。 残念ながら車両重量の公式スペックは出ていないが、パワーウェイトレシオは2.0kg/psとなっているので、公式馬力の505psと考えてもおおよそ1010kg(誤差あり)くらいだろうか。オリジナルの037ラリーが1170kgということを考えると、モンスターマシンであることは間違いなさそうだ。
このエンジンを操るのは、もちろん2ペダルのパドル付き6速シーケンシャルミッションと3ペダルのHパターンMTを選択することができる。もちろん、後輪駆動というのだから嬉しい。
豊富なカラーバリエーション
さらにボディカラーは写真のロッソ037ストラダーレ以外にも豊富なバリエーションの中から選ぶことができる。例えば、037ラリーの次の世代として登場したデルタS4に採用されたボディ色のボルダーS4や、これまでランチアデルタの限定車に採用されていたブルーラゴス(ブルー)、ヴェルデヨーク(グリーン)、ジャッロ・ジオネストラ(イエロー)、グリジオ16バルブ(グレー)、パールホワイトなどが選択できるという。もちろん、ワークスカラーのマルティーニも選べるというのだから、今からその姿を見られることが楽しみで仕方がない。 キメラEVO37は、車名に由来し37台のみ製造され、すでに11台が先行販売されている。価格は48万ユーロ(約6400万円)だという。
ちなみにEVO37は7月にイギリスで開催されるグッドウッドフェスティバルオブスピードで公式に発表され、9月から納車が始まるという。
1日も早くEVO37の走る姿を見てみたいと思うのは私だけではないだろう。
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自動車業界あれこれ | 日記
Posted at
2021/05/27 21:42:24