2021年11月30日
1.6トンは重いよなぁ…安定性は向上してるんだろうけどさ
キター! SUBARU、新型「WRX S4」発表 275馬力の2.4リッター直噴ターボ、“気持ちが高ぶる”楽しさ演出
SUBARUは11月25日、高性能スポーツセダンの新型「WRX S4」を発表しました。
WRX S4は、高い走行性能と走る楽しさ、4ドアセダンの実用性を兼ね備えた4WDのスポーツセダン。1990年代に世界ラリー選手権(WRC)を制するために作られたインプレッサWRXを起源とする、「SUBARUのAWD」を象徴する車種です。2021年9月、米国で一足先に初公開され、日本市場向けモデルの登場が待ち望まれていました。
新型の目玉は新開発のパワートレイン。275馬力を発生する2.4リッターボクサー直噴ターボ(DIT:Direct Injection Turbo)エンジンと、高速変速や操作の応答性を高めた8速トランスミッション「スバルパフォーマンストランスミッション」を備え、ドライバーが感じる走る楽しさ、操る楽しさの演出を深めました。
エクステリアやインテリアデザインも「アグレッシブ」をテーマに大きく刷新。立体的で彫りの深い造形でワイド&ローを強調したフロントバンパー、力強く張り出したフェンダーなどで躍動する走りを表現し、コックピットも「座った瞬間に走り出したくなる、気持ちを高める」演出を前面に押し出します。
設定グレードは「GT-H(標準)」「GT-H EX」と、STIチューンを施した上位「STI Sport R」「STI Sport R EX」の4グレードで、全車に360度センシングを実現する運転支援システム「新世代アイサイト」を搭載します。
“EX”は、新世代アイサイトに高精度マップによる高速道路での運転支援領域を拡張した「アイサイト X」を装備。STI Sport Rはブラック/ボルドーイメージで統一し、本革シートやレカロシート(オプション)、高品位のウルトラスエードによる内装、出力特性やサスペンションをよりきめ細かく電子制御してクルマのキャラクターを大きく変える「ドライブモードセレクト」などを備えます。
車体サイズは4670(全長)×1825(幅)×1465(高さ)ミリ、ホイールベースは2675ミリ。重量は約1590キロ(GT-H)。燃費性能はJC08モード値でリッター12.7キロ、WLTCモード値でリッター10.8キロ。ボディーカラーは、セラミックホワイト、アイスシルバー・メタリック、マグネタイトグレー・メタリック、クリスタルブラック・シリカ、イグニッションレッド、ソーラーオレンジ・パール、サファイアブルー・パール、WRブルー・パールの8色を用意します。
価格はGT-GHで400万4000円から、STI Sport Rで438万9000円から。
新型スバルWRX S4の外観はまるでコンセプトカー「VIZIV」のよう! 新設定の「STIスポーツR」はワンランク上の質感
2021年11月25日(木)に発表された新型スバル WRX S4。先代モデルは2014年にデビューして以来、グレードの追加や安全性能面などの改良を施されながらスポーティセダンとしての地位を確立した。今回の新型モデルでは2.4リッターエンジンを搭載したことが大きなトピックではあるが、デザイン面も大きく変化している。旧型モデルと比較しながら新型WRX S4の内外装を紹介しよう。
ボディサイズが拡大し、後席にゆとりを持たせた
まずはボディサイズから比較していきたい。
新型が全長4670mm×全幅1825mm×全高1465mm。先代が全長4595mm×全幅1795mm×全高1475mmと、全長、全幅ともに広げ、とくにホイールベースを25mm拡大したことで前席後席間の距離やリヤシート座面長を拡張し、大人2人がゆとりを持って座れる後席空間を実現した
新型WRX S4には「GT-H」「STIスポーツR」の2つのグレードにそれぞれ先進運転支援システム「アイサイトX」を装備する「EX」が用意され、全4グレード展開となる。
外観で目指したのはコンセプトカー「VIZIV」の市販化!
エクステリアデザインはWRXらしいアグレッシブさを強調。具体的には2017年の東京モーターショーで発表したコンセプトカー「VIZIV」のデザインの市販化を目指し、今にも走り出しそうな大胆な前傾軸やスバル特有のグリルデザイン「ヘキサゴングリル」から始まる塊感、内圧で張り出したフェンダーなどを採用。「一目で走りへの期待を駆り立て、あらゆるシーンでパフォーマンスを感じられるデザイン」となっている。
また、ボディ下部は空力テクスチャーやエアアウトレットを採用することで操縦安定性を高めるだけでなく、色をブラックで統一させることでボディを引き締めている。
タイヤは245/40R18サイズで、GT-Hグレードではダークガンメタリック塗装、STIスポーツRではブラック塗装に切削光輝が取り入れられている。
ボディカラーはスバルとして新色設定となるソーラーオレンジパールをはじめ、スバルファンからの人気も高いWRブルーパール、セラミックホワイトなど8色を設定する。
アイサイトXを搭載するEXグレードを中心に時代を先取りしたデザインに
インテリアは「安定」「安心」「愉しさ」の3軸を起点に、水平基調のインストルメントパネルによる安定感と、アイサイトXを装備するEXグレードには標準装備される11.6インチのセンターインフォメーションディスプレイなどで先進感を表現した。
さらにブースト計はWRX S4とレヴォーグのターボ車専用コンテンツとしてEXグレードに用意する12.3インチのフル液晶メーター内に表示。EXグレード以外のモデルにもマルチインフォメーションディスプレイにブースト計を表示させる。
特に新グレードのSTIスポーツRでは、ボルドーの内装で上質な車内空間を演出する。スリムな形状のエアコン吹き出し部やDシェイプステアリングはグリップ断面をよりスポーティに仕上げ、先進感を高めている。
シートはSTIスポーツRグレードにオプション設定として従来型を上回る高いスポーツ性のレカロシートを新たに開発、装備する。スバルの安全性や利便性などの価値も両立させた。骨盤の回転を抑制したり、旋回時のサポート性を高め、長時間運転していても疲れにくい仕様となっている。
GT-Hグレードではファブリックとトリコットのシート、STIスポーツRにはボルドーとブラックの本革シートが標準装備される。
デザインや機能面から感じられる「新しさ」が魅力
7年ぶりの新型モデルであることからも、やはりデザインには新しさを感じる。また今回から追加されたSTIスポーツRは上質な室内空間となっており、EXグレードなら11.6インチのセンターインフォメーションディスプレイをはじめ先進感が際立つ。
これまでWRX S4を乗ってきた人にはもちろん、多くのユーザーをトリコにする魅力を持っていると言えるだろう。発売が待ち遠しい1台だ!
【筆者:篠田 英里夏(MOTA編集部)】
スバルの新型WRX S4は2.4リッターエンジン搭載で登場! パワーは下がっても足回りの改良など走って楽しい1台に仕上がっている【試乗&解説】
モータースポーツ、特に世界ラリー選手権(WRC)で勝つことを目的に、1992年に生まれたスバル WRX。来年は初代の登場から30周年を迎えるWRXは、これまでに4世代がリリースされ、世界中にコアなファンを生み出し続けている。そのセダンモデルである新型WRX S4が2021年11月25日(木)にフルモデルチェンジされた。2.0リッターターボエンジンから2.4リッターターボエンジンが搭載されたことなど中身の面で大きく進化を果たした新型WRX S4をサーキットコースで試乗する機会を得た。新旧での走行性能の違いを解説しよう。
排気量を拡大したエンジンを搭載するも、パワー自体は下がっている!?
新型WRX S4は、そのデザインからもすぐに気付くが、昨年デビューした2代目スバル レヴォーグと基本設計が共通の4ドア・スポーツセダンである。いまや世界的にも珍しい、CセグメントのAWDスポーツセダンである新型WRX S4は、「AWDパフォーマンスカーとしての“究極の一体感”」を目指して開発された。
具体的には、レヴォーグで実現した“新時代に突入した、SUBARUの走り”を基本に、新開発の2.4リッター水平対向4気筒DOHC直噴ターボの搭載や、変速速度を大幅に短縮したCVT“スバル・パフォーマンス・トランスミッション”の採用、ハンドリング性能をさらに高めるAWDシステム“スポーツモード付きVTD”の採用、そしてレヴォーグ以上に走りのキャラクターを変化させるドライブモードセレクトにより、これを実現している。
先代モデルより最高出力は落ちたが、加速や応答性に優れている
FA24型2.4リッターターボはプレミアムガソリン仕様だが、最高出力が245馬力/5600rpm、最大トルクは375Nm/2000~4800rpmと、先代モデルの300馬力、400Nmには及ばない。だが低回転域から高トルクを発生させるトルク特性と、電子制御のエアバイパスバルブおよびウェイストゲートバルブ、またエンジンとトランスミッションの協調制御により、先代を超える加速性能と優れた応答性を実現。パフォーマンスは確実にアップしている。
レヴォーグと同様に、フルインナーフレーム構造や構造用接着剤を用いたスバルグローバルプラットフォームを採用する新型WRX S4は、先代比でねじり剛性が28%、フロント横曲げ剛性は14%向上。さらにサスペンションストローク拡大(フロント5%、リア20%)やマスオフセット低減(6%)、2ピニオンパワーステアリング採用、全幅が1825mmとなる事をいとわずに採用した245/40R18サイズのパフォーマンスタイヤ(ダンロップSPスポーツマックス600A)により、ハンドリング性能とロードホールディング性能を高め、極めて優れた操縦安定性も手に入れている。
上質な回転フィールでアクセルペダルを踏み込んだ瞬間から感じるレスポンスの良さ!
今回は発表に先駆けて、10月中旬に千葉県の袖ケ浦フォレストレースウェイで、プロトタイプによるサーキット試乗の機会があった。当日は先代WRX S4のSTIスポーツも用意されており、実際に走りの進化ぶりを体験することができた。
先代VA系のSTIスポーツは、デビューから7年が経つが、継続的に改良が施されてきただけに、2021年秋の時点でステアリングを握っても、その走りに古さを感じることはない、2.0リッターターボは勢いよく吹け上がり、パンチの効いた加速を披露する。ハンドリングもキレ味抜群で、ボディの剛性感も申し分ない。
2代目レヴォーグの走りを体験してしまった身としては、CVTの制御に若干時代を感じるものの、今でも十分に現役として通用するモデルという印象だ。
最上級グレード「STIスポーツR」は先代とは明らかなレベルの違いを感じさせる
だが新型WRX S4 STIスポーツRに乗り換え、ピットレーンで動き出した瞬間、先代とは明らかにレベルが違う、動的質感の高さが全身を包んだのだ。2.4リッターターボはとても上質な回転フィールで、アクセルペダルを踏んだ瞬間からタイムラグなしにトルクが立ち上がり、クルマはスッと軽く前へ転がり始め、スバル・パフォーマンス・トランスミッションはダイレクト感を感じさせながら、とても滑らかに変速比を変えていく。パワーステアリングは全く渋さのない操舵フィールで、適度な手応えの中にグリップ感を伝えてくれる。
ドライブモードセレクト「スポーツ+モード」に入れて、車速を上げてもその印象は変わらない。高速域からフルブレーキングし、減速Gを残した状態でステアリングを切り込むと、ノーズが素直に向きを変え、狙った通りのコーナリングができる。この時車体のロール量は最小限に抑えられ、明らかに先代より少ない。左右のコーナーが続く場面でも、リヤがしっかり付いてきて、挙動が乱れることもない。
トランスミッションやダンパーなどの装備でさらにスムースな走りを実現
このような走りには、スポーツモードでは先代以上に引き締められるZF製電子制御ダンパーや、LSDトルクを低く設定して差動制限を抑制することでアンダーステアを抑えるVTDが大きく寄与している。スバル・パフォーマンス・トランスミッションも、減速時にはブリッピングしながらシフトダウンし、横Gが立ち上がると変速比を固定してくれるので、スムースなコーナリングをサポートしてくれる。
オプションのレカロシートは身体をしっかりとサポートしてくれる
またレカロ社と共同開発したというスポーツシート(オプション)が、素晴らしい出来映えであることも特筆に値する。このシートが横Gが強くかかるときでもドライバーの身体をしっかりサポートするので、ドライバーの正確な操作を助けてくれるのだ。
ドライブモードセレクトの代わりにSI-DRIVEを搭載し、コンベンショナルなダンパーを装着したGT-Hは、STIスポーツRほどではないものの、やはり明らかにレベルアップした走りを見せてくれた。足回りが若干ソフトな設定で、コーナリング中のロール量が若干大きい(それでも先代より少ないが)ため、STIスポーツRほどアジリティは高くないが、それでも先代より格段にキレのある走りが楽しめた。
今回はクローズド・サーキットのみの試乗だったが、新型は一般道でも間違いなくレベルアップしたスポーティネスと上質な乗り味を披露することだろう。新型WRX S4は、再び世界から喝采を浴びることになりそうだ。
【筆者:竹花 寿実】
スバル 新型「WRX S4」新エンジン 新骨格でデビュー
スバルは2021年11月25日、フルモデルチェンジし5代目となる新型「WRX S4」を発表した。
新型「WRX S4」は、本来はメインマーケットであるアメリカで8月19日に開幕する予定のニューヨーク国際モーターショーでワールドプレミアを行なう計画だったが、新型コロナウイルスの感染拡大が収まらないためショーの開催中止となり、スバルofアメリカは9月10日にオンラインでアメリカ仕様のワールドプレミアを行なっている。そして日本仕様は約2ヶ月遅れでの発表となった。
GT-H EX(左)とSTI Sport R EX新型WRX S4は、スバルの新世代のファンtoドライブを高い次元のAWD性能によって実現することを目指している。そのため、究極の一体感が感じられるパワーや加速特性、高次元の操縦安定性、スバル車としての価値であるシンメトリカルAWD性能と衝突安全性とアイサイトによる運転支援システムを追求。さらにピュアなスポーツカーとは違って日常での実用性、利便性も十分確保し、広いキャビン、ラゲッジの積載性まで重視したオールラウンドなハイパフォーマンスカーだ。
もちろん、WRX S4は従来型と同様にレヴォーグをベースにした4ドア・セダン版ともいえるが、レヴォーグが実現した新次元の走りをより高めることを目指している。レヴォーグの走りをベースとしながら、よりハイパワーとなる2.4LのFA24型直噴ターボ・エンジンを採用し、さらにDCTトランスミッションに匹敵する新CVT「スバル パフォーマンス トランスミッション」を新開発して採用した。
STI Sport R EXまた、AWDシステムはレヴォーグが油圧多板クラッチを駆使するアクティブ・トルクスプリット式であるのに対し、新型WRX S4は従来型と同様に遊星ギヤにより前後駆動力のより自在な可変配分を行なうVTD-AWDを採用するなどアップグレードが行なわれていることは注目点だ。
グレード展開は、ベースモデルがGT-H、アイサイトX装備のGT-H EX、スポーツ性を強調したSTI Sport R、そしてアイサイトXを装備したSTI Sport R EXという4種類。非EXのモデルも新世代アイサイトは標準装備している。また搭載エンジン、トランスミッションは全モデル共通となっている。
GT-H EXGT-H EXのインテリアパッケージングとデザイン
新型WRX S4のボディサイズは全長4670mm(従来型比+75mm)、全幅1825mm(+30mm)、全高1465mm(-10mm)、ホイールベース2575mm(+25mm)、トレッド・フロント1560mm(+30mm)、リヤ・トレッド1570mm(+30mm)で、従来型に比べ一回り大きくなっている。
もちろんアメリカ市場への適合性を高めているわけだが、ボディサイズとしてはCセグメント・セダンより大きいC+セグメント、あるいはほぼDセグメントのサイズとなっている。実際、BMW3シリーズより全長が45mm短い点以外では同サイズであり、新型WRX S4の目指しているポジションを理解することができる。
ボディサイズの拡大に合わせ、室内の広さ、ショルダースペース、足元スペースなども拡大されており、ゆとりの感じられるキャビンとなっている。
新型WRX S4のデザインは、2017年東京モーターショーに出展されたコンセプトカー「VIZIV パフォーマンス・コンセプト」をベースにした「BOLDER」デザインとし、現行モデルよりよりウエッジ・シェイプとし、さらに左右のフェンダーの張り出しを強めている。その前後フェンダーを強調するために、ブラックの樹脂製のクラッディング(オーバーフェンダー)を装着。
なおオーバーフェンダー、ボディ前後のブラックの樹脂部分の表面は細かな凹凸模様を設けることで、表面部を流れる気流の境界層制御を行ない、空気抵抗を低減。さらに床下のフラットなカバーも従来より面積を拡大させ、空気抵抗の低減を行なっている。
STI Sport R EXのインテリアまたSTI Sport Rにオプション設定されているレカロ製スポーツシートも新設計で、見栄えもホールド性も一段と高められている。
新設計されたレカロ製スポーツシート装備では、新たにコネクテッドサービスの実現、ドライバーの異常を検知するドライバーモニタリングシステム(EXに標準装備)、新世代アイサイト、EXグレードは高速道路の渋滞時にハンズオフできるアイサイトXを搭載するなど、全面的に新世代化した装備を充実させている。
パワートレーン
新型WRX S4は、アメリカ仕様と同じ2.4LのFA24型直噴ターボ(プレミアムガソリン仕様)を新搭載している。2387ccの排気量で、ボア・ストロークは94.0mm×86.0mmで、これはBRZ用のFA型エンジンと共通だ。
FA24型直噴ターボは、2018年にアメリカ市場専売モデルのアセントに初めて搭載されたエンジンで、その後は2020年型レガシィ、アウトバックにも搭載されている。このFA24直噴ターボはFAシリーズ随一のハイパワーユニットという位置づけだ。
出力は275ps/5600rpm、最大トルク375Nm/2000rpm-4800rpmで、環境性能に対応し、低フリクション化のために低回転/大トルク型になっており、低回転から幅広い回転域で最大トルクを生み出すのが特長だ。吸排気カムは連続可変システムを備え、直噴システムを組み合わせている。燃費はWLTCモードで10.8km/hで、高速モードでは12.7km/L。
過給圧制御は、電子制御ウエストゲート、電子制御エアバイパスバルブを採用し、精密に加速時、減速時のブースト制御が行なわれ、よりスロットルレスポンスが向上し、意のままの加速感が得られるようになっている。
このエンジンに組み合わされるのが新開発CVT「スバル パフォーマンス トランスミッション」だ。スバルはCVTの逆襲と呼んでいるが、目指したのは瞬速で変速するDCTに匹敵する変速性能を実現することであった。
より変速比幅を拡大したCVTをベースに、制御ソフトを新開発し、ブレーキによる減速に合わせて自動的にエンジンがブリッピング(iモードは除く)しながら疑似ギヤ段の4速→3速→2速とシフトダウンし、コーナリング時など横Gによりそのギヤ段をキープ。そして加速時にはギヤ段数に合わせたエンジントルクのカットを行ない、気持ちよく加速を継続するという制御になっている。なお疑似ギヤは8段とされ、もちろんマニュアル操作も可能だ。
この新CVT制御によりイメージ的にはDCTの減速や加速と同様のフィーリングにしており、シフトダウン、シフトアップともにDCT車と同等レベル。CVTのイメージ、常識を打ち破るトランスミッションとなっているのだ。
AWDシステムはVTD(バリアブル・トルク・ディストリビューション)センターデフを装備。副列式の遊星歯車機構と電子制御油圧多板クラッチを用いて基本の駆動トルク配分は前45:後55とし、走行状態に合わせて前後配分を可変制御するようになっている。
さらにコーナリング性能を重視し、LSDの効果を抑制するスポーツモード付きVTDをSTI Sport Rは装備している。
また、新たにサーキットやスポーツ走行向けのTRACKモードを新設定している。このモードではVDC、トラクションコントロールの制御介入を弱め、ドライバーのコントロール域を拡大することができる。またスイッチの長押しで完全にオフすることも可能だ。
ボディ、シャシー
新型WRX S4は、レヴォーグと同様の最新世代のアーキテクチャーを採用している。つまり進化型スバル・グローバル・プラットフォーム(SGP)をベースに、アッパーボディはヨーロッパ車と同様のインナーフレーム構造を採用。
同じ技術を採用しているレヴォーグと比較しても、WRX S4はセダン形状のため、特にリヤ周りがよりボディ全体の剛性が高くなっている。またレヴォーグ以来、構造用接着剤も大幅に拡大採用し、ボディ全体の質感や静粛性が高められている。
ボディの材料も従来型との比較で、ホットスタンプ材、超高張力鋼板が新採用され軽量化と高強度化も図られている。その結果、従来型との比較で、静的ねじり剛性は28%向上、動的なねじり剛性は11%アップし、走りや静粛性、室内の質感を向上させている。
サスペンション、シャシーも最新世代に進化した。フロントはストラット式、リヤはダブルウイッシュボーン式を採用。フロントのストラットは、ホイール中心点でのオフセット量を縮小し、気持ち良い操舵フィーリングに。また同時に、サスペンションのストロークはフロントは5%、リヤは20%もアップされ、特にリヤの接地性能が向上している。
さらにGT-Hはフロントダンパーにリバウンド スプリング内蔵式を採用。これによりロール時の伸び側の動きを抑制し、より安定感のあるサスペンションとしている。
スタビライザーは、フロントはストラットにリンク点を、リヤはボディ止めのスタビライザーを配置することでスタビライザーの効率を高め、ロール剛性を向上。この他に前後ロール軸をやや前下がり軸とするなども合わせ、高いロール剛性、つまりコーナリングでロールが少ないサスペンションを実現している。
STI Sport RにはZF製の電子制御連続可変ダンパーを採用し、走行状況に合わせて各ダンパーの減衰力を可変制御しピッチングやロールを抑制。この連続可変ダンパーを装備するSTI Sport Rのドライブモードはコンフォート、ノーマル、スポーツ、スポーツ+、インディビジュアルの5モード設定し、快適な乗り心地からスポーツカー的な乗り心地まで幅広い領域を選択することもできる。
電動パワーステアリングは、レヴォーグ同様に2ピニオン式を採用。フリクション感の少ないリニアで滑らかな操舵フィーリングとしている。
タイヤは18インチで、専用開発されたハイパフォーマンスタイヤのダンロップ製245/40R18サイズのSPスポーツMAXX GT600Aを装着している。
新型WRX S4は、ヨーロッパのプレミアムクラスのスポーツセダンに勝るとも劣らない走りや質感を訴求するという方向性を明確にしたクルマといえる。もちろん価格的にも輸入車スポーツセダンに接近しており、かつてのラリーステージで活躍するCセグメントのスポーツモデルとは違うステージに上っていることは明らかだ。
この新型WRX S4をベースとしたスーパーハイパフォーマンスカーとして、今後WRX STIモデルが登場するはずだ。スポーツセダンとしてきわめてハイレベルに仕上げたWRX S4をベースとしたSTIモデルに対する期待も一段と高くなる。
SUBARU WRX S4 試乗記 刺激強め(2.4L水平対抗4気筒+ターボ+CVT+AWD)
ひと足速くSUBARU WRX S4プロトタイプに試乗することができた。千葉県袖ヶ浦フォレストレースウエイでのテストで、トップグレード「STI Sport R EX」のインパクトは強く、脳を刺激された。
WRX S4がフルモデルチェンジを受け、プラットフォームはSGPとなりエンジンもFA24型ターボを搭載した。ここでのテストはパワーユニットの変化、そしてダイナミック性能の進化というポイントで試乗してみた。
エンジンは2.0Lから2.4Lへと排気量がアップし、北米で展開していたエンジンを国内販売するWRX S4にも採用した。燃費はWLTC平均で10.8km/L、出力は275ps/5600rpm、最大トルク375Nm/2000-4800rpmというスペック。ボディサイズは若干サイズアップし、全長4670mm、全幅1825mm、全高1465mm、ホイールベース2675mmでコンパクトセダン、Cセグメントプラスサイズになっている。
開発の狙いは高いパフォーマンスで刺激的な走りをするセダン、であり北米では2021年9月にワールドプレミアを行なっているモデルだ。
さて、グレードでは「GT-H」と「STI Sport」 、そして「STI Sport R EX」に試乗し、現行モデルのSTI Sportにも比較試乗することができた。
STI Sport R EXには電制ダンパーを装備しレカロシートを装着するなど、ダイナミック性能を追求したグレードで、もっとも刺激的な走りをするモデルだ。またドライブモードによるキャラクター変化幅も大きく、実用性も意識していることが分かる。
今回は持ち味であるスポーツドライブをサーキットで試走することができたのだが、エンジン、CVT、ボディ剛性、サスペンション、ブレーキと全てにおいて高いレベルにあることに驚かされたのだ。
エンジンのレスポンスではアクセルオンに対するレスポンスをリニアにしている。これは現行のSTI Sportでも十分優れたレスポンスだと思っていた。だが、乗り比べて分かったのだが、現行モデルでは若干の応答遅れがあることを体感したのだ。
この反応のリニアさにプラスしてFA24型の吹け上がりの軽さも魅力的だ。まるで手組みのエンジンかと思わせるほど軽快で抵抗感のない滑らかな吹け上がりをする。ターボラグなど微塵も感じることなく、サーキットを軽快に走り抜ける。この気持ちの良さを味わえるエンジンは滅多にないだろう。カタログスペックでは現行モデルよりスペックダウンしているかもしれないが、低中速域で頻度の高い部分のトルクの出方やレスポンスを重視しているため、乗りやすさは圧倒的に新型が勝っている。
ひとつ難を言えば、エンジンが静かなことだ。せっかくの水平対向エンジンなのでボクサーサウンドは期待したいところ。もちろんセダンなので、ドライブモードでスポーツを選択したときだけサウンドクリエーターでいいから官能的なサウンドは聴きたかったが、どのモードでも静かな走りをしていたのが少し残念。
そしてSGPによってボディ剛性などボディの「質」が向上しているため、サスペンションにも好影響が出ている。STI Sport R EXにはZF製の連続可変電制ダンパーCDCを搭載しており、このダンパーの減衰が素晴らしい。ダンパー専用のマイコンを搭載し、4本を個別に制御しているため、タイヤ接地荷重、操舵角などのデータを反映し瞬時に減衰が出ている。つまりステアと同時に減衰を合わせ込むことができているのが従来との大きな違いだろう。
したがってダイアゴナルロールは感じにくく、フラットに旋回していくイメージ。かつ、リヤの接地感がしっかりとあり、FR的なフィーリングも伝わってくる。さらにダンパーの伸びと縮みを繰り返すときの切り替えでの減衰立ち上がりも滑らかで、エンジニアのこだわりを感じる部分だ。したがって車両に無駄な動きがなく、安定して旋回していくフィーリングは気持ちいい。
さらに、このAWD制御も秀逸で、前後のトルク配分が瞬時に可変しているのだ。車両の走行状況によって駆動トルク配分が変化しているので、ドライバーは荷重コントロールを行ない、ジワリとステアしていくと速い段階からアクセルを開けていくことができるというわけだ。
多少のオーバースピードでアンダーが出そうな場面を作ってもアンダーステアとはならず旋回モーメントを感じさせてくれる。だからどんどん進入速度も上がるし旋回速度も上がっていくのだ。そしてタイヤだけでもグリップレベルは5%向上しているというから、245/40-18の大径サイズとなったタイヤのメリットも活かしているわけだ。
一方、現行型のSTI Sportにはコンベンショナルなダンパーが装備されているため、どうしてもスポーツに振ると硬めの脚となっている。が、新型WRX S4のZFダンパーであれば、ドライブモードに連動して乗り心地を優先する減衰にもなるので、キャクター変化の幅が広がっているわけだ。このあたりは公道を試乗したときに詳細に見ていきたい。
またAWDのトルク配分は、基本が45:55という前後配分で、スポーツモード+であれば車両のヨーモーメントも踏まえたトルク配分にしているという。通常は締結トルクを下げて乗りやすさをだしつつ、DCCDのように締結トルクを変化させているため、ノーズが旋回モードになれば直結に近いような締結トルクでコーナリングするという説明だった。そのためスノーのような低ミューでも曲がりやすくしているというので、試乗できればお伝えしたい。
そしてもうひとつの特筆はCVTだ。「スバルパフォーマンストランスミッション」と言うそうだが、DCTのように走ることができ、なおかつ実際はステップしていないので、ロスが存在していないという加速を味わう。ほんの僅かだがレッドゾーン付近ではCVTのラバーバンドフィールを感じる部分もあるが、それ以外の回転域ではまったくCVTだとは気づかないほどの出来栄えだった。スバルではCVTの逆襲と言っているようだ。
このハイパフォーマンスWRX S4 STI Sport R EXはBMWのMスポーツやメルセデスのAMGライン、アウディのSラインといったモデルをイメージすれば伝わり易いだろうが、量販モデルとなるとなかなかライバルは存在しない。さらに従来であればマニュアルミッションを搭載するSTIバージョンも登場してくるわけで、どこまでパフォーマンスが上がっているのか興味深い。ここまで完成度が高い量販モデルであるなら、STIモデルはスペックCといった競技を視野にしたモデルでもいいのかもしれないと感じるほどハイレベルなセダンだった。
一方で、この新型WRX S4は「コンベンショナルなダイナミック性能の集大成」という表現ができると思う。クルマを操ることが大好きな人に響くモデルであることは間違いない。しかし、最新のメルセデス・ベンツCクラスのリヤ操舵やEV化を積極的に使うアウトランダーPHEVのS-AWCなど、新しい走り方も少しずつ出てきている。クルマのダイナミック性能は未来永劫変わらないものなのか、あるいは、こうした変化をSUBARUはどう捉えてラインオフしてくるのか楽しみでもある。<レポート:高橋アキラ/Akira Takahashi>
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ハイレスポンスCVT搭載!スバル新型WRX S4正式発表…価格は400万4000円から
空力効果あり「スポーツガーニッシュ」が新型の目印
2021年11月25日、スバルは新型「WRX S4」を発表した。全4グレードをラインアップする。
■価格〈全車4WD・8速CVT〉
477万4000円(STIスポーツR EX)
438万9000円(STIスポーツR)
438万9000円(GT-H EX)
400万4000円(GT-H)
先代WRX S4は、高性能4WDスポーツの楽しさを誰もが気軽に味わえるWRXの新シリーズとして2014年に誕生。今回7年ぶりにフルモデルチェンジした新型は、基本のコンセプトを継承しながら、全方位で「圧倒的なパフォーマンス」を発揮すべく刷新。
車台は、ひと足先に世代交代を果たしたレヴォーグと同じく、新世代のスバルグローバルプラットフォーム。同様に、ボディもより剛性を高めるフルインナーフレーム構造とした。
エクステリアデザインは、ひと言で「マッシブ!」。基本のボディをレヴォーグと共用しながら前後フェンダーをワイド化し、そこに、レヴォーグよりも太い245/40R18サイズのダンロップ SPスポーツマックスGT600Aを収める。2017年のショーで好評だった「ヴィジヴ パフォーマンス コンセプト」のデザインを色濃く具現化した。
サイドビューで目を引くのは、前後フェンダーとボディ下部を黒で引き締めたスポーツガーニッシュ。どこかアウトバックやXVのクラッディングを想起させるが、ここにはハニカム(六角形)状の空力テクスチャーを施し、空気の剥離を抑制。操縦安定性の向上に寄与するれっきとした機能パーツだ。
ぱっと見「レヴォーグ?」と思えるフロントに対し、固まり感のあるノッチバックのリヤビューは、エクステリアにおける新型S4のハイライト。驚くほど抑揚があるリヤフェンダーについて、「コーラの缶が乗るほど張り出させました(笑)」とは、レヴォーグに続いて開発責任者を務めたSUBARUの五島 賢さん。さらにストップランプは、燃えたぎるマグマをイメージしたという。クルマもつくり手も熱いのだ。
出力/トルクともにダウン…でも速くなった!?
エンジンはWRX史上初となる、新開発の2.4L直噴ターボ(DIT)のFA24型。そのスペックは、275馬力/38.2kgm。これは300馬力/40.8kgmを発揮した先代のFA20型よりパワーは8%、トルクも6%ほど低い値。新型は排気量が約400ccアップしているのに、だ。
とはいえ、新型WRX S4に搭載されるFA型は、ウエストゲートやエアバイパスバルブの電子制御化により、過給圧を緻密に制御。これにより過給レスポンスが大幅に向上。約70km/hからの加速では、0.5G到達時間を先代より約30%短縮! アイドリングストップが追加され、燃費も先代より向上している。
その性能を引き出すべく組み合わせるのは、新採用の「スバル パフォーマンストランスミッション(SPT)」だ。先代レヴォーグで国内初投入されたチェーン式CVTの「リニアトロニック」をベースとしながら、シフトアップ時のトルクカット高速化やシフトダウン時のオートブリッピングと、変速制御の進化により最速クラスのDCTにも匹敵する変速スピードを実現した。
また、スバルAWDの核となるフルタイム4WDのVTD-AWD(不等&可変トルク配分電子制御AWD)も、旋回性を重視した前45%:後55%のトルク配分に加え、旋回時のアクセルオンでLSDの差動制限を抑制し、アクセルオンで旋回姿勢をつくるような積極的な走りも可能なAWDスポーツモードを設定。さらに、VDCも「ノーマル/トラック/オフ」が可能なWRX S4専用の3モードVDCを搭載。
じつは「ここぞ」の加速は先代のほうが速いかもしれない。でも、エンジン、トランスミッション、AWDの大幅なレベルアップによる超ハイレスポンスでドライバーの意思に応える刺激的な走りは、先代WRX S4ではなし得ない、新型の真骨頂といえるだろう。
さらに、これだけの高い運動性能を持ちながら、手元のスイッチ操作で「パワーユニット」、「AWDシステム」、「電子制御ダンパー」、「パワーステアリング」、さらにアイサイトの追従加速度やエアコンまでを統合制御し、高級車のような乗り心地の走りに “キャラ変” が可能なドライブモードセレクト(STIスポーツR系に搭載)を設定。これも新型WRX S4の見逃せない特徴だ。
安全装備充実のスポーツセダン
先進安全装備では現行型レヴォーグと同じく、360度センシングを実現した「新世代アイサイト」のほか、高精度3D地図や人工衛星を使い、自動車専用道路での渋滞時ハンズオフも可能とした「アイサイトX」をEX仕様に装備。事故やトラブル発生時にコールセンターとつながる、コネクティッドサービス「SUBARUスターリンク」も用意。歩行者保護エアバッグももちろん採用されている。
室内におけるEX仕様のアイコンである11.6インチセンターインフォメーションディスプレイ&インフォテインメントシステム、そして12.3インチフル液晶メーターで構成されるデジタルディスプレイのアピアランスはレヴォーグとほぼ同じ。CB18型ターボエンジンを積む1.8Lに対し、FA24型搭載のWRX S4はブースト表示も設定。
STIスポーツRのシートは、レヴォーグと同じくブラック/ボルドーの本革。ここでWRX S4には、レカロと共同開発したフロントシートをメーカーオプション設定。表皮は肌触りがよく、ブレーキングやコーナリング時の体の動きを抑える効果もあるウルトラスエードとなる。
〈文=ドライバーWeb編集部〉
排気量アップで加速は暴力的 SUBARU 新型WRX S4に乗ってみた
2022年発売予定のSUBARU 新型『WRX S4』のプロトタイプ試乗会に参加した。WRX S4は『レヴォーグ』と車台を共有する4WD、4ドアセダンのスポーツカーだ。2020年にレヴォーグがフルモデルチェンジしたのに合わせ、WRX S4も第2世代へと進化した。
ゴルフボールのディンプルと同じ効果を狙ったフェンダー表面
新型は2.4Lターボエンジンやフルインナーフレーム構造などの新機軸が盛り込まれ、速さを維持しつつ、一気に洗練度を増した。試乗会が開かれた千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイで新型S4の大胆なスタイリングを目の当たりにし、ド肝を抜かれた。前後のホイールアーチがブラックの樹脂で縁取りされているではないか。車輪を大きく見せたいSUVがよくやる手法だが、セダンでは珍しい。スポーツカーという括りで考えても稀だ。大昔のスポーツカー(とそれにインスパイアされた族車)には太いタイヤを収めるためにオーバーフェンダーを装着する例が見られたが、WRX S4のそれはデザインのためのものだ。
当初ギョッとしたが、取材中に止まっている車両や走行している車両を眺めているとだんだん見慣れてきて、帰る頃にはこの挑戦はうまくいくのではないかと思えてきた。フェンダーモール以外のボディ下部もぐるりと樹脂で縁取られており、クルマの下のほうは全部黒。独特の迫力がある。とはいえ突如採用されたアイデアというわけではなく、東京モーターショー2019に出展された同社のコンセプトカー『ヴィジヴ パフォーマンス コンセプト』にも見られた手法だ。ちなみにこの樹脂製フェンダーモールの表面には、エアロダイナミクス向上のため細かな凹凸がある。なんでもゴルフボールのディンプルと同じ効果を狙った凹凸だそうだ。
排気量アップでもパワー数値はダウン しかし・・・
エンジンは従来のEJ20型(2L水平対向ターボ)からFA24型(2.4L水平対向ターボ)にスワップされた。従来のEJ20型はスバルが長らくハイパフォーマンスカーに搭載してきた伝統のハイチューンユニットだが、燃費面、エミッション面で継続使用が厳しくなってきたのだろう。新たにボアアップによって排気量を約400cc増やし、チューニングのカリカリ度をやや落としたエンジンが採用された。なおこのエンジンはレヴォーグの“速い方”のエンジンとしても搭載される。
EJ20型が最高出力300ps/5600rpm、最大トルク400Nm/2000-4800rpmだったのに対し、FA24型は同275ps/5600rpm、同375Nm/2000-4800rpmと、最高出力、最大トルクともに数値はダウンした。だが実際に走らせてみると、高い負荷が求められるサーキットであっても、パワーダウンしたことを感じることはなかった。
その理由は排気量アップを活かし、ピーク値に到達する前の過渡領域で十分なトルクを発揮していることと、CVTの改良によって、ギアレシオカバレッジが拡大し、低い領域はローギアード化し、加速力を向上させているからだ。ギアレシオカバレッジは高い領域にも拡大されていて、巡航時の回転を下げ、燃費と静粛性を向上させたという。
かなり暴力的な加速
スバルのCVTにおなじみのI(インテリジェント=事実上のノーマル)、S(スポーティ)、S#(よりスポーティ)の3モードを選べるSI-ドライブは、SとS#ではあえて8段の固定ギア変速を模した制御となり(Iでも全開加速時はそうなる)、S#ではアップダウン、特にアップの変速スピードが上がった。SとS#ではダウン時のブリッピング制御も入る。
この改良となったCVTの、特にS#によって、新型WRX S4はサーキットを走らせるに相応しい、スポーツドライビングに没頭できるスポーツカーに仕上がった。全開加速時、レッドゾーン付近までエンジン回転が上昇しては「ダン」という心地よい区切りとともにギアアップし、再びエンジン回転が上昇する。これを繰り返しながらクルマは途切れなく、勢いよく加速していく。4WDとハイグリップタイヤの組み合わせによってエンジンのパワーは効率よく路面に伝わり、結果としてかなり暴力的な加速を味わうことができる。減速時にはブリッピングしながらリズミカルにギアダウンしてくれる。北米仕様車には6MTも設定されるそうだが、特に羨ましいとは思わない。MTは速さのためだけにあるわけではないので、ここは人によるだろうが。
無段階に変速し、燃費効率が高いのがCVTの存在意義ではあるが、本来スポーツドライビングには向かない。ただしスバルは全モデルがCVTのため、スポーティモデルにもCVTを使わざるを得ない。水平対向エンジン縦置きというユニークなレイアウトのため、よそからATを調達するのが難しいからだ。ならばスポーツ走行可能なCVTを開発してしまえというわけで、開発陣は今回もCVTを進化させた。
現行型レヴォーグ同様フルインナーフレーム構造を採用 快適性はさらに向上へ
低中速コーナーが短い直線で結ばれた袖ヶ浦フォレストレースウェイは、低、中速トルクに厚みを感じる2.4Lエンジン、進化したCVT、そして伝統のVTD式4WDというパッケージングの新型WRX S4が真価を発揮しやすいコースといえる。同業者の多くは持ち時間いっぱいを使って全開走行を繰り返していた。皆コースインする前には、まずは一般道を想定しながらゆっくり走って徐々に…と考えるのだが、速く走らせたくなる仕掛けが満載のクルマなので、だいたいインラップのうちに全開にしてしまうのだ。
私もそういう風に走らせてしまったうちのひとりだが、それでも持ち時間を使い果たす前に辛うじてこれが仕事であることを思い出し、スピードを落としてわざと縁石を踏んだり荒れた路面を選んで走らせてみたりした。新世代プラットフォーム「SGP(スバル グローバル プラットフォーム)」が採用されて以降のスバル車は、それより古い世代とは別次元の高いボディ剛性を誇り、快適性とハンドリングの両方を向上させた。そして現行型レヴォーグからはフルインナーフレーム構造が採用され、さらに快適性が向上した。当然新型WRX S4にもこの構造が採用された。
フルインナーフレーム構造とは、ざっくり言うとボディ骨格全体の溶接を済ませてから外板を取り付ける製法のこと。従来はいくつかに分割された骨格のそれぞれに外板が取り付けられてから溶接されていた。従来の製法だと、ボディに取り付けられた外板が邪魔で、理想的な骨格の溶接ができない部分があったという。同時に構造用接着剤の使用箇所も大幅に増えた。
エレクトロニクスやソフトウェア頼みではなく、骨格や機械の精度、メカニカルを駆使
こうして生まれた高剛性ボディに加え、路面追従性を向上させるべくサスペンションをロングストローク化し(フロント5%、リア20%)、コーナリング時に自然にノーズがインを向く前傾したロール軸とし、ロールを抑制するためにリアスタビライザーを車体に直付けするなど、足まわりにも細かく手が入れられた。また従来は電動パワステはドライバーのステアリング操作軸を直接アシストしていたが、新型では別の軸でアシストすることで、フリクションを低減し、ステアリングフィールを向上させた。この効果は実感しやすく、ダイレクトな操作感を味わうことができた。
文字にすると、こうしたメカニカルな改良の一つひとつは地味で理屈っぽいが、すべてがうまく調和した状態で盛り込まれるとドライバーが被る恩恵は実に大きい。一般道で試乗していないので断定できないが、従来、速さのために多少犠牲になっていた快適性が、新型WRX S4にはきちんと盛り込まれていた。冒頭に洗練されたと書いたのはこの部分を指す。
内燃機関のみで動くスポーツカーに新しさはない。けれど“速く、思い通りに走らせられること”というスポーツカーの価値は昔からまったく変わらない。エレクトロニクスやソフトウェア頼みではなく、骨格や機械の精度、メカニカルな仕組みを駆使して魅力的なクルマをつくろうとするスバルのようなメーカーがあるのは、クルマ好きにとって救いだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
塩見智|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1972年生まれ。岡山県出身。地方紙記者、自動車専門誌編集者を経てフリーランス・ライターおよびエディターへ。専門的で堅苦しく難しいテーマをできるだけ平易に面白く表現することを信条とする。文章はたとえツッコミ多め、自虐的表現多め。自動車専門誌、ライフスタイル誌、ウェブサイトなど、さまざまなメディアへ寄稿中。趣味ゴルフ。日本カーオブザイヤー選考委員。
スバル新型「WRX S4」日本仕様を発表! 2.4LターボやアイサイトX搭載! 価格は364万円から
■排気量アップ&進化したCVTを採用した新型「WRX S4」
スバル新型「WRX S4」の日本仕様の詳細が2021年11月25日に発表されました。
新型WRX S4は、動力性能や操縦安定性、静粛性や乗り心地などのあらゆる性能を磨き上げ、卓越した走行性能と4ドアセダンの実用性を兼ね備えたスバルのAWDパフォーマンスを象徴するモデルです。
エンジンは、従来型から排気量を400cc拡大し、新開発の2.4リッター直噴ターボ“DIT”エンジン(FA24)を搭載。
低速域から力強いトルクを発生させるとともにリニアなトルクの立ち上がりによる力強い加速をもたらし、高回転域ではトルクの落ち込みを抑えることで、伸びやかに出力が上昇する途切れない加速感を実現しました。
市街地などの日常から、ワインディングロードや高速道路の非日常まで、さまざまな領域で走りの愉しさを提供します。
さらに、進化したCVTとして「スバルパフォーマンストランスミッション」を搭載。従来のスポーツリニアトロニックからレシオカバレージを拡大し、加速性能を高めるとともに振動と騒音の低減することで動的質感を向上させました。
また、新開発の変速制御を採用し、滑らかな加速とリニアなレスポンスを実現。8速マニュアルモードの採用により、操る愉しさを提供します。
さらに、変速比幅の拡大によって発進時の力強い加速や高速巡航時の燃費性能が向上したほか、優れた静粛性も実現しました。
加えて、「STIスポーツ R」および「STIスポーツ R EX」グレードに「ドライブモードセレクト」が搭載されました。
スポーツカーの走りから、高級車のような乗り心地の走りまで、スイッチひとつで切り替えが可能。パワーユニットだけでなく、AWDシステムや電子制御ダンパー、パワーステアリング、アイサイトの追従加速度、エアコンなどを緻密に制御し、クルマのキャラクターを大きく変化させます。
新型WRX S4ではプラットフォームが新しくなり、「スバルグローバルプラットフォーム」×「フルインナーフレーム構造」を採用しました。
総合安全性能のレベルを引き上げるとともに、ドライバーの意思に忠実なハンドリングや、快適な乗り心地を提供。構造用接着材の採用範囲を拡大したことで、高い動的質感を実現しています。
これにより、思いのままに運転する愉しさとともに、クルマに乗るすべての人が快適に過ごせる上質な走りを可能にしました。
■よりアグレッシブなデザインに一新!
新型WRX S4の外観は、スバル車に共通するデザインフィロソフィー「DYNAMIC x SOLID」をさらに進化させた「BOLDER」を新型WRX S4のャラクターに適応させ、「Aggressive」というデザインコンセプトを採用。
今にも走り出しそうな前傾軸や、ヘキサゴングリルからはじまる塊感、内側から外側に張り出したフェンダーにより、走りへの期待を駆り立て、あらゆるシーンでパフォーマンスを感じられるデザインを実現しました。
立体的で彫りの深い造形やワイド&ローを強調したフロントバンパー、力強く張り出したフェンダーや勢いのあるキャラクターライン、スポーツサイドガーニッシュで躍動する走りを表現しています。
さらに、ボディ下部のスポーツサイドガーニッシュには、空気の流れを整えるヘキサゴン空力テクスチャーを施しました。これは表面の凹凸が大きな空気の渦の発生を防ぎ、操縦安定性を高める効果があるといいます。
ボディカラーは新型WRX S4ならではの世界観を表現する「ソーラーオレンジ・パール」、「サファイアブルー・パール」、「イグニッションレッド」、「セラミックホワイト」を新たに設定しました。
内装は、座った瞬間に走り出したくなる気持ちを高めるコックピットとし、触り心地や操作感にまでこだわった人とクルマが一体になれる空間を演出し、スポーティさと先進性をあわせ持つデザインとしました。
また、車両全体のフォルムとホイールベースのバランスを最適化し、伸びやかなスタイリングと居住性を両立しています。
さらに、アクティブライフや日常での使い勝手とパフォーマンスを両立させるため、アグレッシブなデザインでありながら、ベビーカーやゴルフバッグが入る広いラゲッジスペースを確保しました。
インパネ中央に配置される11.6インチセンターインフォメーションディスプレイ&インフォテインメントシステムでは、エンターテインメント機能、車両情報、エアコンや各種設定操作などを、ディスプレイに集約。タブレットのように直感的な操作を実現します。
12.3インチフル液晶メーターでは、運転操作に必要な情報やアイサイトXの車両情報を大きくグラフィカルに表示し、運転中でも最小限の視線移動で瞬時に必要な情報を認識する事が可能となりました。加えて、ブースト計の表示機能も設定しています。
「STIスポーツ R」および「STIスポーツ R EX」には、レカロ製フロントシートをオプション設定。シート表皮には肌触りが心地良いウルトラスエードを採用し、より優れたホールド性と安全性、快適性を高次元でバランスして、ドライバーのスポーツマインドを一段と刺激します。
先進安全装備においては、「新世代アイサイト」や高度運転支援システム「アイサイトX(エックス)」を装備。スポーツ走行から日常の運転まで心から安心して愉しめる新次元のセーフティドライビングを実現しました。
「つながる安全」がさらなる安心感をもたらすコネクティッドサービス「SUBARU STARLINK」も搭載。11.6インチセンターインフォメーションディスプレイやGPS、車載通信機などを搭載し、24時間365日コールセンターとつながることで、万が一の交通事故やトラブルが発生した際にサポートします。
また、スバルグローバルプラットフォームの採用に加え、ボディ構造の最適化と、高張力鋼板の最適配置などにより、高い衝突安全性能を実現しました。
新型WRX S4のグレードは「GT-H」と「STIスポーツR」のふたつを設定しており、それぞれにアイサイトX搭載の「EX」グレードが用意されます。
新型WRX S4の価格(消費税抜)は364万円から434万円で、初年度の販売計画台数は月間500台を目標としています。
スバル、「WRX S4」7年ぶりフルモデルチェンジ 2.4L直噴ターボと新開発CVT搭載 400万円から
スバルは25日、高性能セダンの新型「WRX S4」(日本仕様)を発表した。7年ぶりの全面改良となる。新開発の排気量2・4リットル水平対向4気筒直噴ターボDITエンジンと「スバルパフォーマンストランスミッション」を搭載し、ドライバーの意思に忠実に応える高い走行性能を実現した。高度運転支援システム「アイサイトX」を一部グレードに装備するなど安全性能も向上した。
外観は、ヘキサゴングリルを起点とした立体的で彫りの深い造形やワイド&ローを強調したフロントバンパーなどで躍動する走りを表現した。インテリアはスポーティーさと先進性を併せ持つデザインを採用した。
安全性能は、360度センシングを実現した「新世代アイサイト」を全車に標準装備したほか、アイサイトXを一部グレードに装備した。
初年度の月販計画は500台。価格は400万4千~477万4千円(消費税込み)。
和製スポーツセダンは侮れない──新型スバルWRX S4試乗記
フルモデルチェンジしたスバルの4ドアセダン「WRX S4」のプロトタイプに小川フミオが試乗した。印象は?
排気量はアップ、けれどもパワーはダウン
スバルがフルモデルチェンジしたWRX S4を11月25日に発表した。「究極のドライビングプレジャーを提供」してきたと同社が胸を張るスポーツセダンは、どう変わったのか。「GT-H」と「STI Sport R」の2つのモデルのプロトタイプを試乗したところ。走りの質は向上し、しかも乗り心地や静粛性が上がっているのに驚いた。
乗ったのはプロトタイプであるものの、基本的には今回の市販車と同じ内容とのこと。そこで、とりあえずこのクルマに興味しんしんというひとのために、サーキットでの走りを報告させていただく。
新型になるWRX S4は、全長4670mmのボディに、2387ccの水平対向4気筒ガソリンターボ・エンジンを搭載。202kW(275ps)の最高出力と375Nmの最大トルクという大パワーで、前後輪を駆動する。スバルのスポーツクーペ、新型「BRZ」とおなじエンジンであるものの、出力もトルクもS4のほうが上だ。BRZでは、173kW(235ps )と250Nmとなる。
シャシーは強化され、足まわりも、走りのクオリティを上げるために、あらゆる点で見直されている。すこしだけ例をあげると、路面への追従性をあげるためサスペンションアームのロングストローク化、ロールを抑制するためリアスタビライザーのボディ直付け、応答性の高いステアリングフィールを実現するためにフロントサスペンションアームの取り付け部にピローボールのブッシュを採用、といったぐあい。凝りかたは枚挙にいとまがない。
WRXに詳しい読者のかたは、気づいたかもしれない。エンジン排気量は従来の1998ccより増えている。いっぽうで、従来モデルは、最高出力が221kW(300ps)、最大トルクが400Nmもあった。新型では数値的には出力もトルクも下がっている。
パワーダウンしているかというと、体感的にはむしろ速くなっていることをスバルは強調する。新型ターボチャージャーには過給圧を調整するバルブを設けることで、アクセルペダルの踏みこみに対する応答性は先代より向上したそうだ。
たとえば70km/hからの加速をみると、立ち上がりの一瞬だけ従来の2.0リッターに負けるものの、そののちはあたらしい2.4リッターが上まわる。ちなみに燃費は、従来とくらべ約8%向上しているそうだ。
快適性も向上
はたして、試乗したショートサーキットでは、あきらかに従来型よりコントロール性が上がり、たとえばコーナリング性能が向上しているのに驚かされた。
従来のWRX S4(STI)はとても完成度が高いモデルだったものの、比較すると、加速性はともかく、カーブを曲がるときの車体の姿勢制御がうんとよくなり、狙ったラインのトレース性ははるかに上なのだ。びっくりした。
ステアリング・ホイールのドライブモードセレクターで「Sシャープ」を選ぶと、新型WRX S4が本領を発揮する。ノーマルモードに対して加速性が約30%も向上するというだけあって、はじけるような加速なのだ。
とりわけZF製の電子制御ダンパーをそなえた「STI」モデルでは、その真価が堪能できるだろう。おなじエンジン性能をもつ「GT-H」もすばらしいとはいえ、スポーツ走行性能では一段上をいく印象だ。市街地走行中心なら、いずれのモデルでもじゅうぶん満足が得られると思うけれど。
トランスミッションは無段変速機を使うものの、従来のリニアトロニックから、今回「スバルパフォーマンストランミッション」へと名称変更がおこなわれた。反応の早さと、ドライバーのイメージどおりに変速する自然さの追求が開発の目標だったそう。
無段変速とはいえ、マニュアルモードでは8段の段付きとして使える。あたらしいWRX S4ではたとえばコーナリング中は低いギアをホールドしてアクセルペダルの微妙な踏みこみに即座にエンジンが反応するようにしているという。
じっさいに、「Sシャープ」を含めたスポーツモード走行をしていると、つねに太いトルクバンドの上に乗っかったような加速性のよさだ。いっぽうで、ギアボックスの静粛性が高まっているのにも感心。洗練されたスポーツ性が実現されていると感じた。
さきに触れたとおり、快適性が格段によくなっているのも特筆点だ。静粛性については、サーキットでエンジン回転をレッドゾーンぎりぎりまで上げて走っていても、音楽が楽しめるぐらいだ。それに足まわりはしなやかに動いて、車体姿勢は終始フラット。サスペンションは硬さを感じさせない。
四輪駆動システムは、後輪に多めにトルクを配分する設定で、かつステアリング特性はニュートラルを実現しているようだ。高い速度でタイトなカーブに飛び込んでも、車体が外側にふくらんでいく感じはほぼ皆無なのだ。
「最初は、日本と一部の外国のスポーツファンのために開発してきましたが、昨今、北米でWRX S4の人気が上がってきていて、ドライブが楽しいクルマで通勤するのが好きというユーザーのことを考えて、快適性との両立をめざしました」
SUBARU技術本部・車両開発統括部の青山寛氏は、開発の背景をそう説明した。
こだわりの数々
スタイリングは、ファンが見たら、すぐにWRX S4の新型と感づく程度に、従来のイメージを継承する。そこに、2018年3月のジュネーブ自動車ショーに登場し、斬新さで話題を呼んだコンセプトモデルのデザイン要素が盛り込まれている。
「『VIZIV(ビジブ)ツーリングコンセプト』が発想の原点です。アグレッシブさがデザインテーマで、車体はリアからフロントにむかって大きく前傾していているようなイメージなので、4輪とフェンダーが外側に張り出すぐらいのエネルギー感を盛り込んでいます」
デザインをとりまとめた源田哲朗さんは、試乗会の会場で解説した。
エクステリアでたいへん興味ぶかい事実がある。今回のS4はセダンなのに、フェンダーアーチやボディ下部に、「レガシィ・アウトバック」を思わせる合成樹脂のクラディングが付加されている。なにか理由があるのだろうか。
「ラギッドな印象を作るためのデザインの遊びではないんです。空力テクスチャーと私たちは呼んでいる合成樹脂で、表面の素材とデザインによって、走行中に空気の剥離をコントロールし、ボディ側面の圧力変動を抑制する機能があります」
源田哲朗さんは説明する。見えないところではボディ下部にも、表面のデザインがちがう素材が貼られているそうだ。空気の流れを整えて剥離を抑制し、空気の流速を高めることで燃費にも寄与するという。
「開発の過程で、懐疑的な技術者陣に、この空力テクスチャーを未装着のテスト車も用意して乗り較べてもらいました。コントロール性と速さが明らかにちがうことに驚かれました」
説明を聞くと、とにかく凝りに凝っている。でも乗ると、意外なほどおとなっぽく、速いいっぽうで、快適性が高い。こういうクルマが出てくるなんて、とてもうれしい気分だ。
価格は、「GT-H」が400万4000円(アイサイトX搭載の「GT-H EX」は438万9000円)、「STI Sport R」が438万9000円(同「STI Sport R EX」は477万4000円)。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)
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富士重工 | 日記
Posted at
2021/11/30 21:34:27
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