2022年07月01日
てっきりコンパクトだからもっと軽いと思ったけどエンジンも重いか…
直6エンジンはM4譲り BMW M2 クーペ 試作車へ試乗 450psに1650kgか? 前編
ブランドの特色の核心を突いたM2
BMWの小さな高性能クーペ、M2が2代目へ進化する。彼らが誇るMモデルとして、発売から約1年も前にプロトタイプへの試乗が許された。だが、一部の技術的な質問には答えてもらえなかった。まだ明かせない理由があるのだろう。
近年、自動車メーカーは早期の話題喚起のため、プロトタイプへの試乗機会を設けることが多い。自動車メディアとしても、新モデルの情報をいち早くお伝えできるから喜ばしい。ただし今回は、車重や燃費など一部の情報はお伝えできない。
新しいBMW M2は、クルマ好きにとって期待の新人といえる存在だろう。最新の技術が搭載され、パワフルでありながら、ボディサイズはコンパクト。先代は世界中で多くの熱狂的なファンを獲得した、高性能なスポーツカーだ。
すこぶる速いだけでなく、伝統のあるBMWとして純粋さも残されていた。モデル・ヒエラルキーとしては底辺に位置するものの、ブランドの特色としては核心を突いた個性が与えられていた。
次期M2の開発へ関わっている技術者やデザイナーなどは、その重要性を理解しているはず。実際、G87型と呼ばれる新しい2シリーズの開発では、早い段階でM2にも取り組む必要性を認識していたようだ。
ちなみに先代のF87型と呼ばれた2シリーズのクーペは、後輪駆動のF22型2シリーズ・クーペをベースとしていた。さらには後輪駆動だったハッチバック、1シリーズとも距離が近かった。
新プラットフォームで増えた車重とサイズ
しかし新しいG87型では、BMWの大型モデルが共通して採用する、クラスター・アーキテクチャというプラットフォームをベースとしている。全長が5m前後ある、8シリーズ・クーペやSUVのBMW X7と同じものだ。
この変化は、技術的にも大きな影響を与えたらしい。「プラットフォームの違いが、サイズや車重の増加につながることは理解していました」。と、Mモデルの開発主任技術者、スヴェン・エッシュ氏は話す。
「その重量とどう戦うか、早いステージで決定する必要がありました。軽さを求めるには、多くの犠牲が必要になります。反対に車重を受け入れ、最高の技術を自由に搭載することで、パフォーマンスを最大化することも可能でした」
「最終的には、その決断は比較的難しくないものでした。多くの妥協を受け入れれば、開発中のクルマ(M2)が、より多くの能力を発揮できることも理解していました」
「一方で、よりパワフルで速く、先進的で一体感のある完全なモデルを作ることもできます。1つのトレードオフだけで」。ちょっとした言葉の綾にも聞こえる。スポーツカーの場合、車重が増えることでのメリットは限定的といえるからだ。
BMW側も、仕上りには強い自信を持っていないのかもしれない。「これから数kmの体験では、マイナス要因が見えるかもしれません」。と、エッシュは続けた。
次期M2の正確な車重を伝えることには、明らかに積極的ではない。少なくとも、先代のM2の1575kgと新しいM4クーペの1725kgとの、間に収まることは想像できる。
ドライブトレインはM3やM4譲り
前後アスクルやシャシーの補強ブレース、トランスミッション、アクティブLSDなど、ドライブトレインの由来は教えてくれた。ターボチャージャーで過給されるS58型の直列6気筒エンジンも。
「(増えても良いという)重量に関する決定で、M3やM4が搭載するコンポーネントを自由に使用することが可能になりました。実際、わたしたちはそれを実施しています。非常に優れていると知っていたので」。エッシュが微笑む。
「エンジンは若干デチューンされています。最高出力はM4と同じではありません。先代のM2 CSと同じ水準(450ps)だと考えてください」
「ステアリングとリアのディファレンシャル、スタビリティ・コントロールは、設定を変更しています。M4より110mm短い、M2のホイールベースへ対応させるために」
「フロント側には引き締めた専用のサスペンション・スプリングを組み、ターンイン時の反応を鋭くしています。またリアにも柔らかいスプリングを組むことで、コーナー中ほどでの挙動を機敏にしています。楽しいと感じられるように」
ハードウエアの大きな変更点は、このスプリング程度のようだ。「M3ツーリング用に開発したアダプティブダンパーも採用しています。柔らかいリア・サスペンションに掛かる横方向の負荷を受け止めることが目的です」
彼の説明を聞くと、M2はM4よりひと回り小さい、双子の兄弟のように聞こえてしまう。開発に数年掛かるという事実が、不思議に思えてしまう。
ボンネットが長い従来的なフォルム
だが、試乗コースとなったサーキット、オーストリアのザルツブルクリンクでM2を目の当たりにすると、容姿は明らかにM4とは異なる。ボディラインもプロポーションも、独自性が強い。しっかり偽装されていても伝わってくる。
M2のフォルムは、アグレッシブさが抑えられた従来的なクーペに見える。フェンダーラインが強く膨らみ、ギュッと引き締められた面構成が特徴といえる。
先代のM2ほどコンパクトではないし、M1クーペのように好戦的でもないようだ。それでも充分小さく感じられ、ボンネットが長くキャビンがタイトにまとまっている。
全体のスタンスから、高いエネルギーを放出する高性能な後輪駆動マシンだということを感じ取れる。ワインディングをさっそうと走りそうな、雰囲気が漂っている。
新しいM2が生産されるのは、2シリーズ・クーペと同じメキシコの工場。そこから英国へは、2023年4月頃から届けられる予定だという。
モデルの構成はシンプル。四輪駆動のxドライブは用意されず、後輪駆動のみ。450ps前後と予想されるエンジンの最高出力にも、バリエーションは設けられない。
トランスミッションはクラッチペダル付きの6速マニュアルか、トルクコンバーターによる8速オートマティックから選べる。こちらにはシフトパドルも付く。現在の市場では数少ない、FR+MTという組み合わせが選べるモデルになる。
この続きは後編にて。
直6エンジンはM4譲り BMW M2 クーペ 試作車へ試乗 450psに1650kgか? 後編
低く良好なドライビングポジション
試乗を許された、次期型BMW M2。偽装されたドアを開くと、分厚い布で覆われたインテリアが待っていた。8速ATと6速MTの両方を運転することができたものの、内装の素材や仕立てなどについては、お伝えできない。
少なくとも、ドライビングポジションは低く好印象。ステアリングホイールやペダルなどの位置関係も良い。メーターパネルはモニター式で、ヘッドアップ・ディスプレイも備わるが、こちらも高精細で見やすかった。
シートはBMWとしては一般的なデザインで、位置調整もしやすい。座り心地が良く、コーナーでもしっかり太ももや背中を支えてくれる、サイドボルスターが備わる。
M3やM4で選べる、カーボンシェルのバケットシートはオプションで装備可能。座面が低くなり、一層良好なドライビングポジションに落ち着ける。横方向のサポート性も大幅に向上する。
このバケットシートも快適に座れ、サーキット走行では明らかに有効。週末の走行会を楽しみたいというドライバーなら、迷わず選んでいいだろう。多少、乗降性は犠牲になるけれど。
BMWが用意してくれた試乗スケジュールは、オーストリアのサーキット、ザルツブルクリンクを6周するるセッションが2回。ATとMTを乗り比べるというもの。公道に出ることは許されなかった。
それでも、変化に飛んだ勾配の連続で、高速コーナーと低速コーナーが組み合されている。シャシーバランスを確かめられる場所といえる。
高性能モデルを運転しているという濃密さ
コースへ出てみると、冒頭のモヤモヤとしたものが一変。非常にダイナミックな特性を備えることが明らかとなった。車重が及ぼす制限は、最小限に抑えられたようだ。
同時に、先代のコンパクトなM2が打ち立てた、見事な機敏さや流暢さといった印象とも決定的に異なる。従来以上に操縦の正確性を高めつつ落ち着きを増し、ドライバーに寄り添った仕上りのようでもある。
M3やM4と比べて、パワーやサイズ、スピードでは確かに劣る。しかし高性能なモデルを自ら操っている、という感覚的な濃密さでは負けていない。
ペースを速めるほどに、盛大なサウンドやパワーだけでなく、手や足で運転しているという感覚が深くなっていく。ボディはコーナーでもフラットさを保ち、鋭く回頭。それでいて、乗り心地はさほど硬いとは感じられない。
意図したラインを忠実に辿り、コーナーの途中にある隆起部分は、アダプティブダンパーが受け流してくれる。先代では若干落ち着きのなかったリアタイヤは、しなやかに路面へ追従する。
これまでのM2でアダプティブダンパーを装備していたのは、最終のCSのみだった。しかし標準装備となった最新版では、ステアリングホイールにM1とM2と記されたボタンが追加された。ワンタッチで、クルマの特性を一変させることもできる。
ドライバーへ自信を抱かせるような一貫した挙動を保ったまま、高速にサーキットをクリアしていく。手のひらに伝わる情報量に不足はなく、グリップの限界領域でも漸進的だ。
まったく疑問のない動力性能
後輪駆動モデルらしく、アクセルペダルの操作で姿勢調整も可能。ドライバーが望めば、テールスライドに持ち込める状態にもある。それでいて、不意にテールが暴れるような素振りは一切ない。
それでは、先代のF87型M2 CS以上に楽しいだろうか? まだ公道での印象を確かめられていないから、その疑問に答えを出すのは尚早だろう。
少なくとも、動力性能にはまったく疑問がない。8速ATの中間のギア比がやや離れている印象だったが、全体を霞めてしまうほどのものでもない。
6速MTなら、一層リニアでダイレクトなレスポンスを楽しめる。ストロークが長く、スプリングの効きが強いシフトレバーの感触は、BMWらしいものだった。
「このM2が、楽しい要素をどれだけ備えているのか、ということの重要性を理解しています。しかし、グリップやシャシーの落ち着き、高速域での安定性や正確な操縦性など、最新のMモデルとして正しい決断だったと自信を持っています」
「M2には、求められるすべてが詰まっています。ひと回り大きいモデルと同等の、システムの柔軟性も獲得し、望み通りに運転することが可能です。M2を楽しむほど、より良いクルマだと思ってもらえるでしょう」
Mモデルの開発主任技術者、スヴェン・エッシュ氏が確信を持って言葉にする。公道で、新しいM2をより自由に運転できる日を心待ちにしていよう。
BMW M2 クーペ・プロトタイプ(欧州仕様)のスペック
英国価格:6万ポンド(約978万円/予想)
全長:−
全幅:−
全高:−
最高速度:249km/h(予想)
0-100km/h加速:4.2秒(予想)
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:1650kg(予想)
パワートレイン:直列6気筒2996ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:450ps(予想)
最大トルク:62.1kg-m(予想)
ギアボックス:8速オートマティック
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Posted at
2022/07/01 00:15:19
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