2022年10月26日
このリヤスポでどのくらい変わるのかね〜純正でも効果ありそうだけど
新型タイプRに翼を授ける!? こだわり開発陣がマジ開発!! Modulo製ウィングを峠全開チェック
ホンダアクセスが展開するホンダ車の純正アクセサリーブランド「モデューロ」。エクステリアパーツにおいては、以前から「実効空力」をキーワードに製品作りを進めてきたが、最新のスポーツモデル、シビック TYPE Rでは、独自の発想を持つテールゲートスポイラーまで生み出すにいたった。
はたしてその発想とはどんなもので、いかなる効果があるのか。屈指の難コースとして知られる群馬サイクルスポーツセンターで、国沢光宏氏が出来栄えを試してみた!
文/国沢光宏、写真/池之平昌信
航空機のエンジン後端にみられる「シェブロン形状」を採用
モデューロ製テールゲートスポイラーを装着したシビックTYPE R
ホンダ車のカスタマイズをしているモデューロは『実効空力』というコンセプトを開発のキーワードに掲げる。具体的に言うと「日常の速度域でも体感出来る空力効果であり、前後のリフトバランスを最適化。外乱に強くヨーの発生を最小限にして誰がどんな道で乗っても路面に吸い付くような安定感と気持ち良く操れる」ことを目標にしているという。サーキットでの限界領域より日常だ。
そんな概念で早くも新型シビック・タイプRのリアウイング(テールゲートスポイラー)をリリースしてきた。標準のウイングとの違いは4つ。
1)NACA4412ベースの翼断面を採用(NACA=アメリカ航空諮問委員会)
2)中央をガーニーフラップ形状にした
3)翼端板が付いている
4)ウイング下面に『シェブロン』なるギザギザした空力デバイスを付加。シェブロン、航空機では騒音を引き下げるためエンジン後端に付けるケースもある
それぞれ簡単に説明すると、NACA4412は空気抵抗とダウンフォースのバランスを重視した航空機の主翼形状。クルマの場合、航空機と上下逆の形状にします。2つ目はダウンフォースの重心を車体の中心に置くことを考えたもの。翼端板についちゃ航空機だけでなく競技車両にも採用されており、ウイングの効率を高めるために使う。最後のシェブロンは自動車業界じゃ珍しい。
雨の群サイでもガンガン踏める!
雨の群サイという劣悪なコンディションでもガンガン踏める
航空機だと構造物の一番後尾にギザギザを飛び出させるが、モデューロを見るとウイング自体にギザギザを付けている。騒音低下以外、どういう効果をもたらすのか航空機のデータや文献を探してみたのだけれど存在せず。モデューロの開発担当者に聞くと「空気の剥がれがよくなります」。効能としちゃボルテックスジェネレーターやディンプルと同じということだと推測する。
しかも「ハッキリ体感出来ます!」という。実効空力というコンセプトだからそれを狙ったんだろう。試乗は標準のウイングのまま「攻めたら世界有数の難コース」(試乗日は本降りの雨という難易度アップのおまけ付き)と言われる群馬サイクルスポーツセンターを2ラップ。ピットインしてモデューロのウイングに交換し2ラップして違いを感じて欲しいという内容。
そもそもこんなコンディションでアクセル踏めるのかと危惧しつつコースインすると、驚いたことにガンガン踏める! 新型タイプRのハンドリングは鈴鹿サーキットを走って素晴らしいと感激したが、上下方向の入力が激しい群サイでも通用した。『R』モードだとハネまくるものの、ノーマルモードでちょうどよい感じ。なかでも「スゴクいいね!」したのはリアの挙動。
限界を超えると流れ始める。その流れ出しがコントローラブルなのだ。粘るだけ粘って「ツルン!」と流れるんじゃ無く、限界に近づくとウエットであってもジンワリ外に出て行く。ちなみに標準のウイングもダウンフォースをしっかり出しているそうな。ただ雨の群サイだと、100km/hを超えるようなコーナーは少ない。いやウイングの効果を認識できる130km/h以上のコーナーは1つだけ。
リラックスした時こそ威力を発揮する「実効空力」
中央付近のガーニーフラップ形状や翼端板など、標準のスポイラーとは異なる形状を持つ
それすらも上下方向の入力大きいため激しく揺さぶられる。100km/hのダウンフォース、頑張っても二桁kgに届かない。フラットなサーキットなら敏感な人で気付くくらいだと思う。この時点で「さすがの実効空力を目指すモデューロも解りにくいでしょうね」と考えつつピットに戻り、ウイング交換。写真を御覧頂ければ解る通り、モデューロのフルカーボン製ウイング、カッコ良い!
ノーマルウイングのイメージを持ちつつコースイン! 同じようなペースで走り出す。するとどうよ! やはり路面からの入力大きいため、クルマは動き回る。これだけテールが上下方向に動くと、空気の流れも安定しないんじゃなかろうか。「全然違うクルマになりましたね!」と感じる人もいるようだけれど、少なくとも私は同じようにコントローラブルで楽しい走りだった。
クルマを降りて開発担当者に話を聞くと、普通の路面を巡航している時の方が明確に違うという。確かに暴れまくっている状況だと人間に入ってくる前後左右方向のGも大きく、敏感になれない。むしろリラックスしている時こそモデューロが狙っている実効空力を感じるんだと思う。機会あったら高速道路を通常の走行速度域でクルージングしてみたいと思った。
エアロ交換で運転が上手くなる!? ホンダ新型「シビックタイプR」テールゲートスポイラーは“ギザギザ”が効いてる!
■ギザギザしすぎなテールゲートスポイラーとは?
2022年9月2日のホンダ「シビックタイプR」のフルモデルチェンジに合わせ、同車の純正アクセサリーとして「テールゲートスポイラー」が発売されました。
このテールゲートスポイラーを手掛けたのは、ホンダ車の純正アクセサリーを開発するホンダアクセスですが、同社ならではのこだわりとして「実効空力」を取り入れています。
実効空力とは、日常の速度域でも体感できる空力効果のことで、ホンダアクセスではエアロダイナミクスの開発キーワードとしており、路面に吸い付くような安定感や、誰がどのような道で走っても安心して気持ちよく操れることを狙いとしました。
新型シビックタイプRにはもともと専用のリアスポイラーが装着されていますが、純正アクセサリーのテールゲートスポイラーに交換すると、高速域でさらなる直進安定性が増し、まるでFRのような一体感のある乗り味に変化。
どのような路面環境下でも安心して楽しく、運転が上手くなったように感じられるといいます。
それを可能にするのが、裏面に設けられたギザギザしたノコギリ歯のような実効空力デバイスで、モデューロXのエアロ開発のノウハウが取り入れられました。
このギザギザのいわゆるシェブロン形状は航空機にも使われているもので、なめらかな空力特性を生み出し、直進時にダウンフォースを発生。旋回性と直進性をバランスさせ、誰が運転しても効果を実感できる技術として、新型シビックタイプRのテールゲートスポイラーに採用されたといいます。
また、テールゲートスポイラーの表面は、標準装着のリアスポイラーとは異なるガーニーフラップ形状や両サイド形状で直進性と旋回性を高めたほか、Aピラーとの角度を綿密に調整したサイドプレートがサイドの乱流を遠ざけることで、直進性と一体感をもたらすほか、存在感のある「H型」のリアビューを実現。
表裏ともにダウンフォースに効く形状としたことが特徴となっています。
なお、標準のリアスポイラーはグロスブラック塗装ですが、テールゲートスポイラーがタイプR伝統の赤を織り交ぜたドライカーボンとすることでデザイン性と約2kgという軽さを両立しました(標準リアスポイラーは約3kg)。
テールゲートスポイラーの価格(消費税込)は27万5000円。別売りのロックボルト(5390円)が必要となり、ホンダの販売店で装着することができます。
※ ※ ※
ホンダアクセスでは、ガソリン仕様・ハイブリッド仕様の「シビック」にもテールゲートスポイラーを用意。
新型シビックタイプR用とは形状が違いますが、ベース部分にブラックをあしらったデザインでスポーティなコーディネートが楽しめることから、シビックユーザーからも好評を得ているアイテムです。
たかがリヤウイングで違いなんて……わかりすぎた! ホンダアクセスの「シビックタイプR」用空力パーツがマジで凄かった
この記事をまとめると
■新型シビックタイプRのホンダアクセス純正アクセサリー装着車に試乗
■ホンダアクセスのエアロダイナミクス開発のキーワードとなっている「実効空力」を実感
■リヤタイヤの接地感が増して安心してアクセルを踏めるようになっていた
本当にウイング交換だけで効果が実感できるのか?
実効空力……あまり耳慣れない言葉だが、モデューロでおなじみのホンダアクセスでは、日常の速度域でも体感できる空力効果のことを「実効空力」と呼び、ホンダアクセスのエアロダイナミクス開発のキーワードにしているのだという。
今回、群馬サイクルスポーツセンターで実効空力パーツの体験試乗ができるということで参加してきた。 試乗メニューは、(1)実効空力性能を搭載した新型シビックタイプR用に開発したホンダアクセスのテールゲートスポイラーとノーマルテールゲートスポイラーの付け替え比較試乗と、(2)実効空力のコア技術ともいえるシェブロン(鋸歯形状)の空力パーツをN-BOXのルーフ後端に着脱して効果を確認するというもの。
とはいうものの、空力パーツと言えば大体80km/hくらいから効果が体感できると言われており、それ以下のスピードではそれほど空力効果を体感することはない、あるいは微量すぎて体感できない。……というのが一般的な認識ではないだろうか。実際のところボクも日常の速域で実感できるなんて、体験した記憶がないのでまったく信じていなかった。
まあ、でもホンダアクセスがこれほど自信を持っているのだから、もしかしたら空力の欠片くらいは体験できるかもしれない。その程度に考えていた。
ところが、その差を体験してなお騙されているんじゃないか? というくらいの差があるのだ。はじめは驚きすぎて声を失ってしまったほどだ。
まずはN-BOXでの試乗から。
試したのはシェブロンと呼ばれる写真のように正三角形を並べた形状の空力パーツ。
はじめは装着せずに、次に装着して試乗。正直なところ、1周目は少ししか差が分からなかった。荒れた路面に背の高いクルマなので、ぐらつかないようにちょっと丁寧に走らせたのが逆効果だったのだ。ハンドル修正舵やカーブでの転舵速度を少々雑に速めにしてみると、唐突にその差が明らかになった。シェブロンをつけずに走らせると不用意なハンドル操作や路面のアンジュレーションでクルマがグラっと動くことがある。
これがシェブロンをつけるとリヤまわりにドシっとしたような重さ感とか安定感と呼べるようなものが増えていて、左右前後にアンジュレーションのきつい路面をしっとり落ち着きのある所作で走ってくれるのだ。
リヤまわりの細かい上下動も消えている。
リヤの接地感と安定性がまるで違う!
次に、シビックタイプRに試乗した。まずはノーマルウイングで。
コースはウエット。コース脇には苔があってもの凄く滑るし、ところどころ川がコースを横断していて、ここもドキッとするくらい滑る。
そんなわけで、いつもより慎重に走り出した。気付いたのは、タイプRはサスペンションの動き出しがしなやかに動くようになっていて、ウエット路面でタイヤが路面を良くとらえてくれるということ。ウエットグリップの良さからくる安定感があり、探りながらだがアクセルを深く踏み込むこともできた。
ウエット路面でタイプRの進化に感心したのだが、逆にこれでウイングの差が出るものなのか不安になってくる。
ホンダアクセスのテールゲートスポイラーは2kgの超軽量カーボン製で3D形状。スポイラー上面センター部をガーニーフラップ形状とし、ダウンフォースを高めるとともに、サイドプレートの角度をAピラーと合わせている。ちなみに、ガーニーフラップの長さやサイドプレートの大きさ、角度によってダウンフォースだけでなく直進性や、直進からターンインにかけてのスムースなクルマの動きにも影響を与えるのだという。
そして、このウイングの裏面後端にシェブロンが付けられている。
ホンダアクセスでは、リヤのダウンフォースを若干高めることで前後の空力バランスを整え、リヤタイヤのグリップ性能をより多く使って安定性を高めているのだという。しかも実効空力レベルでの性能を作り出しているという
テストは、ウイングをその場でメカニックによって交換してもらい同一車両で試乗した。
不安に思ったのがアホみたいに思えてくる。走り出した瞬間からもう違うのだ。まさしく実効空力性能の向上が実感できる。しかも60km/hくらいでコーナーに進入していくときのクルマの落ち着き感が明らかに高くなっているし、クレスト(丘)の頂点でアクセルを戻したときの、それでも安定感を失わないリヤまわりの安定性に驚かされた。
しかも、ノーマルウイングでは探りながらアクセルを深く踏み込んでいたのだが、ホンダアクセスのウイングだとアクセルの踏み込み量が2割がた多いのだ。その分安心感があり、安定感があり、実際にしっかり路面をとらえているので、蛮勇を振るうことなくハイペースの走行が可能だった。
ハイペースのブラインドコーナーで不用意にアクセルを素早く多く戻し、タックインを誘発するような操作をしてしまった際も、経験的にリヤの盛大なスライドを予感して身構えていたのだが、滑り出しの動きがつかみやすく、その分ほんのわずかだがカウンターステアを当てる対処を早く行うことができ、結局最小限の修正舵で対処することができた。しかも、スライドしているときのクルマの動きも穏やかで、スコッとグリップが抜けるようなこともなかった。
また、全体的な操縦性も、リヤのダウンフォースを付け過ぎたら曲がりにくくなるのでは? という考えはまったくの杞憂で、むしろウエット路面を少し攻めた程度のパースだと、4つのタイヤ、とくに前後イン側のタイヤのグリップが上手に引き出されていて、4つのタイヤでコーナーを曲がっていく感覚があった。
初め、実効空力なんて……と少し軽く見ていたのだが、いやむしろこれ積極的に使うべきでしょう! と趣旨替えしました。そのくらい効果は明瞭だった。
改めて空力性能の奥の深さを強く実感した。
【本当に体感できる?】タイプR純正用品に採用の“実効空力”を乗り比べてみた。
ホンダアクセスの「実効空力(じっこうくうりき)勉強試乗会」なるイベントが、“群サイ”こと群馬サイクルスポーツセンターで行われた。
基本的には、新型シビック タイプRに純正アクセサリーとして新開発された「テールゲートスポイラー」の効果を体感する試乗会だが、お楽しみはもう一つあった。
ホンダアクセスの変態集団(開発陣)が自信を持つ核心技術
このテールゲートスポイラーには一見目立たないが、キーテクノロジーとして新しい実効空力デバイスが搭載されている。その効果を一般的な車種でも実証すべく、実験用に手作りしたデバイス(ホンダアクセスの匠による力作)をNボックスに装着し、走りの違いを検証するという趣向だ。マニア集団のホンダアクセスらしく、なかなか変態濃度の高いコンテンツである。
ホンダアクセスがエアロダイナミクスの開発でキーワードにしているのが「実効空力」。「日常の速度域でも体感できる空力効果」を同社ではこう呼んでいる。
実効空力の狙いは、「路面に吸いつくような安定感」。前後リフトバランスを最適化し、4輪のタイヤグリップを使い切れる接地荷重を得ることで、外乱の影響やヨーの発生を最小化する。ホンダアクセスが手がけるエアロパーツやコンプリートモデルの「モデューロX」で、すでにご存じの方も多いだろう。
そして、2022年にマイナーチェンジされたフリード モデューロXからは、空力効果をさらに高める実効空力デバイスを搭載(フリードのデバイスはエアロフィン)。ホンダアクセスのエアロダイナミクスはたゆまない進化を続けているのだ。
ギザギザのあり・なしを体験。ありはアリアリだった!!
新型シビック タイプR用のテールゲートスポイラーに採用された実効空力デバイスは、ギザギザの鋸歯形状。シェブロンとも呼ばれるユニークなカタチだ。これが強力なダウンフォースを生み出すメインエレメントの下面に実装されているわけだが、その鋸歯形状の効果をシンプルに試すのがNボックス(NAのFF車)を使った実験である。
まずノーマル(非装着)の状態で走りの感触を確かめたあと、いったんピットイン。今度は鋸歯形状の実効空力デバイスをテールゲートに装着する。装着といってもデバイスの裏面はマグネットシートなので、ペタッと貼る(というか置く)だけだ。
何となくオカルト的なこの手の比較試乗モノは、その効果が本当に感じられるのか、自分のセンシング能力を含めていつも軽い不安を覚える。しかし、眉に唾をつけて再びコースインすると、あら不思議!
いきなり直進性が向上しているのだ。ノーマルではストレートでも路面の複雑なうねりで右に左に修正舵をゆっくり繰り返したが、その必要性が格段に少ない。路面の外乱にステアリングが影響を受けにくく、挙動が落ち着いて運転しやすい。車速は一般的な50~60km/hだ。
ノーマルとの違いはコーナーでも体感できる。実効空力デバイス装着車はステアリング中立付近の曖昧な感触が軽減。初期から操舵の効きが向上し、ハンドリングのリニアリティが高くなる。修正舵はここでも少なく、旋回中の操舵角やボディの姿勢はピタッと安定している。路面に追従するサスペンションのストロークも、しなやかさが増しているように感じられる。
何だかキツネにつままれたようだが、実効空力デバイスの効果はアリアリだ。
開発担当者によると、鋸歯形状の三角形の一つひとつが小さな縦渦の流れをいくつも生成し、ルーフエンドから剥離する気流の乱れを整えるという。この整流によって走行中に発生するリフト(揚力)の前後バランスが最適化され、ボディの姿勢がピタッと安定する。ダウンフォースは発生しないものの、土台となるボディを空気の力で上からある程度抑えることで、その下のサスペンションも動きがよくなるという仕組みだ。
しかも、鋸歯形状が生み出す渦流はボルテックスジェネレーターと違って指向性が強くない。そのため直進状態から旋回に移る際にも渦流が壁にならず、左右方向にもスムーズな整流効果が得られるというのだ。
効果はあるが、可視化に至らず
じつはこの鋸歯形状、渦流があまりにも細かいため、その様子を可視化して確認はできていないらしい。とはいえ、航空機のジェットエンジン(シェブロンノズル)では、排気流とエンジン周囲の気流の混合を穏やかにする騒音低減効果が実証されている。つまり、ノイズの原因となる乱流の発生を軽減していると考えられるのだ。
シビック タイプR用にホンダアクセスが新開発したテールゲートスポイラーでは、この鋸歯形状の実効空力デバイスがメインエレメント部の下面にズラリと配置されている。これによって下面に沿って流れる空気を整流。直後のガーニーフラップ部までスムーズに導く。さらなるダウンフォースを生み出すガーニーフラップ形状の効果を、いっそう高める狙いがある。
タイプRの日常使いをもっと快適にするために開発
テールゲートスポイラーの動的コンセプトは、「いかなる道でもFUNなGT(グランドツーリング)性能」。タイムを削り取るサーキットの走りだけでなく、圧倒的なパフォーマンスを高速道路のロングドライブでも快適に楽しめる直進安定性、またワインディングなどでもハンドリングのさらなる一体感や運転がうまくなったように感じさせる寛容性が追求されている。
「ノーマルのタイプRはフロントのダウンフォースが強めで、このテールゲートスポイラーを装着すると前後のリフトバランスが均等近くになります。ノーマルはフロントで路面を捉える印象が強いですが、FRみたいな乗り味に感じられると思います」(開発担当者)
ホンマかいな!? ただ、筆者はそもそも新型タイプRの試乗自体が今回初めて。330馬力FFの過激さに圧倒されてスポイラー付け替えの違いが入ってくるか一抹の不安があった。
ともかく赤いバケットシートに収まり、ドライブモード「スポーツ」で乗り比べしてみると、これがホントにそうなのだ。今度はNボックスと異なり、そこそこタイプRなりの走り方である。
“リヤの存在感”が増し、FR車のようなハンドリングに!
まず、ステアリングのフィーリングが違う。新型はノーマルでも洗練度を高めているが、リヤのスポイラーをホンダアクセス製に換装すると、中立でノーマルと同等以上の直進性を発揮しながら、舵を入れるとさらにスッキリ軽い上質な手応えを味わわせる。
そして、真っ直ぐ走っていてもリヤの確かな存在を感じるのだ。群サイの荒れた舗装路面にもサスペンションが見事に追従し、後輪がしっかり接地する様子が手に取るように伝わってくる。サスの動きもいっそうしなやかになり、乗り心地も向上。後輪で路面を蹴りながら(実際は違うが)高速道路を矢のように、かつ快適に走り続けるツアラーのような雰囲気が確かに出ている。
コーナリングにしてもそう。ノーマルは前輪で路面を鷲掴みにして曲がり、アクセルオンで前輪が駆動力で引っ張りながらさらに曲がるという、フロント主体で曲がるイメージだ(FFだから当然だが)。
アクセス装着では操舵して外側の後輪にグッと荷重が乗り、旋回中の姿勢はノーマルよりもボディが吸いつくように安定。再びアクセルを踏み込むと、外側のリヤサスがグッと沈み込んで一気に駆動力をかける。ステア特性にアンダー傾向が表れることもない。コーナーにおける一連の動きは、まさしくFRのようなボディの前後バランスと一体感の密なハンドリングを実感させるのだ。
強力なダウンフォースによって前後リフトバランスを均等に近づけ、タイヤにかかる荷重もすべて均等にするというテールゲートスポイラーの性能はホンモノ。旋回でも空力効果が切れ目なくスムーズにつながる感触は、鋸歯形状の実効空力デバイスが威力を発揮しているに違いない。
魔法をかけられたよう……“味変”効果は絶大だった!
テールゲートスポイラーはコレ一つでタイプRの走り味を別モノにチューニングできる、魔法のような純正エアロパーツだ。そして、鋸歯形状にはまだナゾも多いというから、形状や大きさなどに今後新たな発見がある可能性は十分ある。ホンダアクセスの実効空力デバイスは今後の進化も楽しみなのだ。
〈文=戸田治宏 写真=山内潤也〉
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自動車業界あれこれ | 日記
Posted at
2022/10/26 22:44:52
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