2016年10月14日
【新聞ウォッチ】豊田名誉会長の「修さんと会ったよ」で動き出したトヨタ・スズキ提携
気になるニュース・気になる内幕---今日の朝刊(朝日、読売、毎日、産経、東京、日経の各紙・東京本社発行最終版)から注目の自動車関連記事をピックアップし、その内幕を分析するマスコミパトロール。
2016年10月13日付
●トヨタ・スズキ提携へ、検討発表、自動運転や環境対策(読売・1面)
●自動ブレーキ車保険料安く、平均1割損保各社、2018年から(朝日・1面)
●首都断線、11区停電、58万軒新座の東電施設火災(東京・1面)
●中国新車販売26%増、9月減税終了前で駆け込み(日経・11面)
●東芝、自動運転に参入、システムを一括提供(日経・13面)
●日産・富士重など日本車メーカー、米で販売奨励金積み増す(日経・17面)
●トヨタプリウス21万台リコール、駐車ブレーキ不具合(日経・38面)
ひとくちコメント
2016年もあと2カ月半。少し気が早いようだが、自動車業界の「今年の10大ニュース」では、「燃費データの不正問題」や「三菱自動車の日産傘下入り」などのビッグニュースとともに上位に食い込むことは間違いないだろう。
トヨタ自動車とスズキが、業務提携に向けた検討に入ると発表した。きょうの各紙も「トヨタ、スズキ提携へ」との大見出しで、毎日、日経が1面トップ。恐らく、夕方になってから「東京大規模停電」というまさかの衝撃的なニュースが飛び込んでこなければ、読売や朝日なども1面のトップ記事として報じたとみられる。
各紙とも1面以外にも総合面や経済面に書き分けて「トヨタ、スズキ提携」についての解説記事を詳しく取り上げている。例えば、読売は経済面の見開きで「スズキ存続かけ打診、トヨタ世界標準狙う」として、「単独での生き残りが難しいスズキが最大手のトヨタを頼った側面が強い。トヨタにとっても、自社の技術を他社にも利用してもらうことで、『世界標準化』を進める狙いがある」と伝えている。
記者会見にはスズキの鈴木修会長とトヨタの豊田章男社長が出席したこともあり、毎日は「生き残り創業家連合」との見出し。東京も「過去のスズキ危機、トヨタが2度救う」として「トヨタグループの始祖、豊田佐吉は静岡県湖西出身。市内には織機の改良や発明に打ち込んだ生家が保存されている。スズキも、鈴木道雄が浜松市で創業した織機製作会社が起源」。「創業家同士の信頼関係は深く、トヨタは過去にも2回にわたって、経営危機に陥ったスズキを救ってきた」と解説している。
さらに、日経の紙面に目を向けると「スズキ、待望の後ろ盾」として「距離をぐっと縮めたのは、単独では生き残れないとのスズキの危機感だった。環境の強化などに向け、待望の後ろ盾を得る」と取り上げた。
記者会見でも、鈴木修会長は「9月初めに豊田章一郎名誉会長にまず相談させていただいた」と打ち明けると、豊田社長も「修さんに会ったよ」と父親でもある章一郎氏から伝えられたと話した。
また、豊田社長は「鈴木会長とは先週お会いしたばかりで、お見合いをした段階であり、これから考える」と述べ、具体的な提携内容は何も決っていないという。それでも、このタイミングで共同会見を行ったことは、スズキにとっては大きな意義がある。共同会見の会場がホテルなどの宴会場ではなく、トヨタ東京本社の大会議室だからだ。ちなみに、マツダとの包括提携やダイハツの完全子会社化の共同会見は都内のホテルの宴会場だった。
つまり、相手がスズキだけに会場費を節約したという見方もあるが、それよりも、豊田社長も「大先輩」と仰ぐほどの鈴木会長が、わざわざトヨタの東京本社に出向き、トヨタの経営トップと固く握手を交わすというパフォーマンスこそが大きな意義がある。そのシーンが、世界中のメディアに流れることで、独VWとの提携解消後、将来への危機感を抱きながらく現場で汗を流すスズキマンにとっては、その不安を払拭するための絶大の効果だったようにも思えるからだ。
【トヨタ スズキ 業務提携】鈴木会長自ら協議を持ちかけ…将来に危機感
トヨタ自動車とスズキは10月12日、業務提携に向けた協議を開始すると発表した。スズキの鈴木修会長は同日、都内で開いた共同会見で自らがトヨタに対し協議を持ちかけたことを明かした。
鈴木会長は「独立した企業として経営していく覚悟であることに変わりはない」としながらも、「従来から取り組んできた伝統的な自動車技術を磨いていくのみでは将来は危ういことは理解している」と危惧を示した。
そのうえで「こうした悩みをこれまでも時々、豊田章一郎名誉会長に聞いて頂いていたが、つい最近、9月であったと思うが、具体的にトヨタさんの協力を頂くことはできないかと思い切って相談を致した。そうしたところ、豊田名誉会長からは『両社による協力について協議だけはしてみても良いのではないか』といって頂き喜んでいた」と述べた。
さらに「その後、先週のことだが豊田章男社長と相談する機会を得て、いろいろなお話をさせて頂き、その結果、豊田社長からもスズキとの協力に関心を示して頂き、両社でいかなることができるのか、協議をしてみようということになった」と、提携に向けた協議を始めることになった経緯を説明した。
一方、協議の具体的な中身に関しては、話し合いのテーブルにつくことを決めたばかりだとして、鈴木会長、豊田社長ともに「すべてはこれから」と述べるにとどめていた。
トヨタとスズキが共同会見。提携の噂はやはり本当だった!
トヨタとスズキが10月12日夜、トヨタ東京本社で豊田章男社長、鈴木修会長の出席のもと共同記者会見を開き、業務提携に向けた検討を進めていることを発表しました。
今回、スズキがトヨタとの提携に踏み出したことで、国内自動車業界はトヨタ、日産、ホンダ3陣営への集約がいっそう加速されそうな状況になってきました。
トヨタは2005年にスバルと資本提携、2010年にはRAV4のEV開発で米テスラと提携、翌2011年にはBMWとの共同開発で業務提携。さらに2015年5月にはマツダとも業務提携を結んでいます。
トヨタが他社との提携を積極的に進めている件について、豊田章男社長は会見の中で、
「これまで自前がトヨタの姿だったが、環境が激変する中で生き抜くためには変化に対応する力が必要。それぞれ車会社としての思想や得意分野があり、色々と学ばせてもらっている状況」
と説明しています。
今後、トヨタ×スズキ連合が実現すれば、国内の自動車業界に与えるインパクトはかなり大きなものになりそうです。
というのも、インド市場におけるスズキのシェアは47%と強大で、シェアが5%未満のトヨタにとって大きな魅力であり、同市場の今後の成長率を考慮すると、その相乗効果は計り知れません。
同様に、国内軽市場においても、トヨタが完全子会社化したダイハツと、スズキの販売台数を合わせると、シェアが6割を超えることから、豊田社長は「独占禁止法との兼ね合いも踏まえて提携を検討する」としています。
振り返れば、スズキは世界最大の自動車メーカーだった米GMと資本提携していましたが、その後リーマンショックの影響でGMの業績が急激に悪化したため、2009年に提携を解消。代わりにフォルクスワーゲン(以下VW)と資本提携を結びます。
しかし、2011年には経営の独立性の確保をめぐり、VWと対立。スズキは資本提携の解消を求めて提訴。
国際仲裁裁判所がVWにスズキ株の売却を命じたことで、4年間に渡って争った提携解消問題に昨年8月末、ようやく目処が付いたばかり。
その後、スズキは他社(特に海外メーカー)との提携に慎重になっています。
その一方で、環境技術や自動運転技術には莫大な開発費が必要になるため、その後も国内で提携先を模索していたようです。
そうしたおり、今年の1月にトヨタとスズキの提携話が新聞等で報道されました。
両社は報道を否定するコメントを出していましたが、トヨタが、ダイハツの完全子会社化を発表したのはまさにその頃であり、ダイハツに小型車開発を任せることで、スズキとの棲み分けを予め明確化しておく必要があったとの見方も。
スズキはインドでは大きなシェアを持っているものの、先進技術では他社に比べて出遅れ感が否めず、鈴木会長自身も今回の会見で「伝統的な自動車技術を磨くだけでは将来が危うい」、「自動車産業の変化が早く、共有しないと生きていけない」と会見で述べるなど、将来への不安を隠しません。
トヨタとしては、かつてVWがそうであったように、タイやインドネシアに続くインド市場でのシェア拡大が期待できるだけに、恐らく今後提携が実現するのも時間の問題と予想されます。
これにより、各社が個々に調達していた部品を共通化してコストを下げたり、販売車種の重複を回避することが可能になります。
トヨタは、日本のモノづくりを守るための「オールジャパン構想」の実現に向けて動いており、スズキとの提携についても、その実現に向けた動きの一環とみられます。
(Avanti Yasunori)
【トヨタ スズキ 業務提携】両トップ、提携の中身「ゆっくり時間をかけて考える」
トヨタ自動車の豊田章男社長とスズキの鈴木修会長は10月12日、業務提携に関する記者会見をトヨタの東京本社で開いた。しかし、まだ“お見合い”の段階で、具体的な中身については何も決まっておらず、両社長とも「ゆっくり時間をかけて考える」と述べた。
業務提携の会見ともなれば、通常、ある程度の大枠が決まった後にするものだが、今回は違った。記者から「具体的な提携の中身を教えてほしい」と質問があったが、豊田社長はこう答えるのみだった。
「今日は先週鈴木会長からお話をいただいたないようについて今後検討していくというアナウンスをした。そのため何も決まっていない。情報技術について話をしたが、今後のエネルギー問題や環境問題を考えると、1社でやれることは限られている。協調や標準化について協議していく」
こんな段階で会見を行った裏にはスズキの事情があると言っていいだろう。GM、VWと別れた結果、自動車業界で中堅規模のスズキは再編の目。なにしろ、インド市場で圧倒的に強く、スズキを魅力に感じている同業者は少なくない。以前、日産自動車のカルロス・ゴーン社長が提携を持ちかけたこともあったそうだ。
そんな状況の中、いつまでも単独でいたらいずれどこかに飲み込まれてしまう。そんな危機感もあり、高齢の鈴木会長はトヨタに働きかけたわけだ。トヨタと提携関係を進めていると発表すれば、スズキはほかの会社からちょっかいを出されずにクルマづくりに専念できるからだ。
しかも、豊田家と鈴木家は関係が深く、スズキが困った時にはトヨタが面倒を見るという代々の申し送り事項みたいなものがある。これまでにもトヨタはスズキを2度救ってきた。そして、今回が3回目となるわけだが、豊田社長は豊田章一郎名誉会長から「修さんに会ったよ」と一言言われだけで、即座に鈴木会長に会い、提携交渉を進める決断をした。
いずれにしても、今回の提携交渉開始という発表は両家の深い絆から生まれた出来事と言っていいだろう。
スズキとトヨタ、業務提携を検討!環境や安全、情報技術等の分野で連携を強化
スズキとトヨタ自動車は、両社の協力関係の構築に向けた検討を開始することを決めたと発表した。
自動車業界は、従来の自動車そのものの開発技術にとどまらず、環境や安全、情報等の分野において先進・将来技術の開発が求められるなど、取り巻く環境がこれまでにない速さで、大きく変化しており、こうした分野では、個別の技術開発に加えて、インフラとの協調や新たなルールづくりを含め、他社との連携の重要性が増してきている。
スズキは、軽自動車を中心に、価格競争力の高いクルマをつくる技術を一貫して磨いてきたが、先進・将来技術の開発に課題を抱え、危機感を持ってきた。一方のトヨタは、環境や安全、情報等に関する技術開発に取り組んでいるが、欧米各社よりも仲間づくり、標準づくりの面で遅れている。
今回、両社が抱える課題を解決するためには、業務提携が有効であると考え、検討を開始することにした。今回の検討は、両社間で公正かつ自由な競争が行なわれることを前提として、進めることになる。なお、この提携の構想は両社以外にもオープンなスタンスであり、将来的には標準化にもつながることが期待される。
スズキの鈴木修会長は、「トヨタは業界トップの企業であり、また、あらゆる先進技術、将来技術を手がける最も信頼できる会社。今回こうしてトヨタとの協業に向けて協議を進められることになり、大変ありがたい。豊田章一郎名誉会長にまず相談させていただき、豊田章男社長にも協業に関心を示してもらい、大変感謝している。スズキの将来のためにもしっかりと協議に臨んでいく」と語った。
トヨタの豊田章男社長は、「自動車業界を取り巻く環境が大きく変わる今、生き抜くために必要なのは『変化に対応する力』。個別の技術開発に加えて、同じ志をもった仲間づくりが重要となってきている。『もっといいクルマ』づくりと自動車産業の発展に役立つ取り組みであれば、我々は常にオープンな姿勢で検討したいと考えている」と語った。
スズキ株式会社 鈴木会長スピーチ皆様、こんばんは。鈴木でございます。皆様方には日頃より大変お世話になっており、改めて御礼申し上げます。本日はご多用中のところ、ご参加賜り誠に有難うございます。また、豊田社長には、このような場所のご提供も賜り感謝致します。
今回、両社で業務提携に向けた検討を開始することを決めたことにつきまして、まず私より一言申し上げたいと思います。私どもは、これまでも申し上げてきましたように、独立した企業として経営していく覚悟であることには、変わりはありません。しかし、情報技術を中心に、自動車産業をめぐる技術競争は急速に変化してきております。
スズキは、ご案内の通り、国内にあっては軽自動車が中心、海外にあってはインドが中心です。こうした市場においても、従来から取り組んできた伝統的な自動車技術を磨いていくのみでは将来は危ういことは理解していました。
こうした悩みをこれまでも時々豊田章一郎名誉会長には聞いていていただいていたのですが、つい最近(このひと月以内であったと思いますが)具体的にトヨタさんのご協力をいただくことはできないか、思い切ってご相談しました。そうしたところ、豊田名誉会長から「両社による協力について、協議だけはしてみても良いのではないか」と言っていただき喜んでおりました。
その後、先週のことですが、豊田章男社長とご相談する機会を得まして、いろいろお話をさせていただきました。
その結果、豊田社長からもスズキとの協力に関心を示していただき、両社でいかなることができるのか、協議をしてみようということになりました。協議を始めることを受け入れていただいた豊田社長に感謝するとともに、スズキの将来のためにもしっかりと協議に臨んでまいる覚悟であります。私からは、以上であります。ありがとうございました。
トヨタ自動車株式会社 豊田社長スピーチ豊田でございます。本日はお忙しい中、また、遅い時間に、私どもの東京本社まで、ご足労いただき、誠にありがとうございます。また、日頃は大変お世話になっておりますことに対し、改めて御礼申し上げます。私の方からも、スズキさんとの協業の検討を決めたことについて、少しお話させていただきます。
鈴木修会長がおっしゃった通り、コネクティッドなど情報技術を中心に、自動車産業をめぐる技術競争は、これまでにないスピードで、大きく変化しております。地球環境問題、エネルギー問題、安全・安心への取り組みはもちろん、自動運転をはじめとする先進技術・将来技術の開発が同時に求められております。
しかし、こうした分野では、1社が個別に技術開発を進めるというだけでは限界があります。経営資源のこともありますが、さらにインフラとの協調、標準化に向けた仲間づくりなど、他社との連携が重要な要素となってきております。
以前、ダイハツとの会見の際に、私は「トヨタはアライアンスが苦手な会社」と申し上げました。自前にこだわってきたのが、トヨタのこれまでの姿だったと思います。しかしながら、環境が激変する中、私たちが生き抜くために必要なことは、「変化に対応する力」だと考えております。そして、これこそが今のトヨタが乗り越えなくてはいけない課題だと思っております。私どもは今、将来を見据えて、水素社会に向けた様々な取り組みや、人工知能、ロボティクス分野での技術開発などの取り組みも進めておりますが、これらの分野では他社とも連携しながら開発を進めております。まだまだ道半ばですが、仲間づくり、標準化といったことの重要性を認識しながら進めなければならないと思っております。
今回、スズキさんから、情報技術など先進・将来技術をというお話をいただきました。私どもとしても、今申し上げたような課題を抱えていた中、スズキさんから率直なご相談をいただき、まず両社の関係の中で解決するためには「業務提携」があるのではないかということで、一緒に検討させていただくことを決めました。
同じ志をもった仲間づくり、それが「もっといいクルマづくり」と「自動車産業の発展」に役立つ取り組みであれば、我々は常にオープンな姿勢で検討したいと考えております。なお、弊社にはダイハツという子会社があります。ダイハツには新興国の小型車事業の根幹を担っていただきます。その上で、スズキさんとの提携については、法規制も踏まえながら、これから協議を進めていくことになります。
最後に、今、鈴木修会長と一緒の場にこうして立たせていただいていることに、思うところがございます。会長は長きにわたって業界を引っ張ってこられた大先輩。また両社はともに遠州を発祥の地とし、創業の経緯も似通っており、深い縁を感じます。今後、協力しあうことが、自動車産業にとって次なる道を切り拓くことになればいいと願っております。私からは以上です。ありがとうございました。
【トヨタ スズキ 業務提携】富士重吉永社長「ごく自然な流れ」
富士重工業(スバル)の吉永泰之社長は10月13日、トヨタ自動車とスズキが業務提携の検討に入ったことについて、「ごく自然な流れであり、報道に触れ、ああそうだろうなと思った」と語った。
同日、都内で開いた新車発表の会見で述べた。吉永社長は「当社のような中規模以下の自動車会社にとって、例えばハイブリッド車など人類で最初の技術開発は、経済的にも人的にも厳しい」とし、そうしたところは「大手さんの力を借りる必要がある」と指摘した。
一方で、力を借りながらも、個々の企業が「それぞれの特徴を生かして発展していくことは、日本の自動車産業、あるいは国にとっても非常に大切」と述べた。富士重はトヨタとの提携を双方にとって実りあるものとしているだけに、トヨタとスズキの提携にも「ウェルカム」と歓迎を表明した。
果たしてどうなることやら…
Posted at 2016/10/14 23:25:02 | |
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