2018年10月16日
ポルシェ 2018年度1-9月の販売台数を発表、19万台超で前年同期増
ポルシェAG(本社:ドイツ、シュトゥットガルト)は、2018年度第3四半期(1-9月)において、196,562台(前年同期プラス6%)の新車を世界中で販売したことを発表した。
ポルシェの本拠地、ドイツにおける販売台数は前年比で13%増加し、ヨーロッパ全体では、9%の増加となった。ポルシェにとって最大の単一市場である中国は4%増の56,254台でした。モデル別では4ドアスポーツカーであるパナメーラの伸びがもっとも大きく、前年同時期の60%の増加を果たした。「911」も同様に2桁の伸びを見せ、19%増となっている。ポルシェのボデルレンジにおいて、もっとも大きなボリュームを占めているのは引き続き「マカン」で68,050台、「カイエン」は49,715台だった。
ポルシェAGのセールスおよびマーケティング担当取締役であるデトレフ・フォン・プラテンは、
「この9ヶ月の間、ドイツとヨーロッパを中心に我々の魅力あふれる製品ラインナップが需要にマッチしたことが、この素晴らしい業績に繋がりました」と語ります。「もちろん北米と中国における販売台数の伸びにも大いに満足しています。
幾つかの要因は第4四半期が難しくなることを示していますが、我々は積極的に問題へ立ち向かうことで克服していくつもりです。新たに導入される排気ガス試験制度のWLTPへの対応もそれらの要因の一つです。ヨーロッパにおいてWLTPは今年の9月1日より施行されています。この制度の切り替えは、新しいモデルの導入に大きな影響を与えています。ポルシェでは、911と718の派生モデルおよび先週のパリモーターショーで欧州デビューを果たしたニューマカンを皮切りに対応していきます。」
とコメントしている。
なお、ポルシェは2018年2月以降、ディーゼルエンジンを搭載したモデルの販売を行っていない。2018年9月末、取締役会は今後ディーゼル搭載車を販売しないことを最終的に決定している。同時にポルシェはハイブリッドモデルに対する需要が高まっていることを体感しており、一例として、ヨーロッパにおけるパナメーラの新車販売のうち60%以上がプラグインハイブリッドモデルで占められている。
このような状況の中、フォン・プラテンは今年度の販売台数が新記録となった昨年度の246,375台と同じレベルに達すると見込んでいる。
ポルシェ世界販売が新記録、6%増の19万台 2018年1-9月
ポルシェ(Porsche)は10月12日、2018年1~9月の世界新車販売の結果を発表した。総販売台数は1~9月の新記録となる19万6562台。前年同期比は6%増だった。
1~9月の市場別実績では、最大市場の中国が5万6254台。前年同期比は4%増と回復した。7月からの輸入車に対する関税の引き下げが、販売を押し上げた。中国を含めたアジア太平洋/アフリカ/中東地域も、4%増の7万7594台と回復する。
単一市場で、中国に次いだのは米国。1~9月の米国実績は、4万2626台。前年同期比は3%増とプラスを維持する。欧州は6万6551台を販売し、前年同期比は9%増。このうち、地元ドイツは2万4709台で、前年同期比は13%増と2桁増を達成した。
モデル別では、SUVの『マカン』が6万8050台で、引き続き最量販車に。ただし、改良新型の投入を控えて、前年同期比はマイナス。『カイエン』はマカンに次ぐ4万9715台を売り上げたものの、前年割れ。一方、『パナメーラ』は、前年同期に対して60%の大幅増。『911』シリーズも19%増と伸びる。
ポルシェの2017年の世界新車販売台数は、24万6375台と過去最高。前年比は4%増と、7年連続で販売記録を更新している。
ポルシェ販売 パナメーラ6割増も、今後は「難しくなる」
世界販売 1-9月期は19万6562台
ポルシェAGが、2018年度1-9月期に、世界で19万6562台の新車を販売した。
これは、前年同期と比較してプラス6%の成績となる。
さらにドイツにおける販売台数は前年比で13%増加し、ヨーロッパ全体では9%増を記録。
ポルシェにとって最大の単一市場である中国は4%増の5万6254台となった。
モデル別では4ドア・スポーツカーであるパナメーラの伸びがもっとも大きく、前年同時期と比較し60%増加。911も同様に2桁の伸びを見せ、19%増となった。もっとも大きなボリュームを占めているのは依然としてマカンで6万8050台。カイエンは4万9715台だった。
各地域の数値をご紹介しよう。
・ワールドワイド:19万6562台(プラス6%)
・欧州:6万6551台(プラス9%)
・ドイツ:2万4709台(プラス13%)
・北米:4万2626台(プラス3%)
・アジアパシフィック、アフリカ、中東:7万7594台(プラス4%)
・中国:5万6254台(プラス4%)
好調なポルシェであるが、セールス部門の幹部は楽観視していない。その理由は、WLTP施行の影響である。
WLTP施行 「第4四半期は難しくなる」
ポルシェAGのセールスおよびマーケティング担当取締役であるデトレフ・フォン・プラテンは、「この9カ月の間、ドイツとヨーロッパを中心にわれわれの魅力あふれる製品ラインナップが需要にマッチしたことが、この素晴らしい業績に繋がりました」と語っている。
「もちろん北米と中国における販売台数の伸びにも大いに満足しています。第4四半期が難しくなることを示す兆候もありますが、われわれは積極的に問題へ立ち向かうことで克服していくつもりです。新たに導入される排気ガス試験制度のWLTPへの対応もそれらの要因のひとつです」
「ヨーロッパにおいてWLTPは今年の9月1日より施行されています。この制度の切り替えは、新しいモデルの導入に大きな影響を与えています。ポルシェでは、911と718の派生モデルおよび先週のパリモーターショーで欧州デビューを果たしたニューマカンを皮切りに対応していきます」
今年9月末、取締役会は今後ディーゼル搭載車を販売しないことを最終的に決定。同時にポルシェはハイブリッド・モデルに対する需要が高まっていることを体感しているという。一例として、ヨーロッパにおけるパナメーラの新車販売のうち60%以上がプラグイン・ハイブリッドで占められているのだ。
このような状況の中、フォン・プラテンは今年度の販売台数が新記録となった昨年度の24万6375台と同じレベルに達すると見込んでいる。
Posted at 2018/10/16 21:05:45 | |
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ポルシェ | 日記
2018年10月16日
美深町と共に歩む ースバル研究実験センター美深試験場
冬の最低気温がマイナス30度を下回り、最深積雪が150cmを記録する日本でも屈指の豪雪地帯。北海道中川郡美深町仁宇布にスバルのテストコース(スバル研究実験センター美深試験場)がある。美深試験場が開設されたのは1995年。しかし1970年代にはすでにスバルと美深町の歴史は始まっていた。text:ahead編集長・若林葉子[aheadアーカイブスvol.1802017年11月号]
美深町と共に歩むースバル研究実験センター美深試験場
「当時、私たちの先輩は北海道のさまざまな場所を走行して極低温環境での走行性能や暖房性能、多雪地での雪害や走破性などの評価を行っていました。走りに走った末に、雪が多く冷え込みの厳しい、自動車にとって過酷な環境、そして機密と安全が確保しやすい場所として仁宇布にたどり着いた、と聞いています。冬季の試験を比較的長く行えること、季節の移り変わりに従ってさまざまな路面状況を見ることができるのもこの地の良さですね」(スバル研究実験センター、秋山徹氏)
1995年に試験場が開設されるまでの間は一般道を使っての走行試験を繰り返してきたが、吹雪などで走行できない日があったり、路面のコンディションが日々変化するため定量的な試験が難しく、現象結果の解明には苦労が伴ったという。
そんな苦労の日々を支えてくれたのは、ほかでもない仁宇布の人たちだった。試験を進めるためにはまず「クルマ置き場」と「作業場所」が必要だが、地元の牧場主さんが快く納屋を提供してくれたという。そればかりか1980年ごろまでは宿泊や食事までお世話をしてくれたそうだ。
仁宇布の人たちの理解と温かな支援があったからこそ、とスバルの仁宇布の人たちへの感謝の気持ちは深い。試験場の施設管理者は冬季試験期間中ずっと仁宇布に宿泊し、また毎年、仁宇布小中学校の子供たちをテストコースに招く。「試験チームのみんなで手を振って子供たちを迎え入れることが私たちの楽しみにもなっています」
この美深試験場に先日、新たに「高度運転支援技術テストコース」が新設され、見学会が開催された。その日、私たちにジンギスカンや蕎麦、カレーなど温かい昼食をふるまってくれたのも仁宇布の人たちだった。
既存のコースをベースとして、より実際の道路に近づけるべく改修された新設路で、スバルは、ますます高度化していく運転支援技術の開発を加速させていく予定だ。
白樺が紅葉する美しいテストコースを見ながら、1台のクルマが世に出るまでの長い時間と、直接的、間接的にそこに関わる多くの人たちの苦労に思いをはせる特別な一日となった。
▷高速道路の緩やかなカーブ
▷市街地路
▷都市間高速道路のICやSAを想定した「分合流路」
▷1994年頃、美深一般道での寒冷地テスト「スバルドミンゴの走行試験」中の1枚。クルマの前に立つのは若かりし頃の秋山氏。
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text:若林葉子/YokoWakabayashi
1971年大阪生まれ。Car&Motorcycle誌編集長。
OL、フリーランスライター・エディターを経て、2005年よりahead編集部に在籍。2017年1月より現職。2009年からモンゴルラリーに参戦、ナビとして4度、ドライバーとして2度出場し全て完走。2015年のダカールラリーではHINOTEAMSUGAWARA1号車のナビゲーターも務めた。
Posted at 2018/10/16 20:59:11 | |
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富士重工 | 日記
2018年10月16日
スバル・レヴォーグとメルセデスベンツ・CLA。ラゲッジスペースを比べてみる。使い勝手は? 容量は? 後席は?
SUVやミニバンなどに人気が集まる一方で、荷室だけが広いステーションワゴンは昔と比べるとその数は明らかに減っている。しかし、取り回しやすいボディとスバルお得意の4WDによる走破性を武器に「スバル・レヴォーグ」は健闘中だ。また、輸入車も含めるとワゴンの選択肢はまだまだ多い。そこでサイズ的にも似ている「メルセデス・ベンツCLAシューティングブレーク」を比べてみた。
2014年に日本専用モデルとして販売がスタート(現在は海外でも販売)した「スバル・レヴォーグ」。国内の道路事情を念頭に置いているだけあって、全幅1780mmによる取り回しやすさが特徴だ。発売以来、小まめなアップデートが施されており、17年7月には全車速域対応の追従クルーズコントロールが備わったほか、後席の分割機構を4:2:4に変更することで使いやすさを向上。18年4月にはEyeSightの制御が変更され、安全性に磨きが掛けられた。
2012年に国内デビューしたハッチバック「Aクラス」がベースのワゴンが「CLAシューティングブレーク」だ。1910年代に狩猟用として生産されたボディに由来するネーミングの通り、荷室は広く、通常時で341L、後席を倒せば最大で1157Lまで拡大する。パワートレーンは1.6L直4ターボと2.0L直4ターボの2種類を用意。後者には381ps/48.4kgmを誇る高性能版のメルセデスAMG CLA45 4MATIC シューティングブレークもラインナップされている。
まずは、全体のサイズ比較から。
レヴォーグ 2.0GT-Sアイサイト 全長×全幅×全高:4690×1780×1490mm ホイールベース:2650mm ミラーtoミラー:2000mm
レヴォーグ 2.0GT-Sアイサイト
全長×全幅×全高:4690×1780×1490mm
ホイールベース:2650mm
車重:1570kg
エンジン:水平対向4気筒DOHCターボ
最高出力:300ps(221kW)/5600rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/2000-4800rpm
トランスミッション:CVT
駆動方式:4WD
最小回転半径:5.5m
JC08モード燃費:13.2km/ℓ
車両本体価格:361万8000円
CLA 180シューティングブレイクスポーツ 全長×全幅×全高:4670×1780×1435mm ホイールベース:2700mm ミラーtoミラー:2030mm
CLA 180シューティングブレイクスポーツ
全長×全幅×全高:4670×1780×1435mm
ホイールベース:2700mm
車重:1530kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
最高出力:122ps(90kW)/5000rpm
最大トルク:200Nm(20.4kgm)/1250-4000rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:FF
最小回転半径:5.1m
JC08モード燃費:17.4km/ℓ
車両本体価格:451万1000円
ラゲッジスペース比較の前に、インパネと前席・後席も比べてみよう。
レヴォーグ 2.0GT-Sアイサイト 室内長×室内幅×室内高:2005×1490×1205mm
CLA 180シューティングブレイクスポーツ
レヴォーグ 2.0GT-Sアイサイト
荷室は開口部からの段差がなく隅々までフラットで通常時522ℓの容量を効率よく使える。また4対2対4分割可倒式リヤシートを新採用。荷室サイドのスイッチでワンタッチで倒せる。
CLA 180シューティングブレイクスポーツ
低いルーフと流麗なデザインにも関わらず、通常時495ℓの容量を確保する。6対4分割可倒式シートを倒せば最大1354ℓまで増加。自動開閉のパワーテールゲートの装備もうれしい。
第一弾
サイズとかモロモロを考えるとココにボルボもって三つ巴かな?
第二弾
前回の比較はアウトバックとパサートオールトラックだったか
Posted at 2018/10/16 20:48:50 | |
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自動車業界あれこれ | 日記
2018年10月16日
アルピーヌA110/アバルト124GT/フォーカスRS WRC第11戦を巡る 前編
もくじ
ー ラリーを血筋とする3台
ー 初日:素晴らしいオルメ半島
ー オールドスクールなアバルト124GT
ー SS:ティア・プリンス・レースウェイ競馬場
ラリーを血筋とする3台
今から遡ること1973年。その頃の英国はファッションはもみあげの毛が長く、シャツはタイトで、タバコはセクシーなアイテムだった時代。若い世代はモータースポーツに熱狂していた頃だ。日本でも「ジミー坊や」で人気を集めたリトル・ジミー・オズモンドの「リバプールから来た恋人」が全英チャートで1位を獲得し、デビット・ボウイはシングル「火星の生活」をリリースしていた。
同時に、ジャッキー・スチュワートはF1世界選手権で3度めの勝利を上げ、ラリーのトップレースがWRC、世界ラリー選手権として広く知られるようになった時代でもある。
初めてのFIA世界ラリー選手権(WRC)は、非常に美しいアルピーヌ・ルノーA110を生み出す。モンテカルロで開催されたレースでは、トップ10の内、6台がアルピーヌ・ルノーA110だったほど。年間を通じたアルピーヌの独占状態に割って入ったのは、BMW2002Tiiやサーブ96 V4、ダットサン240Zなどがあったけれど、アルピーヌを本当に脅かすことができたのは、フィアット124アバルト・ラリーとフォード・エスコートRS1600の2モデルだけだった。
そして今回は、ヒーロー的な歴史をともに有し、ラリーを血筋とする現代に蘇った3台を集め、ウェールズラリーでも使われるルートを巡ることにした。そのクルマの仕上がりは、現代のラリーシーンも映し出しているようにも思える。近年のWRCは、出場するクルマの注目を高めるためにも、ショー的要素が強い。WRC第11戦、ウェールズラリーはグレートオルメ半島の、付け根にあるスランディドノという町の、閉鎖された一般道で初めて開催される。
陽気で万国旗がたなびく、綿あめが似合うお祭りのような雰囲気になるだろう。WRCのレースカーが全力で走る中、英国の町並みとの対比がユニークなイベントになるに違いない。
今回のルートを見ていこう。グレートオルメ半島から、付け根スランディドノ町へ、そしてティア・プリンス・レースウェイ競馬場に向かう。さらに国道A525号から地方道B5381号へと下り、曲がりくねったB4501号へと足を進める。その後、国道A543へと入り、スノードニア国立公園に向かい、スレートマウンテンを目指す予定だ。
初日:素晴らしいオルメ半島
まずはフォードに乗って、グレートオルメ半島の断崖に伸びる道、マリーン・ドライブを舞台に、わたしが主催するラリーGBの第1ステージを開幕することにした。1973年のWRCでの活躍が伝説のように語られるDNAは、現代にもしっかり受け継がれているけれど、フォードはエスコートではなく、フォーカスへとモデルを変えてしまっている。
スリムなボディラインを描く現代のアルピーヌA110とアバルト124GTの中に、オレンジ色の荒々しく大きなボディが並ぶ。今回のクルマは限定のヘリテイジ・エディション。1973年式のエスコートの隣に2018年式のフォーカスRSが並ぶと、派手にヒーローが変身をするような、マーベル社の漫画のいち場面に見えるかもしれない。
1973年のWRC英国ラウンドでは、アルピーヌを持ってしても、エスコートRS1600に迫ることはできなかった。現代のフォーカスRSヘリテージエディションも、マリーン・ドライブのコーナーを、激しく切り込んでいく。まるで何かを必死に追い詰めるように。アルピーヌA110と0-100km/h加速は4.5秒と同値ながら、実際の様々な地形においては、この3台の中では最も速いクルマだと思う。
フォーカスRSは求めれば、炎のように激しい情熱を持ったクルマに変貌する。マウンチューン社のチューニングとクワイフ社のリミテッド・スリップデフを採用したヘリテージエディションは特に。実際、フォーカスはこの3台の中では、本物のラリーカーのような運転が可能。極めて積極的で、柔軟な4輪駆動によるハンドリングを持ち合わせている。
アルピーヌは、最も歴史的な結びつきが深く感じられる。おそらく数十年のブランドのブランクが、そうさせたのだろう。すでに4時間以上、400kmに渡ってアルピーヌに乗っているが、もっと乗っていたいと思える今回唯一のクルマで、これ以上素晴らしいドライバーズシートは他にないとさえ思える。
そしてグレートオルメ半島を囲む道は、比較的視界が良く、断崖絶壁にまとわるリボンのように、水平線へと続いている。ジェームズ・ボンドの映画のカーチェイスにピッタリのロケーション。でも、この険しい道でもアルピーヌはまったく怯まない。間髪を入れない軽快さを、ロータス以外のクルマで体験したのは初めて。すべてのコーナーを意識的にも操作的にも、路面に落ち着かせようとしても、それらを超越した鍵となる感覚が、A110の車重。まるでECUと自身の操作とが一体となっているかのように、軽量な車体が反応してくれる。
オールドスクールなアバルト124GT
それと対照的な位置にあるのがアバルト124GT。なんというか、直線の走りっぷりはオールドスクール。でも、グレートオルメのダウンヒルのコーナーを抜けて、WRCのラリーカーがドリフトしながらバックファイアをあげるであろうランナバウトを回ってみると、少し考えを改めた。
アルピーヌA110は、先祖はリアエンジンだったけれど、ミドシップで、ボデイはアルミニウム構造。現代的な設計と素材を用いて、1gでも軽くすることに努めている。フォーカスは、歴史的な繋がりを持たせているとはいえ、素晴らしい4輪駆動システムと電子制御技術が、まるで周囲環境に自身を順応させるカメレオンのように、路面に合わせてクルマを変化させる。いかにも現代的なクルマだと思う。
アバルト124GTはといえば、シンプルなモノコックシャシーに170psたらずの1.4ℓターボエンジンをフロントに搭載した、2シーターのマニュアル。屋根はファブリック製のソフトトップではなく、取り外し可能なハードトップに置き換わっている。このルーフが、124GTをスパイダーとは異なるクルマとしている点。素材は極めて現代的なカーボンファイバー製となる。
でも、このシンプルさがアバルトの魅力を生んでいる。手頃な価格の、コンパクトな後輪駆動のコンバーチブルを欲しいと思わないエンスージャストはいないはず。わたしもそのひとり。グレートオルメの付け根の街、スランディドノの込み入った道で、アバルトの魅力が引き立った。
頭の中の天使と悪魔が語りかけてくる。アクセルを煽って、刺激的なエグゾーストノイズを楽しむかどうか。といっても、懐かしく思えるレコードモンツァ・マフラーの美しい響きに、考えは簡単に傾くのだけれど。つまり、マツダ・ロードスターなら可能な、日曜日の朝に穏やかに走る楽しさは、124GTには備わっていない。アバルトのブランドイメージの通りのクルマ。クルマの成り立ちすべてが、アバルトにはうってつけ。ナスカーのサーキットのような、ダートの競馬場にも丁度いい。
SS:ティア・プリンス・レースウェイ競馬場
ティア・プリンス・レースウェイ競馬場は、ウェールズラリーGBのオープニングステージに用いられる場所。ラリーファンには、有名なドライバーが派手なジャンプやドリフトを決める様子を見に行ける絶好の機会となる。イベントもいくつか併催されるはず。
さながら、ウェールズラリーGB版、オリンピックの開幕式といったところで、見逃せないクルマは沢山あっても、退屈なプログラムはないはず。通常は馬具をつけた競走馬たちに占拠されているオーバルコースを、たとえ夕方のお祭り騒ぎがなくても、この3台で思いっきり走らせることは、これまでで一番楽しい仕事だった。
アルピーヌは別世界の完成度で、路面の状況に変わらず、完璧なバランスが充分なトラクションを得ている。高速道路に出る前に、このクルマの軽さには気づくとは思うけれど、トラクションがかかりにくい路面状況において、レスポンスやクルマの挙動に、車重の軽さがどだけ重要なのかを明確に感じることができた。
ステアリングは軽くスロットルレスポンスは正確で、デュアルクラッチATのレスポンスも鋭いから、まさにA110のイメージ通りのセッティング。スターバックスのドライブスルーから砂地に続く道まで、ドライビングを楽しめるに違いない。
それと対照的なのがアバルト124GT。他の2台とは異なる、やや癖のあるパワーデリバリーで、一般路面とは異なるドリフトしやすい路面においては、より活発な印象を受ける。そしてフォーカスRSは、他にはないほど力強く、安定している。2速のままスロットルペダルを踏んでおけば、コーナーでドリフト状態を保っておける。洗練されたゴリラというべきマッスルカーのようでもあり、圧倒的なヒーローのように振舞える。
ブラッシングされ出走待ちしている駿馬たちには悪いが、ティア・プリンス・レースウェイ競馬場のナイター照明に埃を沢山浴びせて、われわれは後にした。
後編へと続く。
アルピーヌA110/アバルト124GT/フォーカスRS WRC第11戦を巡る 後編
もくじ
ー 2日目:曲がりくねった地方道4501号
ー SS:スレート・マウンテン
ー グランドクロスが生んだアルピーヌA110
ー 番外編:1973年を振り返る
ー 3台のスペック
2日目:曲がりくねった地方道4501号
フォーカスRSの後に続いて自然保護区に延びる4501号線を走る。今年のラリーGBのブレニング・アルウェン・ステージに混ざるべく、アルピーヌA110の低くスラントしたノーズで、高く切れ上がったフォードのテールを追い回す。決して忘れられない光景だった。
アルピーヌの最高出力は、どちらかというと控えめな252psでも、想像以上に速く感じられる。かなり手を焼くような険しい道でも、本気で走るマウンチューン仕様のフォーカスRSヘリテイジ・エディションにしっかりと着いて走ることができる。
ご存知の通り、フォード・フォーカスRSヘリテイジ・エディションは超人的なパフォーマンスを備えており、ターボが生むパワーも底知れない。しかし、フォーカスとは対照的な、路面のきめ細やかなフィードバックが得られるアルピーヌA110は、1.8ℓ4気筒ターボの生み出すパワーを、自信を持って完璧に引き出すことができる。
アバルト124GTも、ウェールズの道を、やや誇張しすぎながらもクセになるエグゾーストノートを田園地帯に響かせつつ、快調に飛ばす。ただし、フットレストは垂直すぎるし、180cmを超える身長のドライバーは、背中を折り曲げなければならないほどキャビンはタイトで、例えハードトップを外したとしても、洗練性に関しては疑問符を付けなければならない。正直、価格の妥当性も疑問ではあるけれど、惹かれるのを止めることも難しい。
アバルト124GTはこの3台の中では最も遅く、仕上がりも荒いが、クルマのパフォーマンスとしては英国の郊外の道にパーフェクト。それに、フォーカスの硬すぎる乗り心地は、アバルトの容赦ないエグゾーストノートと同じくらい、ドライバーに疲労感を与えることも事実。何でもやりすぎは禁物。正直いって、人生の楽しみとしてのドライビングとは、やや一線を画すものだとは思う。
SS:スレート・マウンテン
スポンサーの影響力で、ウェールズラリーGBに生まれる新しいスタイル。現代のF1でセレブリティの存在が見過ごされがちなように、ラリーにはとても情熱的で感情的な側面もある。
我々の目前にある景色は、ウェールズの丘陵地帯に8000平方kmにも広がる鉱山と、そこに置かれたクルマ。スレート・マウンテンのランドスケープは、このラリーというスポーツの持つ魂を強く明示している。埃で目が霞んでフォーカスを見失う前に触れておくと、ここはWRCで、3.2km程のスペシャルステージとして組み入れられた場所。山頂からは、タイトなヘアピンが続くワインディングを見下ろすことができる。道端には槍のように尖った岩が剥き出しで、路面は黒いスレートで覆われている。我々のラリーのフィナーレはここに決めた。
コースに降り立ち、危険なほどきついコーナーを抜ける。一瞬逆方向にステアリングを切ってドリフト状態に持ち込む、スカンジナビアンフリックを何度か決め、往年のアリ・バタネンの走りを再現してみる。このコースを激しく攻め立てたといいたいところだけれど、今回の3台は本当のラリーカーではない。普通のタイヤを履き、充分なロードクリアランスもなく、板金の必要がない状態でメーカーに返さなければならない。現実が気持ちを抑える。
極めて高速で複雑なコースをやや抑えて走ったけれど、これまでの時間を振り返る。今回の3台の素晴らしい特徴、個性をラリーシーンが生み出したことは間違いない。
アバルト124GTはシンプルで積極的なドライビングを受け入れつつ、どこか気まぐれさも残る。アバルトにはFIAのR-GTクラスに該当するラリーバージョンも存在はするのだが、実際に壮大なラリーコースでドライブしてみても、古い英国製のロードスターやクーペほど、ラリー車としての雰囲気が強くない。ロータスエランやMG Bといった、人生を豊かにさえしてくれる、スポーツ・ロードスターという英国の自動車文化は、愛おしいものだ。
対象的にフォーカスは、ハイパフォーマンスなホットハッチとしての、偉大な道標としての完成度がある。荒々しくも楽しさに溢れ、熱い走りと利便性を兼ね備えている。確かに祖先となるエスコートとはメカニカル的に異なる成り立ちだとはいえ、他の2台と同様に、21世紀のWRCとの結びつきは確かなものだと思う。
グランドクロスが生んだアルピーヌA110
そしてアルピーヌ。価格は確かに他の2台とはかなりの差があるが、その価値は間違いないもの。フォードもアバルトも、仕上がりは秀逸ではある。それでもなお、高速道路や海岸線の道、都市部や競馬場のダートコース、郊外の道にスレートマウンテンのラリーステージなど、すべての走りは、クルマの成り立ちを骨格に至るまで証明していた。
ラリーステージから一般道へと戻れば、まるで装備を外したクラブレーサーのように、普通の運転さえいとわない。この洗煉性と使い勝手の良さは、ポルシェ718ケイマンの完成度に迫ると思う。もしオーナーになったら、小さく使いにくそうなカップホルダーを変更して、シートポジションを低めにセットし直すだけで、満足できるはず。
カップホルダーは別として、アルピーヌA110の世界観は完成している。優れた開発者とアイデア、技術、開発予算、受け入れられる市場とブランド力。すべてが一体となって、このクルマが生まれている。ここには一切、手のはいる余地が無いとさえ思う。わたしが心配なのは、このグランドクロスのような一致は、もう二度と起き得ないのではないかということ。
きっと杞憂に過ぎないとは思う。数年後、次のモデルでも、こうして集まることができると信じたい。人々が豊かな大地から生み出した、素晴らしい自動車。きっとこの巡り合わせは今回限りではないはず。特にアルピーヌA110のようなクルマとの出会いは。
番外編:1973年を振り返る
アルパイン・ルノーは1970年と1971年の国際ラリー選手権ですでに名を馳せていた。1973年に名称が世界ラリー選手権、通称WRCへと変わると、さらに独占状態が強くなる。
A110をドライブした、ジャン・クロード・アンドリュー(フランス)とオベ・アンダーソン(スウェーデン)、ジーン・ピア・ニコラス(フランス)が、開幕ランドのモンテカルロで、表彰台を独占したのだ。唯一、フォード・エスコートを駆ったハンヌ・ミッコラだけが4番手につけ、5番手にも入賞していたA110に割って入る形となった。
ラリーは、モナコを最終目的地とし、モンテカルロの険しい山岳地帯や南フランスの様々な都市で、スペシャル・ステージが開催された。その時、フィアット・アバルト124ラリーは、7位へ食い込むのがやっとだった。
今回は、1位から3位までを独占したアルピーヌと、同時期に戦ったフィアット、フォードに敬意を評して、その頃の子孫ともいえる3台を集めた。他に1973年にラリーへ参戦していたクルマの子孫として、現代のクルマを見渡せば、ポルシェ911やBMW M2、日産フェアレディZなどがあるといえる。加えて、トヨタ・オーリス、プジョー508、シトロエンDSなども含まれるだろうか。なかなかバリエーション豊かだ。
3台のスペック
アバルト124GTのスペック
■価格 3万3625ポンド(497万円)
■全長×全幅×全高 4060×1740×1240mm
■最高速度 230km/h
■0-100km/h加速 6.8秒
■燃費 15.6km/ℓ
■CO2排出量 148g/km
■乾燥重量 1060kg
■パワートレイン 直列4気筒1368ccターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 170ps/5500rpm
■最大トルク 25.3kg-m/2500rpm
■ギアボックス 6速マニュアル
アルピーヌA110プルミエールエディションのスペック
■価格 5万1805 ポンド(766万円)
■全長×全幅×全高 4205×1800×1250mm
■最高速度 249km/h(リミッター)
■0-100km/h加速 4.5秒
■燃費 16.3km/ℓ
■CO2排出量 138g/km
■乾燥重量 1103kg
■パワートレイン 直列4気筒1798ccターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 252ps/6000rpm
■最大トルク 32.9kg-m/2000rpm
■ギアボックス 7速デュアルクラッチ・オートマティック
フォード・フォーカスRSヘリテイジ・エディションのスペック
■価格 3万9895 ポンド(590万円)
■全長×全幅×全高 4390×2010(ミラー含む)×1472mm
■最高速度 265km/h
■0-100km/h加速 4.5秒
■燃費 12.9km/ℓ
■CO2排出量 175g/km
■乾燥重量 1599kg
■パワートレイン 直列4気筒2261ccターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 375ps/6000rpm
■最大トルク 51.8kg-m/3200rpm
■ギアボックス 6速マニュアル
Posted at 2018/10/16 20:42:37 | |
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