2020年03月26日
「キュートなパッソが過激に大変身!」ロータリーの老舗が手がけたレシプロ過給機チューンド
ブリッツ製bB用コンプレッサーキットを流用。速さだけでなく燃費アップにも効果あり!
Racy=レーシーの名に恥じない走りを実現。
フジタエンジニアリングが手がけたパッソは、ダイハツ製1.3L直4DOHCのK3-VEを搭載するスポーティグレード“レーシー”がベース。ロードスターのボルトオンターボ仕様に乗るオーナーが通勤&街乗り用として手に入れたものの、あまりの遅さにチューニングを決意したそうだ。
そこで、速さだけでなく街乗りでも扱いやすいエンジン特性を考えてスーパーチャージャー仕様とされることに。ただ、どこのメーカーにもパッソ用キットのラインナップがないため、ブリッツがかつて販売していたbB用を流用している。
「もちろん、そのままでは装着できませんが、アイドラープーリーを替えてスロットル径に合わせたインテークパイプを作ってあげればOK。日帰りでも装着できるレベルですね」と藤田代表。
同じ1.3Lでも、トヨタのNZ系よりひと回りコンパクトなK3-VE型エンジン。インタークーラーレス仕様のため、パイピングの取り回しが大きく変更されることもなく、見た目にはスーパーチャージャーが装着されてるとはわからない。また、燃料系はノーマルのまま、キット付属のサブコンで燃調が制御される。
スーパーチャージャー本体はエンジン後方にセットされるため、エンジンルーム側からはプーリーがチラッと見えるだけ。最大ブースト圧は0.3キロに設定される。藤田代表いわく、「パワーは測ってないですけど、ノーマルの92psから30%くらい向上してると思うので120ps前後は出てると思いますよ」とのこと。
足回りにはHKSハイパーマックスSスタイルを装着。コーナリング中のロールを抑え、適度なローフォルムを実現しながら、街乗りでの快適性もしっかり確保されている。また、ブレーキもフロントにプロジェクトμ4ポットキャリパー+スリットローターで強化済み。
ホイールはアドバンRGIIの15インチ。これに195/50サイズのポテンザRE-11が組み合わされる。ノーマルの14インチ(175/65)から1インチアップに抑えることで軽快なフットワークを実現。ルックスよりも走りを重視したチョイスだ。
インテリアではステアリングホイールをモモに、シートをレカロに交換。機能性を高めるだけでなく、スポーティな雰囲気も演出する。
ブリッツ製スーパーチャージャーはプーリーにクラッチを内蔵。ステアリングコラム左側には、スーパーチャージャーのON/OFFと作動ポイントを変更できるダイヤル式スイッチを装備。
エクステリアはモデリスタ製フロントリップスポイラーが装着される以外、基本的にノーマル。といっても、レーシーはもともと専用エアロが装着されているから、素のグレードに比べれば、見た目ははるかにスポーティだ。ちなみに、マフラーは純正オプション品が装着される。
ボルトオンスーパーチャージャー仕様とされたパッソは、エアコンON時でも登り坂をグイグイ登るようになって、同じ加速をするにもアクセル開度が小さくて済むから燃費も向上。パワフルな走りと経済性を両立する、まさに一石二鳥なチューニングなのだ。
TEXT:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)/PHOTO:小林克好(Katsuyoshi KOBAYASHI)
●取材協力:フジタエンジニアリング 大阪府堺市東区八下町1丁82-1 ☎072-258-1313
Posted at 2020/03/26 22:26:03 | |
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自動車業界あれこれ | 日記
2020年03月26日
最強GT-Rに土をつけたモデルにWRC最強マシンも! レースで勝つために生まれた日産以外の国産車8選+1
トヨタはラリーを制するために耐久性や軽量化を極めた
市販車ベースのマシンで競い合うレースで勝つために、レギュレーションの範囲内でより有利に戦えるようモディファイされた市販車=ホモロゲーションモデルをピックアップする企画の第2弾。今度は日産車以外のホモロゲーションモデルにスポットを当ててみよう。
1)トヨタ・セリカGT‐FOUR RC(ST185)
トヨタのホモロゲーションモデルといえば、セリカGT‐FOUR。1991年に登場した、セリカGT-FOUR RC(ST185)は、世界限定5000台(日本国内は1800台)。ラリーで戦うことを考えて、耐久性のあるメタルタービンと水冷式インタークーラーなどを装備した。
WRCでは、1992年から3年連続でドライバーズタイトルを獲得し、1993年、1994年にはマニュファクチャラーズタイトルも連覇。WRCでは通算16勝を記録し、グループA時代のトヨタのラリーカーで、もっとも活躍した名車だった。車名の「RC」とは、「ラリー・コンペティション」の略。
2)トヨタ・セリカGT-FOUR WRC仕様(ST205)
1993年にデビューした6代目セリカは、GT-FOURとともに特別限定車WRC仕様も発表。ベースのGT-FOURにも、専用のアルミボンネットや255馬力にチューニングされた(従来比30馬力アップ)3SGターボ(ターボとインタークーラーが容量アップ)が搭載され、専用ホイール、専用ブレーキ、専用サスペンションが与えられていた。
TTEと共同開発された、グループAホモロゲーションベース車の「WRC仕様」は、専用大型スポイラー、フードエアスクープ、インタークーラースプレー、ラリーカーのベースボディカラー、スーパーホワイトIIを設定。世界限定2500台、そのうち国内が2100台で販売された。
3)トヨタGRヤリス
今年登場したばかりのGRヤリスも、WRCを「勝ち抜く」ために生まれたホモロゲーションモデル。TNGAの思想に基づくスポーツ4WDプラットフォームを採用し、軽量コンパクトでパワフルな1.6リッター直列3気筒直噴インタークーラー付きターボ、G16E-GTS型エンジンを搭載(200kW=272馬力、370N・m=37.7kgf・m)。
インタークーラースプレーがついているのもひとつの目玉で、ルーフはフォージドカーボン、ボンネットとドアパネルはアルミ製。ある意味、最新最強のホモロゲーションモデルといえる存在だ。
国産車で最強をほしいままにしていたGT-Rの上を行く存在も登場
4)三菱ギャランVR-4
ギャランVR-4は、WRCがグループBからグループAで戦うことになった1987年にデビュー。ターゲットはもちろんWRCで、新開発の4G63ターボエンジン(当時は「サイクロン」と呼ばれていた)を搭載。ランエボI~IXまでに搭載された、三菱の名機4G63ターボを最初に積んだのがこのギャランVR-4だった。
ビスカスカップリング式センターデフ付きのフルタイム4WDで、4WSやABSなど、当時としてはハイテク満載の一台だった。競技ユーザー向けのVR-4R(限定100台)や、さらに40kgの軽量化を図ったVR-4 RSなども用意された。
後期型は240馬力にまでチューニングされ、トルクバンドが広く、4WDということもあり加速性能は抜群。直線も速かったが、ブレーキもプアで、アンダーステアも強かった……。WRCでは1989年の1000湖ラリーとRACラリーで優勝している。そして特筆できるのは、1991年の筑波9時間耐久で、ギャランVR-4が、R32GT-Rを下して優勝していること! N1耐久で29戦28勝しているGT-Rに、唯一の黒星をつけたのが、じつはギャランVR-4だった。
5)三菱ランサーエボリューションI
ギャランVR-4でWRCに参戦していた三菱ワークスが、WRCで勝つにはもっとコンパクトなボディが必要だと気付き、ランサーGSR1800に、ギャランVR-4のエンジンとドライブトレインをそっくり移植したホモロゲーションモデルが、初代ランエボ=ランサーエボリューションI。当初ホモロゲをクリアするために、限定2500台で販売されたが、3日で完売となり、さらに2500台が追加された。
モータースーツベース車のRSのパワーウエイトレシオは、4.68kg/馬力と、国産車最強最速を誇ったR32GT-Rの上を行く存在だった。しかし、フロントヘビーでタイヤのキャパシティが小さく、ブレーキ容量も不足だったので、サーキットを得意とするようなクルマではなかった。WRCでの最高位は2位だが、ここからランエボ伝説がスタートした。
6)三菱GTO
GTO=「Gran Turismo Omologato」(伊)の略で、「ホモロゲートミートバージョン」という意味を持つ。その割にベースはセダンのディアマンテで、お世辞にもスポーツカーとしての素姓がいいとはいえない……。しかし、けっこうな意欲作で、エンジンはトルクフルなV6ターボの6G27型。
アルミ製4ポット異径対向ピストンブレーキキャリパーやドイツ・ゲトラグ社製の5速MT(中期型から6速化)を搭載している。また、高張力鋼製のドライブシャフトといった装備は、国産車ではGTOが初めて採用している。
さらに、1994年のマイナーチェンジでは、軽量モデルの「MR」を追加。ブレーキ冷却導風板をMRに標準化し、レース用のAPロッキード製6ポットブレーキのオプションに設定! リヤハイブリッドLSDもオプションに。4WDのハイパワーモデルで、動力性能は抜群だったし、空力面や重心高では、R32GT-Rよりも有利だった。N1耐久レースでは、クラス1で、GT-Rへの唯一の対抗馬として気を吐いていたが、ポールポジションは取れても未勝利で終わってしまった(最高位は2位)。
7)マツダ・ファミリア 4WD DOHCターボ GT-X
1985年に登場したファミリア 4WD DOHCターボ GT-Xは、意外に衝撃的な一台だった。このファミリア 4WD DOHCターボ GT-Xは、なんといっても、国産初のフルタイム4WD。いまでは珍しくない、フルタイム4WDだが、この6代目ファミリアは、フルタイム4WD+DOHC+ターボという、当時の“全部乗せ”仕様のクルマ。1090kgの車体に、140馬力のターボエンジン+4WDという組み合わせで、サーキットでもゼロヨンでも、一時、国産最速といわれたほど!
WRCには「マツダ 323 4WD」という車名でエントリーして、1987年、1989年のスウェディッシュ ラリーと、1989年のニュージーランド ラリーで優勝。車高を30ミリほど調整できる、ハイトコントロールサスペンションというオマケもついていた。
8)スバル・レガシィRS typeRA
スバルのホモロゲーションモデルといえば、レガシィRS typeRA。STI最初の限定車で、吸気ポート段差修正(手作業)や、クランク、強化コンロッド、強化メタルなどを採用。ギヤ比が15:1から13:1にクイック化するバリアブルレシオのパワステやスポーツサスペンション、駆動系のバランス取りなどが施された。当初は月産50台。
「RA」とは 、スバルが初代レガシィで挑戦した10万km世界速度記録の「記録挑戦=RECORD ATTEMPT 」の意味が込められている。WRCでは、1993年のニュージーランド・ラリーで優勝。そのあと、WRCのステージはインプレッサに譲るわけだが、インプレッサWRXは、シリーズを通しWRCを制するためのホモロゲーションモデルそのもので、ライバルの三菱ランエボシリーズと長きにわたって激闘を繰り広げることになる。
・番外編 ホンダ
二輪にはホモロゲーションモデルがたくさんあるホンダだが、四輪ではレースに勝つための特別な仕様というのはほとんどない。各種タイプRシリーズやS2000、S660など、かなり本格的なスポーツカーだが、特定のレースカテゴリーにターゲットを絞ったクルマとは言い難い。
強いて言えば、2005年に出てきた「NSX-R GT」がそれにあたるが、生産台数がたったの5台。市販されたのが1台だけで、価格は破格の5000万円。SUPER GTにエントリーする為の割り切ったホモロゲーションモデルで、市販したとは言い難く、少なくとも量産車ではない。ちょんまげといわれた「リヤハッチガーニッシュ」が一番の特徴だった。
Posted at 2020/03/26 22:22:37 | |
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自動車業界あれこれ | 日記
2020年03月26日
「超絶過走行なBL5レガシィをバラす!」15年で走行距離41万キロという衝撃
走行41万キロのBL5、エンジン内部はどうなっているのだろうか・・・
定期メンテナンスの重要性を再確認させられる結果!
パーツ精度や設計技術の進歩により国産車の耐用年数はどんどん伸びて、走行距離10万km超えのクルマなんて今や珍しい存在では無くなっているとはいうものの、ここで紹介するBL5型レガシィの走行距離を聞いて驚かない人はいないはず。オドメーターに表示されているのは、なんと“409818(取材時)”。約41万キロ!? もはやタクシーレベル、異常である。
恐らく世界最多走行距離のBL5レガシィGTは、お馴染みのカーステーションマルシェにて発見したもの。聞けば、オーナーは新潟県にお住まいの方で、2005年にディーラーの試乗車だったものを中古車として入手。購入時の走行距離は1800km。以降15年間で40万キロ超えを達成した。ちなみに、現在もメインカーとして、毎日の通勤や趣味のドライブに使用されているという。
今回入庫した目的は、今後も快調に乗り続けるためのオーバーホール依頼。メインとなる作業はエンジンで、完全分解の後、ブロックを再使用してEJ25クランク、HKS製鍛造ピストン、VAB純正コンロッドを組み込んだ2.2L化を実施することになった。
やはり気になるのは、約41万kmを走り切ったエンジンの中身。完全分解された各パーツをチェックしてみると、これまた驚くほどにダメージが無かったことが判明した。
ピストントップはカーボンの堆積はあったものの、リングなどには異常なし。それでも多少は首振りをしていたようでスカート部分に筋状のアタリは入っている。しかしこの程度は通常の範囲と、作業を担当した栗原メカニックは解説してくれた。
クランクやコンロッドはメタルと呼ばれるベアリング類へのダメージが心配されたが、走行距離からすれば上々のコンディション。エンジンの前後方向の動きを抑えるスラストメタルには若干接触痕が認められたが、これはEJ20エンジンでは特有の症状だという。
ヘッドの吸排気バルブもご覧の通りで、カーボンの蓄積はあったものの、ステムの曲がりもなく洗浄すれば再使用できるコンディション。AT仕様を考慮して、新エンジンではGRB型WRX STIのノーマルカムを組み込んで、トルク重視のセッティングを目指していくそうだ。
今回最も消耗が認められたのがタービンで、経年変化によりコンプレッサーブレードのハウジングとのクリアランスが若干広がっていた。もちろんトラブルというほどではないが、この状態では充填効率が低下し、ブーストの立ち上がりや最大ブーストに影響を及ぼす可能性もある。オーバーホールも可能だが、今回はコンプレッサー側容量の大きいS402タービンを流用することになった。
足回りやボディのチェックも行われたが、こちらはさすがに新車からそのままというわけではない。新潟県のオーナーということで、やはり融雪剤によるダメージは大きく、5年前にはリヤメンバーとスタビリンク、ブッシュ類を交換。エンジンマウントも25万km時にGDB用のSTI製に交換済み。今回はサビでボロボロになっていたブレーキローターのバックプレートを交換するだけでOKとなった。
さすがのマルシェも、40万キロオーバーのEJ20エンジンを開けるのは初めてということで、その状態は興味津々であったが、いざ蓋を開けてみると意外なほどにダメージはなかった。
その理由は、エンジンオイル交換(10W-60を1万キロ毎にかかさず交換)をはじめとする定期メンテナンスを、オーナーがしっかりと行っていた結果と言えるだろう。これからも大切に乗り続けて、ぜひとも100万キロを目指して頂きたい!
PHOTO&REPORT:川崎英俊
●取材協力:カーステーション マルシェ 群馬県前橋市亀里町1224 TEL:0247-265-6789
もう46万キロでしたっけね〜先週拝見した時には
オイル交換88回、44万キロ走破! 全日本ラリー初参戦のスバル女子のインプレッサWRX

Posted at 2020/03/26 22:15:58 | |
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自動車業界あれこれ | 日記
2020年03月26日
【塗り絵の時間】アストン マーティン DB5の塗り絵素材を公開 新型コロナウイルス感染拡大を受けて
外に出られなくても、できること
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、外出を制限される人が増えてきた。
英国の高級スポーツカーメーカーのアストン マーティンが、自由に行動ができない時間を過ごすファンのために、こんなプレゼントをしてくれた。
同社の公式SNSに投稿されたのはアストン マーティンの塗り絵の素材。
「時間を持て余している? お任せください。DB5をあなた好みの色にしようよ」
というメッセージとともに、DB5のサイドビューの輪郭が描かれた画像データが掲載されたのだ。
好みのカラーリングにするも良し、映画007シリーズの劇中仕様にするも良し。興味を持った人は、英アストン マーティンのSNSを確認してみよう。
Posted at 2020/03/26 22:11:27 | |
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2020年03月26日
サファリ・ラリーとヒストリック・ポルシェのエキスパート、リチャード・タットヒルという男【動画】
イーストアフリカン・サファリ・ラリーに魅せられて
2003年にスタートした「イーストアフリカン・サファリ・ラリー・クラシック(East African Safari Rally Classic)」には、あの特徴的な乾いたボクサーサウンドが響き渡っている。そんな空冷ポルシェを手がけているのが、今回紹介する「タットヒル・ポルシェ(Tuthill Porsche)」だ。
寒い冬の朝、英国・オックスフォードシャーの落ち着いた村、ワーディントン。巨大なコンテナトレーラーが周囲の生垣を揺らしながら、ゆっくりと狭いアクセス路を通過していく。数分後には別のトレーラーが到着。トレーラーのシルバーのコンテナには、紛れもないあの特徴的な911のイラストが描かれていた。その下には「Tuthill Porsche」のロゴがある。
ヒストリック・ポルシェ・ファン、特にラリー好きにとって「タットヒル」の名前は義務教育レベルの常識と言えるかもしれない。
タットヒルは1970年代後半から356と911を使い、小規模なプライベーターながらも注目すべき活動を続けていた。そして、WRCでポルシェのワークスチームとして参戦していたプロドライブ(Prodrive)と、911 SC RSのボディシェル製作の契約を結ぶ。その後、40年間の月日を経てタットヒルは経験を蓄積、今やラリー用空冷ポルシェの第一人者と呼ばれるまでに成長している。
アフリカから帰ってきた6つの巨大コンテナ
まだ凍結しているバックヤードに降ろされた6つのコンテナ。これらは、WRCに匹敵する規模と盛り上がりを見せているイーストアフリカン・サファリ・ラリー・クラシックから帰ってきたラリーカーや資材たちだ。2019年に行われた同イベントにおいて勝利し、タットヒル・ポルシェは通算4回目のチャンピオントロフィーを手にした。
12mコンテナはクリスマス前にアフリカから輸送されたものだ。ドアを開けると、そこで何が行われてきたかが分かるだろう。スペアパーツ、タイヤ、ホイール・・・アフリカの荒地を9日間も走破してきた名残が、うず高く積み上げられている。
赤いケニアの大地を駆け抜けた結果、泥にまみれテープで応急処置を施されたポルシェの姿もあった。ボロボロに壊れ、一部のパーツは取り外されてもうそこにはない。しかしコンテナの暗闇からも、アフリカの大地から生還した輝きが見て取れる。
2003年以降2年おきにヒストリックイベントとして開催
イーストアフリカン・サファリ・ラリーは、いわゆる「サファリ・ラリー」として、2002年までは世界ラリー選手権(WRC)の一戦として開催されてきた。そして2003年以降はヒストリックイベントとして行われている。
エントリーできるのは、1986年以前に製造されたラリーカーをドライブするプライベーターのみ。ケニアとタンザニアにまたがる荒野を走るルートは数千kmを超え、極端な暑さと湿気の中ドライバーとコ・ドライバーは非常に長い距離を走行。物理的にもロジスティクスの面でも非常にタフなイベントとして知られている。それでもリチャード・タットヒルと仲間たちは、アフリカの魅力に取り憑かれてしまった。
ちなみに2002年を最後にWRC開催がなかったサファリだが、今年2020年は18年ぶりにWRCカレンダーに復帰を果たしている。
10台のポルシェをラリーに送り込むタットヒル
最初のコンテナを開けたリチャードは、ほぼ2ヵ月間日光が当たっていなかった貨物を検査する。
今回のラリーにタットヒルは10台のポルシェを送り込んでおり、そのうち8台が英国に戻ってきた。タットヒルのサファリにおける主力車種は911 Gシリーズで、製造から半世紀近くを経ているラリーカーも多い。これらのモデルには3.0リッター自然吸気フラット6に、915型マニュアルトランスミッションが組み合わされている。
彼らが運用するポルシェはまさにヒストリックカーそのものであり、一般的なオーナーなら週末のドライブにすら気を遣う存在だろう。しかし、タットヒルはそれをアフリカの大地で走り倒しているのだ。
チームは10台のラリーカーに加えて、リチャードをはじめとするマネージメントスタッフ、エンジニア、ドクター、フィジオスタッフ、1台あたり3人のメカニックという総勢30人の大所帯。40~50名のスタッフが、途中1日だけ設けられたレストデイを含む10日間、ケニアとタンザニアを移動する。ヨーロッパで行われるラリーだとしても大変な作業だが、これを遠く離れた別大陸で10台のラリーカーを動かすのだから、ロジスティクスの苦労は気が遠くなるレベルである。
リチャード・タットヒルは、チームの状況を以下のように説明してくれた。
「私が一元管理はしていますが、個別の10チームとして見ています。1台のラリーカーごとに1基のコンテナがあてがわれていて、タイヤとホイール以外のすべてのものが保管されています。収められているのはジャッキ、スタンド、ジェリー缶、ギヤボックスなど、ラリーに必要なあらゆるものです。スペアパーツの総額は1台あたり10万ユーロくらいですね」
現地でリビルドを繰り返しパーツを供給
いわゆる母船とも言える、タットヒル・ポルシェのコンテナもある。そこにはスペアのスペアが確保されており、毎晩それぞれの車両担当のメカニックが訪れて不足分を受け取るようになっている。
「例えば『3組のブレーキパッド、右フロント用サスペンションストラット!』と言った具合ですね。ステージの走行で壊れた足まわりは、ダンパー専門のメカニックによって一晩でリビルドされます。我々は要求や状況に応じて、ラリー中は常に壊れたパーツもリビルドしています」
ただし、このシステムでさえ、需要に追いつかない場合がある。
「今回のイベントではメインコントロールアームに関して、自転車操業になってしまいました。4日目までに右フロントに割り当てられた分の60%を使用してしまったのです。誰もが右フロントをヒットしまくったんですよ(笑)。あちこちから問い合わせが殺到という感じですね。ある年はギヤボックスのスペアを使い果たし、ボロボロに壊れたギヤボックスをリビルドしたこともありました」
静かに語るリチャードは、タットヒル・ポルシェのCEOとしてラリーの現場に落ち着いたエネルギーを吹き込む存在だ。しかし、アフリカの荒れた大地で915型トランスミッションをリビルドすることは可能なのだろうか。
「やるしかないんですよ(笑)。2017年のイベントで、スティグ・ブロンクビストはエンジントラブルを抱えていました。エンジントラブルが大好物なんてやつはこの世に存在しませんが、メカニックは13分でエンジンとギヤボックスを交換しました。この時は新しいエンジンを運んでくるために、6時間も夜通しドライブしましたからね」
リチャードが午前3時か4時にサービスパークに到着した際、古いエンジンとギヤボックスは地面に置かれ、今か今かと交換を待っていたという。
理想的なラリーカーのレイアウトを持つポルシェ 911
ラリーフィールドで30年以上も泥だらけになってきたリチャードにとって、ヒストリック911ほど夢中になれる存在はないという。彼が説明するように、ラリーに適したこれ以上の車両はそうそうない。
「リヤエンジンレイアウトのためトラクションが強力です。3.0リッターフラット6はトルクも太い。理想的なコーナリングを実現する独立懸架サスペンションと剛性の高いモノコックボディシェル。これが1973年製というのだから驚きです」
「ここには5基のエンジンがありますが、すべてがオリジナルクランク、オリジナルケース、オリジナルヘッドを備えています。ラリーカーを作る際、ポルシェが行ってきたことを無視すると大きな間違いとなります。彼らは製品として送り出した段階で、すべてピッタリと完璧に誂えているのです」
肌寒い英国の早朝、ラリーを走りきったポルシェたちの状態を見れば、基本の設計思想に現在の専門知識を加えたことでラリーカーが成立していることを理解できるだろう。
「クルマがアフリカから壊れて戻ってくるという誤解があります。もちろんドライバーが何かにヒットして、サービスに戻ってくることはあります。誰とは言いませんが、あるドライバーはアフリカであらゆる物にぶつかってきたことがあります(笑)。でも適切にドライブすればラリーに勝つことができるだけでなく、新品のような状態でフィニッシュもできるんです」
得難い魅力を持つアフリカの大地とはいえ・・・
ここに置かれたポルシェの多くは、次の冒険に向かう前にエンジンがリビルドされることはない。それこそがタットヒルがいかに現地で正確に整備し、ポルシェの基本設計が素晴らしいかを証明していると言えるかもしれない。それでもなお、ケニアで行われるサービスのほとんどが夜間であることを考えると、正しい作業が行なわれていることに驚きを隠せない。
「ナイトサービスに備えていますからね。大光量のライトもありますし、メカニックもヘッドトーチを頭に付けて作業しています。でも、時々、誰が何をやっているのか分からなくなる時があります(笑)」
「ラリーはひとりの人間にかかる比重が非常に高いスポーツです。このイベントのために3~6週間を費やしフィニッシュすると、これ以上の感動はあり得ないと分かります。そして、感謝の気持ちが溢れるのです。我々のチームは規格外の連中ばかりです、そしてその雰囲気は最高です」
最後にリチャードは、こう付け加えた。
「イーストアフリカン・サファリ・ラリー・クラシックが、2年ごとに開催されるのはいいことです。今、チームメンバーに『ケニアに戻りたいか?』と尋ねたら誰も答えられないでしょう(笑)。『もう一度、あの場所に行きたい』と思うには、やっぱり少なくとも半年から1年は必要なんです」
Posted at 2020/03/26 21:36:32 | |
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