2020年06月08日
最初はシステムの名前じゃなく車名だった! 「ラリー=4WD」の常識を作ったアウディの「クワトロ」とは
車名の「Quattro」から現在の「quattro」に変わるまで
アウディといえばフルタイム4WDの「quattro(クワトロ)」システムと刷り込まれているクルマ好きは多いだろう。実際アウディという現在の社名が復活したのが1965年で、それまでは「Auto Union(アウトウニオン)」というグループに属した後、ダイムラー・ベンツやフォルクスワーゲンの傘下に入るなどしていた。そうした後、1980年に同社として最初の「Quattro」が誕生する。
この「Quattro」、当初アタマの「Q」が大文字だったのはクワトロというのがシステム名ではなく車種名だったから。そのアウディ・クワトロ(車種)に搭載された2.2L 直列5気筒ターボエンジンとフルタイム4WDというパワートレインは、当時としては斬新すぎるもので、1981年のWRCに参戦するやいなや、それまでの2WDモデルを圧倒するパフォーマンスを見せた。
この年にはミシェル・ムートン選手が女性ドライバーとしてWRCで初優勝を遂げるが、その愛機もアウディ・クワトロだった。
アウディのWRC活動は1986年に終了するが、ラリー=4WDという図式を生み出したのが、アウディ・クワトロであるという事実は揺るがない。まさしくモータースポーツ史に、その存在を刻む名車であった。
時間が前後するが、1983年にはアウディのモータースポーツやハイパフォーマンスモデルの生産を担当する子会社として「quattro Gmbh」が誕生している。「quattro」という名前は当初こそ車種名であったが、アウディにとっては単に4WDを示すにとどまらず、“高性能スポーツカー”を意味しているのだ。
ラリーシーンでフルタイム4WDを当たり前のメカニズムにしたように、またストリートを舞台にするスーパースポーツの世界においても4WDであることはスタンダードになっているが、それもまたアウディの切り開いたトレンドなのである。
現在はアウディ全モデルにクワトロを設定
現在のアウディ市販ラインナップにおいては、全モデルにクワトロ(フルタイム4WD)を設定しているが、その4WDシステム自体は同じというわけではない。大きく分けて、エンジンが縦置きか横置きかのプラットフォームごとに異なるメカニズムを採用している。あくまでもアウディのフルタイム4WDシステムであれば「quattro」と名乗れるという訳だ。
とはいえ、前後駆動トルク配分を積極的に行なうことで、トラクションとハンドリング(さらに最近では省燃費性も考慮している)をバランスさせるというのも、またアウディ「クワトロ」の特徴だ。
システムとしては通常走行時はフロント50:リヤ50(モデルによっては前40:後60)でトルクが配分されるが、車両の走行状況や路面コンディションが変化すると、瞬時(1000分の数秒以内)にグリップ力が高いほうへより大きなトルクを配分。濡れた路面や雪上などでも安定して走ることができ、そのような状況に慣れていないドライバーにも大きな安心感となってくれるだろう。
ちなみにアウディの子会社としてハイパフォーマンスモデルを担当していたquattro Gmbhは、2016年12月にAudi Sport Gmbと名称変更をしている。これにより、アウディ各モデルに用意される「RS」シリーズの開発は、より加速したという。
というわけで、アウディにとって「クワトロ」というのはWRCで圧勝したマシンの名前であり、ハイパフォーマンスモデル開発会社の名前にも使われた名称だ。単に市販車のフルタイム4WDシステムの呼称にとどまらず、モータースポーツにおける実績をも受け継いだアウディの伝統を示すパワーワードなのである。
ポルシェがアウディを作った!? 格別なアウディ クワトロ3選
■ポルシェ製アウディは、ポルシェの救済策だった!
2020年、AWD駆動システム「クワトロ(quattro)」の40周年を迎えたアウディは、2019年に同社の高性能スポーツモデルを象徴する「RS」シリーズの25周年を祝していた。
元祖アウディ「クワトロ」の成功で、スポーツイメージの構築にも注力しはじめていたアウディは、1983年にかつてのNSU(アウディ前身のひとつ)の本拠ネッカーズルムに「quattro GmbH(クワトロ有限会社)」社を設立。
アウディ社のモータースポーツ活動を担当するほか、アウディ「R8」や、一連の「RS」モデルの車両開発および生産にも参画してきた。
「クワトロGmbH」は、2016年に現在の「Audi Sport GmbH」に改称。引き続きR8やRSシリーズの生産を担当するほか、「Audi Sportカスタマーレーシング」部門が顧客のモータースポーツ活動をサポートするようになった。
さらに「Audi exclusive」プログラムを介したユーザーの車両のカスタマイズ対応、「Audi Sportコレクション」として販売されている、ライフスタイル製品のプロデュースなどもおこなっている。
今回は、アウディにとって重要なパートナーである旧「クワトロGmbH」が開発した象徴的なモデルであり、「RS」の開祖となった歴史的モデルを選出し、紹介させていただくことにしよう。
●アウディRS2アバント:1994-1995
アウディ「RS」の開祖となった「RS2」は、1990年代初頭から一時期経営危機に瀕していたポルシェを救済する目的も兼ね、ポルシェによって開発・生産されたモデルだった。
この直前のポルシェは、「928」シリーズのセールスが振るわなかったことなどを要因として慢性的な経営危機に陥っており、財政破綻も間近では? という憶測さえ取り沙汰される状況となっていた。
そこで、ポルシェ社の大株主であるとともに、ポルシェ一族出身の故フェルディナント・ピエヒ博士が率いていたフォルクスワーゲン・グループは、傘下のアウディとともに、ポルシェの危機を打開する救済策として、アウディ「RS2アバント」の開発・生産をポルシェに委ねることとしたのだ。
こうして、ポルシェの社内コード「Typ 2862」のもと開発されたRS2アバントは、同時代のアウディ「80(現在のA4シリーズに相当)アバント」がベースモデル。
2.2リッターの直列5気筒SOHC+大型ターボチャージャー付きエンジンを搭載し、最高出力は315ps、最大トルクは41.8kgmをマークした。
ドライブトレインはもちろん4WDの「クワトロ」システム。6速MTとの組み合わせにより、0-100km/h加速5.4秒、最高速262km/hという、当時としてはスーパースポーツにも匹敵する高性能を誇った。
また、シャシにもポルシェによる高度なチューニングが施され、ブレーキキャリパーとディスクローターは伊ブレンボ社製のポルシェ「928S4」用が用いられた。
また、ホイールには、ポルシェ「911カレラRS(964)」や「911カレラ カップ」仕様と同じデザインの17インチ軽合金ホイールが標準装着された。
1993年のフランクフルト・ショーにてショーデビューを果たしたRS2は、翌1994年から、かつては伝説のハイパーカー、ポルシェ「959」の生産を担当していたことでも知られる、ツッフェンハウゼンの工場で生産をスタートした。当初は世界限定2200台の生産予定だったが、オーダーが殺到したことから最終的には2891台がラインオフしたといわれている。
また「アバント」ではなくセダンボディを持つRS2が、故フェルディナント・ピエヒ博士のオーダーによってワンオフ製作されたという逸話も残っている。
■アウディが、自社初スーパーカー「R8」をつくるまで
アウディの「RS」ブランドからは、これまで数多くの意欲的なモデルが誕生してきたが、筆者がアウディとクワトロGmbH社の底知れぬパワーをもっとも感じさせられたクルマが、第2世代の「RS6」である。
●アウディRS6クワトロ/RS6クワトロ・アバント(2代目):2007-2010
2代目RS6は、3代目アウディ「A6」をベースにクワトロGmbHが手がけた高性能モデルで、2007年のフランクフルト・ショーにおいて世界初公開された。
当初はアウディお得意のエステートワゴン「アバント」のみのラインナップとされたが、2008年には4ドアセダン版も追加されることになる。
RS6/RS6アバントにおける最大のトピックであるパワーユニットは、ランボルギーニ・ガヤルドにも搭載された5リッターV10ユニットに、2基のターボチャージャーを装着した新開発エンジンであった。
最高出力は426kW(580ps)、最大トルクは650Nmにも達し、まさしくアウディ史上空前のハイパワーモデルとなった。
V10ユニットのクランクケースは、低圧チル鋳造工法によるアルミニウム合金製。エンジン全体の重量はわずか278kgに抑えられていた。
また、激しい縦横加速度の中でも安定してエンジン内部を潤滑させるために、モータースポーツ直系のドライサンプ潤滑が採用されたことも、特筆に値するトピックであろう。駆動方式はもちろん、フルタイム4WD「クワトロ」のみの設定とされた。
このスーパーメカニズムを惜しみなく投入した結果として得られた動力性能は、目覚ましいものであった。0-100km/h加速タイムはアバントで4.6秒、若干重量の軽いセダンでは4.5秒と、この時代におけるスーパーカー級のパフォーマンスを発揮したのだ。
2代目RS6は、セダン/アバントともに2010年をもって生産を終了。
2013年には、4リッターV型8気筒ツインターボを搭載する現行のRS6がデビューした。現行RS6は、スペック上のパワー/トルク、実質的な動力性能ともに2代目を圧倒。
環境性能でも上回るが、自動車業界きってのテクノロジーコンシャス企業、あるいはパワーエリートとして知られるアウディがしばしば見せる、ある意味狂気じみた執念さえ感じさせる……という点については、あくまで私見ながら2代目に軍配が上がると思う。
ガソリンエンジンの限界に挑戦したかにも見える2代目アウディRS6/RS6アバントは、アウディとクワトロGmbHの金字塔なのである。
●アウディR8クワトロ:2006
古今東西のスーパーカーのなかでも、もっともクール&クレバーなキャラクターが際立つモデルのひとつであるアウディ「R8クワトロ」は、ル・マン24時間レースを制した、同名のレーシングカー直系のマスターピースだ。
「RS」の名こそ与えられていないものの、クワトロGmbH社が開発を主導した。
アウディ史上初の市販スーパーカーとなったR8は、2003年のフランクフルト・ショーに参考出品されたコンセプトカー、「ル・マン・クワトロ」の量産バージョンとして、2006年のパリ・サロンにて正式デビューを果たした。
ミドシップに搭載されるパワーユニットは、ショーモデルで選択されたランボルギーニ・ガヤルド用5リッターV10から少々スケールダウン。4.2リッターV8直噴NAとされたが、それでも最高出力420ps/最大トルク43.8kgmという数値は、スーパーカーと呼ぶに相応しいものだった。
また、3500-7000rpmの広い回転域で最大トルクの90%以上を発揮しながら、リッターあたり100psを超えるハイパワーを絞り出すこのエンジンには、6速MTのほか6速2ペダルMTの「Rトロニック」も組み合わせられた。
駆動方式はもちろんクワトロ、つまりフルタイム4WDである。このクワトロ・システムは、ビスカスカップリングを採用した当時の最新世代に進化したものであった。
前後の駆動力配分は10:90-35:65で、前後重量配分44:56のR8に合わせて後輪優先となっている。この結果、0-100km/h加速で4.6秒、最高速度では301km/hという卓越したパフォーマンスを手に入れた。
ヴァルター・デ・シルヴァ氏の最高傑作とも称されるスタイリッシュなボディには、押出成型アルミ材を多用する「アウディ・スペースフレーム(ASF)」を採用。ホイールベースは2650mmで、姉妹車ともいわれたランボルギーニ・ガヤルドより若干大柄となった。また、0.345という優れたCd値を実現しながらも強力なダウンフォースを発揮するという、スポーツカーとしては理想的な空力デザインを実現していた。
2009年には「ル・マン・クワトロ」のオリジンに立ち返ってV10エンジンを搭載した「5.2FSIクワトロ」も追加設定されたのち、2016年に初のフルモデルチェンジ。現行の第二世代へと、進化を遂げることになったのだ。
Posted at 2020/06/08 21:46:46 | |
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AUDI | 日記
2020年06月08日
着脱可能な居室ユニットで軽トラをキャンピングカー化、トラベルハウスが販売網強化
フランチャイズ支援サービスのクリプロ社は、着脱可能な居室スペースユニットを搭載することで、軽トラックを短時間で簡単にキャンピングカー化する「トラベルハウス」の支援を開始、6月1日より、ディーラー募集を開始した。
自遊空間が製造するトラベルハウスは、軽量で頑丈なアルミ合金の居室スペースユニットを搭載することで、軽トラックをキャンピングカー化。キャンピングカーだけでなく、事務所、キッチンカーなど、顧客ニーズに応じて仕様変更できるほか、DIYが得意なオーナーなら、自身で内装をカスタマイズすることもできる。居室ユニットは高さ175cmで閉塞感一切無し。全自動車メーカーの軽トラック(新車・中古車)に短時間の作業で搭載できる。
トラベルハウスについては、移動事務所や休憩所(喫煙所)として需要の増加、コロナ禍で苦戦する飲食店の新しい収益の柱としてのキッチンカー、移動販売車として需要が高まっていることから、全国からの問い合わせが増加。素早く、きめ細やかに対応できるよう、トラベルハウスの販売拠点がない地域にてディーラー募集を積極的に行っていく。
Posted at 2020/06/08 21:41:50 | |
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自動車業界あれこれ | 日記
2020年06月08日
WRC:ラリー・フィンランド、新型コロナウイルスの影響で2020年の開催をキャンセル
WRC世界ラリー選手権は、8月6~9日に予定されていたネステ・ラリー・フィンランドについて、主催者のAKKスポーツが6月3日、新型コロナウイルス感染拡大の影響により開催をキャンセルすると発表した。
フィンランドのユバスキラを中心に争われるラリー・フィンランドは、WRCカレンダーのなかでも、かつては1000湖ラリーと呼ばれた伝統のラリーだ。新型コロナウイルスの影響により、すでにWRCのカレンダーのなかではラリー・アルゼンチンやラリー・イタリアの延期が発表されているほか、サファリは2021年への延期が決定している。
このため開幕ラリーになるかと推測されていた8月のフィンランドだが、ラリー開催まで2ヶ月しかなく、健康と安全上のリスクについての要素が多すぎるため、延期に関しても検討されたものの、初となる中止が決まってしまった。
AKKスポーツは、中止に関し「新型コロナウイルス(COVID-19)の未知の感染拡大とともに、この決定には他にもさまざまな不確実性が影響した」と声明を発表した。
「たとえば公共のイベントに関して国が課している現在の制限が7月も続くのかどうか、外国人のエントラントやチーム、ファンが安全にフィンランドまで旅行できる方法に関する情報も欠如している」
プロモーターのヤニ・バクマンは、キャンセルの可能性を念頭におきながら、いくつかの準備を進めてきたと語った。
「今年のイベントをキャンセルすることで、我々はすべてのステークホルダー、そして社会全体に対して責任を負っていることを見せたかった」とバクマン。
「我々は自信をもって2021年のラリーにフォーカスを移していく。素晴らしい雰囲気とスピリットのなか、観衆、コンペティター、そして長期的な新たなパートナーとともに、70周年記念のラリーを開催することができるはずだ」
2019年までフィンランドで3連覇を飾っているTOYOTA GAZOO Racing WRTにとっては、今季5台体制で挑むという噂もあっただけに、残念な決定となってしまった。
Posted at 2020/06/08 21:39:14 | |
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自動車業界あれこれ | 日記