2020年09月23日
スバル史上最強! STIが手掛けた「S209」がスゴすぎる! 乗り味はいかに?
■日本では売られていない「S209」ってナニモノ!?
スバルは、2014年に掲げた中期経営ビジョン「際立とう2020」で「STIブランドの強化」を掲げました。
その内容は、量産ラインで生産をおこなう「STIスポーツ」の導入だけでなく、これまで基本的に日本専用だったコンプリートカーの海外展開も含まれていました。
その証拠に、2015年のニューヨークショーでSTIの平川良夫社長(当時)は北米ビジネスをおこなうことを発表。
その後、北米向けモデルとして「BRZ tS」と「WRX STI タイプRA」を各500台限定で発売しましたが、その裏で極秘のプロジェクトが進められていました。それが今回紹介する「S209」です。
このモデルは「Sシリーズ初の北米向けモデル」であると同時に、「最強のSシリーズ」として開発がおこなわれています。S209とは、どのようなモデルなのでしょうか。
S209は、北米で209台が限定販売されました。価格は6万3995ドル(約680万円)です。
エクステリアは前後のオーバーフェンダーやフロントフェンダーのエアアウトレット、フロントバンパーサイドカナードなどで構成される専用ワイドボディで、全幅は1795mmから1839mmに拡大されています。
オーバーフェンダーは幅広の265タイヤを収めるために採用されましたが、単純に迫力を出すだけでなくシッカリと性能を出すために風洞に入れながらデザインを煮詰めているそうです。
リアウイングは、国内で限定販売されて即完売した「S207」や限定数を大きく上回る応募を集めた「S208」と同形状のドライカーボン製ウイングが装着されますが、空力バランスはフロント周りの変更を含めてS209用に最適化されています。
ちなみに平川社長によると、「インプレッサ 22B STi バージョンをイメージするデザイン」とデザイナーにリクエストしたそうです。
一方、インテリアはシルバーステッチ+シルバーアクセントのレカロシートやウルトラスエード巻ステアリング、チェリーレッドのインパネ加飾、サイドシルプレート、シリアルナンバープレートなど小変更が中心です。
樹脂系パーツの変更はコスト的に厳しいのは重々承知ですが、もう少し何とかしてほしいと思ったのも事実です。
注目のパワートレインは、伝統の2リッター水平対向4気筒ターボの「EJ20」ではなく、海外向けWRX STIが搭載する2.5リッター水平対向4気筒ターボ「EJ25」をベースに専用チューニングがおこなわれています。
HKS製の大容量タービンや専用ECU、吸気系、排気系の変更により、ノーマルの310hp(314馬力)/393Nmから、341hp(345馬力)/447Nmにアップしています。
とくにトルクは中回転域以降で大幅にアップしており、全域で力強い特性に仕上がっています。
EJ20に比べるとチューニングの知見が少ないEJ25は、サーキット走行などの厳しい環境下での信頼性が気になる所ですが、その辺りも抜かりはありません。
バランス取りされた鍛造ピストン/鍛造コンロッドの採用により、量産エンジンと全く変わらない信頼性が備えられています。
フットワーク系には、出力アップしたエンジンに負けないシャシを目標に専用アイテムを数多く投入。
より安心感のあるリアスタビリティと旋回性能のために、車体はSTIコンプリートモデルで定番のフレキシブルタワーバー、フレキシブルドロースティフナー・フロントに加え、リアシートバック用フレキシブルドロースティフナー(通称:リアドロ)を新採用。
じつはこのアイテムは、2016年のニュルブルクリンク24時間レースカーで先行採用され、大きな効果が実証されているアイテムです。
足まわりはビルシュタイン製ショックアブソーバーと専用コイルスプリング、強化ブッシュを搭載。開発はアメリカのサーキットが中心でニュルでのテストはしていないようですが、セットアップはニュル24時間レースカーの考え方が色濃く盛り込まれているそうです。
タイヤは歴代Sシリーズ最大幅となる265/35R19サイズの「ダンロップ SPスポーツMAXX GT600A」で、構造や剛性、トレッドゴムの選択に至るまでS209専用にゼロから開発された物です。
組み合わせるBBS製鍛造アルミホイールはS207/S208用を水平展開と思いきや、リム幅9jの専用品です。ブレーキはS207/S208で高い評価を得ているブレンボ製のモノブロック対向6ポッド/2ポットが奢られています。
■歴代WRXシリーズでナンバー1の乗りやすさ
日本では販売されないものの、S209の実力はどうなのかというところは、スバルファンであれば気になるでしょう。それは歴代Sシリーズ全てのモデルを試乗してきた筆者(山本シンヤ)も同じです。
2019年のデトロイトショーで世界初公開されて以降、リクエストをしていたのですが、特別に日本での試乗が叶いました。
試乗コースは日本のニュルと呼ばれる“グンサイ”こと群馬サイクルスポーツセンターです。最強のSシリーズをチェックするには申し分ないステージでしょう。
じつはS209の開発コンセプトのひとつに「北米のサーキット(バージニア・インターナショナル・レースウェイ)のセダン最速タイムを目指す」ということが設定されていました。
事前にその話を聞いていたので、「サーキットスペシャルをグンサイで走らせて大丈夫なの?」と不安でしたが、その不安は走り始めてひとつ目のコーナーを曲がったらすべて吹き飛びました。
カチッとしているのに突っ張った印象がない車体や、ダイレクトで操舵レスポンスは高いのに薄皮一枚挟まっているかのような心地よいダルさを持つステアリング系。
サーキットスペックでバネもダンパーもタイヤも数値的には相当ハードなセットながら振動や入力を上手に吸収してくれるサスペンションと、すべての部分において「硬さ」と「しなやかさ」が共存しているのです。
その結果、絶対スピンしないと確信を持てるリアの安定性と、アンダー知らずでグイグイと曲がるハンドリングを両立しているのはもちろん、クルマとドライバーの信頼関係や対話性、そして扱いやすさ、乗りやすさは、歴代WRXシリーズナンバー1だと感じました。
個人的には武闘派なS207/S208ではなく、強さのなかに優しさを持つ「S206」を継承している乗り味に感じました。
グンサイは道幅が狭くてエスケープゾーンもほとんどなく、路面状況も悪いため、一般道以上に緊張感が高いのですが、そんな環境下で高いスピードながらも冷静にドライビングできたのは、クルマを信頼してポテンシャルを引き出せるシャシ性能のおかげです。
その一方で、硬い柔らかいでいえばS209は硬めですが、「ノーマルより快適なのでは?」と感じるほどの快適性の高さもポイント。プレミアムブランドに片足を突っ込んだかのような動的質感まで備わっています。
この辺りは、開発責任者の高津益夫氏が常日頃語る「走りを極めると快適になる」を実感しました。
ハンドリングに関してはほぼ完ぺきといえる仕上がりですが、ひとつ気になったのはシートです。
純正レカロのホールド性では体が支えきれないコーナリングレベルに来ており、安定したドライビング環境のために良いシートが欲しいです。
個人的には車両のこだわりを考えると、レカロシートの最高陣でカーボンバックシェル採用の「SP-X」を奢ってあげてもいいかなと思いました。
エンジンは低速域のトルクに2.5リッターの余裕を感じるものの、「ザ・ターボ」というようなメリハリのある盛り上がりの特性とレッドゾーンの6500rpmを軽々と超えていきそうな伸びの良さ、そして「GC8」時代のEJ20のようにシュンシュン回る気持ち良さが備わっており、EJ20とは異なるもうひとつの「究極のEJ」だと感じました。
もちろん最新のターボと比べると決して万能な性格ではないですが、エンジンの爆発で生まれる鼓動や人間味を感じるフィーリングなど、ただ速く、鋭いだけでなく“血が通っている”ユニットなのは、EJ20と共通です
筆者は以前ニュル24時間を戦うレーシングカー(2016モデル)に試乗した事がありますが、S209はもっともニュル車に近い量産車だと感じました。
つまり、STIが常日頃から提唱する「強靭でしなやかな走り」のひとつの理想形です。現在スバルでは次期「WRX」の開発が進められていますが、最低でもS209を超える必要はあるでしょう。
※ ※ ※
このS209は、並行輸入業者の手により日本に上陸していますが、価格はかなり高価で、誰でも買えるとはいかないのも事実です。
しかしSTIは、「リアドロを含めたフレキシブル補剛パーツのフル装着で、S209の乗り味に近づきます」といっています。
日本でS209を味わいたいというVA系WRX STIオーナーの方は、これらのパーツを装着することをオススメします。
Posted at 2020/09/23 20:48:22 | |
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富士重工 | 日記
2020年09月23日
フェラーリバブルは崩壊した!? 「F40」の落札価格から検証する
■クラシック・フェラーリのバブルは弾けてしまったのか?
クラッシック・フェラーリのバブルが弾けて久しいといわれるが、それは本当のことなのだろうか。確かにさまざまなオークションのリザルトを見ると、落札価格は少しずつではあるが下がっているようにも思える。
そこで今回VAGUEでは、同一モデル(フェラーリ「F40」)の同一オークションでのリザルトを、開催年ごとに比較して、本当にバブルが崩壊しているのかどうかを調べてみることにした。
ちなみにRMオークションの2020年のモントレー・ウィーク・オークションでは、トータル・セールスは3041万2810ドル(邦貨換算約31億9334円)。
トップセールは429万ドル(邦貨換算約4億5045万円)の2001年式フェラーリ「550GT1プロドライブ」、続く2位もフェラーリの1965年式「275GTB」で198万ドル(2億790万円)と、やはりいかに魅力的なフェラーリを出品車として探すのかが、オークショネアには重要な仕事であることが分かる。
フェラーリF40に話を戻そう。今回同オークションの記録をさかのぼって、もっとも古いデータが見つかったのは2012年のペブルビーチ・オークションである。この時出品されたS/N:89441は1991年式で、もちろんフェラーリ・クラシケの認定を受けたモデルである。
F40の細かい成り立ちやメカニズムに関しては、ここで詳しく解説するまでもないだろう。「288GTO」から派生した実験車の「288GTOエボルツィオーネ」をさらに進化させ、イタリア語でいうストラダーレ(ロードカー)とコンペティツィオーネ(レースカー)の中間的なキャラクターを狙ったF40は、0-100マイル(約160km/h)加速を7.8秒で加速する圧倒的な運動性能を得た。
当時最強のライバルといえたポルシェ「959」が、さまざまな電子制御技術を搭載したのに対して、フェラーリはF40から走りに不必要な装備を廃止。最初は400台前後の限定車として企画されたが、40万ドル(邦貨換算約4200万円)という高額にもかかわらず、その人気の高さから最終的には1311台が生産されるに至ったのだ。
●MONTEREY 2012:1991年式フェラーリF40
2012年のペブルビーチ・オークションでの落札価格は、71万5000ドル(2012年8月為替相場平均換算約5625万円)。為替の問題はあるが、純粋にドルで比較すればまだ現在ほど、注目はあつまっていないことが想像できる。ちなみにこのモデルの走行距離は約4600マイル(7360km)だった。普段は美術品のように温度管理された部屋で保管されていたと当時の資料にあるから、コンディションは悪くはなかったはずだ。
●MONTEREY 2013:1990年式フェラーリF40
翌2013年には1990年式のS/N:86658が出品されている。こちらももちろんフェラーリ・クラシケの認証済み。
走行距離はわずかに2900kmで、前オーナーによって、Tubi Style製のエグゾーストシステムが装着されたほか、クラッチ、インタークーラー、スパークプラグなどのメンテナンスがおこなわれ、さらにツールやバッグ類、ドキュメントもすべて完全に揃ったモデルだった。
こちらの落札価格は、前年から大きく伸びて、115万5000ドル(2013年8月為替相場平均換算約1億1300万円)。F40のバブルが始まったとするのならば、このあたりがきっかけだろうか。
■2016年以降の「F40」オークションの結果はどうだったか?
それでは、米大統領選でドナルド・トランプ氏が当選した2016年以降のモントレー・ウィーク・オークションでのF40の落札価格の推移を見てみよう。
●MONTEREY 2016:1990年式フェラーリF40
2016年に出品された1990年式のS/N:87123は、アメリカでのオークションでは珍しく、シリアルナンバーやkm/h表示のメーターによってEU仕様であることがわかるモデルだった。
現在までの走行距離は2384kmと短いが、イタリアから最初にアメリカへと輸出された後、ドイツ、日本のオーナーによって管理され、最後の10年間には燃料タンク、ベルト類、スパークプラグなどを交換。実際のコンディションは非常に良好で、新しいオーナーを失望させることはないだろうとRMオークションは追記している。
落札価格は126万5000ドル(2016年8月為替相場平均換算約1億2800万円)。前年とほとんどかわらない数字だけに、このあたりでF40は高止まりではないかという声も多く聞かれた。
●MONTEREY AUGUST 2017:1991年式フェラーリF40
だがその予想に反して、F40バブルはまだまだ続いたのである。2017年に出品された1991年式のS/N:87895は1991年1月に出荷され、ウインドウのステッカーやディーラーの検査チェックシートまでがそのまま残る、完全なオリジナルコンディションであった。
オプションのエアコンや電熱線入りのフロントウインドウを備えるなど、実用性も高かった。走行距離は2802マイル(4483km)。もちろんその人気は高く、結果的に落札価格は154万ドル(2017年8月為替相場平均換算約6900万円)にまで達したのである。
●MONTEREY 2018/2019:1990年式/1991年式フェラーリF40
2018年に出品された1990年式のS/N:87041、そして2019年に姿を現した1991年式のS/N:87568も、いずれもわずかに2720km、2728kmという走行距離とコンディションが評価され、各々171万ドル(2018年8月為替相場平均換算約1億9000万円)、168万2500ドル(2019年8月為替相場平均換算約1億7900万円)で落札された。
特に前者は2008年のオークションで、世界で最も高価なF40として販売されたモデル。その記録が破られたかどうかの発表はなかったが、新車同様のコンディションは、それに値するものといえた。
●SHIFT MONTEREY 2020:1991年式フェラーリF40
そして新型コロナウイルスの関係から、オンライン・オークションとなった2020年も、F40の名前はRMオークションのロットにあった。
走行距離が6407マイル(1万251km)と大きかったのが敬遠されたのか、それとも今後の経済の不透明さが影響したのかは不明だが、1991年式のS/N:87627の落札価格は138万6000ドル(2020年8月為替相場平均換算約1億4700万円)止まりだった。
だがこれをもって、F40バブルの崩壊というのは時期尚早だろう。F40はフェラーリのファンにとっても特別な存在。それは誰もが知っていることであるし、その価値はこれまでのオークション市場での落札価格に、なによりも明確に表れているのだから。
Posted at 2020/09/23 20:45:47 | |
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自動車業界あれこれ | 日記