2020年11月25日
いつ使うべき? 車の「パドルシフト」 変速機ないクルマにも装備される訳
■使わなくても運転できる「パドルシフト」 いつ使うと良い?
最近のクルマには、ハンドルの付け根に「パドルシフト」が設置されている事例があります。使わなくても運転することはできますが、いったいどのようなときに使う装備なのでしょうか。
市販車に装着されるパドルシフトは、かつてはスポーツカーを中心に装着されていたものの、現在ではミニバンやコンパクトカー、軽自動車でも見られる装備となっています。
機能としては、通常はシフトノブでおこなう変速を、ハンドルから手を離さず手元でできるようにすることが目的です。
前述のとおり、市販車においては幅広い車種に採用されているほか、有段ATのクルマだけでなく、変速比が連続的に変わるCVT(無段変速機)のクルマにも搭載されています。
パドルシフトを使うときとしてイメージしやすい場面としては、ギアを自分で操作(CVTの場合は擬似的な有段変速)して走りたいときが挙げられるでしょう。
パドルシフトはF1マシンに代表されるレーシングカーにも搭載されていることから、スポーティな走りを楽しみたいときに操作してみたい、というのは自然なことといえます。
それ以外の実用的な使用方法としては、長い下り坂でエンジンブレーキを強く効かせたたいときに操作する、ということが挙げられます。
長い下り坂でフットブレーキを多用しすぎると、「フェード現象」や「ベーパーロック現象」が起きてブレーキの効きが悪くなる場合があります。
そうした状態に陥るのを防ぐために、AT車のシフトパターンには「D」の下にエンジンブレーキの効きが強くなる「3」「2」「L」「B」「S」などのいずれかが配されているのですが、パドルシフトでギアを下げることはそれと同じ操作にあたるのです。
■変速機が無いクルマのパドルシフト 何のために装備される?
パドルシフトは、ホンダ「ヴェゼル」のハイブリッド仕様や、三菱「アウトランダーPHEV」など、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車にも採用されることがあります。
トランスミッションは、ヴェゼルのハイブリッド仕様の場合は7速DCTが組み合わされますが、アウトランダーPHEVではトランスミッション自体が搭載されていません。
EV走行モードとシリーズ走行モードではモーターに直結し、パラレル走行モードはエンジン直結で走行するシステムということが理由ですが、ではアウトランダーPHEVに装備されるパドルシフトはなにを操作する装備なのでしょうか。
アウトランダーPHEVに装備されるパドルシフトは、正式には「回生レベルセレクター(パドル式)」といい、回生ブレーキの強さを調節する装備になります。
パドルシフトでギアを下げるのと同じように、長い下り坂を降りるときに役立つほか、バッテリーの充電量回復にも寄与します。
三菱の販売店スタッフは、アウトランダーPHEVの回生レベルセレクターについて次のように説明します。
「パドルで調整できるアウトランダーPHEVの回生レベルは6段階で、回生ブレーキをもっとも強くすると充電量が多くなるほか、反対にもっとも弱くするとアクセルを戻してもスピードがほぼ落ちないという特徴があります。
弱くすれば、ある程度のスピードまで加速したあとにアクセルを戻しても、車速を落とさずそのまま走行することができるなど、お客さまの好みにあわせてさまざまな走らせ方に対応できる点を案内しています」
ちなみにハイブリッド車やプラグインハイブリッド車の多くでは、パドルがなくても、シフトセレクター部に「B」などのレンジを設け、ここで回生ブレーキを強くする操作ができるようになっています。
Posted at 2020/11/25 22:34:01 | |
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自動車業界あれこれ | 日記
2020年11月25日
超絶カッコいい!! 市販化されなかったのが残念なポルシェ3選
■ポルシェのデザインができるまで
ポルシェAGのオリバー・ブルーメ取締役会長は「ポルシェの時代を超越した革新的なデザインは、世界中の人々から愛されています。これらは先見の明のあるコンセプトスタディの数々がこの成功の基盤であり、未来のポルシェデザインのアイデアの宝庫であり、ポルシェの強力な伝統を、未来を切りひらく技術と融合させるのです」と語る。
これまで未発表だったデザインスタディの数々は、プレス向けに一連の記事として紹介されているほか、ウェブTV「9:11Magazine」でも、ポルシェのチーフデザイナー、ミヒャエル・マウアーとともにデザインスタディと実際の生産モデルとの関連性を検証するエピソードを公開している。
そしてポルシェ・ブランドのファンに向けて、ドイツの出版社Delius Klasingから11月12日に「Porsche Unseen(まだ見ぬポルシェ)」という本が発売された。この本では興味のある読者のために、ポルシェのデザイン部門「スタイル・ポルシェ」の舞台裏が詳しく紹介されている。
また、スタディモデルの一部は2021年にポルシェ・ミュージアムで展示される予定で、実車を見ることができるそうだ。
●デザインプロセス:最初のスケッチから運転できるプロトタイプまで
デザインのプロセスは一枚のスケッチから始まる。これは次のステップで3Dモデルとして視覚化され、さらにアイデアが発展したら1/3スケールの模型が作られ、その次は1/1の実物大モデルが作られる。
「仮想世界が最初の一歩ですが、これまでにないクルマが小さいのか大きいのか、それとも驚くべきプロポーションなのかを理解するには、現実世界で体験しなければなりません」と、「スタイル・ポルシェ」のチーフデザイナーであるミヒャエル・マウアー氏は語る。
生産モデルの開発では常に異なるスタイリングのモデルが同時に進行していくのだが、それとは対照的にビジョンプロジェクトでは、中核的なアイデアの主役となるべきひとつのビジョンモデルに集中する。
「ポルシェは意図的に、たったひとつしかデザインスタジオを設置していません。開発セクションのすぐ近くにです」とマウアー氏はいう。
「ポルシェの開発センターがあるヴァイザッハが私たちの震源地です。北米やアジアのように遠く離れた大都市に高度なデザインスタジオをいくつも開設するかわりに、ポルシェのデザイナーたちは世界中からヴァイザッハにやって来て、最新の市販スポーツカーと、ブランドの中心となるクルマのビジョンを創造するのです。
120人以上のデザイナーと、インテリア、エクステリア、色、素材の専門家、モデルビルダー、モデラー、研究エンジニアが、ポルシェのデザインスタジオで働いています」
●デザインスタディ:モビリティの未来への心の旅
「私たちの開発するビジョンとは、あらゆるクルマを道路で走らせることではありません。むしろ、創造的な空間と、未来との関係を築いていくための問いかけなのです」とマウアー氏はデザインプロセスを説明し、こう付け加える。
「ブランドとして発展し続けるためにはふたつの可能性があります。ひとつは、製品を現状から段階的に改善していくことですが、この方法では真に革新的であることは難しいです。もうひとつは、自分の創造性を自由に解放することです。アイデアとは、自分の思考を明後日までジャンプさせて、それから明日まで戻してやることなんです」
この考え方に基づいて、ポルシェは長期的に全モデルの外観を特徴づけて保っていくように、製品とブランドアイデンティティを開発している。将来のクルマのためのデザイン言語は長期的なビジョンから発展したものなのだ。
こうしたプロセスのなかでは、ポルシェのデザインのDNAと最新鋭の自動車工学を融合させることが、よりハイレベルな目標となる。このことが、一方では将来のポルシェのモデルに革新的な性能をもたらし、また同時に、ポルシェの豊富な歴史に対する解釈をアップデートすることにもつながるのである。
■市販化されなかったのが惜しい! デザインスタディで終わったポルシェ3選
それでは、ポルシェの門外不出だった2005年から2019年にかけてのデザインスタディの数々のなかから、いくつかの例を詳しく見てみよう。
●ポルシェ919ストリート
「ポルシェ919ストリート」(2017年、1/1クレイモデル)は、ポルシェがWEC(FIA世界耐久選手権)で2014年から2017年に投入したレースカー「ポルシェ919ハイブリッド」に使われた技術をベースに開発され、LMP1クラスのレースカーの爽快なドライブ体験をアマチュアドライバーでも楽しめるというのが趣旨となる。
ボディのなかにはカーボンモノコックのシャシと、ル・マンでポルシェ919が数々の勝利を収めるのに貢献した900psのハイブリッドシステムが収まっていて、寸法とホイールベースもレースカーと変わらない。
●ポルシェ・ビジョン・スパイダー
「ポルシェ・ビジョン・スパイダー」(2019年、1/1ハードモデル)はコンパクトなスポーツカーで、スパルタンで洗練されたコックピット、リアミッドに搭載されたエンジンの上の特徴なラジエーターグリル、赤いグラフィック、リア両サイドのフィンといった要素が、1954年のポルシェ「550/1500RSスパイダー」を明確に思い起こさせる。
また、このスタディモデルはポルシェのデザインアイデンティティをさらに発展させ、将来のディテールのストックを蓄積することも目的としていた。超モダンなロールバーがその一例といえる。
●ポルシェ・ビジョン“レンディーンスト”
「ポルシェ・ビジョン“レンディーンスト”」(2018年、1/1ハードモデル)は、最大6人乗りの家族向け空間コンセプトを自由に解釈したもの。
ドイツ語の「レンディーンスト(Renndienst)」はレーシングサービスの意味で、往年のポルシェがレース活動で使っていた「フォルクスワーゲン・バス」がモチーフ。赤がイメージカラーだったのだ。
デザインチームはエキサイティングなプロポーションをもつ未来のスペースシャトルをイメージしたという。
このスタディモデルは、特徴的なボディ形状をもつポルシェのデザインDNAが、ブランドにとって未知の車両ジャンルにどう移植できるのかを示している。
快適なモジュール式トラベルキャビンが乗客に用意されており、ドライバーは中央の運転席に座る。EVの駆動系はすべてボディ下部に収められ、乗客は想像以上に広々とした空間と、ポルシェ的な感覚に満ちた旅行体験を楽しむことができる。
* * *
●書誌情報
Porsche Unseen
著者:Stefan Bogner & Jan Karl Baedeker
ページ数:328
寸法:21.6×28.6cm
図版数:190点
言語:ドイツ語/英語
発売日:2020年11月12日
ISBN:978-3-667-11980-3
出版社:Delius Klasing
価格:68ユーロ
購入方法:現時点では日本Amazon、米国Amazonでは取り扱いがなく、ドイツのAmazon(Amazon.de)は日本への発送不可となっている。版元の公式ウェブサイト(ドイツ語)から購入可能となっているので、有志は挑戦してみることをお勧めする。
ポルシェが公開した3台の未発表コンセプトカーが話題。市販化してほしいモデルはどれ?
独ポルシェは11月12日、未発表のコンセプトモデルをまとめたフォトマガジン「ポルシェ・アンシーン」の一部を公開した。スポーツカーメーカーの頂点に君臨するポルシェは、「911」や「カイエン」などこれまで数多くの名作を世に送り出してきた。今回、ドイツで出版されたポルシェ・アンシーンには、開発途上で断念されたモデルも含め、そのデザイン力を示す多数のコンセプトが特集されている。ここではWebで情報が公開された3台を紹介したい。
まずは、LMP1レーサー「919ハイブリッド」のストリートバージョン「919ストリート」に注目。ル・マンを含む多くのレースで勝利を挙げた919ハイブリッドをアマチュアドライバー向けにリデザインした同車は、レースマシンと同じくカーボンモノコックシェルと900PSのハイブリッド・ドライブトレーンを採用。ディメンションやホイールベースも919ハイブリッドとまったく同値で、2017年に製作されたこのクレイモデルのまま市販されていれば大きな話題を呼んだだろう。
次は、ドライビングに特化したスパルタンなオープンカーコンセプト「ヴィジョン・スパイダー」。2019年製の原寸大ハードモデルは、ミッドシップレイアウト、小型のウインドスクリーン、特徴的なリアのフィンなど往年の名車「550-1500 RSスパイダー」をオマージュしていることが明らかで、革新的なロールバーなどのディテールは今後のモデルへの活用を念頭に置いたものという。
最後は、6人乗りのマルチパーパスビークル「レンディエンスト」。このピープルムーバ-型EVコンセプトは、「もし、ポルシェが未知のジャンルに参入したら」というシミュレーションも兼ねて製作されたもの。とはいえ、広々とした快適なインテリアと大胆かつ斬新なエクステリアの組み合わせは魅力的で、ポルシェ初のミニバンに興味を持つユーザーは一定数いるだろう。
これら3台を始めポルシェの作品はどうデザインされるのか。その秘密が詰まったポルシェ・アンシーンはファン必見だ。
Posted at 2020/11/25 22:31:39 | |
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ポルシェ | 日記
2020年11月25日
【ホットなディーゼルSUV】アウディSQ5 TDI 改良新型、欧州発表 パワートレイン刷新
燃費とパフォーマンス向上
text:Felix Page(フェリックス・ペイジ)
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)
アウディは、パフォーマンスSUV「SQ5」に改良を施した2021年モデルを発表した。パフォーマンスの向上、デザインの変更、新技術を盛り込んでいる。
スタイリングの変更点は、ハニカムメッシュ構造のフロントグリルの採用や、リアのデザイン変更など。
SQ5 TDIはマイルド・ハイブリッドの3.0L V6エンジンを搭載しているが、エンジン本体やエネルギー回生システムの改良により、燃費と性能を向上させている。
例えば、従来のアルミ製ピストンは、より軽量な鍛造スチール製のものに交換されている。新たに導入された凹部を利用して、熱損失を減らし、「燃焼がより速く、より効率的になる」という。
また、燃料噴射装置の精度を高め、インタークーラーの吸気口を短くすることで、ターボチャージャーの過給圧の立ち上がりを早くしているという。
出力は340psと、現行モデルの347psに比べてわずかに低下しているが、1750~3250rpmの幅広い回転域で71.3kg-mのトルクが得られ、ピークパワーへの到達も以前より早くなっているという。0-100km/h加速は5.1秒、最高速度は250km/hに達する。
48Vマイルド・ハイブリッドシステムは、電動コンプレッサーの調整により、低速走行時や加速時のターボチャージャーの性能を向上している。
アウディは、パワートレインを改良したことで、「新しいユーロ6d ISC-FCM AP排出ガス基準を大幅に下回る」とし、排気システムに選択的触媒還元を導入することで、NOx排出量を「劇的に削減」したとしている。
燃費はWLTPサイクルで14.6km/lを達成し、CO2排出量は216g/kmとなっている。
スポーティなセッティング
従来通り、パフォーマンスを重視したサスペンション・セッティングを採用し、車高を標準モデルより30mm下げた。オート、コンフォート、エフィシェンシー、ダイナミック、オフロード、インディビジュアルの6つのドライブモードを用意。
また、最上級の「ヴォルスプラング」グレードには、リアアクスル全体にトルクを配分するためのスポーツ・ディファレンシャルが採用されている。
車内には、最新世代のMMIタッチスクリーン(10.1インチ)が搭載されており、MIB 3ソフトウェアにより音声やステアリングホイールのボタンから操作することもできる。
ヴォルスプラングには、ヘッドアップディスプレイ、バング&オルフセンのサウンドシステム、パノラマガラス・サンルーフ、電動調整式ステアリングホイールが追加される。
価格は標準のSQ5が5万6600ポンド(789万円)から、ヴォルスプラングが7万1750ポンド(1000万円)から。
367psのプラグイン・ハイブリッド(ガソリン)を搭載したQ5 TFSIeの詳細はまだ明らかにされていない。
日本でもアリ? 「アウディSQ5」にV6ディーゼル仕様が追加!
341ps/700Nmを発する3L V6ディーゼルターボを採用したマイルドハイブリッドパワートレインを搭載
11月12日、アウディはミドルサイズSUVの高性能モデル「SQ5」に、ディーゼルエンジンの「TDI」を搭載した「SQ5 TDI」を追加設定したと発表した。このモデルはメキシコ工場で生産され、2021年の第1四半期よりドイツを含む欧州諸国で発売される予定。ドイツ市場での発売価格は6万8137.82ユーロ(約844万円)だ。
SQ5 TDIには、341ps/700Nmを発揮する3L V型6気筒ディーゼルターボエンジンに48V電気システムを組み合わせたマイルドハイブリッドパワートレインを搭載。トランスミッションは8速AT(ティプトロニック)で、0-100km/h加速を5.1秒でこなす加速性能が与えられている。ちなみに最高速は250km/hでリミッターが作動する。
48V電装システムは、BAS(ベルト・オルタネーター・スターター)やリチウムイオンバッテリー、電圧コンバーターで構成。減速時には最大で8kWの電力を回復するほか、最大で40秒間の惰性走行が可能だ。
駆動方式は「クワトロ」システムによる4輪駆動。前後トルク配分は40:60で、走行状況に合わせて前輪に最大70%、後輪に最大85%が配分される。高速コーナリング中などは内側のホイールにブレーキがかかり、ハンドリング性能を向上させる。
サスペンションは「S」モデル専用となる「Sスポーツサスペンション」を搭載。車高は標準モデルのQ5より30mmローダウンするが、快適性とダイナミズムを巧みにバランスさせている仕立てだ。リヤアクスルにはオプションでスポーツディファレンシャルを搭載でき、その場合はスポーツドライビング時などで左右輪間をアクティブにトルク配分し、アンダーステアを大幅に低減できるほか、ドライビングダイナミクスをさらに向上させることができる。
エクステリアではSモデル専用デザインとなる8角形のシングルフレームグリルや、大きな開口部を持つフロントバンパーのサイドエアインレット、20インチアルミホイール(タイヤサイズは225/45R20)といったディテールがSモデルであることを主張。フロントに375mm径のディスクを採用するブレーキでは、Sのロゴを表示したブラックキャリパーが特徴的だ。
LED仕様が標準のヘッドライトは、オプションで自動ハイビーム機能とダイナミックターンシグナルを組み込むマトリクスLED仕様が設定されている。一方、リヤコンビネーションランプにはオプションでOLED仕様が設定され、注文時に3タイプのなかからシグネチャーデザインを選ぶことができる。
インテリアでは、エンボス加工されたSロゴを表示するスポーツシートや、専用デザインのステアリングホイールがSモデルを主張。インテリアトリムはツヤ消しのアルミニウムが用いられており、オプションで2種類のカーボン仕上げとピアノ仕上げが用意されている。
そのほか、10.1インチディスプレイを組み合わせる最新の「MIB 3」インフォテイメントシステムやコネクティッド技術、先進運転支援システムが積極的に導入され、完成度の高い1台に仕上げられている。
Posted at 2020/11/25 22:27:17 | |
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AUDI | 日記
2020年11月25日
「1億円」で落札の個体も! 「ランチア」なのに「アバルト」のエンブレムが付く「037ラリー」という名車
イタリアの「パワー・構造・デザイン」3大名匠の結実 ランチア・ラリー
日本への正規輸入も途絶えて久しく、本国でも苦戦を強いられている、イタリアのランチア。復活の声は常にあるが、その熱望の背景にあるのはラリーでの活躍だろう。古くはフルビアに始まり、スーパーカーのなかでも別格となるストラトス。絶頂期を迎え、まさに暴れまくったランチア・デルタ・インテグラーレまで、伝説のモデルが目白押しである。
そのなかで1980年代のWRCで活躍したのがランチア・ラリー、通称「037ラリー」だ。あらゆる力を世界一に向けて押し出していった名車、そこにはアバルトも一翼を担っていたのだった。
パワー闘争のなかアバルトは本領発揮
1980年代のWRCは過渡期というか、大きな転換期を迎えており、目玉であるグループBが始まったのは1982年のこと。グループBといえば、その後数年間で車両の大パワー化と4WD化に伴い一気に過激化、最終的に大規模な死亡事故が起きてしまい、廃止されてしまうカテゴリーだが、そこへランチアが放ったのが「037ラリー」だ。
アウディクワトロを皮切りに、各メーカーが4WDモデルを投入するなか、ランチア・ラリーは旧来からのミッドシップを採用。WRCでは活躍した最後のミッドシップとされている。
開発を担当したのは、かのアバルト。フィアットに吸収され、事実上の消滅となっていたと思われていたが、ランチア・ラリーでその実力が健在であることを見せつけることになった。ちなみに037ラリーと呼ばれるのは、ランチア・ラリーがあまりにも漠然とした車名だったために使われた通称で、アバルトの開発コード、SE037に由来するもの。イタリアではティーポ037とも呼ばれるが、ティーポはタイプのことである。
結局のところ、ミッドシップで参戦したのは予算や4WDの技術がまだなかったわけでもあり、実際構造はとてもシンプルだ。しかし勝つべき方策は込められ、シャーシは名門・ダラーラが担当、モノコックのキャビンの前後にモリブデン鋼のチュブラーパイプを組み合わせたフレームが構築されている。
そこに「フィアットツインカム」と呼ばれ熟成されていた2リッター直4エンジンを搭載しているのだが、横置きではなく縦置きにすることで、コーナーでのコントロール性を向上させてもいる。さらにイタリア語で「ボルメトリコ」と呼ばれるルーツ式スーパーチャージャーを組み合わせることで、競技モデルでは300馬力程度を出していた。
ターボではなくスーパーチャージャーとしたのは、当時大サイズのターボとした場合のターボラグが問題となっていたこともあり、ターボを使っているライバルたちへの対抗策の処置。ラリーでは下からキッチリとパワーが出るスーパーチャージャーを重視した結果だった。ただ、競技用のスーパーチャージャーを作ってくれるメーカーがなく、アバルトが自製したとされる。
また、ランチア・ベータクーペに似た伸びやかなデザインはピニンファリーナが担当したもの。ランチア・ラリーは、イタリアを代表するアバルト、ダラーラ、ピニンファリーナが結集して作り上げたクルマと言っていい。
世界ラリー選手権タイトル獲得の実績
WRCでは苦戦するかに思えたが、名門の意地もあって、1983年にはマニュファクチャラーズタイトルを獲得するなど、善戦。進化を続けるライバルに対抗して、マシンも排気量のアップやスーパーチャージャーの大型化によって、エボ2からエボ3へと進化して、パワーも最終的には350馬力を超えていたようだ。ただ、4WD化の波にはあらがえず、1985年のシリーズ途中で、4WDモデルのランチアS4にその座を譲り、役目を終えた。
総生産台数は参戦に必要とされるホモロゲ取得の最低台数である200台ほどとされるが、諸説あって確かなところは不明だ。200台のなかには、競技用のコンペティチオーネ以外に、ストラダーレと呼ばれる市販モデルも含まれている。ストラダーレのスペックはもちろん、コンペティチオーネよりも大人しいもので、出力は205馬力に抑えられ、車重も200kgほど重たかった。また内装もスウェード張りになるなど、ある程度の快適性も確保されていた。
オークション1億円落札の例も
コンペティチオーネは50台ほどが実戦投入されたと言われ、合計で200台作られたとしてもストラダーレは150台程度が存在する計算になり、日本にも10台ほどが「ガレージ伊太利亜」によって輸入された。
現在の取引価格についてだが、旧車の高騰が続く現在ではランチア・ラリーも例外ではなく、海外のオークションでは低走行距離のノンレストア車ではあるが、1億円で落札されて話題にもなった。
イベントでは見かけることもたまにあり、超レアとまでにはいかない。だがもし実車を目にすることがあれば、至るところに入れられたABARTHの文字などにも注目してみてほしい。本物だけが放つ強烈なオーラを感じるはずだ。
Posted at 2020/11/25 22:18:26 | |
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自動車業界あれこれ | 日記