2020年11月26日
【10年ひと昔の国産車 14】スバル エクシーガとフォレスターで、STIパフォーマンスパッケージを試す
「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前の国産車は環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回はSTIのパフォーマンスパッケージを装着した「エクシーガとフォレスター」だ。
スバル エクシーガとフォレスター(2009年、STI パフォーマンスパッケージ装着車)
どんなにグリップの高いタイヤや追従性の高いサスペンションを装着しても、それを支えるボディが弱いとクルマ本来の性能を出すことはできない。走りにこだわると最後にボディチューニングにたどり着くというのは、このためだ。
ただボディに手を入れることは極めて難しい。今回テストしたSTI パフォーマンスパッケージ(以下、PP)は、スバルのシャシ剛性を知り尽くしたSTIだからこそ実現できたボディ強化アイテムと言っていいだろう。
STI PPは、ボディワークの入門用パーツとも言えるフレキシブルタワーバーと、ボディ下側を連結強化するフレキシブルロアアームバー(フォレスターを除く)、新開発のサポートフロントキットの3アイテムで構成される。
フレキシブルというのがSTIならではの発想で、タワーバーの中央とロワアームバーの両端にジョイントを入れ、横方向の力はしっかり受け止めながら、縦方向の力に対してはしなやかにいなす効果を得ている。サスペンションの支持部分を強化しつつも全体の剛性バランスを崩さず、スバル車が持つ高いシャシ性能を一層高めている。またサポートフロントキットは、クロスメンバーの剛性をアップする。
今回はその違いを明らかにするために、ノーマルを試乗した後にその場でSTI PPを装着して、乗り比べてみた。
まず、しっかり感が確実にアップしたことがわかる。ステアリングフィールは、よりダイレクトで正確になっている。センター付近の座り感がしっかりしたことで高速走行時の安定性が向上しているし、小さく切り込んでいった時の応答性に遅れが感じられず、コーナーへのアプローチがしやすくなっている。
ボディの動きにフラット感が出たところもいい。エクシーガはレガシィ譲りの走りの良さと7人乗りなのに乗り心地のいいところが大きな魅力だ。カドの丸い乗り味でふところ深く路面をとらえてくれている点が持ち味でもあるが、いっぽう初期の動きが少々大きいのが気になっていた。
これが、PP装着後はピシッと引き締まった印象となり、ボディに無駄な動きが感じられなくなった。背の高さや重さを感じることが少なくなり、ドライバー以上に、同乗者が快適に過ごせる空間が得られた印象だ。その気になって走りこんでみても、ステアリングの効きが旋回後期までしっかりとついてきて、グイグイ曲がってくれる。大きくロールしてもサスペンションがしっかり路面をつかみ続けてくれている証だろう。
背の高さではエクシーガを超えるフォレスターはロアアームバーのない2点仕様だが、これでも効果てきめん。ステアリングの応答性が高くなり、車重が軽くなったようなコーナリング性能を見せる。ロールが進行する時にグリップ感が抜けていかないのもソリッドタイプのタワーバーと異なるだ。フロントに加えてリアも同様に強化されれば、一層魅力は増すだろう。
スバル車の基本性能の高さは誰もが認めるところだが、そこにSTI PPを装着するだけで走りのしっかり感は驚くほど向上する。ステアフィールや乗り味をもう少しピシッとさせたいと思っている人には、ぜひともオススメしたいアイテムだ。
■スバル エクシーガ 2.0GT(ベース車両) 主要諸元
●全長×全幅×全高:4740×1775×1660mm
●ホイールベース:2750mm
●車両重量:1650kg
●エンジン種類:水平対向4 DOHCターボ
●排気量:1994cc
●最高出力:165kW<225ps>/5600rpm
●最大トルク:326Nm<33.2kgm>/4800rpm
●トランスミッション:5速AT
●駆動方式:フロント縦置き4WD
●タイヤ:215/50R17
●当時の車両価格<税込み>:278万2500円
Posted at 2020/11/26 22:22:10 | |
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富士重工 | 日記
2020年11月26日
名門SUV生産終了の事情 公式でレガシィアウトバック来春終了発表 次期型はどうなる??
スバルのクロスオーバーSUV、レガシィアウトバックの受注が2021年1月24日に終了することが明らかになった。
この情報は、すでに東京地区の販売会社、東京スバルの公式ホームページにも掲載されている。
現行モデルでレガシィアウトバックは生産終了となってしまうのか? それとも次期モデルが用意されているのか?
そこで、次期レガシィアウトバックはどうなるのか? モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。
文/渡辺陽一郎
写真/スバル
【画像ギャラリー】新型レガシィアウトバックはこうなる! 現行モデルとの違いを写真でチェック!
2021年1月24日をもってアウトバックの注文受付を終了!
東京スバルの公式ホームページに掲載されたレガシィアウトバックの受注終了のお知らせ
レガシィアウトバックの現行モデル(2018年8月の改良モデル)。ボディサイズは全長4820×全幅1840×全高1605mm。搭載されるエンジンは175ps/24.0kgmのFB25型2.5L水平対向4気筒エンジン
「レガシィアウトバックは、2021年1月24日をもって、現行モデルの受注生産の受け付けを終了」という告知が、スバルの販売会社のホームページに掲載された。
次期型はどうなるのか。スバルの販売会社の営業マンに尋ねた。
「セダンのレガシィB4は、すでに販売を終了した。2020年1月には、アウトバックの販売も終わる。現行型の受注台数が想定以上に多い場合は、終了する日程が早まることも考えられる。
次期型の投入時期や車両の概要は、メーカーから聞いていない。少なくとも2020年度中(2021年3月まで)に登場することはない。
早くても2021年の後半だと思う。北米では次期レガシィがすでに発売され、エンジンは水平対向4気筒の2.5Lと、2.4Lターボを搭載している。次期レガシィアウトバックの日本仕様には、新型レヴォーグと同じ1.8Lターボを採用する可能性もあるかもしれません」とコメント。
北米では2019年7月からアウトバックの新型が登場している
2019年7月に発売されている北米仕様の新型アウトバック。ボディサイズは全長4860×全幅1855×全高1680mmと、現行モデルとほぼ同じ車格をキープ
北米仕様のアウトバックに搭載されるのは260hp/38.4kgmを発生するFA24型2.4L、水平対向4気筒ターボ
先進運転支援システム、アイサイトの最新版を全グレードに標準装備。フロントガラスにLEDの光を投影し、アイサイト作動状態を直感的に知らせるアイサイトアシストモニターも採用
北米では、2019年7月から新型レガシィアウトバックとレガシィB4を生産している。
判断が難しいのは、次期型のボディ構成だ。現行型はアウトバックとB4を用意したが、次期型では廃止されてアウトバックのみになる可能性もある。
B4を廃止する可能性の根拠は登録台数だ。2019年1~12月の平均を見ると、アウトバックは323台だが、B4は96台に留まった。
ちなみに先代レヴォーグは、2019年の1ヵ月平均で、1060台が登録されている。これに比べるとレガシィアウトバックも低調で、B4はさらに下まわる。セダンの売れ行きが下がった状況も考えると、国内でB4を廃止する可能性は高い。
北米で先行発売された新型レガシィは、現行インプレッサから採用を開始した新しいプラットフォームを使う。新型レヴォーグと同様、フルインナーフレーム構造によってボディ剛性も高く、走行安定性や乗り心地を向上させている。
新型レガシィアウトバックのボディサイズは、北米仕様の場合、全長4860×全幅1855×全高1680mmだ。
プラットフォームは刷新されるが、ボディの大きさは若干拡大される程度で、ホイールベースは2745mmだから同じ数値を踏襲する。
つまり外観デザイン、ボディサイズ、クルマの性格はあまり変えず、走行性能、乗り心地、衝突被害軽減ブレーキなどの安全装備、運転支援機能、衝突安全性などを向上させている。
機能の進化に重点を置いたフルモデルチェンジだ。レヴォーグを含めて、今のスバル車に多く見られる技術指向の刷新になる。
それにしても、北米では新型レガシィを2019年後半から販売しているのに、国内では、2020年の終盤でも旧型を販売している。
この状況で、いまだに新型の国内発売時期が示されていない。スバルの国内市場に対する姿勢は、日本のメーカーとしてどうなのか。
特に今は衝突被害軽減ブレーキ、走行安定性、衝突安全ボディなど、クルマの安全性能が急速に向上している。海外で新型、日本で旧型を売ると、安全性の劣った商品を売ることになってしまう。
現行アコードも同様だ。北米では2017年7月に現行型を発表しながら、日本のデビューはその2年半後だ。国内発売は2020年2月であった。
レガシィやアコードは、かつて国内市場を支える基幹車種だったが、今は海外向けの商品に変わった。
複数の国や地域で売る場合、販売台数の多い順番で発売するのは理解できる。レガシィやアコードは、日本の売れ行きが乏しいから後まわしにされたが、海外に比べて1年以上も遅れるのは行き過ぎだ。
主力車種がフルモデルチェンジを行う周期は、海外では約5年に収まる。アコードのように2年半も遅れると、日本ではフルモデルチェンジ周期の約半分を旧型で過ごす。
日本で販売する次期レガシィはどうなる?
日本で販売されているレガシィアウトバックの現行モデル
北米仕様のアウトバック2020年モデル
日本で販売される次期アウトバックは基本的に今の北米仕様と同様だろうが、エンジンは販売店の指摘通り、新型レヴォーグと同じ1.8Lターボを搭載する可能性がある。
日本の現行アウトバックは175ps/24.0kgmを発生するFB25型2.5L、水平対向4気筒ターボで、北米仕様のアウトバックは260hp/38.4kgmを発生するFA24型2.4L、水平対向4気筒ターボ。新型レヴォーグの1.8Lターボは177ps/30.6kgmに達する。
しかも新型レヴォーグから採用を開始した新しいエンジンだから、先代型の1.6Lターボに比べると、パワーアップに加えて燃料消費量は少ない。
日本のニーズを考えると、1.8Lターボを搭載するメリットは大きい。ボディタイプは、先に述べた通りアウトバックのみに絞られる可能性が高い。
将来の希望的な話をすれば、レヴォーグをベースに、日本仕様のアウトバックが開発されると嬉しい。
レヴォーグは日本向けに開発されたワゴンで、先代型は一時的に欧州でも販売したが、好調な売れ行きには至らなかった。
新型レヴォーグの開発者は「今のところ新型レヴォーグを海外で売る予定はない。そこで全幅を先代型と同様、1.8m以下に抑えるなど、取りまわし性に配慮した。国内市場のためのワゴンを作り上げた」という。
レヴォーグに見られる日本のユーザーに向けた心意気がスバルの本質なら、海外で新型、日本で旧型を売る今のレガシィは矛盾を抱える。
大柄になったレガシィは海外向けにして、レヴォーグをベースにしたミドルサイズのアウトバックを開発すべきだ。そうなればレヴォーグの量産効果も向上する。
もともとレヴォーグは、レガシィが海外向けに変わり、かつてのレガシィツーリングワゴンの後継車種として開発された。
以前のアウトバックは、レガシィツーリングワゴンをベースにしたSUV仕様だった。それなら今の日本のアウトバックは、レヴォーグをベースに作るのが本来のあり方だ。
1994年、北米で発売された初代アウトバック。日本では1995年8月にレガシィグランドワゴンとして発売された
日本で2代目レガシィが発売された後の1994年、北米で当時のレガシィツーリングワゴンをベースにしたSUVの初代アウトバックが発売された。
日本では1995年から、これをレガシィグランドワゴン、レガシィランカスターと車名を変えながら売っている。
1990年代の中盤から後半のSUVは、パジェロ、ハイラックスサーフ、テラノといった後輪駆動ベースの悪路向けが主力だった。
今に通じる前輪駆動ベースのシティ派SUVは、RAV4、CR-V、ハリアーなどの初代モデルがようやく登場した時代だ。
この時にレガシィグランドワゴンやランカスターは、ワゴンの走行安定性とSUVの悪路走破力を両立した先進的な車種として、既に多くのユーザーに愛用されていた。
最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)に200mmの余裕を持たせて悪路のデコボコを乗り越えやすく、運転感覚はワゴンと同様だから、高重心による不安定を意識させない。スバルの安全思想を明確に表現するクルマでもあった。
さらに1999年には、レガシィランカスターADAが発売されている。ステレオカメラを使った運転支援機能が装着され、この機能が進化して今のアイサイトに至る。
このように以前のレガシィツーリングワゴンやレガシィグランドワゴン/ランカスター/アウトバックは、日本のユーザーに愛されるスバルの進歩的な主力商品だった。
そのレガシィが海外向けになり、日本のレヴォーグが登場したなら、アウトバックの日本仕様も是非これをベースに作ってほしい。
現実は北米に遅れて大柄なアウトバックを国内導入すると思うが、期待したいのはさらにその先の開発だ。
レヴォーグをベースにアイサイトXなども搭載する、日本ファーストのアウトバックが熱望されているのだ。
Posted at 2020/11/26 22:15:30 | |
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富士重工 | 日記
2020年11月26日
アイサイトXの実力は?フルモデルチェンジしたスバルの新型「レヴォーグ」のリアルな評価
スバルの新型「レヴォーグ」が話題だ。どんなクルマに仕上がったのか、気になっている方も多いはず。そこで@DIMEから記事を5本厳選して紹介しよう。
スバル「レヴォーグ」はどう進化した?
スバルが新型「レヴォーグ」に搭載されるアイサイトXで目指すもの
スバルのミドルクラスワゴン「レヴォーグ」が10月15日にフルモデルチェンジする。「レヴォーグ」は2014年6月に国内専用モデルとして投入された。日本の道で使いやすいサイズと、スバルの持つ安全装備、4WDの走り、ワゴンへのこだわりなどがユーザーに評価され、国内市場での販売台数でみると現在はスバル車のベストセラーモデルとなっている。その完成度の高さから英国を中心とした欧州市場にも輸出されている人気車だ。
【参考】https://dime.jp/genre/972788/
力強くしなやかに生まれ変わった今秋フルモデルチェンジするスバルの新型「レヴォーグ」の完成度
スバルの社内では「レヴォーグ」の購入を希望するご主人と、ややスポーティーで乗り心地に不満を抱く奥様が他のモデルを挙げることを“家庭内競合”と呼んでいるのだそうだ。奥さんが首をタテに降らなければ(納得してくれなければ)お財布は開かない。そんな時代に、スポーツ性もコンフォート性能も両立したクルマを目指し、新型「レヴォーグ」は開発されたのだという。
【参考】https://dime.jp/genre/973105/
スバルの新型「レヴォーグ」から採用される先進安全運転支援技術アイサイトXの進化と真価
2030年まで自社による死亡事故ゼロを目指すスバル。この秋に発売がスタートする新型「レヴォーグ」は、内外装のデザインをはじめ、車体、動的に係わる性能はもちろんだが、さらにはスバルの先進安全運転支援技術「アイサイト」も格段に進化した「アイサイトX」がこのモデルに初搭載される。
【参考】https://dime.jp/genre/983541/
評価の高さは本物か?乗ってわかった新型「レヴォーグ」の完成度
スバルの新型レヴォーグがまもなく10月15日に正式発売の予定だ。現在先行予約が行われており、多くの受注が入っていると聞く。各ディーラーにはまだ車両は配備されておらず、現在は先行展示イベントが各地で行われている真っ最中だ。そんな新型レヴォーグは注目すべき点は多い。なかでもスバルに初搭載された、「電子制御可変ダンパー」は走りながら、車のキャラクターを変化させ、シチュエーションに合わせた走りができる。そのダンパーを備えた車には、どのようなシーンが似合うのだろうか。
【参考】https://dime.jp/genre/994882/
360度センシングの新世代アイサイトを標準で装備したSUBARUのツーリングワゴン「レヴォーグ」
SUBARUの新型「レヴォーグ」が発表された。新型「レヴォーグ」は、SUBARUに脈々と受け継がれる「より遠くまで、より早く、より快適に、より安全に」というグランドツーリングのDNAを継承。そのうえで、SUBARUの最新技術を結集し、「先進安全」、「スポーティ」、「ワゴン価値」の3つの価値を革新的に進化させたパフォーマンスワゴンだ。
【参考】https://dime.jp/genre/1012686/
文/DIME編集部
新エンジン 新シャシー 新アイサイトで新次元突入の新型レヴォーグ徹底解剖
2020年10月15日、いよいよ(というかようやく?)正式発表となったスバルの新型レヴォーグ。発売も11月26日と、目前に迫った。
発表の日までに積み上げられた先行予約の数は8290台。これだけで新レヴォーグに寄せられた信頼の厚さが推し計れようというものだが、発表会の席上、開発を担当した五島賢プロジェクトゼネラルマネージャーの言葉は、そうした期待に応えて余りあるものだったに違いない。
「新型レヴォーグは次元が違うレベルの走りになった」。五島氏は席上でこんなふうに告げた。この言葉はしかし、ただ単に新しいエンジン、新しいプラットフォーム、そして新アイサイトを組み合わせた新型車に与えられた言葉ではない。
今回は、発表会の様子を交えながら、あらためて新型レヴォーグの魅力に触れるとともに、その「次元の違う走り」を実現した「DNA」についてもお伝えできればと思う。
■NEWレヴォーグの主なポイント
・360度センシングで安全性が進化した新世代アイサイトを標準装備
・フルインナーフレーム構造で進化したプラットフォームを採用
・高度運転支援システム「アイサイトX」採用
・新開発1.8L水平対向4ターボ搭載
【画像ギャラリー】発表会の様子、新型レヴォーグのラインナップを写真で見る
※本稿は2020年10月のものです
文/ベストカー編集部、写真/SUBARU、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2020年11月26日号
■新型エンジン&プラットフォームで劇的進化!
新型レヴォーグが10月15日、ついに正式発表された。今回は日本航空(JAL)の協力により、成田空港A格納庫でボーイング787機の眼前での発表会となった。
ニュルブルクリンク24時間レースへの車両輸送など、スバルとJALの関係はこれまでも築かれてきたが、やはりその根底にあるのはスバルが航空機メーカーとしての流れを汲む自動車メーカーであるということだろう。
10月15日に開催された発表会は、日本航空の協力によって成田空港A格納庫内のボーイング787機の前で行われた
かつて中島飛行機として、一式戦闘機「隼」や零戦を支えた「栄」エンジンの開発/製造をしていたという経歴がスバルにはある。テクノロジーの粋を集めた旧日本軍機たちは、さまざまな制約のなかで生まれた傑作たちだった。
現代ではその航空テクノロジーは旅客機へと移管され、スバルはボーイング787の中央翼を製造している。
そんな航空機製造を担ってきたスバルの根底には「絶対安全」という哲学が創業より流れている。
さらに「すべての移動を感動に」という信条も、スバルと日本航空の共通するアイデンティティ。今回の発表会はそんな両社によるコラボレーションとなった。
ボーイング787機・JALの鶴丸ロゴの前に佇む新型レヴォーグ。胸アツである
■「先行予約8290台」が意味するものとは
ややスバルのヒストリーにアツくなってしまったが、新型レヴォーグにハナシを戻そう。
すでに価格以外のスペック、グレードなどは発表されており、ご存知の人も多いかもしれないが、今回の発表でもっとも驚くべきは2020年8月14日~10月14日まで(2カ月近く)の先行予約台数かもしれない。なんとその数8290台(月販計画台数2200台)。
STIスポーツ…電子制御ダンパーや専用デザインのフロントバンパー、本革シートなどを採用したスポーティな最上級モデル。価格370万7000円~
もちろんプロモーションの成功もあるのだが、その最たる理由はスバルファン、そしてツーリングワゴンを待っているユーザー層にとって「レヴォーグなら間違いない」という意識が定着していることだろう。これもスバルの歴史に裏付けられたもの。
GT-H…充実した快適装備や18インチアルミホイールなどを採用し、スポーティさと上質さを併せ持つ上級グレード。価格332万2000円~
スバルがずっと大切にしているスポーティな乗り味もさることながら、新しい運転支援システム「アイサイトX」の先進安全技術の高さも大きな購買理由になるはずだ。実際に先行予約では約93%のユーザーがアイサイトX装着グレードを選んでいる。
GT…充実の基本装備を採用したスタンダードグレード。ホイールは17インチ。価格310万2000円~
エンジンは全車水平対向4気筒1.8L直噴ターボを搭載し、6グレードでの販売。
カラーはホワイト・パール(有料色)、アイスシルバー・メタリック、マグネタイトグレー・メタリック、クリスタルブラック・シリカ、ピュアレッド、クールグレーカーキ、ラピスブルーパール、そしてSTIグレード専用色としてWRブルー・パールの全8色が用意される。
また先行予約ではSTIスポーツ(EX含む)が全体の57%を占めており、走りに期待するファンが多い証だろう。「スバリスト支持率100%」も夢じゃない気がするほど。
全グレードで177ps/30.6kgmを発揮する新開発の1.8L水平対向4気筒直噴ターボを搭載
プラットフォームはレヴォーグでは、ボディ全体の骨格連続性を高める「フルインナーフレーム構造」などが採用された
■新世代「アイサイト」の先進機能が魅力
新開発の広角ステレオカメラと前後4つのレーダーの組み合わせで360度センシングを実現する先進安全システムの「新世代アイサイト」は全車に標準装備。
見通しの悪い交差点などでの出会い頭の衝突回避をサポートする前側方プリクラッシュブレーキや、ステアリング制御もあわせてサポートする緊急時プリクラッシュステアリングなどを搭載。
新世代へと進化した「アイサイト」
■新開発の「アイサイトX」も選べる
さらに、GT EXやGT-H EX、STIスポーツ EXの各モデルを選ぶと新開発の先進運転支援システム「アイサイトX」が装備される。
一定の条件を満たした自動車専用道路において、運転支援機能が大幅に拡張。
渋滞時(0hm/h~約50km/h)ではステアリングから手を放すことが可能になる渋滞時ハンズオフアシスト機能などが搭載されている。
新開発の先進運転支援システム「アイサイトX」
■新型レヴォーグに織り込まれた「蒼きDNA」
新型レヴォーグの開発責任者である五島賢氏。10月15日の発表会ではスバル中村知美社長の次にスピーチを行ったのだが、終始一貫して感じたことは「あふれ出る自信」だった。
「新型レヴォーグは次元が違うレベルの走りになった」と述べ「この走りを一度体験すればお客様の心の導火線に火が付きます」と力強いワードでスピーチを続けたのが印象的。
11.6インチセンターインフォメーションディスプレイはEXグレード以外はオプション設定
新開発の1.8Lエンジン、前述のアイサイトX、そして新たにフルインナーフレーム構造を取り入れたプラットフォームを採用しており、それら技術面での大きな進化に裏付けられた発言であることは明白だ。
しかし「次元が違う」というのは非常に勇気の要るスピーチにも思える。その発言ができた最も大きな理由は五島氏スピーチの次の一説に隠されていたように思う。
上質感を追求した室内。疲れにくい快適性とスポーティな走りにも対応したホールド性を両立したフロントシートを装備
「私の祖父は中島飛行機に勤め、父は富士重工、そして私はSUBARUに。航空機メーカーとしてのDNAを3代にわたり受け継いでいます。そんな私に流れる“蒼きDNA”が、この新型レヴォーグを作らせてくれたのかもしれません」。
親子3代にわたりスバルに勤務していることもあり、きっとスバルイズムを自然に幼いころから叩き込まれていたであろう五島氏。その集大成が新型レヴォーグかもしれない。
ラゲッジスペースはVDA方式で492Lの大容量を確保。フロアボード下に69Lの収納空間もある
最近は北米重視という批判もあったスバルだが、新型レヴォーグの車幅が1795mmに抑えられていることなどを見るに、そんな批判を一蹴してしまう商品力に溢れている。
「最新技術はマザーマーケットの日本から導入する」という中村社長の言葉からもわかるように、少なくとも今のスバルは国内市場を軽視していないことが新型レヴォーグからはビシビシ伝わってきた。
発売開始は11月26日、スバル広報部発表の公式最新情報では「年内納車開始」となっている。
前述したようにすでに8000台超のオーダーを抱えており、早く欲しい人はディーラーに急いだほうがいいかもしれない。
ここまでやるか新型レヴォーグ! 高評価連発の「アイサイトX」の凄すぎるところ3つ
試乗した多くの人が新型レヴォーグを絶賛!
新型レヴォーグに搭載されるSUBARUの最先端運転支援システム「アイサイトX」。ジャーナリストや一般ユーチューバーなど、試乗した人たちから幅広く高い評価を受けており、試乗したほぼすべての人が絶賛している。
ここでは「アイサイトX」の少し細かい部分を探りながら、スゴイところをピックアップしてみた。
1)フロントガラスの「防曇システム」を採用
アイサイトXは、2機のステレオカメラ、前側方レーダ、3D高精度地図ユニットを組み合わせ、さらに車両の前側方に搭載されるミリ波レーダーを装備して周辺の交通状況を検知しているが、1990年代に実用化したADA以来、今でも重要なのが2機のステレオカメラから得られる前方視界だ。これを安定的に確保するため、ステレオカメラ前方のフロントガラス内側を除曇するシステムを新採用している。
曇りを取るためのヒーターをカメラのレンズフード下面に貼りつけ、レンズフード越しにフロントガラスを加熱するというもの。車外の気温やエアコンの作動状況などのさまざまな情報をもとに、フロントガラスの曇りやすさを推定。カメラ自身がフロントガラスの曇りやすい状況を判断したり検知しながら、必要に応じて温めて曇りを防止、または除去する。3代目レガシィランカスターの時代からステレオカメラによる運転支援システムを実用化してきたパイオニアならではの工夫がみられる。
ちなみに、アイサイトXのカメラの視野角は従来比で2倍弱も拡大。カメラはフロントガラスにマウントされるようになっているが、たとえば飛び石などでフロントガラスの交換が必要になった場合でも、ガラスの交換コストや手間は従来型と変わらないという。
2)誰もが感動する「自然な制御」は、ドライバーの運転操作を徹底的に解析した賜物
オートクルーズ作動時の加減速や、ステアリング操舵制御、また自動ブレーキの作動など、アイサイトXの制御は機械的な感覚ではなく、まるで運転上手な人間が操作しているかなのように感じられることで多くの人から賞賛されている。この、あらゆる場面で滑らかな挙動がもたらす「制御の自然さ」は、過去のアイサイトでも大きな美点として高く評価されてきたが、ハンズフリーアシストや自動車線変更制御など、より踏み込んだ運転支援システムに進化してもなお、制御の自然さが劇的に増したことでも高評価を受けている。
安定的に高精度、誤作動の少なさなどの基本性能を高いレベルで確保した上で、違和感のないフィーリングを追求する姿勢は、SUBARUが長年に渡る運転支援システムの開発で貫き続けたものだ。
ステアリングはエンジニアの執念の結晶
たとえば、片側2車線以上の自動車専用道路を70~120km/hで走行中に作動する「アクティブレーンチェンジアシスト」。ウインカーを出すだけで自動で車線変更を行う機能だが、この機能でもクルマ側が行う車線変更の巧みさがすこぶる好評である。
SUBARUは昔から運転スキルの高いドライバーの運転操作の解析を続けてきたが、アイサイトXでもテストドライバーの車線変更時の膨大な寮のデータをもとに、隣車線に向けたハンドルの切り出し角の最大値や、隣車線に移動後に収束するための切り戻し操作を精密に解析。横方向の加速度の不連続性を徹底的に抑えることで、まるでベテランドライバーが運転してるかのような自然な操舵フィーリングを実現した。
また、隣車線は並走車に隠されたり、夜間はヘッドライトの照射距離が届きにくいなど、安定して認識することが困難と言われるが、新型ステレオカメラの撮像画像の明るさの最適化や、道路の形状を推定する機能の高精度化などにより、あらゆる環境で隣車線を安定して認識できる技術を実現している。
3)こだわり抜いたタッチセンサー付きのステアリングホイール
高速道路での渋滞時など、特定の条件下で高度なハンズフリー運転を実現したアイサイトX。ステアリングには、ドライバーがちゃんと握っているかどうかを検知するタッチセンサーが備わるが、じつはこのステアリングはエンジニアの執念の結晶とも言える逸品パーツに仕上がっている。
まず、新型レヴォーグはステアリングそのものの質感やデザイン性に強くこだわり、握りやすく、手に馴染みやすくするためのさまざまな工夫が凝らされているが、その質感や操作性を一切損ねることなく、タッチセンサーの精度や耐久性を徹底的に追求した。
ステアリングホイール周囲環境の、温度や湿度の変動に伴う静電容量値の変動追従性を突き詰めたことをはじめ、マイナス20度の極寒から50度の灼熱まで、あらゆる環境下での作動や耐久性を確認。
成人男性の平均握力による負荷が長期間加えられることも想定し、質感の劣化はもちろん、長期間の過酷な状況での使用にも耐えながら機能を確保し続ける耐久性を実現したという。
運転支援システムや液晶メーターなど、ハイテクデバイス化が進むと、将来の耐久性に不安を感じるものだが、SUBARU車のユーザーは他銘ユーザーよりも平均保有年月が比較的長く、走行距離も伸びがちとなる傾向がみられるため、耐久性の確保にも抜かりなくこだわり抜いたという。アイサイトVer.1~2を搭載する少し旧世代のSUBARU車をみても、アイサイトが壊れて使用不能となるケースはほとんど見られない。さらにいえば、2003年式の4代目レガシィ3.0Rに搭載されたアイサイトの前身システムADA(ミリ波レーダー搭載)も、今でも立派に作動している個体がほとんどだ(そもそも売れた数は少ないが)。
2020年のコスパNo.1モデル!?ロングドライブでわかったスバル「レヴォーグ」が評価される理由
2020年、国産新型車の超目玉の1台が、スバル・レヴォーグだろう。これまでテストコースやサーキットでの試乗会が行われてきたが、いよいよ公道を走る機会を得た。それも東京・恵比寿から軽井沢・鬼押し出しに至る約200kmの行程で、GT-H EX、STIスポーツEXの2台のステアリングを握り、一般道、高速道路、ワインディングロードを走破できることができた。
ここでは新型レヴォーグのパッケージ、大きく進化したアイサイトXを含む先進安全運転支援機能やステーションワゴンならではの使い勝手面について報告したい。
まず、簡単に新型レヴォーグをおさらいしておくと、ボディサイズは全長4755×全幅1795×全高1500mm。ホイールベース2670mm。つまり、全長とホイールベースが延長されたほかは、先代と同数値。とくに全幅を1800mm以下に抑えたことは、日本の道での扱いやすさに直結。全高1500mmは立体駐車場への入庫容易性につながり、まさに日本でのジャストサイズのスポーツワゴンになっている。
ホイールベース+25mmは、すべて後席のニースペースにあてられ、よりゆったりと座れる後席居住空間を実現している。
パワーユニットは先代の1.6L、2Lに対して、水平対向1.8L直噴ターボ1本となった。スペックは177ps、30.6kg-m。最高出力よりも最大トルクの増大が目玉であり、より実燃費近いWLTCモード燃費は主要グレードで13.6km/Lである。
コクピットは12.3インチのフル液晶メーターと11・6インチの縦型ディスプレーが基本のデジタルコクピットだ。
そして、大きなハイライトとして話題になっているのが、「ぶつからないクルマ」アイサイトを進化させたアイサイトXの新採用だ。ステレオカメラの性能を大きく向上させるとともに、後方左右の側方レーダー、前方左右の前側方レーダーを追加。他車、歩行者、自転車にも対応。見通しの悪い交差点、駐車場からの出庫などで頭を出した時、横ほうからのクルマや自転車も認識する。電動ブースターによるブレーキまでかかる仕組みである。また、ステアリング回避機能、車線変更中止機能なども加わる。
さらに注目すべきは、GPS、天頂衛星を受信することで可能になる3D高精度地図データによって、自動車線変更、カーブ&料金所前での自動減速なども実現。高速道路での渋滞時には50km/h以下でハンズオフ走行&発進アシストまで可能にしているのだからすごい。将来の自動運転にまた一歩、近づいたことになる。
DCM=車載専用通信機を装備しているため、「スバルつながる安心パッケージ」として、緊急時、あおり運転被害時に有効なヘルプネット、SOSコールや車両のトラブル時に助かるスバルiコール(安心ホットライン)も用意。まさに、運転初心者からベテランドライバー、シニアドライバーまでをフォローする、絶大なる安心にも包まれた先進車と言っていい。※「以上のスバルつながる安心パッケージ」の利用料は新車時から5年間無料。以降、年間5500円(消費税10%の場合)。
新型レヴォーグは後席の居住性も向上。ホイールベースの先代比+25mmをそのままニースペースにあてたことはすでに報告済だが、身長172cmの筆者のドライビングポジション背後でのニースペースは先代の175mmに対して200mmと、かなりゆったり座れるようになっている。また、シートの座面長も18mm長くなり、着座面裏面のウレタン厚を6mmUP。同時に、フロアからシートまでの高さ=ヒール段差を新旧型実測で25mmほど高め、より椅子感覚の自然な着座姿勢が取れるようになったことも褒められる。ついにレガシイのような後席エアコン吹き出し口を完備したことも含め、一段と快適かつリラックスできる後席居住空間を得たことになる(フロアにセンタートンネルがあるため2名乗車推奨)。
もちろん、レヴォーグはステーションワゴンであり、ラゲッジスペースの使い勝手も気になるところだが、フロア奥行き1070mm以外はすべて拡大。先代比+10LのVDA容量492Lを確保し、ゴルフバック4セット、4人分のアウトドアグッズを、後方視界を確保した上で積み込むことができるという。
さらに床下には69Lものサブトランクを備え(機内満ち込みキャリーバッグがすっぽり入る)、リヤエンブレムに手やひじをかざすだけでバックドアが開く新開発パワーリヤゲートは、両手に荷物を持っているとき、両手にペットをひいているときなど、もう身に染みる便利さである。
後席格納によって完全にフラットになるラゲッジスペースの拡大性(新型はフロア奥行き約1640mm。後席背面までなら約2000mm)は、先代も文句なしだったが、新型はさらに機能的になっている。そう、後席背もたれが6:4分割から4:2:4分割となり、センターの2部分のみ倒し、アームレストとして活用できるとともに、センタースルー機能でスキー板のような長尺物を車内側に積み込め、また大型犬などペットをラゲッジルームに乗せなくてはならない場合でも、エアコンの風が届きやすく、また後席の飼い主とのアイコンタクトが容易になり、お互い安心してレヴォーグのドライブを楽しむことができるというわけだ。
新型レヴォーグの進化、新しさはそれだけにとどまらない。例えば、STIスポーツの11.6インチセンターインフォメーションディスプレー搭載車なら、コンフォート、ノーマル、スポーツ、スポーツ+、インディビジュアルの5つのドライブモード(パワーユニット、ステアリング、サスペンション、AWD、アイサイト、エアコンの調整可)を好みに合わせてセッティングできるだけでなく、インディビジュアルモードでは5人分の個別のドライブモードセッティング、エアコンの調整を記憶、パーソナライズ可能で、なんと顔認識!!で呼び出せるのである(ドライブモードセレクトなしのグレードではエアコンのみ可能)。
実際にアイサイトXを含む新型レヴォーグの機能をすべて使いこなせるようになるには、まるでパソコンやスマホの取扱説明書とにらめっこするような準備、理解が必要だが、すべてを扱えるようになった暁には、素晴らしく便利で安全、快適な、自分好みのパーソナルなレヴォーグになっているに違いない。
つまり、新型レヴォーグの魅力を、機能を最大限に得るためには、アイサイトX搭載グレード、11.6インチセンターインフォメーションディスプレー装着グレードかベスト、ということであり、非装着車との価格差を大きく縮める先進性、満足度がそこにある、ということだ。
先行予約では、グレード別予約率で、STIスポーツEXが54%、GT-H EXが31%で(STIスポーツ2グレード計で57%)、アイサイトX選択率は93%に達するという。なお、新型レヴォーグGT-H EX、STIスポーツEXの試乗インプレッションについては、別途、お届けしたい。
スバル・レヴォーグ
https://www.subaru.jp/levorg/levorg/
文/青山尚暉
モータージャーナリスト。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車専門誌の編集を経て、現在、モータージャーナリスト、愛犬との快適安心なカーライフを提案するドッグライフプロデューサーのふたつの肩書を持つ。小学館PETomorrowでも「わんこと行くクルマ旅」を連載中。最新刊に「愛犬と乗るクルマ」がある。
一般道、高速道路、峠道を走ってわかったスバル新型「レヴォーグ」の完成度
2020年に大注目すべき国産新型車の1台が、スバル・レヴォーグだ。これまでテストコースやサーキットでの試乗会が行われてきたが、いよいよ公道を走る機会を得ることができた。走行ルートは東京・恵比寿から軽井沢・鬼押し出しに至る約200kmの行程。GT-H EX、STIスポーツEXの2台を、一般道、高速道路、ワインディングロードで走らせた。
最初に言っておくと、新型レヴォーグのパワーユニットは1.8L直噴ターボ1種類で、タイヤもヨコハマブルーアース1銘柄(GTとGT-EXは215/50R17、GT-HとGT-H EX、STIスポーツは225/45R18)だが、今回、試乗したGT-H EX(370.7万円)とSTIスポーツ(409.2万円)とでは、ドライブフィールが微妙に異なっていた。
世界的にも採用例の少ない水平対向エンジンは、どちらのグレードでも「電動車かっ」と驚くほどスムーズかつ静かに回る。水平対向エンジン独特のビートを感じさせてくれるのは走り出し、低回転域のみ・・・というのは、スバルファンとしては物足りないかも知れないが(車内でも議論があったとか)、とにもかくにも30.6kg-mに増大した圧巻のトルクの厚みと雑味が一切ない上質な回転フィール、十二分な加速力を、抜群のレスポンスとともに味わせてくれるのだ。まさに新感覚、新世代のスバル車と言っていい。
GT-H EX、STIスポーツとの違いは、まず、乗り心地である。STIスポーツのほうが、かなりレベルの高い話で、とくに荒れた路面、ザラついた路面、段差越えなどでのマイルドさ、収まり、フラット感に優れる。そしてタイヤが発するロードノイズも、比べれば圧倒的に静か。その理由は、リヤサスにある。STIスポーツはZF製の電子制御可変ダンパー、それ以外のグレードはカヤバ製のコンベンショナルなダンパーを用いているのだが、電子制御可変ダンパーはドライブモードで3段階にダンピングを変更できるだけでなく、ステアリングを切った瞬間(角度)、路面からの入力が入った瞬間、Gを検知した瞬間などに4輪を瞬時に電子制御=アダプティブ制御する。つまり、クルマの動き、入力に対して即時に反応し、最適制御してくれる。結果、乗り心地はもちろん、パワーステアリングの制御の違いもあって(STIスポーツは操舵力がより重めでセンターがよりしっかりしていて、レスポンス、保舵感に優れる)、安定感、直進感の良さを、かなりレベルの高いところで、さらにワンランク高めてくれるのだ。
ロードノイズに関しては、リヤサスペンションの構造上の違いによって、STIスポーツのほうは高周波のロードノイズをカット。速度域、路面にかかわらず驚くほど静かな走りを実現している。その理由は、標準サスはゴムブッシュとスチールハウジングを用いているのだが、STIスポーツは、高周波ノイズをカットしやすいウレタンブッシュ、アルミハウジングが奢られているからだ。STIスポーツはZF製の電子制御可変ダンパーを使っているため可変幅が広く、低速域で路面から入ってくる高周波ノイズが目立ちがちで、ウレタンブッシュ、アルミハウジングが大きな効果を発揮するのだという。
先代に対して、総合的な走りの質感が飛躍的にアップした理由の一つが車内の静粛性で、先に触れたロードノイズの遮断性能(STIスポーツがより優れる)に加え、ボディ剛性の高さ、そしてエンジンのトルクアップによって、常に低回転で走れることもその要因として考えられる。実際、高速走行でも1500回転以下で走っているシーンがほとんどで、高級サルーンさながらの快適で上質無比なクルージングを堪能できた。
首都高速では渋滞に巻込まれたが、アイサイトX搭載車なら、結論として渋滞さえも楽しみに変わる。そう、50km/h以下で作動するハンズオフドライブだ。完全に停止したあとも自動で再発進してくれるところが、ペダルまたはスイッチ操作が必要な渋滞追従機能&停止保持機能付きACCとの違い、先進的便利さだ。実際、渋滞ハンズオフ運転中は、前をしっかり見ていればOK(カメラが監視している)。ペットボトルの蓋を開ける、鼻をかむ・・・といったことも両手でできたりする。その際の減速、追従性能も文句なし。実にドライバーの意図をくんだようなスムーズかつ頼りがいある制御で、無論、アクセルを踏み増したくなるような場面はなかった。
軽井沢に向かう関越道、上信越道では高精度3Dマップ、GPS、準天頂衛星受信によるアイサイトXによる車両の周囲360度をステレオカメラ、前後4つのレーダーによってセンシングし続けてくれる安心感に満ちたクルージング、追従走行の本領を確認。加減速は素晴らしくスムーズ、というより、ペダルコントロールに長けたベテランドライバーの領域。アイサイトXまかせにしておけば、クルマ酔いしやすい乗員も安心だと思われる。
さらにアイサイトの設定速度では曲がれないとクルマが判断すれば、メーター内にカーブ警告のアイコンが点灯。自動で速度を落としてくれるし、料金所に近づけば料金所マークが点灯、自動で減速し、最適速度で通過してくれるのだから素晴らしい。これまでのACC機能では、カーブも料金所(先行車がいない場合)も、設定速度のまま突っ込んでしまうのだ。この違いは大きすぎる。
そして問題はそこからで、前車に追従して料金所ゲートを安全速度で通過後、のろり、そろりと再加速するACCもある中で、アイサイトXの再加速性能は、トルキーでレスポンシブルなエンジン性能もあって、実に活発かつスムーズに加速してくれるから気持ちいい。思わずアクセルを踏み増したくなるようなことは1度もなかった。
自動レーンチェンジも試したが、アイサイトXのすべての機能が12.3インチのフル液晶メーター内の的確な表示で実に分かりやすく安心できる。この自動レーンチェンジにしても、終始、自車左右後方の車両を検知してくれているため、左右どちらのレーンに車線変更できるのかが一目瞭然。レーンチェンジ可能なレーンが標示されれば、ウインカーを最後まできっちり倒せば、自動レーンチェンジ開始。完了すれば、ウインカーは自動で戻る。
ここで褒められるべきは、レーンチェンジのスムーズさ。一般ドライバーだとレーンチェンジ完了時に、いわゆる「おつり」がくる揺り戻し挙動が発生しがちだが、アイサイトXの自動レーンチェンジは、これまたベテランドライバーが、レーンチェンジしたことを気づかせないほどスムーズにレ―チェンジしているかのような挙動かつ、極めて安全に自動完結してくれるのである。
新型レヴォーグは基本的な運動性能、つまり直進性や安定感、電動ブレーキブースター採用による減速性能も恐れ入るほど見事だが、GT-H EXとSTIスポーツの両車を乗り比べると、ステアリングフィール、乗り心地、静粛性で、後者がより優れていると感じた。STIスポーツを知らなければ、GT系でも大満足できることは間違いないのは確かなのだが・・・。
その理由として挙げられるのが、まずはSTIスポーツの特権として備わる、SIドライブから進化したドライブモードセレクトの存在だ。コンフォート、ノーマル、スポーツ、スポーツ+、そしてパワーユニット、ステアリング、サスペンション、AWD、アイサイト、エアコンを好みにセッティングできるインディビジュアルの5つのモードから選べ、コンフォートからスポーツ+までのセレクトで、ドライブフィールに確かな差があるのが好印象。それぞれの差が微小だと、宝の持ち腐れになりがちなのだ。例えば、コンフォートの快適さに満足しつつ、山道でスポーツやスポーツ+に、ディスプレー上でセットすれば、パワー、ステアリングフィール、乗り心地、AWDの効きなどまで可変し、ダイナミックで痛快なスポーツ走行が可能になる。とくにパワーステアリングの制御が素晴らしく、センターからの遊びゼロに等しいレスポンス、スムーズで頼りがいある操舵フィール、ノーズをきっちり思い通りにスパッと向けられる人車一体感、トレース性能は、STIスポーツならではだった。ちなみにGT-H EXの操縦性は、より万人向けの、扱いやすさを重視した操舵フィールになる。
ただ、正直に言って、アイサイトXやドライブモードセレクトの使いこなしは、パソコンやスマホ、タブレットの操作などになれている人にとってはすぐに飲み込める操作、機能だが、覚えることが多く、使って有益な頭の硬いシニアドライバーが、どこまで使いこなせるかは、担当セールスの教え方、取説の読み込み次第・・・という印象も持てた。
上信越道碓井軽井沢ICを下り、直進すると、そこからはプリンス通りに至るバイパス、絶景のワインディングロードだ。ここではSTIスポーツのアダプティブ電子制御可変サスペンションが大いなる威力を発揮。ドライブモードセレクトをスポーツにセットしたことは言うまでもないが、盛り上がるパワー、シャープでリニアなステアリング、引き締まった足回りによって、上り坂をぐいぐいと余裕たっぷりに走り、上質でハイレベルすぎるフラット極まる乗り心地、意のままの操縦感覚、回頭感、まるで路面をなめるような安定感、低重心感たっぷりのスポーティな操縦性の気持ち良さを堪能することができた。水平対向エンジンが先代より40mm後方=車体中心寄りにレイアウトされていることも、回頭性の良さを高めているはずである。しかも、エンジンを高回転まで回しても、終始、車内は静かそのもの。運動性能、走りの質感、快適性の高さ、進化に改めて驚かされたのだ。
東京~軽井沢の入り口までの約170kmのドライブも、そうした新型レヴォーグの基本性能の驚くべき高さ、アイサイトXによる絶大なる安心感、SOSコールやスバルiコール(安心ホットライン)、先進機能、そしてシートの体をすっぽり包み込むような快適感あるかけ心地、自然なサポート性の良さもあって、肉体的、精神的疲労度皆無で走破、楽しむことができたのである。
なお、東京~軽井沢間の実燃費はWLTCモード13.6kmに迫る約12kmを記録。ちなみに、開発陣になぜ電動化しなかったのか?と聞いたところ、「レヴォーグはグランドツアラーというキャラクターで、高速主体の走りで使われることが多く想定され、フォレスターやXVなどに用意されているマイルドハイブリッドでは費用対効果が薄い」と説明してくれたのだが、純ガソリンターボ車、それもAWDのクルマをけっこう活発に走らせて12km台の実燃費なら納得できるというものではないだろうか。
新型レヴォーグで丸1日、ロングドライブを経験した結論としては、やはりベストグレードは、フルデジタルコクピット、ZF製電子制御可変ダンパー、アイサイトXが付くSTIスポーツEX(409・2万円)だと強く感じた。GT-H EX(370.7万円)との38万5000円の価格差は、ZF製電子制御ダンパー、ドライブモードセレクト、顔認証システムの拡大、レザーシートなどの装備類の違いで、とくに先進的な機能、より高次元の走りを望むユーザーにとっては、考え方によってはかなり圧縮されると断言できる。
スポーティで先進感あるクルマを望み、先進運転支援機能、乗り心地や車内の静かさ、動的質感、つながる安心=コネクテッド機能、そしてアウトドアやキャンプ、ペットとのドライブでも使い勝手のいいユーティリティーにも妥協せず、最善の安心、「ぶつからないクルマ」を手に入れたい・・・そんなわがまますぎる要望のほぼすべてをかなえてくれるのが、ズバリ、新型レヴォーグである。クルマ移動の守備範囲が劇的に広がる、新しい日常にも、ぴったりの1台だと感じたのも本当だ。
また、愛犬とドライブする機会の多いユーザーにも、新型レヴォーグSTIスポーツEXは、走行性能とは別のところ(快適性や静粛性、姿勢変化の少なさ、犬の乗り降りのしやすさなど)でも、格好の選択になりうると思えた。
写真は先代レヴォーグと筆者の愛犬
スバル・レヴォーグ
https://www.subaru.jp/levorg/levorg/
文/青山尚暉
モータージャーナリスト。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車専門誌の編集を経て、現在、モータージャーナリスト、愛犬との快適安心なカーライフを提案するドッグライフプロデューサーのふたつの肩書を持つ。小学館PETomorrowでも「わんこと行くクルマ旅」を連載中。最新刊に「愛犬と乗るクルマ」がある。
Posted at 2020/11/26 22:11:50 | |
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富士重工 | 日記
2020年11月26日
ターボ復活! “刺激”は控えめに──新型スバル・フォレスターSPORT試乗記
スバルのSUV「フォレスター」にターボエンジン搭載モデルが復活した! クローズドコースで試乗した小川フミオの印象は?
力強いエンジン
スバルはSUV「フォレスター」に1.8リッター水平対向4気筒ガソリンターボ・エンジン搭載の「SPORT」を新設定し、2020年10月23日から販売を始めた。さっそく試乗してみると、オフロードで高い走破性を発揮するフォレスターに、オンロードでの使い勝手のよいモデルがくわわった、と、知れた。
フォレスターといえば、歴代モデルに設定されていたターボ、あるいはチューンナップされたSTiターボが人気を集めていた。高性能SUVという希有なコンセプトでファンの評価は高かったものの、男っぽすぎて女子ウケはいまひとつだった印象がある。
Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasui今回の5代目に設定されたSPORTは、スタイリングから走りまで、洗練度があがっている。幅広いユーザーを対象にしている印象で、プジョーやフォルクスワーゲンなど輸入車からの乗り換えを考えているひとも、すんなり受け入れられるだろう。
フォレスターSPORTに搭載されたターボエンジンは、1795ccの水平対向4気筒。最高出力は130kW(177ps)、最大トルクは300Nmで、AWD(全輪駆動)システムと組み合わせられる。新型レヴォーグに搭載されるのと、おなじエンジンだ。
従来、5代目フォレスターにも用意されていた2.5リッター水平対向4気筒ガソリンエンジンは廃止。フォレスターのエンジンはいま、2.0リッター水平対向4気筒ガソリン・エンジンに、発進時などに小型モーターがサポートするシステムを組み合わせたマイルド・ハイブリッド(e-BOXER)と、この1.8リッターターボの2本立てになった。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasui1.8リッターターボエンジンの特徴は、最大トルクを1600rpmから発生させ、「低回転域(定速域)での使い勝手のよさを重視」(SUBARUの広報担当者)したところにあるという。
ふだんの走行時、アクセルペダルを踏み込んでいない負荷のない状態でも、2000rpmあたりでエンジン回転をキープするように変速機が設定されている。そのため、アクセルペダルを軽く踏み込んだだけで、1570kgの車体はすっと気持よく前に出る。
エンジン回転をあげていくと、2500rpmを超えるところから、ターボチャージャーによるパワーが炸裂。車両は強い力で押しだされていく。従来の2.5リッターは自然吸気型だったので、アクセルペダルの踏みこみ量に応じて徐々にトルクが”積み増し”されていく感覚だったのと対照的だ。
Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasui専用開発のコイルスプリングとダンパー
はっきりいって、私はこれまでフォレスターに使われていた2.5リッターエンジンをそれほど評価していなかった。排気量のわりにパワーが不足している感があったからだ。燃料消費量も、メーカー公表値はリッター13.2km(WLTC)であるいっぽう、私の経験では、実際にはリッター10km前後だった。
今回の1.8リッターターボエンジンは設計が新しいぶん、低回転域から高回転域まで、アクセルペダルの踏みかたに敏感に反応してくれるのがよい。リニアトロニックとSUBARUが名づけた、ギアでなくベルトを使った無段変速機も、ドライバーの意図をしっかり汲んでくれ、いきなり加速してももたつくことがなかった。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasuiメーカー公表の燃費は13.6km/Lと、2.5リッターとあまり変わらないのは、さきに触れたように、エンジン回転を高めに維持する設定ゆえだろう。市街地でも、加速性がよいパワフルな走りにこだわったぶん、燃費はいまひとつである。でも、燃費がすべてではないので、ユーザーが判断すればよいだろう。
専用開発のコイルスプリングとダンパーを与えられたSPORTでは、ステアリング・ホイールを切ったときの車体のロールは抑えている。
なにはともあれ、いまのSUBARUは、運転が楽しめるモデルづくりに注力しているかんじがある。フォレスターSPORTも例外でない。そこが私は気に入っている。
Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasui嬉しい選択
エクステリアでは、ブラックのフロントグリルや、ダークメタリックのアルミホイールが専用装備。内装では、乗員のからだが滑りにくい人工皮革の「ウルトラスエード」と本革のコンビネーションシートを採用し、上質感と機能性の両立をはかっている。
ドライバーモニタリングシステムが標準装備されているので、複数のドライバーでこのクルマを使う状況では、かなり便利なはずだ。ドライバーが乗り込むと、ダッシュボード中央上部に内蔵されたカメラによる顔認証システムが作動。登録ドライバーのばあい、シートポジション、ドアミラー角度、空調の温度設定などを自動的に再現する。スウィッチ操作が不要になるので便利だ。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasui価格は328万9000円で、e-BOXERユニット搭載の「Touring」(291万5000円)、同じく「X-BREAK」(今回からの新設定で305万8000円)、そして「Advance」(315万7000円)とうまくつながるような設定である。e-BOXER車も力があって、ドライブを楽しめるだけに、悩ましい、いや嬉しい選択だ。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasui文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)
Posted at 2020/11/26 22:05:54 | |
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富士重工 | 日記