2020年12月03日
レヴォーグはレガシィの正統な後継車か? 5代目ツーリングワゴンと徹底比較した!
引き締まったボディだが後席は大人が足が組めるほどゆったり
スバル・レヴォーグが2代目の新型になった。先代に対して走りの進化は著しく、12.3インチのフル液晶メーターと11.6インチの縦型ディスプレーが基本のデジタルコクピットを採用。ついにハンズオフドライブを可能にした、3D高精度地図を用いたアイサイトXの搭載、またSTIスポーツのドライブモードセレクト、それをエアコン調整などとセットで顔認証システムを実現するなど、まさに先進のスポーツワゴンとしてデビューしたのである。
もちろん、初代=先代レヴォーグとの比較も大切だが、ここではレヴォーグが日本市場においてレガシィツーリングワゴンの実質的な後継車であることに注目し、新型レヴォーグと、国内最終型の5代目レガシィツーリングワゴン(2009-2014)を比較してみた。
まずはボディサイズだ。北米市場を見据えて大型化された5代目レガシィツーリングワゴンは全長4775×全幅1780×全高1535mm、ホイールベース2750mmだった。新型レヴォーグが全長4755×全幅1795×全高1500mm、ホイールベース2670mmだから、レヴォーグのボディサイズは20mm短く、15mm幅広く、35mm低く、ホイールベースは80mm短い……ということになる。
パッケージングはどうか。身長172cmの筆者が5代目レガシィツーリングワゴンでドライビングポジションを決め、その背後に座ると、頭上に175mm、膝まわりに270mmものスペースがあった。一方、新型レヴォーグは同120mm、200mm(先代レヴォーグは同130mm、175mm)だから、さすがにクラス上のレガシィツーリングワゴンのほうが後席にゆとりがあったことがわかる。とはいえ、先代よりホイールベースを25mm伸ばし、そのすべてを後席居住スペースにあてた新型レヴォーグの後席でも、ボクの体形なら足が組めるほどゆったりできるのも事実。
では、ワゴンとして重要なラゲッジスペースはどうだろうか。5代目レガシィツーリングワゴンは開口部地上高565mm、フロア奥行き1125mm、最小幅1080mm、天井高1130mm、後席格納時のフロア長は1970mm。
新型レヴォーグは開口部地上高630mm、フロア奥行き1070mm、最小幅1065mm、天井高770mm、後席格納時のフロア長1640mm(すべて筆者の実測値)と、先代とほぼ同じスペースは、レガシィツーリングワゴンに敵わない。開口部の低さ=重い荷物の出し入れのしやすさでも、レガシィツーリングワゴンが上まわる。もっとも新型レヴォーグのラゲッジスペースは床下に機内持ち込みサイズのキャリーバッグがすっぽり入る収納を備え、最大561リットル(VDA)もの容量があり、アウトドアなどでの荷物の積載にも十分に対応してくれるはずである。
パワーユニットについては、5代目レガシィツーリングワゴンには2.5リッターと2リッターターボがあり、新型レヴォーグの1.8リッターターボに近い2リッターターボと比較すると、レヴォーグは177馬力/30.6kg-m。5代目レガシィツーリングワゴンの2.0GT DITアイサイトは280馬力/36.7kg-m。だが、大人しめの2.5リッターモデルは173馬力/24.0kg-mだったので、新型レヴォーグは5代目レガシィツーリングワゴンの2.5リッターモデルを遥かにしのぐスペックを、ほぼ同等の車重にして備えていることになる。
ファンによってはボクサーエンジンらしさが薄れたと感じるかも
さて、肝心の走りについてはどうだろう。年代が大きく異なるので直接比較はできないものの、5代目レガシィツーリングワゴンの乗り心地は当時としては素晴らしく、それでいてまるで路面がすぐ近くにあるような、歴代レガシィツーリングワゴンならではの低重心感覚、路面との確実なコンタクト感を持ちながら、しなやかで快適なタッチが基本だった。
エンジンはゆっくり走っている限り、じつに静か。それでもアクセルペダルを踏み込めば、かつての水平対向ユニットほどではないにしても、フラット4独特の鼓動をダイレクトに伝えつつ、滑らかに、パワフルに、ターボエンジンであればターボらしい盛り上がりを堪能できたものだ。その乗り味をひと言で言えば、しっかりしなやか。また、ステアリングフィールはグレードを問わず、切り始めからきっちりした手応え、ファンな操縦感覚を感じさせてくれた。
では、新型レヴォーグはどうだろう。エンジンは1.8リッターターボに統一されたが、その新ユニットはじつにスムースで、なおかつスバルのエンジン史上、もっとも静かと言っていい。アクセルを踏み込んでも、まるで電動車のように静かに、滑らかに回り、さすが30.6kg-mものトルクによって、2.5リッター級の胸のすく加速力を味わわせてくれる。だが、水平対向エンジンらしさはほぼない。どんなエンジン形式なのかわからないほど、黒子に徹したエンジンでもあるのだ。
そして乗り心地、静粛性の洗練度も時代の差を感じさせてくれる部分。とくにZF製電子制御可変サスを奢るSTIスポーツの乗り味は、よりスポーティでありながら、むしろ乗り心地に優れ、一段と静か。電子制御可変サスはステアリングの切り角、路面からの入力、Gに対して瞬時に反応し、制御してくれるため、操安性はもちろん、乗り心地面でも優位なのである。また、標準車のサスはゴムブッシュ、スチールハウジングを用いているのに対して、STIスポーツのサスは高周波ノイズをカットすべくウレタンブッシュ、アルミハウジングを奢っているため、ロードノイズが気にならない=あらゆる場面で静かなのである。
もちろん、新型レヴォーグの縦型ディスプレイで操作するドライブモードセレクトは、レガシィツーリングワゴン時代にはなかった神器であり(標準車はSIドライブ)、アイサイトの最新制御、3Dマップを使ったカーブ、料金所手前制御、50km/h以下での夢のハンズオフドライブ、アダプティブレーンチェンジアシストも、アイサイトVer.2時代の5代目レガシィツーリングワゴンには望めない最先端の先進機能。そうした自動運転に近い運転支援機能に関しては、もう隔世の感ありだ。
そんな劇的な動的質感の進化をも遂げた新型レヴォーグだが、WLTCモードで13.6km/L、JC08モードで16.5km/Lの燃費性能だけは、飛躍的に向上していなかったりするんですけどね……。ちなみに5代目レガシィツーリングワゴンの2.5iアイサイトはJC08モードで14.4km/Lでした。
結論として、無理矢理5代目レガシィツーリングワゴンと比較すれば、レガシィツーリングワゴンにいま乗っても、水平対向エンジンがもたらす走りの魅力、速さ、低重心&AWDならではの安定感、走りの楽しさは健在。一方、新型レヴォーグは走り、機能が全方向に大きく洗練、進化した反面、スバルファンがこだわる水平対向エンジンらしさは激減。
とはいえ、ステアリングを握れば、その静かで快適すぎる乗り味、十分すぎる動力性能、意のままのリニアな操縦性(STIスポーツ)、山道でのゴキゲンなフットワーク、そしてかつてのレガシィツーリングワゴンでは望めなかった高速道路でのアイサイトXの先進機能に、大いなる感動&満足感が得られることは間違いないと思える。いまでは“大人”になった、かつてのレガシィツーリングワゴン乗りも、一度、新型レヴォーグ STIスポーツEXに試乗してみてほしい。
【10年ひと昔の国産車 20】レガシィ B4はボディやエンジンだけでなく、走りもクラスアップした
「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前の国産車は環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は「スバル レガシィ B4」だ。
スバル レガシィ B4(2009年:5代目)
新型レガシィのスタイルは、力強さを感じさせるフォルムとなった。サイズは旧型比で95mm長く、50mm幅広く、ホイールベースも80mm長くなった。つまり、最新の欧州Dセグメントと互角に戦えるボディが与えられた。
エンジンも2Lから2.5Lへとアップした。主力エンジンは2.5LのSOHCで、従来の140psから170psへアップした。GTが搭載するDOHCターボエンジンは、2000~5700rpmの広い範囲で35.7kgmのトルクを発生する。新技術として2.5LのNAエンジンにはチェーン駆動のCVTを採用している。
また、クレードル(ゆりかご)構造の採用でエンジンマウントを変更し、振動や騒音を低減。同時にボディ剛性もアップできたという。キャリーオーバーが多いニューモデルの中、新技術満載のレガシィの本気度には大いに期待できる。
レガシィといえばワゴンのイメージが強いが、まずは今回のフルモデルチェンジでもっともインパクトを感じたのがセダンのB4から試乗してみよう。サイズの拡大で安定感が感じられ、サルーンとしての風格は十分。シルエットからは、ヨーロッパのセダンに通じるものを感じる。そのB4でもっとも走りを追求したモデルが、2.5GTのSパッケージ。従来のスペックBに相当する。
走り出すと6速MTのシフトフィールが変わったのがわかる。ややストロークが大きめで、タッチがソフトになっている。軽量化のためリンケージがロッドからワイヤーに変更されたためで、同時にノイズや振動も小さくなった。
クラッチミートではエンジンの違いがよくわかる。従来だと少し回転を上げてつながないとスムーズな発進がしづらかったが、今回は無造作につないでもスッと素直に動き出す。スロットルを開けていくとアイドル回転直後でも、ジワッと粘り強い加速感があって、排気量アップの効果が実感できる。
大きく踏み込めば瞬時にターボが効き、さらに力強い加速感が得られる。下から力が出ていることと、タイムラグが小さいことで力強さに段つき感は感じられない。パワフルなのに実にスムーズだ。スロットルを戻した時の揺りもどし感も少なく、ノイズや振動レベルも大きく進化している。
ハンドリングでは、ステアリングを切ると同時にスッと応答する感じが美点だが、これはクレードル構造の効果だろう。エンジンをワイドスパンで支えることでボディとの一体感を生み、振動を抑えるばかりかハンドリング性能にも大きく貢献している感がある。
ロールはレガシィ特有の4輪全体が沈み込むようなフィールで、追い込んでいくと高いGでグラッと小さく動く感じがあったり、旋回ブレーキでボディの揺れを感じたが、これは乗り心地のよさを追求した結果だろう。
それでもハンドリングをスポイルしないのは、シンメトリー4WDのバランスのよさと接地性に優れたサスや剛性の高いボディのおかげだろう。従来のキビキビ感は薄れた反面、安定感が高く、走りは実に高レベル。その上で静かで快適な室内空間を実現するなど、レガシィの進化は実に広範囲。正に新世代レガシィとして魅力満載となった。
■レガシィ B4 2.5GT Sパッケージ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4730×1780×1505mm
●ホイールベース:2750mm
●車両重量:1480kg
●エンジン種類:水平対向4 DOHCターボ
●排気量:2457cc
●最高出力:210kW<285ps>/6000rpm
●最大トルク:350Nm<35.7kgm>/2000-5600rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:縦置き4WD
●タイヤ:225/50R17
●当時の車両価格<税込み>:320万2500円
【10年ひと昔の国産車 21】レガシィ ツーリングワゴンの走りは、進化したシャシの効果が歴然だった
「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前の国産車は環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は「スバル レガシィ ツーリングワゴン」だ。
スバル レガシィ ツーリングワゴン(2009年:5代目)
スバル レガシィといえば「ツーリングワゴン」といわれるほど、レガシィのラインアップでいちばんの売れ筋はツーリングワゴンだ。前回紹介したセダンのB4 GTと同様に、ターボエンジンを搭載したGTも魅力的だが、今回はNA(自然吸気)エンジンを搭載した「2.5i」に試乗してみた。組み合わされるトランスミッションは、新開発のCVTだ。
走り出してみると、まず乗り心地の良さに驚かされた。突起を乗り越える時にも、カドを包み込むようにスッとサスペンションが上下して力をスムーズに吸収してくれる。ボディがしっかりしているので、サスペンションの動きは大きいのに振動は残らず、しかもノイズの発生も少ない。ボディの動き自体も小さく、フラットな乗り味を見せてくれる。
もっとも、ハンドリングに関しては、さほどスポーティではなかった。ステアリングに対してノーズは反応しようとしているのに、タイヤが一歩遅れて動き出す感じだ。それも、動き出すと同時にグラッとくるのもタイヤのせいだろう。もちろん、安定してしまえばサスの接地感の高さによって落ち着きは保たれるのだが、そのグラッとくる間隔で車高の高さを感じさせるのは、少しもったいないところだ。
「リニアトロニック」と呼ばれる新開発のCVTは、全開走行を行うとエンジンの回転がやや先行し高回転をキープしようとするが、日常レベルでの加速ではスッ、スッ、と小気味良くエンジンの回転が落ち、メリハリある変速を行なってくれる。
今回、全車にSIドライブが採用されているが、エコノミーモードの「i」レンジでは100km/h走行時のエンジン回転数は1900rpm程度。ここからの加速では、さすがに2.5Lといえどもシフトダウンして大きく回転を上げるが、それでもその時の吹け上がりはスムーズだ。トルクはもう少し欲しい気はするものの、エンジンレスポンスの良さでそれをカバーしてくれている。
「S」、「S#」モードにすれば、クルージングスピードは500rpmずつアップし、追い越し加速時の変速シーンは少なく、ダイレクトな走りが楽しめる。さらに積極的な走りを楽しむなら、ステアリングのパドルシフトでダイレクトな変速感も味わえる。
CVTとSIドライブの組み合わせで、走りのパターンを豊富に楽しめるのは2.5iならではの持ち味といえるだろう。レガシィの主力モデルらしい、走りへのこだわりが感じられる1台だった。
■レガシィ ツーリングワゴン 2.5i Lパッケージ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4775×1780×1535mm
●ホイールベース:2750mm
●車両重量:1500kg
●エンジン種類:水平対向4 SOHC
●排気量:2457cc
●最高出力:125kW<170ps>/5600rpm
●最大トルク:229Nm<23.4kgm>/4000rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:縦置き4WD
●タイヤ:205/60R16
●当時の車両価格<税込み>:267万7500円
Posted at 2020/12/03 21:14:10 | |
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富士重工 | 日記
2020年12月03日
キャラが濃すぎる2台!? ポルシェ 911 GT3 と 718ケイマン GT4 RS を同時スクープ
ポルシェが現在開発中の新型ハードコアモデル『911 GT3』と『718ケイマン GT4 RS』、2台の市販型プロトタイプを同時にスクープした。
ドイツ・アウトバーンのパーキング付近で捉えた2台のプロトタイプは、カモフラージュもなく、ブラックテープを残しほぼフルヌード状態で、発表が近づいていいることがわかる。
992世代となる911 GT3 RSは、最新のXダイナミックヘッドライトが点灯、垂直のコーナーエアインテーク、大型ラジエーター、ボンネットにはフロントアクスルにダウンフォースを生むデュアルエアスクープも確認できる。また足回りには、5対のスポークと中央にラグを備えた大型ホイールを装備、クロスドリルや巨大ブレーキキャリパーを装備している。
リアエンドでは、スワンネックウィング、リアリップの先端には、空気の流れを向上させる小さなスポイラー、バンパーコーナーにはエアアウトレットのほか、センター出しデュアルエキゾーストパイプやアグレッシブなディフューザーが見てとれる。
911 GT3 RSのパワートレインは、4.0リットル水平対向6気筒NAエンジンを搭載、最高出力は550psと予想され、8速DCT、及び6速MTの採用が期待されている。
一方、718ケイマン GT4 RSでは、「GT4」と「スパイダー」が搭載する4.0リットル水平対向6気筒エンジンの強化バージョンを採用。最高出力は450ps以上、最大500psを発揮するはずだ。
2台のワールドプレミアは、最速で2020年内だが、2021年初頭が有力と言えそうだ。
【次世代モデルをいち早く体験】新型ポルシェ911 GT3 510psのフラッグシップに同乗
新型911 GT3プロトタイプに同乗体験
text:AUTOCAR UK編集部
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)
新型ポルシェ911 GT3は、2021年で最も期待できるクルマになるかもしれない。AUTOCARはポルシェのGTシリーズの開発責任者であるアンドレアス・プレウニンガーとともに、新型の走りを体験する機会を得た。
パワートレインについてプレウニンガーは、「スピードスターのエンジンを改造したものです」と断言する。992世代の911 GT3は、911スピードスターには適用されない規制をパスしなければならないため、多少の違いはあるが、搭載される4.0Lの自然吸気フラット6は、同じ9000rpmまで回転する。
最高出力は510psになるという。つまりスピードスターと同じで、991.2 GT3の500psよりも増加しているのだ。
その差は決して大きくないが、レース用エンジンのホモロゲーションは、すぐにできることではない。最近の規制は非常に厳しく、プレウニンガーによると、開発にかけた時間の約80%はGT3の性能レベルを維持するために費やされており、残りの20%は性能向上のための努力に費やされているという。
出力向上に伴い、重量増加の懸念もあるが、プレウニンガーは次のように語っている。
「クルマを重くしたくはありませんでした。非常に重要なことです。992のボディなので大型化していますが、これ以上重量を増やしたくないんです」
リアシートをなくし、吸音材を減らし、軽量素材を使用し、ガラスを薄くし、カーボン製のボンネットを採用するなどした結果、現行モデルよりも軽くすることに成功した。
4.0Lフラット6の咆哮
AUTOCAR編集部は、プレウニンガーが運転するプロトタイプに同乗した。ヴァイザッハ周辺の見慣れた道を走行する。
「これはモータースポーツカーなので、その期待に応えなければなりません」と彼は言う。
今のところ、現行モデルより速くなること以外は何も語られていない。新型ではシャシーと空力性能に焦点が当てられ、全体的に大きな変更が加えられている。
最も分かりやすいのはエアロパーツであり、特にリアウイングが顕著だ。
「リアウィングは特に、機能に従って形作られています」とプレウニンガー。レーシングマシンと同じようにスワンネックが採用され、途切れることのないエアフローを下面に生み出している。
同時に、エンジンのエアフローを整える役割も果たしている。ボディ下部には大型のリアディフューザーを備え、下面はフラット形状、フロントには整流用のダクトがあり、それらを駆使して押し寄せる空気をすべてコントロールしていく。
ダウンフォースを50%増加させながらも、抗力には全く影響を及ぼさないよう設計されているという。プレウニンガーはコーナリングスピードだけでなく、ストレートでも高速で走らせたいと考えているからだ。
「わたし達が住んでいるドイツにはアウトバーンがあるので、スピードメーターの頭に”3″が表示されるまでは激しく加速してほしいと思っています。それ以降は気にしません」
それを証明するため、プロトタイプはアウトバーンで制限速度の上限が解除されている区間を走った。プレウニンガーは、PDKスティック(彼はパドルよりもスティックを好む)でギアを落とし、4.0Lのパワーを呼び覚ます。
その力強さはスピードスターを彷彿とさせる。低回転域では低音を響かせ、9000rpmの高回転域に達するとピッチが変化して、叫び声のような激しい轟音を奏でた。
高い剛性としなやかさを実現
プレウニンガーの主張を文字通り体感したのち、アウトバーンを離れ、郊外の一般道に入った。ここで、多くのことが明らかになった。現行モデルのGT3よりも25~30%硬いスプリングを使用しているにもかかわらず、乗り心地は驚くほどしなやかなのだ。
鍵を握っているのはダンパーのチューニングだ。リアは991.2から流用されたもので、後輪ステアリングに対応したマルチリンク式だが、フロントは大きく変更され、ダブルウィッシュボーンとなっている。
「このシステムを911のプラットフォームに搭載できるかどうかは自信がありませんでした。でも、やってみる価値はありましたね」
段差に素早く反応して揺れを抑え、ブレーキング時の剛性も高く安定している。助手席に座っていても、扱いやすさと鋭さを感じられた。
ブレーキは、フロントが408mm、リアが380mmでドリル加工が施されている。ホイールはセンターロック式の20インチアロイで、255/35 ZR20のミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2を装着。21インチのリアホイールには315/30 ZR21が装着されている。
インテリアには、GT3特有のメーター類を備え、ドライブモードはシンプル化されてノーマル、スポーツ、トラックの3種類となっている。トランスミッションは7速PDKと6速MTが設定されている。
開発責任者のプレウニンガーと数時間過ごした結果、新型の登場を待つ価値はあると分かった。
「GT3を買う理由は感情であり、クルマを運転する楽しさです。それが主な理由であることは間違いありません」
プレウニンガーの言うことがどれほど正しいかはすぐに分かるだろうが、助手席から見る限りでは、彼に反論するのは難しそうだ。
Posted at 2020/12/03 21:09:19 | |
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ポルシェ | 日記