2021年02月10日
墜落=死の危険の思想が根付く! SUBARU車に「元航空機メーカーらしさ」を感じるところ【その1】
フルモノコック構造は航空機の機体作りからの発想
SUBARU車をみて「元航空機メーカーらしさ」を感じさせる部分はいくつもあるが、今回は「設計思想の原点」について注目してみた。
SUBARU(当時は富士重工業)が、1958年に初めて販売した四輪車として知られるスバル360。機械遺産に認定もされている日本の歴史的な名車のひとつだが、開発にあたっては、まさに航空機メーカーならではの発想で生み出されている。
そのひとつが、当時の日本車としては例のないフルモノコック構造の採用だ。SUBARUは初めて四輪車を作るにあたり、欧米車のコピーではなく、国内では前例のないフルモノコック構造としたのは航空機の機体作りからの発想だった。
モノコック構造のボディにおいては、軽量化と強度、耐久性の確保で、軽自動車という寸法の限られた小型の乗用車にこれ以外の選択肢はありえなかったという。航空機と同じ発想で、重量が嵩む鍛造品は使わず、トレーリングアームもパイプ構造とするなど、各部には中空構造のパーツの多様にこだわった。
スバル360の開発テストドライバーを務めた福島時雄さん(元富士重工業走行実験担当)は「当時の日本の自動車会社では、うち以外にモノコックボディの強度設計をできるところはありませんでしたから、大きなアドバンテージを感じました。当時の日本人はクルマのことなんて誰も知らなかったので、見た目の格好良さぐらいしか判断基準がなく、SUBARUのクルマ作りの凄さが世間一般にはなかなか伝わらないのがもどかしかったです」と語る。
当時の日本の自動車会社にはフルモノコックボディという発想がなく、それを作るためのノウハウもなかった。モノコックボディでは応力集中をいかに避けるかが重要。当時の一般的な車体作りでは、板厚を厚くしたり板の枚数を増やして強度を上げていたので重くなる一方。路面からの入力を応力集中で逃げるという発想は元航空機メーカーならではのものだった。
アメリカでの支持も重要な意味を持つ
元富士重工業ボディ構造設計の室田公三さんは「モノコックボディの応力解析なんて、もしよそのメーカーだったら若い技術者にやらせてもらえなかったでしょうね。そもそも、当時の他社は自分のところでボディを作っていなかったと思います。サンバーを作るときにシートを作る会社を見に行ったら、そこで他社のクルマのボディが作られたりしていました」と語る。
黎明期のSUBARU車の開発に携わった元エンジニアの目に、現代のSUBARU車はどのように映るのか尋ねてみると、福島氏は「現行型の安全と信頼性を重視する姿勢にはとても深く共感し、昔からの伝統が継承されていることを実感できて嬉しい」という。
続いて福島さんは「飛行機は墜落すると重大な事故になり、設計や整備には人の命をかけた確実な仕事が求められます。飛行機と比較すれば、クルマは止まっても即死亡事故につながる可能性は低い乗り物といえますが、たとえばアメリカ中部の砂漠のような厳しい環境でクルマがエンコすると死に直結します。アメリカでSUBARU車の人気が高いのは、そういう命に関わる信頼性や走破性の高さが評価されているからなのです」と熱く語る。
今のSUBARUの北米市場傾注ぶりを好ましく思わない日本のユーザーも少なくないが、やはりアメリカで支持されることも重要だ。
アイサイトやAWDなど、今のSUBARUが武器とする安全と走破性のためのシステムにも同じことがいえるはず、とのこと。
黎明期の設計思想が今日にも受け継がれているからこそ、今のSUBARU車は安全性において世界的なトップクラスを誇れているのだろう。
売れるデザインよりも最優先は「0次安全」! SUBARU車に「元航空機メーカーらしさ」を感じるところ【その2】
スバル車に「0次安全」を犠牲にすることは許されない
SUBARUが古くから掲げる安全思想のひとつである「0次安全」。人間工学に基づいた車内の空間作りのことで、着座環境や視界、取り回し性を重視した設計思想を大事にしてきた。
SUBARUでは、たとえばフルモデルチェンジによりデザイン性が向上したり、ボディサイズが拡幅されたとしても、着座環境や視界、取り回し性は決して犠牲にしてはならないとの掟が厳守される。
いかに美しいデザインが採用されたとしても、デザイン性向上とのトレードオフとして、わずかでも運転がしにくくなれば、SUBARU的な設計思想は後退したと評価せざるを得ない。良いデザインを得たのと引き換えに、視界が悪化した分はバックカメラやセンサーで補うなどといったゴマカシは、SUBARUらしさを失うことに他ならないのだ。
SUBARUは「1次安全」のアクティブセイフティ「能動的な安全」、さらに「2次安全」のパッシブセイフティ(受動的な安全)も古くから重視してきた。ワゴンやSUVでもスポーツカー的な運動性能を発揮して危険を回避。万が一事故に見舞われても、世界トップクラスの衝突安全ボディが乗員を守る。
しかし、1次と2次の安全は、いわば想定される事故に備えるための安全対策。一方の「0次安全」(ベーシックセイフティ)は、「能動」や「受動」よりも前の段階で事故を回避するためので、そもそも事故を起こしにくいクルマ作りを目指す思想というものだ。
この「0次安全」の原点は航空機メーカー時代に培われた。航空機は、わずかな操作ミスが墜落を招き、即命取りの大惨事となることから、そもそも事故を起こしにくい設計が求められる。今でもSUBARUが「0次安全」を大事にする姿勢は、元航空機メーカーらしさのひとつと言えるだろう。
スバル1000も「0次安全」の思想によって誕生した!
今のSUBARUが標榜する「0次安全」は、おもに車内の空間作りのことを示すが、かつては「FF方式の採用」も「0次安全」の思想によるものとしていた。
SUBARUが最初の乗用車スバル1000を発売した1960年代の日本は、まだ未舗装路が多いうえに後輪駆動車ばかりだったので、免許があってもクルマの扱いは難しいものと認識されていた時代だ。そこで当時のSUBARUは「誰が運転しても扱いやすく安全なクルマ」という意味においてもFFを採用する。
航空機用星型エンジンからの応用でもある水平対向エンジンをフロントに積み、フロントに荷重をかけてフロントタイヤを駆動するFF方式は、居住性などパッケージング面での優位性とともに、誰もが運転しやすいクルマに仕立てやすいこともメリットだ。
FFはFRより未舗装路や悪天候下での走行安定性を確保しやすく、限界領域ではアンダーステアは強まってもオーバーステアは出にくいなど、一般的なドライバーにとって御しやすい特性を持つ。つまり、当時のSUBARUが考えた「誰が運転しても安全なクルマ」に最適な駆動方式といえた。
FFは、誤ってハイスピードでコーナーに進入しても、アクセルを離すという、多くのドライバーが示す自然な反応によってクルマはおのずからコーナリングパワーを回復しやすい特性を持つ。これは航空機における「フールプルーフ(簡単)な機体」と呼ばれるものと同じで、たとえば急旋回時にパイロットがミスをしたり、なんらかのアクシデントによりコントロールを失って失速状態に陥ったとしても、機体が自力で機首を立て直せるように設計されるという。
また、水平対向エンジンを縦置きにするFFレイアウトは、AWD化にあたってもFRやエンジン横置きFFより比較的容易だったことも、AWD化の大成功に繋がった。販売するクルマの8割以上がAWDというSUBARUの自動車メーカーとしての特殊な販売傾向もまた、元航空機メーカーだからこそと言える。
Posted at 2021/02/10 20:53:52 | |
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富士重工 | 日記
2021年02月10日
カクカクの尖ったスタイルがスゴイ! スバルの名車アルシオーネを写真でチェック
1985年に登場したスバルの2ドアクーペ「アルシオーネ」は、今見ても未来的なスタイルと先進的な運転席を備えている。このやや奇抜なデザインやパッケージングには、技術屋集団であるスバルのこだわりが満載だ。今回は、そんなスバル アルシオーネの特徴的な内外装を、写真と共にご紹介しよう。
「オトナ、アバンギャルド」なスペシャリティクーペ
アルシオーネは、3代目レオーネのプラットフォームをベースに開発されたスバルのスペシャリティクーペで、1985年にデビュー。
スポーツカー定番のリトラクタブルヘッドライト、くさび型のフォルム(ウェッジシェイプ)、一文字に伸びるリアまわりのデザインなど、未来的なプロポーションを纏っている。
まさにキャッチコピーのとおり「オトナ、アバンギャルド」な印象だ。
エンジンはベースであるレオーネと共通の、1.8リッター4気筒水平対向エンジン(最高出力135PS、最大トルク20.1kgf・m)と、1987年のマイナーチェンジで追加された2.7リッター6気筒水平対向エンジン(最高出力150PS、最大トルク21.5kgf・m)がある。
大きく直線的なガラスはまるで宇宙船!?
外装は、一段前に出たバンパーの上段にリトラクタブルヘッドライトを備える。さらによく見ると、手が入る部分をフラップで覆ったドアノブ、傾斜角が28度という前後ガラスなど、徹底的に空気抵抗を減らすことにこだわったデザインになっている。
空気抵抗へのこだわりはリアガラスにも現れており、Bピラー(真ん中の柱)からリアガラス後端にかけて絞り込まれ、その形状を実現するためにリアガラスは折れ角を持つ特殊な形状のガラスが使われた。
また、屋根を支えるピラー(柱)はすべてブラックアウトされ、まるで屋根をガラスで支えたような、もしくは屋根が中に浮いたように見える。そしてこの面積の大きなガラスと、水平基調なインストルメントパネルのおかげで、運転席からの見晴らしが良いのも、見た目だけじゃなく機能性にもこだわったアルシオーネの大きな特徴だ。
未来感に溢れたコックピットに先進的なデジタルメーター
内装には安定したドライビングを支えるサポート性に優れたフロントシートを備える。運転席には、6時15分に位置するスポークのステアリングやガングリップタイプのシフトノブなど、個性的で未来感満載。
「コントロールウィング」と呼ばれるステアリング奥に配置したボタン式パネルも、外観に負けず個性的。右側にはヘッドライト関連、左側にはワイパーやエアコンの吹出し口切替のスイッチが配置され、ステアリング右側のウインカーレバーにはヘッドライトスイッチはない。
さらに、エアコンのメイン操作パネルはセンターコンソールになく、シフトレバー周辺などに分散して配置されている点が面白い。
また、オプション設定だったデジタルメーター「エレクトロニックインストルメントパネル」は、80年代に想像したいかにも未来的なデザインになっている。
Posted at 2021/02/10 20:49:17 | |
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富士重工 | 日記