2021年03月05日
【61年ぶりに帰ってきた】アストン マーティンF1 新型AMR21発表 市販車にも「良い影響」
AMGのハイブリッド・パワートレイン搭載
text:James Attwood(ジェームズ・アトウッド)
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)
アストン マーティンF1は、1960年以来のF1復帰に使用する新型マシン「AMR21」を発表した。
アストン マーティンは、同社のローレンス・ストロール会長が所有するレーシングポイントをリブランディングし、モータースポーツ界のトップカテゴリーに参入した。アストンは、同チームが将来のロードカー技術を導く「イノベーション・ラボ」としての役割を果たすとしている。
「わたしはこの日をとても長い間夢見てきました」とストロールは語る。
「わたしの最初の夢はF1チームを所有することでした。第二の夢は、アストン マーティン・ラゴンダの大株主になることでした。今日は、その2つの夢が合体した日なのです」
昨年のレーシングポイントRP20を改良した新型AMR21は、アストンのレーシンググリーンのカラーリングを採用し、メルセデスAMGのハイブリッド・パワーユニットを使用する。今年は4度のワールドチャンピオンであるセバスチャン・ベッテルがランス・ストロールとともにチームに加わった。
チームの運営は、1991年シーズンにジョーダンとして発足させたシルバーストーンの工場から継続する。約1万8000平方メートルの新しい施設を建設し、2022年に完成予定だ。
市販車のデザインと技術にも影響
アストンは、F1チームが将来のロードカー技術、特に近日発売予定のヴァルキリーやヴァルハラを含むミドエンジンのスポーツカーを牽引する役割を果たすだろうと語った。
CEOのトビアス・ムアーズは、F1チームについて次のように述べている。
「アストン マーティンのブランドや文化、そしてロードカーのデザインと技術に、広範囲にわたるポジティブな効果をもたらすでしょう」
「F1チームは、将来のアストン マーティンのロードカー技術とパフォーマンスを推進するためのダイナミックでエキサイティングなイノベーション・ラボとなり、今後数年間でわたし達のクルマを真に差別化することになるでしょう。アストン マーティンは常に美しいクルマを作ってきました。今、F1でアストン マーティンの新時代を始めるにあたり、より多くのイノベーションとパフォーマンスをもたらします」
アストンのモータースポーツにおける最大の成功はスポーツカーの耐久レースであったが、1959年と1960年の5つのグランプリにワークスDBR4で参戦したものの、ほとんど成功を収められなかった。2016年からはレッドブル・レーシングのスポンサーとしてF1に参加している。
レーシングポイントは、2018年シーズン中にフォース・インディアが経営破綻した際にストロールが資産を買い取ったことで結成された。昨年のサヒールGPでセルジオ・ペレスと驚きの勝利を収めたほか、ジョーダンとして4勝を挙げている。
セバスチャン・ベッテルが乗るアストンマーティンF1「AMR21」がついに発表!
■61年ぶりにアストンマーティンがF1に戻ってきた!
2021年3月3日、アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラ1チームは、2021年FIAフォーミュラ1世界選手権に参戦するマシンを発表した。
新たなアストンマーティンのF1マシンは「AMR21」と名づけられ、オンラインにて発表された。
2021年シーズンのパイロットは、これまで4回のF1世界チャンピオンに輝いたセバスチャン・ベッテル(ドイツ)と新星のランス・ストロール(カナダ)の2名だ。
マシンのカラーリングは、アストンマーティンの伝統的なレーシングカラーであるアストンマーティン・レーシング・グリーンとなり、米国の大手IT企業であるコグニザントが率いる数多くのグローバルパートナーのロゴに加え、シャシ側面には、チームの長年のパートナーであるBWTを象徴するレッドのストライプが施されている。
AMR21に搭載されるエンジンは、ハイブリッド・エネルギー回生機能を備えたターボチャージャー付きメルセデスAMG F1 M12 Eパフォーマンス・エンジンだ。
アストンマーティン・ラゴンダ取締役会会長のローレンス・ストロールは、次のようにコメントした。
「私は、この日をとても長い間夢見てきました。私はつねに熱狂的な自動車ファンで、レースにも情熱を注いでいます。私の最初の夢は、フォーミュラ1チームを所有することでした。私の2番目の夢は、アストンマーティン・ラゴンダの筆頭株主になることでした。今日、このふたつの夢が叶います。新しいF1マシンであるAMR21という形で、私が語ってきた夢が本当に実現したのです。
61年ぶりにフォーミュラ1に復帰したアストンマーティンは、スポーツ、メディア、ファンの方々に大きな影響を与え、世界的な注目を集めています。
私たちの新しいアストンマーティン・コグニザント・フォーミュラ1マシンは、500人のチームによって設計および製造され、世界のモータースポーツの頂点で戦うことになります。
これはまだ、始まりにすぎません。チームは前進しており、私たちの野心は無限です。私たちはいま、真の進歩を遂げるための準備が整っています」
アストンマーティン・ラゴンダ最高経営責任者(CEO)のトビアス・ムアースは、次のようコメントした。
「今日は、60年以上ぶりにモータースポーツの頂点に復帰したアストンマーティンにとって、本当に歴史的な瞬間となりました。アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラ1チームは、アストンマーティン・ブランド、私たちの文化、アストンマーティン・ロードカーの設計とテクノロジーに広範囲にわたるプラスの効果をもたらします。
フォーミュラ1への復帰によって、すべての従業員、そして何よりも世界中のカスタマー・ジャーニーに素晴らしい影響を与えると同時に、アストンマーティンのビジネス全体に、迅速な意思決定を必要とするフォーミュラ1の考え方を浸透させることができます。
フォーミュラ1チームはダイナミックでエキサイティングなイノベーション・ラボとなり、将来のアストンマーティン・ロードカーのテクノロジーとパフォーマンスを推進します。これにより、今後数年間で私たちのクルマは、真に差別化されるでしょう。
アストンマーティンは常に美しいクルマを作り続けてきました。今回、フォーミュラ1でアストンマーティンの新時代が始まることにより、より多くの革新とパフォーマンスがもたらされます」
今後AMR21は、2021年3月12日から14日にバーレーンでおこなわれるフルテスト・プログラムに参加する予定だ。その後、3月28日に開催されるバーレーン・グランプリで、実に61年ぶりにF1への復帰を果たすことになる。
アストンマーチンF1、新車AMR21のシェイクダウンを雨のシルバーストンで実施
アストンマーチンF1チームは、3月3 日に発表した新車『AMR21』のシェイクダウンを早速4日に実施。セバスチャン・ベッテルやランス・ストロールがステアリングを握り、同チームでの初走行を行なった。
1960年のイギリスGP以来となるF1復帰に向けて、順調にその一歩を踏み出したアストンマーチン。他の多くのチームと同様、バーレーンで3月12日からスタートするプレシーズンテストを前に、シーズン中に2日間許可されているフィルミングデーを活用し、新車の初走行を行なった。
フィルミングデーで使用するタイヤはピレリのデモタイヤであり、走行距離は100kmまでに制限される。さらに今回、シルバーストンはウエットコンディションだったようで、AMR21はウエットタイヤを履き水しぶきをあげて周回を重ねた。
ベッテルは新車発表会の際、プレシーズンテストで本格的に走行するまでは、AMR21のパフォーマンスを判断するのを待つと語った。
「シェイクダウンでちょっと分かるかもしれないけど、実際はバーレーンの安定したコンディションで感触が分かるだろう」
「サウンドからして(フェラーリと)だいぶ違う。僕のやり方で乗りこなせることを願っているよ。どうなるか見てみよう」
シェイクダウンでの走行により、ベッテルはBMWザウバー、トロロッソ、レッドブル、フェラーリに続き、異なる5チームで走行したことになる。メルセデスのパワーユニットを搭載したマシンに乗るのはこれが初めてであり、そのパフォーマンスを楽しみにしていると話した。
「メルセデスのパワーユニットはグリッド上で最強と言われているからね」
「F1でメルセデスに乗るのは初めてだ。どんな風に機能するのか楽しみだよ」
アストンマーティンがF1へ本格参戦! その理由と目標に小川フミオが迫る
2021年シーズンへ挑む新チーム
アストンマーティンがF1に参戦する、というニュースがモータースポーツ界に驚きを与えたのが、2021年初頭だった。その後、新チーム名、ドライバ−体制、マシンの概要、と段階を追って明らかにされ、3月にはマシンが公開された。
アストンマーティンは、読者には説明の必要はまったくないだろう。昨今では、スーパースポーツに加え、SUVのDBXが人気の、英国のスポーツカーブランドだ。これまでル・マン24時間レースをはじめとする耐久レースや、GTレースには熱心だった。
レーシングポイントとタッグ
それがここにきて、F1なのだ。ご存知のように、2017年から20年にかけて「アストンマーティン・レッドブルレーシング」はあった。ただしあくまでもタイトルスポンサー。今回、「アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム Aston Martin Cognizant Formula One Team」の名の下に、2021年シーズンから参戦することが決定している。
母体となるのは、「レーシングポイント」チーム。20年シーズンは総合4位と、成績もよい。同チームとアストンマーティンには、じつは共通点がある。ともにオーナーが、カナダ人の実業家ローレンス・ストロール氏ということだ。
F1へ本格参入する理由
「アストンマーティンはこれまでWEC(世界耐久選手権)で名を上げてきました。たしかに、ル・マン24時間レースは、25万人以上の集客数を誇るぐらいで、ここでいい成績を上げれば人口にも膾炙(かいしゃ)するというものです」
そう語るのは、アストンマーティン ラゴンダでエグゼクティブバイスプレジント及びチーフクリエイティブオフィサーを務めるマレク・ライヒマン氏だ。2月下旬にジャーナリスト向けに実施されたオンラインでの記者発表の場に登場して、背景を説明してくれた。
「それに対してF1を観るひとの数は20倍ともいわれています。シーズンになると、毎週末のように家庭でも放映されますから、アピール力は桁違い。とりわけ、中国をはじめとする新しい市場でブランドイメージを構築するには、F1に如くものはないと考えました」
車体はブリティッシュレーシンググリーン
そこで、アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチームは、マシンの車体色も、メインカラーはアストンマーティンのシンボルともいえるブリティッシュレーシンググリーンを採用。
従来、レーシングポイントといえば、飲料ブランド「BWT」のスポンサーカラーであるピンクで知られてきたが、メインスポンサーを米のIT企業コグニザントとするとともに、大胆なイメージチェンジを敢行したのだ。BWTカラーはストライプとして美しいアクセントを添えている。
シルバーストンに新ファクトリーを開設
「F1マシンについての開発は、当面、これまでのマシンに(レギュレーションに合わせて)改良を加えていくことになる」。チームプリンシパル兼CEOのオトマー・サフナウアー氏は話す。ただしエンジンは、アストンマーティン ラゴンダの株主でもあるメルセデスAMGの「M12 Eパフォーマンス」となる。
マシン名は「AMR21」。2022年なかばまでには、英シルバーストンにあるアストンマーティンのファクトリーをさらに1万8000平米強も増強した施設が完成するそうだ。
英国スポーツカーブランド対決も見どころ
「20年シーズン(のレーシングポイントチーム)は残念なことに、後半エンジントラブルに見舞われることが多く、最終的にメルセデス、レッドブル、マクラーレンにつぐ4位に甘んじたが、今期はつねに表彰台をめざす」とサフナウアー氏は鼻息あらく語る。
「どのチームもドライバ−体制をふくめて布陣を一新するので、戦闘力も上がるでしょうが、マクラーレンの上には行きたいと思っています」。同じ英国のスポーツカーブランドが上位を競り合うことになれば、レースのおもしろさが一層増しそうだ。
ベッテルとストロールのケミストリーは
アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチームのドライバーは、ひとりはランス・ストロール。レーシングポイントから残留する。もうひとりは、フェラーリに乗っていたセバスチャン・ベッテルだ。ベッテルは20年シーズンにフェラーリから戦力外通告を受けているものの、過去には、2010年、2011年、2012年、2013年と連続してF1ワールドチャンピオンに輝くなど、注目すべき成績を残している。
ひとりはフェラーリをクビになったドライバ−で、もうひとりはチームオーナー(ローレンス・ストロール氏)の息子で、ふたりはうまくやっていけるだろうか、と、オンラインでの記者会見でジャーナリストから質問が出た。
「セバスチャン(ベッテル)には教えてもらうことがまだまだたくさんあるだろうし、チームとしてドライバーに優先順位をつけるようなことはなく、ふたりを対等に扱いつつ、いい成績を出すために力を借りていきたい」。サフナウアー氏はこう語った。
次世代ミッドシップ製品群に繋がる技術
F1に積極的にかかわることは、じつは、もうひとつメリットがある、とはアストンマーティン ラゴンダでエグゼクティブバイスプレジント及びチーフクリエイティブオフィサーを務めるマレク・ライヒマン氏の言葉だ。
「これからのアストンマーティン車はミッドシップ。しかも、(開発中のスーパースポーツカー)ヴァルキリーのように、積極的にF1の技術をフィードバックしていこうというモデルが、これからのアストンマーティンを支えていくことなります」。ライヒマン氏は言葉を続ける。
「レッドブルと共同開発してきたヴァルキリーValkyrieは(レッドブルとの関係が契約上終了していても)九分九厘出来上がったようなステージです。さらにこのあとアストンマーティンでは、ヴァルハラValhallaやあたらしいヴァンキッシュVanquishなど、ミッドシップになるスーパースポーツの開発計画が進行中で、F1マシンのような超スムーズな変速ができるギヤボックスや、同様のハイブリッドシステムなどを市販車に盛り込んでいく可能性もあります」
表彰台でもっとも美しいマシンに
オーガニック(有機体)とも評される独自のエレガンスを感じさせるアストンマーティン車と共通のデザインランゲージが、フォーミュラマシンに採用されることになるだろうか。
この質問についてライヒマン氏は、「さすがに機能が最優先されるF1の世界で、アストンマーティンのスポーツカーに近いスタイリングの実現は難しいものの、ペイントを観ていただければわかるように最大限の努力をして、表彰台でもっとも美しいマシンを実現することに心を砕いています」とした。
【F1】新生アストンマーティンが今季型マシン「AMR21」を公開…新車ラッシュ、王者メルセデスなど続々発表中
3月を迎え、F1の今季型マシン発表が“ラッシュ”状態だ。3日には新生アストンマーティンが「AMR21」を公開。他にも王者メルセデスの「W12」、アルピーヌ(前ルノー)の「A521」といったマシンが続々とアンベールされている。
2月中に今季型マシンを発表したのは、マクラーレン、アルファタウリ、レッドブル、アルファロメオの4陣営。3月に入って2~3日に3陣営が続いた。そのなかには今季、新たなチーム名(コンストラクター名)で臨む2陣営が含まれている。2日にはルノーから変わったアルピーヌの「A521」(既報参照)が、そして3日にはレーシングポイントから変わったアストンマーティンの「AMR21」が公開されている。
アストンマーティンの名のマシンがF1世界選手権に参戦するのは1960年以来、実に61年ぶりとされる。今回は、かつてのジョーダン、フォースインディアなどの系譜を継ぐレーシングポイントからの新生というかたちで「Aston Martin Cognizant F1 Team」が誕生、アストンマーティンとして久々のF1参戦実現に至った。
アストンマーティンAMR21(メルセデス製パワーユニット搭載)のレースドライバーは、陣営に残留したかたちのランス・ストロール(昨季の決勝最高成績は3位)と、フェラーリから移籍のセバスチャン・ベッテル。かつてレッドブル在籍期には2010~13年と4年連続でF1王座を極めたベッテルが、自身の復活と新生アストンマーティンの躍進を狙う。
昨季、レーシングポイントとして戦った最終シーズンには1勝(セルジオ・ペレス)をあげ、ポールポジション獲得も1回(ストロール)、コンストラクターズランキング4位と健闘した陣営だけに、アストンマーティンへの変貌とベッテルの加入により、今季は一層の飛躍が期待されるところだ。なお、AMR21は現地4日、チーム本拠に近い英国シルバーストン・サーキットで初走行予定となっている。
また、7年連続でドライバー&コンストラクター両部門の王座を獲得中のメルセデス(Mercedes-AMG Petronas F1 Team)は2日に2021年型マシン「F1 W12 E Performance」を発表。レースドライバーは2017~20年と変わらず、5年連続8回目の個人王座を目指すルイス・ハミルトンと、自身初王座を狙うバルテリ・ボッタスである。
F1のプレシーズン合同テストは3月12~14日、開幕予定地のバーレーン・インターナショナル・サーキットにて実施される予定。2021年開幕戦は3月28日決勝予定のバーレーンGPとなっている。
アストンマーチンF1が目指した“美しいグリーン”。そこには12ヵ月にも及ぶ長い戦いが
レーシングポイントからチーム名称を変えて再出発するアストンマーチンF1チーム。彼らは3月3日、2021年マシン『AMR21』を発表した。鮮やかで印象的なブリティッシュグリーンに、レーシングポイント時代を彷彿とさせるピンクのラインが入ったAMR21は、バーレーンで行なわれるプレシーズンテストと開幕戦で一際目立った存在となるだろう。
F1チームとして新たな章の幕開けを迎えたアストンマーチン。しかしそれは同時に、この美しいマシンカラーリングを実現させるための長い道のりが終わりを迎えたことも意味する。
アストンマーチンが2021年マシンの装いに同社の象徴的なカラーであるブリティッシュグリーンを採用するということは、数ヵ月前から知られていた。しかしその具体的な色合いを詰めていく作業は一筋縄ではいかなかった。
マシンの見栄えというものは実に複雑だ。我々はこれまでにも、実物は格好良く見えても、写真や映像を通すと微妙に見えてしまう、という事例を多々見てきた。
だからこそ、アストンマーチンのクリエイティブオフィサーであるマレク・ライヒマンが説明したように、実際に使用される“緑色”の正確な種類については最終決定に多くの時間と思考を要したのだ。
「正直とても長い道のりだった」
過去16年間にわたってアストンマーチンのロードカーをデザインしてきたライヒマンはそう話す。
「色というものはとても重要だ。色がどのように知覚されるか、スクリーン上で、または日光の下でどのように知覚されるか、例えば曇りのシルバーストンだとどうなのか……それは本当に重要な要素なんだ」
「我々は色の開発に12ヵ月を費やした。ここまで数え切れないくらいのバージョンのカラーリングを作り、全てを完璧にするために、最後の最後まで細部に変更を加えていった」
「実際にマシンを見た時、素晴らしいと思った。我々が望んでいたものになった。これはグリッド上で最も美しい色になるだろう」
最終的に採用された色は、アストンマーチンがこれまで採用してきたブリティッシュグリーンの中でも、比較的明るいように感じられる。ライヒマン曰く、色の取捨選択には様々な要因が存在し、それらを全て考慮する必要があったという。
「番号の書かれた色の見本を見ながら『これだ』と選ぶくらい簡単な作業だと良かったんだけどね」とライヒマン。彼はF1チームの代表を務めるオットマー・サフナウアーと連絡を取り合いながら作業を進めていった。
「今回ペイントカラーを編み出すのは非常に複雑だった。その色はロードカーにも反映させなければいけなくなるからだ。人々はF1マシンのカラーを見て、ロードカーもその色にして欲しいと言うだろうからね」
「だから再現性や復元の可能性など、あらゆるプロセスを経る必要があったんだ」
「そしてもちろん、F1マシンについて考える上で、オットマーの重量に関する要望も考慮しないといけない。重いペイントはしたくないだろうからね」
「加えて、F1マシンのペイントについて我々が知っている技術の中で、その美しい色の反射性をどうやって得るのか、どうやればスプレーガンを使ってロードカーにも塗装できるようになるのか、なども考慮した」
ライヒマンはまた、実際のペイントが写真やテレビで見た場合にも同じように見えるのかを確かめるために、かなり広範囲にわたるテストをしなければいけなかったと語った。
「赤、緑、青という光の三原色が、スクリーン上でどのように機能するかを確認するためには、パネルを撮影してコンピューターのスクリーンを通して見る必要があった」
「我々は4Kカメラや3Dカメラの技術を駆使している。デザインの世界はどのように再現するかが重要だからだ」
「現在、我々のクルマの内装はほとんどCAD(コンピューター支援設計)で開発されており、実際にモデルを作成することはまずない。そのため我々は、色、形の両方をシミュレートして、コンピューターに『この色は実際に目で見えるものと同じなのか?』と尋ねることができる。我々はそういうことをやってきたのだ」
「しかし長いプロセスだった。ファッション業界から来た、色に関する専門知識のある人間にも、気に入ってもらわないといけなかったからだ」
アストンマーチンAMR21のカラーリングが“美しい”のかどうかは、今後もソーシャルメディアで議論が続けられていくことだろう。一部のファンからは、現代F1マシンのカラーリングは往年の象徴的なF1マシンのそれに到底及ばないと批判されることもある。
「見る目のある人間は、常により美しいものを求めている。しかしオットマーの言葉を借りるならば『速いものは美しい』だ。私もそれに同意する」とライヒマン。
「だから、問題をどう解決するかについては、常にひとつ以上の答えがあるんだ。つい数週間前、オットマーとここにあるファクトリーで製造されたジョーダンを見ていたけど、あれは美しいマシンだった」
「確かに美しいものはついつい凝視してしまうし、人々はより美しいものを願っていると思う。美しいものとは、常に希望となるものだと私は思っている」
Posted at 2021/03/05 23:14:21 | |
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