2021年05月11日
スバルの新型EV、車名は「ソルテラ(SOLTERRA)」に決定。2022年から世界で発売予定
かねてより公表されていたとおり、スバルはトヨタと量産EVの共同開発を進めていた。その成果は、トヨタが2021年4月に開催された上海モーターショーでSUVタイプのEV(E-SUV)をいち早く公開。では、スバルはどうなっているのか・・・と思っていたところ、ついにそのアウトラインと、スバル「ソルテラ(SOLTERRA)」という名称も明らかにされた。
スバル ソルテラの基本コンポーネンツはbZ4Xと共用する
2021年4月に開催された上海モーターショーでトヨタは電動車に特化した新EVシリーズ「TOYOTA bZ(トヨタ ビーズィー)」の展開を発表、併せてシリーズ第1弾となるSUVタイプのEV(E-SUV)を公開した。「bZ4X(ビーズィー フォー エックス)」と名付けられたこのコンセプトモデルは市販を前提にスバルと共同開発したもので、2022年年央までにグローバルで発売すると宣言された。
このプロジェクトの一方の担い手であるスバルもようやくその輪郭を表した。まだアウトラインではあるが、全体のフォルムと車名がついに明らかにされたのだ。
新型EVの車名は「ソルテラ(SOLTERRA)」である。ラテン語で「太陽」を意味する「SOL(ソル)」と「大地」を意味する「TERRA(テラ)」を組み合わせた造語で、優れた操縦安定性や高い走破性を誇る4WD性能を備え、行く先を選ばない「安心と愉しさ」を提供するスバルらしいSUVを目指して名付けられた。
冒頭でも紹介したように、この新型EVはトヨタとの共同開発であり、EV専用の新開発プラットフォーム(SGP<e-SUBARU GLOBAL PLATFORM>/トヨタはe-TNGAと呼ぶ)の共用はもちろん、商品企画、設計、性能評価などの多岐に渡ってスバルとトヨタが共同で開発してきたという。トヨタの電動化技術とスバルの4WD技術、両社の知見が投入された、快適かつ走りを楽しめるEVに仕上げられているはずだ。
基本コンポーネンツを共用する2車ではあるが、デザインはもちろん走りの味付けなどはそれぞれの個性やクルマ哲学が大いに反映されたものになるに違いない。発売は、スバル、トヨタとも2022年の年央を予定。86/BRZに続く共同開発車の誕生まであと1年余りだ。
Posted at 2021/05/11 21:05:24 | |
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富士重工 | 日記
2021年05月11日
「スタリオンでココまでやる!?」アメリカンV8エンジン&ワークスフェンダー仕様で勝負!
CFD解析による空力シミュレーションまで駆使してエアロ製作!
エンジンは6.2LのV8ユニットを搭載
1982年に日本で発売された三菱スタリオン。北米では1983年からクライスラーに供給され、ダッジやプリムス、クライスラーの各ブランドから『コンクエスト』の車名で販売されていた。
今回紹介するのは1988年式のクライスラー・コンクエスト。オーナーであるジョン・ラゾラック三世は、かなりユニークな経歴を持つ人物だ。
出身は東部だが、サンフランシスコの大学に学んだ後、デザイナーとしてGMに入社。当初はデトロイトの本社に勤めていたが、現在はデザインセンターのあるロサンゼルス近郊に移り、自動車に限らない様々なプロダクトの先端的デザインを仕事としている。いわばアメリカ自動車業界のエリートとも呼べるジョンだが、趣味はゴルフでもヨットでもなく、クルマだ。
16歳の時に中古で手に入れたコンクエストを大事に所有しているだけでなく、ドリフトやジムカーナ、タイムアタックなどに適したレーシングマシンへと絶え間なくモディファイしてきた。しかも、ほとんど全てのカスタムやファブリケーションを自らの手で行っている。
当初、コンクエストに載せたエンジンは5代目コルベットなどに搭載されたLS1型5.7LのV8 OHVだった。2JZなど日本製のモーターも好みというが、少ない投資でモアパワーを得る上ではアメリカンV8が有利なため、現在はさらに排気量とパワーをアップした6.2LのLS3へと換装。
マネジメントにはPSI ConversionのLS3用スタンドアローンハーネスを使用。トランスミッションは現行カマロなどと同じ、トレメック製6速MTのTR6060を採用する。エンジンとともに吸排気にはK&Nのカスタムインテークやジョン自作のEXマニを装備。各部の熱対策としてDEI製のゴールドヒートシールディングも施工された。
そして、それらの載せ換え作業もジョン自らが自宅のガレージで実施。重量配分を考慮して、エンジンを通常より6インチ後方にマウントするため、バルクヘッドやフロアなどを加工し、シフターを後方へ移設するキットも自作した。カスタムメイドのプロペラシャフトも導入し、素人技とはとても思えない自然なインストールを実現している。
またある時、低速でのフロントのグリップ不足に悩まされていたジョンは、太いタイヤを履かせるためにワイドボディ化を決意。そのプロセスも非常に独特だ。ゲームクリエイターの友人から譲り受けたデジタルスキャナーを使って車体の3Dデータをコンピュータに取り入れ、デジタルレンダリングでオリジナルのワイドフェンダーをデザイン。
そしてCFD解析による空力シミュレーションまで行った上で、自らクレイモデルを作製。それを元に石膏で型を取ったあとファイバーグラスを積層したFRPで…と、量産性は別として、やっていることは完全にエアロメーカーと同じレベルなのだ。本業が本業だけに、フィッティングも含めた完成度の高さはさすがと言うほかない。
ホイールはCCWの鍛造3ピース『Classic』で、サイズは18インチのフロント11.5J、リヤ13Jとなる。組み合わせるタイヤはアゼニスRT615Kで、前後ともに315/30-18と極太だ。コンクエストのステアリングはもともとボールナットだが、ラックアンドピニオンに交換した上、カスタムメイドのナックルも装備し、操縦性と信頼性を高めている。
インテリアも凄まじい。エンジンを車体中央寄りにマウントするため、ダッシュボードもアルミやカーボン、スウェードなどの素材を使って完全に作り変えた。
センターコンソールに収まるのはサムスンのタブレットPCで、『TORQUE』というアプリで各種走行データを表示する。油圧のハンドブレーキシステムもジョン自ら作製した。
ボディ剛性を引き上げる10点式のカスタムロールケージが覆い尽くす。じつは、このバーデザインにもデジタル技術が活用されているというから驚かされる。
ここ数年、ジョンが最も力を入れているのが、全米の各コースにおけるタイムアタックと、OPTIMAバッテリーが冠スポンサーを務めるストリートカーレース“Ultimate Street Car Association(USCA)”への参戦だ。
USCAはオートラリーやオートクロスなど複数のトラック競技における成績に加えて、車両のデザインやエンジニアリングの評価も加味して順位を競うユニークなレース。ジョンはカリフォルニア州フォンタナにあるAuto Club Speedwayで開催された2018年の最終戦で見事3位に輝いた。
汗とオイルにまみれながら、自らの才能と知見を活かし、クルマを作る側面と走らせる側面をともに追求するジョン。「まだまだやるべきことが山積みだよ(笑)」。彼の探求の旅は終わらない。
PHOTO:Akio HIRANO/TEXT:Hideo KOBAYASHI
純正のオーバーフェンダーのラインを崩さずにって感じだね
2年前にも同じような記事があったのですよ〜
Posted at 2021/05/11 21:03:32 | |
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自動車業界あれこれ | 日記
2021年05月11日
GR 86 / BRZ レース開催、そして次期ワンメイクはどうなる?…関係者が語った
富士スピードウェイで8~9日、86/BRZレース第2戦をメインレースとした、2日間で8レースが行われるワンメイク祭りが行われた。
また、先日新型トヨタ『GR 86』&スバル『BRZ』が発表されたことを受けて、次期ワンメイクレースがどうなるのかを関係者に聞いた。
富士スピードウェイでは8~9日に、ザ・ワンメイク祭りとしてTOYOTA GAZOOレーシング86/BRZレース第2戦のほかに、MINI CHALLENGE JAPAN 2021 第1戦、LOTUS CUP JAPAN 2021 第1戦、WAKO'S スーパーカートカップシリーズ第3戦&WAKO'S スーパーカート富士シリーズ第2戦、富士チャンピオンレースと、2日間で8レースが行われた。
TOYOTA GAZOOレーシング86/BRZレースは、第1戦が3月20~21日にツインリンクもてぎで開催された。約1か月半のインターバルを挟み、第2戦は富士スピードウェイで開催された。8日に行われたプロクラスの予選は、#41 C.S.Iレーシング86の坪井翔選手が2分04秒164でポールを獲得した。
86/BRZレースと言えば、ワンメイクレースとして国内でも多くの参加者が集まるカテゴリーだ。今回の第2戦ではプロクラスが30台、クラブマンエキスパートクラスが29台、クラブマンオープンクラスが57台の合計116台がエントリーしている。なかでもプロクラスはSUPER GTなどで活躍する国内トッププロレーサーが数多く参戦し、コンマ数秒の僅差の戦いをしており、そのレベルの高さも注目を浴びている。今回の予選でもトップから1秒以内に19台がひしめき合う激戦だ。
決勝は9日12時30分よりグリッド整列が行われ、13時から10周の決勝レースがスタートした。予選同様に、スタート後も激しい順位争いが行われ、予選7番手の#10 OTG TN滋賀 86の菅波 冬悟がうまく混戦を抜け出し、トップに躍り出るとそのまま独走し優勝を果たした。
2番手以降はつねに順位が入れ替わる激しいバトルが繰り広げられ、予選3番手の#98 神奈川トヨタ☆DTEC 86Rの近藤 翼が2位に入った。3位は混戦と激しい戦いの中で予選13番手から順位を上げた#31 ケーエムエスフェニックス86の青木孝行が入った。
今回は新型GR86とBRZが日本市場で発表されてから、初めての86/BRZワンメイクレースということもあり、参戦しているプロレーサーに、新型GR 86&BRZを見た印象で、次期GR 86&BRZのワンメイクレースがどうなるかを尋ねた。ほとんどのドライバーは報道などで公表されている映像や写真でしか見ていないこともあり、あくまでも想像の世界での話しであり、何ひとつ確定情報ではない。
1号車 CG ROBOT BRZ BSを操る昨年チャンピオンの久保凜太郎選手は「2.4Lエンジンになって、格段に速くなると思う」と語る。
「その分トップスピードに到達する時間も早くなるので、例えば富士スピードウェイではスピードリミッターにあたる場所が増えるかもしれない。リミッターが効いた状態からブレーキングに入っていくのは、リスクもあるし難しくなるかもしれない。空力も効いてくると思うので菅生やツインリンクもてぎなどは面白くなるかも」
「あとは、今の静かな状態では迫力が足りないから、マフラーを変えて音が大きくなると良いね。実はかなり激しいバトルをしているのだけど、静かで迫力に欠けているから、見ている人にも激しいバトルの迫力が伝わるようになれば良いね」
88号車 CG ROBOT BRZ BSを操る手塚祐弥選手は「まだ見ていないし乗ってもいないので想像の話しですが、2.4Lエンジンになってトルクアップして走りやすくなると思う」と語る。
「国際サーキットでは2.0Lエンジンは少しパワー不足を感じる場面もあるので、下から太いトルクが出ると面白いと思う。菅生のアップダウンなどは楽しくなるのではないかな? 市販パーツも多く出るだろうから、それらが使えると面白いですね」
521号車 埼玉トヨペットGB 86 BSを操る川合孝汰選手は「2.4Lになって排気量もアップし、タイヤサイズも大きくなるかもしれないですね。実車も見ていない状態で、映像や写真でしか見たことはないですが、空力とかも効きそうですよね。現在はタイヤメーカーの差こそありますけど、そんなに差は無いので、排気量が上がることでスピード域が上り、ドライバーが行う作業は増えるかもしれないですが、その分バトルも増えて面白くなると思います」という。
34号車 小倉クラッチ REVO 86 BSを操る佐々木雅弘選手は、トヨタとスバルが合同で行った発表映像にも登場していることもあり、多くは語れないとして、「あくまで夢物語ですけど」、と前置き。そのうえで、「ダンパーフリーや音量の大きいマフラー、カッコいいエアロ、タイヤも17インチを使えたら、カッコいいマシンに仕上がるかも」と夢を語る。
「ナンバーも切らない車検対応として、自分の車がこんな風になったらカッコいいな、という状況でレースを行えば、一般ユーザーのみなさんがレーシングカーを見て、チューニングするようになっていったら楽しいと思う。アフターパーツメーカーなどもレースに入ってこれたら面白いと思う。実際はワンメイクのイコールコンディションを維持するのが大変になるので難しいかもしれないけど、メーカー、アフターパーツ、ユーザーみんなでGR86とBRZが盛り上がっていければ良いのではないか」
レース運営やサポートを行うトヨタカーズ・レース・アソシエイション(T.R.A.)事務局に次期ワンメイクについて聞いたところ、「来季は新型を使ってレースを行えるように調整をしている最中です。マシンに関しては現状と同じように、レース専用グレードを作るための各種の準備を行っている途中です」。
「ベースとなるGR 86とBRZで味付けを変えていることもあり、そこを考慮したうえで準備も行っています。ベース車自体の発売がまだ先なので、具体的にどうなるかは各所の調整もあり準備している最中です。タイヤなども含めレギュレーションも調整を行っています」と、現在様々な方面で調整を行っている最中で、時期がきたらアナウンスを行うとのことだ。
来季はひょっとしたら新しいGR 86とBRZでワンメイクレースが行われるのかもしれない。
Posted at 2021/05/11 20:58:28 | |
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自動車業界あれこれ | 日記
2021年05月11日
【妄想コラム】夢はボクサーvsロータリー!? 水素が内燃機関を救うのか
前後のオーバーフェンダーにセンター出しマフラー。さらにグリルセンターのカローラを示す『C』のエンブレムが、『T』をモチーフとしたトヨタのエンブレムにかわっている。目の前にあるカローラ・スポーツのルックスはこのまますぐにでも、ST-TCRクラスへ参戦できそうだ。
プロジェクト発足が2020年末に決定して、超速で開発体制を整えてトヨタ東富士研究所で製作された水素エンジン・レーシングカーのトヨタ・カローラ・スポーツは、4月24日に東富士研究所内のテストコースで初めて転がし、4月26日に実質的なシェイクダウンテストを富士スピードウェイで実施、そしてその翌々日、4月28日にスーパー耐久公式テストに臨み、メディアへの公開も同時に実施した。
白いボディに公式テストの朝にステッカーを貼るくらいのギリギリの完成だった(シェイクダウンの月曜にはボディの一部はまだ黒かったらしい)。
通常の新規レースプロジェクトだとしても相当なスピードだが、次世代動力源を用いた未知の部分だらけのプロジェクトとしては恐ろしいくらいのスピードで、怖いのは我々メディアだけではなく、それ以上にいちばん怖いのは担当開発者だろう。量産開発では考えられない乱暴さだとも言える。試作初期段階で他の競技車両に混ざってテストを実施。しかも同時にメディアに公開するというのは、通常ではあり得ないことだ。
プロジェクトの責任者でもあるGAZOO Racingカンパニーの佐藤恒治プレジデントは「モリゾウ(トヨタ自動車豊田章男社長)が『責任は自分が取る』と言ってくれているから、我々は思い切りやるだけなんです」と笑う。
■現状富士2分切りは遠いかも しかし忘れてはいけない2006年十勝24時間
走り出した新設ST-Qクラスのカローラ・スポーツのラップタイムは2分04秒くらいと、ホンダ・フィットやマツダ2が走るST-5クラスよりは少し速い程度。GRヤリスに搭載される1.6リッター3気筒ターボのG16E-GTS型エンジンが搭載されていることを考えると、現状の水素エンジンはガソリンに遠く及ばない。
コーナーで排気音を聞いていると上のエンジン回転領域までは使ってはいない。スーパー耐久のコントロールタイヤであるハンコックのスリックタイヤとクルマのキャパシティが完全に余っている状態のようだ。なおかつ現状水素の充填は10~11周に一度は必要となり、水素ステーションでの充填にも分単位で時間を要する。現時点では富士24時間においては“自己との戦い”以外できそうもない。
「だったら、これは単なるエコへの取り組みのアピールだけが目的なのでは?」と決めつけたくもなるが、ここで思い出さなければいけないのが2006年の十勝24時間レースだ。レクサスGS450hをレースカーに仕立てて参戦。ハイブリッドシステム冷却のためにドライアイスをレース中に交換しながら走った。『ハイブリッドがレースに使えるようになるのは、相当先であろうし、ガソリン車相手にレースできるようになるとは思えない』これがこの時の正直な感想だった。
しかし、その後の取り組みと戦績はご存知の通りだ。翌年にはGT500用スープラにハイブリッドを搭載し十勝を制すると、WEC世界耐久選手権でトヨタTSシリーズに採用され、世界の頂点であるル・マン24時間レースを2018年に制覇。どのような技術規則下で戦うかの条件次第の面もあるとはいえ、ノンハイブリッドやディーゼルにスピードで肩を並べるのには2006年から10年を要することはなかった。
自動車メーカーの本気の取り組みを侮ってはいけない。まして今回はトップの号令でプロジェクトがスタートしているのだから、さらに開発スピードに加速がついている上に、耐久レースやツーリングカーの知見はすでにWECやWRCを通じて社内に存分に蓄積されている。
■見た目どおりにTCRマシンに肩を並べる日は来るか
現に、東富士での台上試験と実走テストは同時並行で実施されているという。24時間を走り切る耐久性を確保した上で、出力や燃費をどこまで伸ばせるか、問題が起きれば原因を探求して検討を加えて改良して、再びエンジンベンチに掛ける作業をしながら、実走でのテスト(しかも衆目の前で)にも臨んでいるのだから、担当エンジニアにとってはハードだ。そこだけを注目すればF1やWECなどトップカテゴリーのような開発状況になっている。
初戦である富士24時間は、まずは確実に完走してデータを持ち帰るのが大きなテーマであることは間違いないだろうが、その先、1年後にどこまで到達しているのだろうか? 4本搭載しているミライ用水素タンク(2本は搭載性確保のため短い)の水素充填量は現段階においては、許容量の半分も使用していないという。安全を充分に確保した設計をしているものの、24時間レースにおける想像もしない未知のトラブルが出る可能性を考慮した措置だ。
さらに、水素の燃焼速度の速さをメリットに出力を伸ばしたいものの、異常燃焼をどう制御するのかが課題であり、まだまだリーンバーン領域を詰める必要があるという。もしも、リーンバーンの追求がうまくいって燃費が現状の2倍になり、信頼性が確保できてタンクへの水素充填量が2倍になったら合計4倍。単純計算で最大周回数は40周となり、依然として水素充填時間は要するものの、1スティントの距離だけはガソリン車に対して遜色がなくなる。
また、その効率を燃費ではなくパワー側に振ることができれば、ラップタイム向上も期待できる。1年後か、2年後か、あるいはもっと先になるのか、予選だけはクルマの見た目同様にTCRクラスの車両と肩を並べるところまで到達したとしたら、誰もがその将来性に期待が持てるようになるだろう。
そうは言っても、現状水素の生成に必要なコストは大きく、そこがクリアされない限り、レースに限定しても実用化は困難なのも事実であろう。この点においては産業界だけでなく大学や国もさまざまな取り組みをしており、このような記事を見つけた。
産総研 人工光合成で海水から水素・酸素を高選択で製造 – 日刊ケミカルニュース(chemical-news.com)
太陽光を利用して海水から水素と酸素を取り出すのだという。果たして実用化できるのか、実用化までにどれくらいの時間を要するのか次報を待つしかないものの、これ以外の取り組みにおいても、どこかで大きなブレイクスルーが生まれて水素の生成コストが劇的に下がる可能性がないとは言えない。だとするならばそれまでに水素エンジンがレースの世界で実用化されていれば、『走る実験室』としてのモータースポーツの価値が維持できることになる。水素エンジンは通常のガソリンエンジンからの変更点が少なく、燃料電池に比べて製造コストが低く、大型バスやトラックでの採用が期待されている。
■水素とロータリーの相性がいい理由
では将来的にトヨタは水素で世界を戦うのか? FIA主導でそうした動きがあれば当然取り組みが検討されるであろうが、まったく違う方向性も考えられる。今後、他社も含めた自動車メーカーがモータースポーツに取り組むプラットフォームとして、広く採用されることを目指す可能性もある。
水素エンジン自体は1990年代から取り組みがあるが、ここでレース参戦までこきつけたのは直噴の燃焼コントロール技術が向上したことと、ミライの市販によって車載状態での水素貯蔵および供給技術が確立されたことが大きいという。こうした技術をある程度共有することができれば他の自動車メーカーも水素エンジンでのレース参戦が可能になる。
例えば、水素タンクや配管などはワンメイクとして、エンジン開発をある程度自由に許せば、現状のスーパーGT GT500で採用されているNREのように、各メーカーはエンジン燃焼技術にフォーカスして戦うことができるだろう。
車体やレースフォーマットはTCRに準じて、水素エンジンのスプリントレースができたら楽しい(プライベーターはガソリン車OKとすれば台数も確保できる)。ちなみに水素エンジンの異常燃焼克服の課題のひとつとして、燃焼室内の1カ所だけが熱を持ってしまう現象の発生が挙げられるという。その点でロータリーエンジンはその機構上、燃焼室が移動していくため熱が分散して有利のようだ。
トヨタとのアライアンスを考えると、マツダがロータリー、スバルが水平対向エンジンでカローラスポーツに対抗する日が来るかも……と妄想すると、将来への希望が持てる。自動車メーカーの本業も含めて、カーボンニュートラルに向けて決して電動化一択が正解ではないはずだ。やはり音と匂いはモータースポーツになくてはならない……とここまで書いて気づいた。排気の匂いを嗅ぎ忘れた(申し訳ございません)。排気口から出るのは水蒸気だけでも、おそらく富士24時間ではオイルの焼ける匂いが少しはするはずだ。
Posted at 2021/05/11 20:55:48 | |
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自動車業界あれこれ | 日記