2021年05月20日
気になるその実力! 中身はFFの1.5L!! GRヤリスは“ターボルック”仕様の「RS」を選ぶのはあり?
WRCを戦うために生まれたGRヤリス。それだけに、GRヤリスの本命モデルといえば、通常は1.6Lターボ+アクティブトルクスプリット4WDを採用する「RZ」や「RC」グレードだといえるだろう。
しかし、GRヤリスにはエントリーモデルとして、通常のヤリスと同じ1.5LのNAエンジンにFFレイアウト、トランスミッションはCVTという「RS」グレードが用意されている。
ボディはGRヤリスと同じワイドボディながら、中身のパワートレーン系はフツーのヤリス。まさにターボルックのGRヤリスなわけだが、あえてこの「RS」を選ぶという選択肢は “あり”なのか?
最上級グレードのRZなどの存在に隠れて、今ひとつ目立っていないRSグレードをモータージャーナリストの松田秀士氏がチェックした。
文/松田秀士 写真/ベストカー編集部
【画像ギャラリー】意外とやるじゃん!! GRヤリスのエントリーモデル「RS」を試乗する
■「RS」はノンターボのなんちゃってGRヤリスだ!
写真は上級グレードであるRZハイパフォーマンス。エントリーモデルであるRSはRZとは別物なのか?
GRヤリスというネーミングだけを耳にすると四駆ターボの凄いヤツと直感しがちだが、「RS」グレードの駆動方式はFFです。しかもトランスミッションはCVT。ついでにエンジンはノンタ(ノンターボ)の3気筒1.5L。
要するにブリスターフェンダーがグラマラスなGRヤリスRZのデチューン版! という雰囲気を出しつつ、実は「なーんちゃってGRヤリス」。「GRヤリスのターボルック」ともいえるFFのノンタくんです。
とまぁ、しっかり試乗する前はそうイメージしていたのですよ。ハッキリ言っておきますが「なーんちゃって」は否定系ではありません。なーんちゃってカーボンとかいうシールを貼っただけのフェイク一般を指すことですが、クルマのインテリアにも近いものがたくさんあります。
コストを抑えるためのテクニックであり、多くの人に満足感を与えようとするある意味工芸的なチャレンジだと考えれば、妙に納得できるものです。
■「なんちゃってモデル」はあのポルシェにもあった
操作系などはRZ譲り。遅れをとる部分はどこにもない
その昔にはポルシェ911にも(タイプ930)ターボルックがラインナップされ、多くの節約型金持ちが恩恵を受けました。当時の911ターボはフェラーリやランボルギーニと並ぶ超スーパーカーで簡単に手に入るものではありません。
筆者自身試乗しましたが、911ターボはターボが稼働しない市街地走行ではスカのようなパワーで、911ターボルックと何ら変わりません。逆に911ターボルックは低速トルクたっぷりで走りやすい。
その911ターボルックもクラッチがワイヤーから油圧式に変更されていたり、ドリルドディスクローターがセットされていたり、トランスミッションのサプライヤーも同じだったりと多くの装備がホンモノターボからのキャリーオーバーでした。
言ってみればエンジンさえ交換しちゃえば!? とは言い過ぎかもしれませんが、それくらいに手抜き感ゼロのなーんちゃってターボだったのです。
■安上がりだが手は抜かない
エンジンはヤリスと同じ1.5L 3気筒のNAエンジン。FFのCVTもヤリスと同じだ
で、GRヤリスRSです。エンジンはただのヤリスと同じ。120ps/145Nmの1.5L 3気筒の自然吸気。駆動系もただのヤリスと同じFF。しかもCVTオンリー。つまりヤリスの量産パワートレーンをそのまま移植したもの。これは安上がりです。
しかし、それ以外はエンジンフード、ドア、リアハッチにアルミ材を採用。ルーフはカーボンだ。
筆者は86GRMNの製作現場の元町工場を見学したことがあるが、カーボンの設備が素晴らしく、また手作業によるルーフの取り付け工程、職人の技術力はもう量産する自動車メーカーの工場という印象ではなく、クラフトマンシップで営む英国の古きよきファクトリーを連想させるほどでした。
RSの詳細を見れば見るほどにボディの作りのよさに感心します。つまり、パワートレーン以外のボディはほとんどRZそのものといったところ。バケットタイプのスポーツシート、ステアリング、シフトノブなど、すべての操作系もRZ譲り。(「RZハイパフォーマンス」グレードとは差異がある)
そのシートに納まってみる。ホールド感はかなり高く、表皮がわずかに身体に馴染みピタッと張り付く感じ。ドラポジはシートにしっかりと支えられ、余計な力を使わずにステアリングやペダル操作ができるベストなもの。
座面から膝裏までのサイサポートも適度。ただしRSは2ペダルなので、クラッチ操作のフィーリングはわからない。このシートはRZと同じでRZハイパフォーマンスとは異なること、あらかじめお伝えしておきます。
■意外と気持ちいいCVTとホンキのシャシーが好印象
トランスミッションはCVTの設定。これが意外と気持ちよくシフトアップしていく
スターターを押してエンジン始動。RZと同じ3気筒だがこちらはノンタです。排気量も若干少ない1.5L。最初から期待はしていなったが、CVTの発進ギヤのおかげかスタートはスムーズでそこそこ力強い。ただしヤリスハイブリッドのほうがもっと力強い。まぁこれは仕方がないこと。
このCVT、10速MTにも対応。CVTなので疑似ギヤを想定してプーリーの径を瞬時に変更して行う。いわゆるMTモードでオートシフトアップも行うわけです。
これが意外にも気持ちよく、10速なのでそこそこクロスしていて約7000rpmまで回ると2000rpm弱の回転落ちで次々とシフトアップ。パワー的には大したことはないが、ちょっとレーシング気分が味わえます。
エンジンパワー的には60点ぐらいですが、エクゾーストノートもそれなりにスポーティなものになっていて、このCVTの疑似MTシフトと相まって悪くないスポーツエンジンの印象です。
しかし、スゴイのはやはりボディ! 車体! シャシー! でした。
実は、このレポートのために3日間広報車を借り出して試乗したのですが、借り出して走り出した瞬間から乗り味の質感が高かったのです。
まずはロードノイズですね。余計なノイズがカットされ、必要な路面のサーフェスの情報は入ってくる。サーキット路面のような粗い表面だと「ゴー!」とか「ザー!」などと音質がハッキリする。
それが、静かではないのだが耳障りでない。ちょっと薄めのヘッドフォンをかけているかのような聞こえ方。そしてその「ゴー!」とか「ザー!」はステアリングからもシートからも感じられる。音は振動なのだから当たり前のことだが、ボディがしっかりしているから写実的に感じ取れるのだ。
■パワートレーン以外のパフォーマンスはRZに匹敵!?
サスはほどよく締まっているという印象。ロードノイズは耳障りではなく、音や振動として必要な分量で伝わってくる
サスは硬いというよりも締まっているというフィール。市街地の微小で連続した凸凹路面の表面は細かく足がいなしてくれる。突き上げ感は少ない。大きなギャップはそれなりにボディを揺さぶる。それはスポーツモデルだから当たり前、といえば当たり前。
コーナリングはその横Gに応じたロール角を示すが、限界域に到達するにしたがってじわじわとプログレッシブにスプリングが圧縮されるフィーリング。これがものすごくわかりやすい。
4WDのRZと同じフィールをきちんと出している。ブレーキングもしかりで、少しのノーズダイブをしっかりと止めて踏力に応じた力強いブレーキングができた。
ハッキリ言って、パワートレーン以外のパフォーマンスはRZに匹敵する。それでいてRZとの価格差131万円。この差をどう見るかはあなた次第ですが……。
ちなみに約100kmを走った総合燃費は12.7km/Lでした。通勤など月間走行距離を走る人には“アリ”な存在ではないだろうか。
筆者の印象は、GRヤリスRSは“ホンモノ”のなーんちゃってGRヤリスなのであった。
Posted at 2021/05/20 22:40:48 | |
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2021年05月20日
究極のハンドメイドV12エンジンか!? GTOエンジニアリング、スクアーロのハイパワーかつ超軽量なエンジンスペックを公表
GTO Engineering Squalo
GTOエンジニアリング スクアーロ
最高回転数は1万rpmを目標に開発
英国・バークシャー州トワイフォードを拠点に、クラシック・フェラーリのレストア、整備、パーツ供給、イベントサポートなどを行う「GTOエンジニアリング(GTO Engineering)」は、現在オリジナルスポーツカー「スクアーロ」の開発を行っている。
GTOエンジニアリングは、英国を拠点にフェラーリ製エンジンのリビルドを行ってきたノウハウを活かし、これまでの常識を書き換えるスペックのスポーツカーとエンジン開発を行っている。スクアーロはGTOエンジニアリングによってイチから開発され、車両重量は1トン以下、自然吸気V12エンジンにマニュアルのギヤボックスを組み合わせ、リヤを駆動することが確認されている。
今回、GTOエンジニアリングはスクアーロのフロントに搭載されるハンドメイドの自然吸気V型12気筒エンジンのスペックを公開した。排気量は4.0リッターのクワッドカムで、最高出力は460bhp以上を発揮。最高回転数は1万rpmを計画しており、その単体重量は165kg以下を目標としている。
フェラーリのレストアで得られた知見を活用
エンジン開発プロジェクトチームは、GTOエンジニアリングの社内スタッフと外部コンサルタントで構成されており、V12エンジンを可能な限り軽量化して最高のドライバビリティを持つパワーユニットを目指している。
開発チームは、軽量化とドライバビリティに3つの目標基準を設けた。ひとつ目は自然吸気のV12エンジンが、グランツーリスモとしてもサーキットアタックでも、同じように使えるようにすること。ふたつ目は可能な限りの軽量化。3つ目として最新の製造プロセスとマテリアルを用い、究極のロードカー用V12エンジンを完成させることだという。
GTOエンジニアリングの創業者であり、マネージングディレクターを務めるマーク・ライオンは、現在のエンジン開発状況について、次のように説明した。
「よくスクアーロとフェラーリ 250シリーズの共通点を聞かれることがあります。簡単に言えば『一切ない』ということです。ふたつのモデルに共通するパーツはありません。そして、その重要な例のひとつがエンジンです」
「私たちはフェラーリのことを深く理解したエキスパートです。最近、1960年製フェラーリの4.0リッターV型12気筒エンジンの重量を測定したところ、スターターモーター、オイル、オイルフィラーチューブを含めてわずか176kgでした。これは現代のV12エンジンよりもはるかに軽量です」
「私たちが持つ知識と最新の技術をもってすれば、さらに良いエンジンが完成できると確信しています。私たちが開発するクワッドカムV12のすべてのパーツや設計は、スクアーロに最高のエンジンを搭載することを約束するために、エンジニアリングの観点から完全に見直されています」
V型12気筒エンジン単体重量は165kg以下に
すべてのパーツが再評価され、より軽く、よりタイトにまとめられたV型12気筒自然吸気エンジンのプロトタイプは完成した。総重量を165kg以下にすることを目標に、チームはエンジン全体でパーツを中空化したり、先進的なマテリアルの使用を検討した。たとえばスターターモーターは大幅に軽量化され、クラッチとフライホイールは25%(同等品比)軽量化されたものを採用している。現在この新型V12エンジンは、開発車両に搭載されてテストがスタートしている。
エンジンだけでなく、開発チームはエンジンレイアウトに関しても最適解を導き出すために多くの時間を費やした。最終的にスクアーロでは、55:45の前後重量配分を目指している。燃料タンク、トランスアクスル、バッテリーなど様々な重量物は、車両後部に配置するように設計された。
先進的な製造技術が試作段階だけでなく、本生産にも導入される。GTOエンジニアリングでは自社製のアディティブ・マニュファクチャリング(AM)システムを活用。プロトタイプ用パーツを3Dプリンタを使って製造した。
ボンネットを開けた時の美しさにもこだわったエンジン
マーク・ライオンをはじめとするGTOエンジニアリングの開発チームは、機能性や性能だけでなく、美しさやデザインにも強いこだわりを見せている。そのためエンジン全体のパッケージングにも細心の注意が払われた。開発チームは見た目の美しさを保ったまま、可能な限りコンパクトなパッケージにすることを目指したのだ。
ボンネットを開けたときに美しいバルブトランペットが見えるよう、補機類の配置も様々な案を検討。フロントのタイミングケースはよりスマートなデザインを採用し、メインベアリングのサンプアッセンブリも同様に形状を変更している。
このV12エンジンは、GTOエンジニアリングの本社ファクトリーにおいて手作業で製造される。現時点で、GTOエンジニアリングはシリンダーヘッドのデザインを決定しており、本格製造に向けた検討作業の段階に入っている。さらに点火システムの仕様が決定、エアコンのパッケージングとプロセッサーの仕様も確定した。
2020年11月のスクアーロ開発発表以来、GTOエンジニアリングは確実に開発作業を進めている。「2020年代で最もエキサイティングなエンスージアストカーを作り上げる」という目標を掲げ、2023年には最初のカスタマーへとデリバリーされる予定だ。
Posted at 2021/05/20 22:38:02 | |
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