2021年07月23日
トヨタモビリティ東京、レクサス高輪で不正車検 2年間で565台
トヨタ自動車は20日、直営販売会社のトヨタモビリティ東京(TM東京、関島誠一社長)で不正車検が発覚したと発表した。レクサス高輪(東京都港区)で行った車検において過去2年間で全体の3分の1に当たる565台について基準値に満たすよう数値の書き換えや一部の検査を行わないといった不正を行った。トヨタの系列販売店では、3月にネッツトヨタ愛知(平光順二社長)で車検不正が発生したばかり。相次ぐ不正の発覚で、信頼回復に向けたオールトヨタでの対策が急がれる。
20日、オンラインで会見を開き、TM東京の関島社長は不正が起こった背景について「増加する仕事量に対して人員と設備が追い付いていなかった。また、慢性的に時間内に作業を終わらせることを最優先にしてきた」ことの2点を挙げた。
不正は、ヘッドライトの明るさやパーキングブレーキの効きなどについて基準値への書き換え、スピードメーターの精度について検査を実施していないなど5つの検査項目に及んだ。不正に関与した検査員は4人。対象車は現時点で事故や不具合の発生は確認されていないが、改めて再検査を無償で実施する。
再発防止対策として、人員の増強やサービス機器の更新を進めるとともに、作業に必要な追加時間などをユーザーにしっかり説明できるよう店舗業務を見直していく方針だ。
3月にネッツ愛知で車検不正が発覚して以降、トヨタでは同様の事案が発生していないか、全国のディーラーを対象に実態調査を行ってきた。こうした活動の最中、TM東京で起こった不正は関東運輸局の指摘で発覚した。トヨタの国内販売事業本部の佐藤康彦本部長は「メーカーの責任であると痛感している」と述べ、全国約4600工場を対象に調査を進めていく方針を示した。
「安全・安心」のトヨタ、ブランド失墜---レクサス旗艦店で車検不正[新聞ウォッチ]
「仕事量が増える中で要員や設備が追いついておらず、慢性的に高い負荷が続いていた。決められた時間内に作業を仕上げることを最優先してしまった」
トヨタ自動車の直営ディーラー、トヨタモビリティ東京の関島誠一社長は不正車検が発覚し理由について、このように説明した。
検査不正が行われていたのはトヨタモビリティ東京が運営する店舗「レクサス高輪」。過去のデータで調べられる範囲では2019年6月から21年3月にかけ、検査台数の約3分の1で不正があったという。排ガスの成分やスピードメーターの精度の検査をしていなかったほか、ヘッドライトの明るさやフロントタイヤの角度の検査では、基準に満たない数値を適合するよう書き換えたそうだ。
トヨタ自動車の株主総会翌日の6月17日、国土交通省の監査で発覚。検査員4人が不正を認めたそうだ。
レクサスと言えば、トヨタの最高級車ブランド。1989年米国で産声を上げて、2005年からは国内市場にも投入された。レクサス高輪は旗艦店の第1号で、当時世界の一流ホテルのリッツカールトンの接客マナーなどを取り入れて、高級ホテルのロビーのような贅を尽くした店内で、営業マンが跪いて接客をするなど「最高のおもてなし」の顧客満足度をアピールしてきた。豊田章男社長もレクサスの改革には強い関心を寄せており、2013年には社長自らチーフブランディングオフィサーに就任したほどである。
トヨタには全国で258販社、約4600のサービス拠点を構えているが、レクサス高輪は、その模範となるべく代表的な店舗。その店で仕事量が増えたとはいえ、人員を増やすことや検査設備への投資を抑えて、しかも現場の不正を見抜けなかったのか、それとも店舗ぐるみの不正行為だったのかは定かではないが、親会社のトヨタや販社の経営責任を問われるのは必至だろう。
ちなみに、きょうの各紙もレクサス高輪の車検不正を報じているが、朝日が「スピード優先、作業省く」とのタイトルで経済面のトップと社会面に書き分けていたが、日経など他紙は社会面や経済面に地味な掲載となっている。3月には系列の独立資本のネッツトヨタ愛知でも不正が表面化したばかりだった。
それにしても、日産自動車やスバル、三菱自動車、スズキなどでも出荷前検査不正や燃費データの改ざんなどが相次いで発覚した中で、顧客の「安全・安心」をモットーにトヨタはある意味で蚊帳の外で静観していた“優等生”のはずだったのだが……。
2021年7月21日付
●ホンダ鈴鹿工場停止へ、コロナ影響か、部品調達滞る、来月5日間 (読売・2面)
●レクサス店車検不正、高輪565台検査未実施など (読売・7面)
●五輪交通規制生活しわ寄せ、配送・患者搬送に遅れ (朝日・2面)
●五輪開会式「欠席」相次ぐ、スポンサー企業・経団連会長も (朝日・6面)
●トヨタCM中止の余波警戒、スポンサー企業、宣伝戦略影響(産経・3面)
トヨタモビリティ東京社長、レクサス不正車検の背景について「要因は2つある」
トヨタモビリティ東京の関島誠一社長は7月20日に行った、「レクサス高輪」での不正車検についての会見で、社内調査の結果を踏まえ、その背景に「要因は2つある」との認識を示した。
「まず1つは増加する仕事の量に対して、エンジニアなどの人員や設備の増強が追いついておらず、慢性的に負荷の高い状況が続いていたこと。2つ目は決められた時間内に車検を終わらせることが目的となってしまったこと。1台1台のクルマには車種や走行距離、日々の使われ方や車両状態などで必要な作業が異なる。にもかかわらず、当初予定された時間で仕上げることを最優先してしまい、今回の不正につながった」と関島社長は話す。
今回の不正車検は6月17日に行われた国土交通省関東運輸局東京運輸支局による監査で発覚。レクサス高輪では過去2年間、対象台数565台について、「ヘッドライトの明るさ」や「パーキングブレーキの効き」「フロントタイヤの角度」「排気ガスの成分」「スピードメーターの精度」の5つの項目で不正が確認され、再検査が必要になるという。
不正車検は同じトヨタ自動車の販売会社、ネッツトヨタ愛知でも発覚している。2020年12月に同社の販売店「プラザ豊橋」で行われた国土交通省中部運輸局の抜き打ち監査で不正車検が明らかになり、その後の調査で5000台以上の不正車検が見つかった。
プラザ豊橋では、45分で車検を終了する「45車検」が展開され、「時間内で作業を終えること」が重視されていたという。レクサス高輪とまったく同じ状況だったわけだ。
しかも、トヨタは1990年代以降、作業のムダを省く「トヨタ生産方式」(TPS)を販売店にも広げる取り組みを進めた。1日以上かかっていた車検を見直し、短時間で行うための作業手順を標準化し、全国の販売店に広めていった。その旗振り役だったのが当時課長だった豊田章男社長だったという。
そのため、質疑応答ではプラザ豊橋との関連やメーカーの責任を問う質問が飛んだ。それに対して、会見に同席したトヨタ自動車国内販売事業本部の佐藤康彦本部長は「時間内で仕事を上げなければいけないと、時間が目的になっていたことが共通点ではないかと思う。時間だけが残ってしまった。メーカーとしても反省する」とメーカーにも責任があることを認め、こう述べた。
「これからの信頼回復に向けて、オールトヨタ販売店を含めて一丸となってお客さま、そして世の中の方に対する信頼回復の取り組みのスタートと位置づけて、今回は本当ににゼロベースで、あらゆるメカニックの苦労も含め、取り組みを一歩一歩着実に続けていきたいと考えている」
また、関島社長は「私が社長として取り組むべきは、織部レーション上での負荷と悩みをしっかりと現地現物で把握し、エンジニアの処遇改善や働く環境の改善など会社として店舗の在り方を抜本的に見直し、社員全員が目指すべきものに一つとなれる環境、お互いが話し合える風土をつくることである。これが再発防止に向けて果たすべき私の責任であると考えている」と強調する。
いずれにしても作業のムダを省いて時間を短くするはずが、時間を守るために作業を省くという本末転倒の結果を招いてしまったわけだ。ここでもう一度、トヨタの基本思想であるTPSをつくり上げた時の思いや狙いをトヨタグループ全体で見つめ直す必要がありそうだ。
Posted at 2021/07/23 13:32:01 | |
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