2021年09月15日
トヨタ「86」に似てる!? 新興ハイパーカー「ゼンヴォ」の名前の由来とは?
■デンマーク発の新興ハイパーカーブランド「ゼンヴォ」
今やスーパーカー、ハイパーカーのビジネスは世界的なものとなりつつある。その中心となるのは、やはりイタリアとドイツ、そして英国なのだが、今回紹介するのは、デンマークの首都であるコペンハーゲンも位置する、シェラン島(ジーランド島)の南部に2004年に設立されたゼンヴォ・オートモーティブ(Zenvo Automotive)だ。
●1年にたった5台しか作らない理由とは
2004年にトロエルス・フォラートセンによって創立されたゼンヴォ。ちなみにゼンヴォとは、彼のラストネーム(Vollertsen)の後ろ3つのレター「sen」と先頭2つのレター「Vo」を組み合わせたもの。彼もまた自らのスーパーカーに自身の名前を掲げることを夢見たひとりだったのだ。
フォラートセンが、デンマークでハイパーカーの開発と生産をおこなうことを決断したひとつの理由には、極北のハイパーカーメーカーと呼ばれる、スウェーデンのケーニグゼグの成功があったに違いない。
ケーニグセグはスウェーデン南部のエンゲルホルムで設立されたが、エンゲルホルムはスーパーカーの聖地から遠く離れている。つまり、さまざまなサプライヤーからも離れているという地理的な不利を抱えている。
それだけではない。1年のかなりの時間を厳しい環境に耐えなければならない気象環境の不利、そして何より誰その名を知らないところからの新興勢力としてのスタートなどがありながら、ケーニグセグはハイパーカーメーカーとして一定の成功を収めている。デンマークのシェラン島は、エンゲルホルムと比較すれば、まだ条件には恵まれている。
2004年からプロトタイプの製作にとりかかったゼンヴォが、最初のモデルを完成させたのは2008年12月のことだった。このプロトタイプを経て、プロダクションモデルの「TS1」が15台の限定車として2009年に制作された。
わずか15台のTS1の新車価格は約165万ドル(当時のレートで約1億6500万円弱)。ゼンヴォTS1は最初から、ハイパーカーのファンを魅了する大きな魅力を持っていたといってもよいのだろう。2016年からはさらに年間5台の限定生産が決定するとともに、よりGTとしての性格を強めた「GT1 GT」も登場した。
そのゼンヴォが、現在メインモデルとしているのが、「TSR」と「TSR-S」の両モデルだ。前者は2016年、後者は2018年のジュネーブ・ショーでワールドプレミアされているが、その斬新なエクステリアデザインのみならず、これらのモデルの造り込みはほかのハイパーカーと比較しても、それほど劣ったものではない。
ちなみに両車の違いは、TSRがトラック専用車であり、TSR-Sがストリート走行も可能なレギュレーションを満たしたモデルとして製作されていることである。
カーボンファイバーなどを使用した徹底した軽量化により、TSRは、車重はTS1と比較して250kgもダイエットし、1580kgの数字を達成。TSR-Sではその数字はさらに1495kgにまで低減されている。
リアミッドに搭載されるエンジンは、このTSR-Sで1194psの最高出力を発揮する、5.8リッターV型8気筒ツインスーパーチャージャー。このパワーで0-100km/h加速を2.8秒でこなし、0-200km/h加速も6.8秒で駆け抜ける。最高速は325km/hにリミッター制御されている。
斬新であるとともに、エアロダイナミクスの優秀さを感じさせるTSR-Sのボディだが、最大の特徴は、コーナリング時などにステアリングに連動して傾きを変化させるアクティブ・リアウイングだ。その効果はオーナーのみが知るところだが、ドイツ最大クラスの自動車ディーラー、ミュンヘンのモール・グループと先日代理店契約を結んだにもかかわらず、その生産台数は年間5台に制限している。
この生産台数の制限は、どこでも見られるようなハイパーカーをオーナーは望まないということなのかもしれない。
それはさておき、このモール・グループの協力で、ミュンヘンに開催地を移したIAAに出展したゼンヴォ。彼らの歴史は新しい時代を迎えたようとしているようだ。
ピコピコ動くリヤスポがかわいいんですよwww
Posted at 2021/09/15 23:32:54 | |
トラックバック(0) |
自動車業界あれこれ | 日記
2021年09月15日
【強烈すぎる】ポルシェ・ミッションR 1088ps EVワンメイク・レースのコンセプト
予選時は1088ps GT3カップと互角のラップ
独ポルシェが、ミュンヘン・モーターショー2021で、天然繊維強化プラスチックなどの素材を用いたコンセプトカー「ミッションR」を発表した。
低く構えたスタンスからも分かるように、コンペティションを想定したEVと紹介されている。
そのパフォーマンス・スペックは、「予選モード」で0-100km/h加速が2.5秒未満、最高速度が300km/h超え。
電気モーターは前後のアクスルに1基ずつ配置され、同モードでフロントが435ps(320kW)を、リアが653ps(480kW)を発揮、これにより合計の最高出力は1088ps(800kW)に達する。
その電気モーターは新設計のもので、ダイレクト・オイルクーリングを備えるバッテリーセルとの組み合わせにより、レースモードでは定出力680ps(500kW)を発生。
サーキットでは、現行のポルシェ911 GT3カップと同じラップタイムで周回することができるという。
充電は、900Vテクノロジーとポルシェターボチャージャーによって、わずか15分で5%-80%の状態にすることが可能。また、最大340kWで充電することができる。
「フル電動のカスタマー・モータースポーツ」
当然CO2の低減、持続可能性にも配慮されており、そのボディは、主に天然繊維強化プラスチック(NFRP)でできているというから興味深い。その基本素材は、農業で得られた亜麻繊維だという。
このエコロジー素材は、フロントリップ、ディフューザー、サイドスカートに使用され、インテリア・ドアパネル、リアバルクヘッド、シートなど、ミッションRのインテリアにも幅広く使用された。
コクピットの注目機能は、シート右側にあるタッチディスプレイ。これを使用すると、ドライバーの生体認証データを呼び出すことができる。また、車内にある多数のカメラを使って、ドライビングの様子をライブストリーミング配信することも可能だ。
同社のオリバー・ブルーメ取締役会会長は、「ポルシェは、夢を実現する人々のためのブランドです。それはモータースポーツにも当てはまります。わたし達は、サーキットで革新的な強さを体験し、新しい道を追求する勇気を示し、オーナーにスポーツカー然とした性能で喜びを与えるのです」
「フォーミュラEへの参戦に加えて、わたし達はここで、Eモビリティの次なる大きな一歩を踏み出します。このコンセプトモデルは、フル電動カスタマー・モータースポーツに対する当社の展望を示すものです。ミッションRでは、ポルシェを強くする全てのもの、つまり性能、デザイン、持続可能性が具現化されています」と、語っている。
つまりミッションRは、フル電動カーによるワンメイクシリーズの未来を示すモデル。きっとポルシェならではのエキサイティングなレースで、モータースポーツファンを魅了してくれることだろう。
ポルシェのワンメイクレースも電動化の時代へ!「ポルシェ ミッションR」を発表【IAAモビリティ2021】
フロントに435ps、リアには653psを発生する電気モーターを搭載
ポルシェAGは、ミュンヘンで開催されている「IAA MOBILITY 2021」にてコンセプトカーの「ミッションR」を発表した。ポルシェミッションRに搭載された新開発の2つの電気モーターは、予選モードで最高出力800kW(1,088PS)を発生し、約80kWhのバッテリー容量と革新的な回生システムによって、出力を失うことなく加速することが可能で、フル電動カーによるワンメイクシリーズの未来を示しているという。
ポルシェは、31年前にポルシェカレラカップドイツを始めて以来、4,400台以上のカップカーをヴァイザッハで製造および販売してきた。これらの信頼性の高い高性能レーシングカーをベースに、世界中でポルシェカレラカップジャパンをはじめとした合計30のワンメイクカップシリーズが開催されている。2021年のモータースポーツシーズンの開始とともに一部シリーズで導入された911 GT3カップの最新モデルは、タイプ992をベースとしています。
予選モードで1,100PSをわずかに下回るミッションRは、静止状態から100km/hまで2.5秒未満で加速し、最高速度は300km/hを超えるパフォーマンスを披露。サーキットでは、現行のポルシェ911 GT3カップと同じラップタイムで周回できるという。新設計の電気モーターとバッテリーセル(革新的なダイレクトオイルクーリングを装備)によって、ポルシェミッションRはレースモードで500kW(680ps)の定出力を発生し、ディレーティング(熱条件によるバッテリーの出力低下)も取り除かれています。320kW(435ps)の電気モーターがフロントアクスルに駆動力を供給し、リアには最高出力480kW(653ps)が供給されるAWDを採用。高度な900Vテクノロジーとポルシェターボチャージャーによって、わずか15分で5-80%のSoC(充電状態)にバッテリーを充電することができるとのことだ。
また、ノーズセクションとリアウイングにドラッグリダクションシステム(DRS)を備えたポルシェアクティブエアロダイナミクス(PAA)も装備。これは、ノーズセクションの2つのサイドエアインテーク(各々3つのルーバー付)と、調整可能な2セクションリアウイングで構成されている。
革新的なバッテリー式エレクトリックドライブコンセプトに加えて、CO2の低減と持続可能性にも重点を置くコンセプトカーのボディは、主に天然繊維強化プラスチック(NFRP)でできており、その基本素材は農業で得られた亜麻繊維で作られている。このエコロジー素材は、フロントスポイラーリップ、ディフューザー、サイドスカートに使用され、インテリアドアパネル、リアバルクヘッド、シートなど、ミッションRのインテリアにも幅広く使用されている。
インテリアデザインは、あらゆるエリアでドライバーに焦点が当てられており、ステアリングホイールスイッチ間に人間工学的に配置されたディスプレイには、レース中の関連データが表示され、ステアリングコラム上のモニターには、サイドミラーカメラとセンタールームミラーカメラからの画像が表示される。シートの右側にあるタッチディスプレイを使用すると、ドライバーの生体認証データを呼び出したり、車内にある他の多数のカメラを使用して、ライブストリームにエキサイティングなシーンを提供することも可能だ。
ポルシェは、このミッションRプロジェクトによって、リアルレースとバーチャルレースをこれまで以上に近づけ、まったく同じ形式のモノコックドライバーズモジュールは、eスポーツシミュレーターとしても機能する。ポルシェのエンジニアとデザイナーが“exoskeleton”(エクソスケルトン)と名付けた新開発のカーボンルーフ構造は、セーフティーケージとルーフパネルを組み合わせており、4,326mmの全長は、現行の718ケイマン シリーズよりもわずかに短いにもかかわらず、全幅は著しくワイドな1,990mmで、全高も1,190mmと大幅に低く構えたデザインだ。
「ポルシェは夢を実現する人々のためのブランドです。これはモータースポーツにも当てはまります。私達はサーキットで革新的な強さを体験し、新しい道を追求する勇気を示し、車のオーナーにスポーツカー然とした性能で喜びを与えます。フォーミュラE世界選手権への参戦に加えて、私達はここでE-モビリティの次の大きな一歩を踏み出します。このコンセプトモデルは、フル電動カスタマーモータースポーツに対する当社の展望を示します。ミッションRには、ポルシェを強くする全てのもの、つまり性能、デザイン、持続可能性が具現化されています」とポルシェAGの取締役会会長のオリバー・ブルーメは述べている。
IAA2021 ポルシェ 近未来に向けた市販型の電動レーシングカー「ミッションR」を発表
ポルシェ本社は2021年9月7日、ミュンヘンで開催されている「IAAモビリティ2021」で最先端の電気駆動テクノロジーと天然繊維強化プラスチックなどの持続可能な素材を採用してこれからのモータースポーツへ取り組みを示すコンセプトカー「ミッションR」を発表ました。
ミッションRは、革新的な、それでいて911のDNAを取り入れたデザインに加えて、非常に低スタンスが特長です。この電動レーシングカーは、新開発の2つの電気モーターを搭載し、予選モードで最高出力800kW(1088ps)を発生し、約80kWhのバッテリー容量と革新的な回生システムにより出力を損失することなく加速する動力性能を備えています。
オリバー・ブルーメCEOは、「ポルシェは夢を実現する人々のためのブランドです。これはモータースポーツにも当てはまります。私達はサーキットで革新的な強さを体験し、新しい道を追求する勇気を示し、車両のオーナーにスポーツカーならではの性能で喜びを与えます。フォーミュラE世界選手権への参戦に加えて、私達はここでEモビリティの次の大きな一歩を踏み出すことになります。このコンセプトモデルは、フル電動カスタマーモータースポーツに対する当社の展望を示しています。ミッションRには、ポルシェを強くする全てのもの、つまり性能、デザイン、持続可能性が具現化されたモータースポーツ用モデルです」と語っています。
このミッションRは、従来のポルシェ カップカーを想定したワンメイク カスタマーレーシング向けのモデルです。ポルシェのカスタマーモータースポーツは世界的に高い人気を得ており、31年前にポルシェカレラカップ ドイツを始めて以来、4400台以上のカップカーをヴァイザッハで製造販売してきています。
これらの信頼性の高い高性能レーシングカーをベースに、世界中でポルシェカレラカップの名称のもとで合計30のワンメイク カップシリーズが開催されています。
ミッションRは、予選モードで約1100PSを発生し、静止状態から100km/hまで2.5秒未満で加速し、最高速度は300km/hを超えます。サーキットでは、現行のポルシェ911GT3カップと同じラップタイムで周回できます。
新設計の電気モーターとバッテリーセル(革新的なダイレクトオイルクーリングを装備)によってレースモードで500kW(680ps)の出力を発生し、ディレーティング(熱条件によるバッテリーの出力低下)も除去されています。
320kW(435ps)の電気モーターがフロントアクスルに駆動力を供給し、リヤには最高出力480kW(653ps)が供給されます。最新の900Vの高電圧テクノロジーとポルシェターボチャージャーによって、わずか15分で5~80%のSoC(充電状態)にバッテリーを充電することができます。また最大340kWの高出力充電も可能です。
ミッションRは、ノーズセクションとリヤウイングにドラッグ リダクションシステム(DRS)を備えたポルシェアクティブエアロダイナミクス(PAA)も装備しています。これは、ノーズセクションの2つのサイドエアインテーク(各々3つのルーバー付)と、調整可能な2セクション構造のリヤウイングで構成されています。
革新的なバッテリー駆動の電動ドライブコンセプトに加えて、CO2の低減と持続可能性にも重点を置くコンセプトカーのボディは、主に天然繊維強化プラスチック(NFRP)でできており、その基本素材は農業で得られた亜麻繊維で作られています。このエコロジー素材は、フロントスポイラーリップ、ディフューザー、サイドスカートに使用され、その他にインテリアのドアパネル、リヤバルクヘッド、シートなどにも幅広く使用されています。
インテリアデザインは、あらゆるエリアでドライバー中心のデザインとなっています。ステアリングホイール スイッチ間に人間工学的に配置されたディスプレイには、レース中のデータが表示され、ステアリングコラム上のモニターには、サイドミラーカメラとセンタールームミラーカメラからの画像が表示されます。シートの右側にあるタッチディスプレイを使用すると、ドライバーの生体認証データを呼び出すことができます。車内にある他の多数のカメラを使用して、ライブストリームにエキサイティングなシーンを提供することも可能です。
ポルシェは、ミッションRプロジェクトによって、リアルなレースとバーチャルレースをこれまで以上に近づけており、まったく同じ形式のモノコックドライバーズモジュールは、eスポーツシミュレーターとしても機能します。
カーボンファイバー複合材料で造られたコックピット安全構造は、優れたドライバーの保護性能、軽量さ、と独自のデザイン性を兼ね備えます。ポルシェで「exoskeleton:エクソスケルトン」と名付けた新開発のカーボンルーフ構造は、セーフティーケージとルーフパネルを組み合わせています。
ミッションRは全長4326mmで、現行の718ケイマンシリーズよりもわずかに短いにもかかわらず全幅は超ワイドな1990mm、全高は1190mmと大幅に低められています。
ポルシェはここ数年のあいだに、ミッションE(2015年)とミッションEクロスツーリスモ(2018年)のコンセプトモデルを発表し、フル電動スポーツカーシリーズの未来像を示しました。
この2台のコンセプトモデルからスポーツセダンのポルシェタイカン(2019年)とクロスユーティリティーモデル、タイカンクロスツーリスモ(2021年)が誕生し、世界市場で成功を収めています。つまり、ミッションEはすでに達成されており、ポルシェはミッションRによってカスタマーモータースポーツの未来を示しているのです。
Posted at 2021/09/15 23:25:37 | |
トラックバック(0) |
ポルシェ | 日記
2021年09月15日
「F40」が1250万円で落札! フェラーリ「328GTS」が中古で買えるチルドレンズ・カーとは?
■タルガトップの「F40」発見! ただしチルドレンズ・カー
毎年8月中旬、アメリカ・カリフォルニア州モントレー半島内にて、約1週間にわたって数多くのイベントが次から次へと開催されるカーマニアの祭典「モントレー・カー・ウィーク」だが、2020年は新型コロナウイルス禍によって中止となってしまった。
しかし今年は2年ぶりの開催となり、中核イベントのひとつである「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」が昨年90周年を迎えた「ピニンファリーナ」をメインフィーチャー・ブランドとしたことも理由なのだろうか、時を同じくしてRMサザビーズ北米本社がモントレー市内で開催した「Montley」オークションでは、おびただしい台数のフェラーリが出品されることになった。
しかし、今回VAGUEが注目したのは、フェラーリ風であっても本物のフェラーリではなく、またサイズもふた回りほど小さなチルドレンズ・カーである。
フェラーリの歴史的名作「F40」を3/4スケールに縮小しつつも、なかなか精巧に作られた1台を紹介しよう。
●子供向けとは思えない? とことん本格的なFレーサー・ジュニア
1990年代半ば、ルカ・ディ・モンテゼーモロ元会長がフェラーリの実権を完全掌握し、フェラーリの商標はもちろんクルマたちの肖像権までもコントロールするようになる以前、フェラーリF40は「キッズカー」や「チルドレンズ・カー」のモデルとしても大いに引用されていたようだ。
「F40っぽく見える」小さなクルマたちは、乳幼児がまたがって遊ぶキッズカーはもちろん、大人のコレクション対象にもなり得るような精巧なチルドレンズ・カーとしても製作されていたことを、筆者もおぼろげながら記憶している。
今回のRMサザビーズ「Montley」オークションに出品された「Fレーサー・ジュニア(F-Racer Junior)」は後者に属するもの。オークションハウスのWEBカタログでは、製作された時期やメーカーなどに関する情報は記されていないものの、写真で見る限りはコレクターの審美眼にも耐えうる仕立てとされた1台である。
製作台数はごく少ないと思われるFレーサー・ジュニアは、オリジナルのフェラーリF40の約3/4スケール。全長2.6メートル×全幅1.6メートルという、子供用としてはけっこう大きなサイズ。車両重量は250kgとのことである。
カタログをみると、フレームはかなり立体的でしっかりとした作り。リアミッドシップに搭載された排気量270ccのガソリンエンジンに、ファイナルギア比2:1のギアボックスを組み合わせ、子供用を標榜しつつも最高速度は35マイル(約55km/h)に達することができたそうだが、任意でリミッターを作動させることも可能だった。
また油圧式ショックアブソーバーやコイルスプリング、リアのディファレンシャル、油圧ディスクブレーキ、そしてウィッシュボーン式独立サスペンションなど、本物のF40さながらのメカニズムもおごられていた。
ボディはFRP製で、フェラーリ「308/328GTS」のようなデタッチャブル(脱着式)トップを外したかにも見えるスタイリング。本物のF40と同じく、レキサン樹脂製のスリット入りリアウインドー+チルト式リアカウルなどもF40っぽい。さらに前後のホイールも、本物のF40のO.Z.社製3ピースアロイを、当時としては可能な限り再現しようとしたことがうかがえる。
一方、オープンゆえに外から見えるインテリアもかなり作り込まれたもので、2座のミニバケットシートは、本物のF40に採用されたOMP社製バケットシートにも似た高品質の不燃性ファブリックで張り込まれる。また、ダッシュパネルにもザックリとした質感とダークグレーのカラーがホンモノを彷彿とさせるファブリックが張られ、実際に機能するメーターやイグニッションキーが取り付けられている。
■本物のフェラーリが買えてしまうほどの驚愕のお値段とは
今回の「Montley」オークションに出品されたチルドレンズ・カーには、Fレーサー・ジュニアとしてブランド化されたモデルの「シャシ01」であることを示すプレートが貼られている。つまり、一定数が製作されたうちの第1号車であるかと推測される。
●なんと1250万円で落札! しかし上には上があるようで……
オークション出品に際して、RMサザビーズ北米本社では現オーナーとの協議のもとに、3万-4万ドル(邦貨換算約330万-440万円)というエスティメート(推定落札価格)を設定していたのだが、筆者の率直の感想としてはかなり強気な価格設定にも映っていた。
ところが実際の競売では、オンラインも含めて競うように入札がおこなわれたようで、最終的にはなんと11万4000ドル。日本円に換算すれば、約1250万円という恐るべき価格でハンマーが落とされることになったというのだ。
これは、いわゆる「ホンモノのクルマが買える金額」以上のもの。たとえばフェラーリでいうなら、グッドコンディションの「328GTS」あたりが買えてしまいそうな値付けである。
高額となった理由は、F40をモデルとしたチルドレンズ・カーが、1990年代以来長らく製造・販売されていないこと、あるいは、かつて製造された「F40っぽい」チルドレンズ・カーたちのなかでも、このFレーサー・ジュニアが出色の出来ばえだったことが大きな要因になっているものと推測される。
ところが上には上があるもので、国際マーケットにおけるチルドレンズ・カー落札価格の歴代ワールドレコードは、半年前の2021年2月13日に、同じRMサザビーズ社がフランス・パリで開催したオークションにおいて、フェラーリ「330 P2」を縮小した「フェラーリ330P2ジュニア」が落札された際につけられた12万ユーロ(邦貨換算約1500万円)とされている。
ちなみにこの330P2ジュニアは、1980-1990年代にBMWの6気筒エンジンを搭載する精巧なブガッティ「T55」レプリカを製作し、日本にも輸出していたフランスの有名コーチビルダー「ド・ラ・シャペル(De La Chapelle Automobiles)」が少量製作したもの。
2007年春、モナコで開催された高級車およびスーパーカーのモーターショー「Top Marques Monaco」を訪ねた筆者は、数台のチルドレンズ・カーを展示していたド・ラ・シャペル社のブースに遭遇したのだが、その作品たちの芸術性やクオリティに驚かされたことを、今でも鮮明に記憶している。
翻って今回のオークション出品車をWEBカタログの写真で見ると、ボディサイドとフロントカウルのラインが一致しないなど、クオリティでは若干の難があるかに感じられる。
本来ならば子供向けのプロダクトであるはずのチルドレンズ・カーが、1000万円を超える「作品」として評価を受けるとなれば、やはりきわめて高度なクオリティが求められるという典型的な一例と思われたのである。
Posted at 2021/09/15 23:19:08 | |
トラックバック(0) |
自動車業界あれこれ | 日記