2021年09月23日
どうしてポルシェ「911」にリトラクタブルライトを採用したフラットノーズが存在するのか?
■ポルシェ「935」を彷彿とさせるフラットノーズとは
アメリカにおける930型ポルシェ「911」の歴史は複雑だ。もともと930型はターボエンジンを搭載したモデルで、デビューした1974年当時、NAエンジンを搭載したモデルは外観が「ビッグバンパー」に改められるも、型式は先代の901型のままだった。その後、1978年になって、NAも930型へと移行する。
デビュー当時の930型は、もちろん主要マーケットであるアメリカでも販売されていたが、1979年にアメリカでの排気ガス規制が厳しくなり、ポルシェはアメリカでの販売を断念する。販売が再開されたのは、なんと1986年。長期間にわたって、930型ポルシェ911は、アメリカで正規販売されていなかったのだ。
●フラットノーズという選択
エンジンマネージメントの進化によって排気ガス規制をクリアできるようになり、改めて930がアメリカで販売再開されると、アメリカの顧客はさまざまなリクエストをポルシェにオーダーするようになった。
そのなかには、リトラクタブルライトを採用し、ノーズをフラットにして欲しいというものも含まれていた。この背景には、当時北米で人気を博していたCam-Am(カナディアン・アメリカン・チャレンジカップ)レースにおけるレーシングカー、ポルシェ「935」の活躍がある。
当初は個人オーナーが、あくまでもプライベートにポルシェにオーダーしたそうだが、同様のカスタマイズを希望するオーナーの多さから、1987年にポルシェは、北米向けのオプションとしてフラットノーズへのカスタマイズパッケージを採用している。
そんな930型ポルシェ911のフラットノーズが、アメリカ・モントレーで開催されたRMサザビース・オークションに登場した。それも、クーペボディとカブリオレという2台である。まずはそれぞれの個体を確認していこう。
クーペボディの方は、1988年式で走行距離が7519マイル(約1万2000km)という低走行車だ。ガーズレッドのボディは美しく、レザーのインテリアにもへたりはない。新車当時のオプションとして、LSDやサンルーフ、セキュリティシステム、ラゲッジルームのベロアマットなどが装備され、Blaupunkt社製のラジオ・カセットプレーヤーも装備されている。
カブリオレの方も同じく1988年式。走行距離は3501マイル(約5600km)と非常に少ない。ボディカラーはクーペボディと同じくガーズレッドで、インテリアも同じくレザー。ホイールがボディカラーと同色となっているため、オープンにしたときのイメージは、まさしくアメリカ西海岸を感じさせる仕様だ。工場オプションであるLSDやセキュリティシステム、Blaupunkt社製ラジオ・カセットプレーヤーの装備はクーペボディと同じ。ソフトトップは電動格納式だ。
いずれのクルマも、装備に大きな違いはなく、コンディションも極上。走行距離も少なく、違いはボディタイプのみといっていいだろう。
ところが、落札予想価格はクーペボディのほうが20万-24万ドル(邦貨換算約2200万-約2630万円)、カブリオレは30万-40万ドル(邦貨換算約3280万円-4580万円)と、カブリオレのほうがかなり高くなっている。そこにはカブリオレのほうがクーペボディと比べて販売台数が少ないという理由もあるだろう。
ところが、2021年8月13日に開催されたオークションでの実際のハンマープライスは、クーペボディが25万4800ドル(邦貨換算約2780万円)、カブリオレが28万5500ドル(邦貨換算約3120万円)と、それほど大きな差はつかなかった。
近年、空冷エンジン搭載のポルシェ、とくに930型や964型の値上がりは激しく、車両の状態を考えれば今回の落札価格は妥当なものといっていいだろう。
Posted at 2021/09/23 20:24:27 | |
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ポルシェ | 日記
2021年09月23日
【生産開始】約1億円でアウディ「スポーツ・クワトロ」をEVで蘇らせるメーカーとは?
■アウディ「スポーツ・クワトロ」が現代に蘇る!?
シャープなラインで構成された一台のプロトタイプ。このプロトタイプにドイツ政府からの型式認証が与えられたことで、その開発はこれから最終段階を迎え、ついに生産が始まる。
誰の目にもかつてのアウディ「スポーツ・クワトロ」の現代的解釈に映るこのモデルを開発しているのは、ドイツのELEGEND(エレゲンド)社で、車名は「EL1」だ。
前後の特徴的なオーバーフェンダー、そしてCピラーまわりや3つのクーリングベントを備えたボンネットの造形。それらはあくまでもスポーツ・クワトロからインスピレーションを得たものだが、このモデルは単なるレトロフィットではない。その中身にはエレゲンドによる最新の技術が実に多く詰め込まれている。
EL1の基本構造体は、Roding Automobile社と共同で開発されたカーボンモノコックだ。それは軽量化と高剛性を両立させるために、現代のスーパーカーやハイパーカーでは必要不可欠なアーキテクチャーである。
エレゲンドの説明によると、とくにEL1の場合には4つのエレクトリック・モーターを持つBEVとして開発されている。そのため、90kWhの容量を持つリチウムイオン・バッテリーの搭載位置の関係からもカーボンモノコックを使用することは、EL1をピュアなドライビングマシンとするために必要不可欠なことであったようだ。
ちなみにバッテリーはキャビン後方とセンタートンネル内に整然と配置されており、重量配分には大きな影響は及ぼさない。また発表された車重は1680kgと、こちらも魅力的な数字だ。
各輪に搭載されるモーターは、フロント150kW、リア225kWと強力なもので、システム全体の最高出力は600kW(約816ps)に抑えられている。
それでも100km/h加速は2.8秒、200km/h加速は8.5秒だ。最高速は電子制御リミッターによって、安全のため300km/hに抑えられている。
●限定30台、およそ1億円のBEV
EL1は、2022年から30台の限定車として生産される計画で、その価格は税抜で89万ユーロ(邦貨換算約1億1500万円)と発表されている。
EVスポーツとしての性能はもちろんのこと、ABS、ESP、トラクション・コントロール等々が備えられ、またインテリアに目を移せばマルチメディア機能を持つ最新世代のインフォテインメントシステムやナビゲーション、Bluetoothインターフェイスなど、さまざまな装備が確認できるだけに、このプライスは現代の最先端をいくBEVスポーツとしては、十分な説得力があるものといえるのではないだろうか。
* * *
エレゲンドでは、すでにこのEL1に続く、同コンセプトのモデルの開発、そして生産計画が進行中だ。自動車の世界が内燃機関からBEVへと移りつつあるなかで、いわゆる新興勢力が続々と誕生する現在、多くのメーカーやエンジェル(投資家)は、ニューモデルの誕生を虎視眈々と狙っている。それは我々にとっても、実に面白い時代が訪れたといえるのではないだろうか。
Posted at 2021/09/23 20:20:21 | |
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自動車業界あれこれ | 日記