2022年01月19日
ルーフSCRへ試乗 NA 4.0Lフラットで510ps 1250kgのカーボンボディ 前編
独自のタブシャシーにカーボンボディ
1988年に、アルファ・ロメオ164のプロカーというレーシングカーが作られた。見た目は4ドアサルーンの164だが、取り外せる専用のボディカウルをまとった、V型10気筒をミドシップしたまったく別物のレーサーだった。
このルーフSCRも、似たようなクルマだとお考えいただければわかりやすい。ポルシェ911にしか見えない美しいシルエットを湛えているが、共通している部分は殆どない。
基礎構造をなすのは、マクラーレンにも似たカーボン・コンポジット素材によるタブシャシー。ルーフ社独自のもので、重さは88kgしかないという。
サスペンションは、プッシュロッド構造のダブルウイッシュボーン。一番近いポルシェを探すと、唯一、1988年にル・マン優勝を果たした911 GT1が存在するだけだ。
大人受けしそうなダックテール・スポイラーを備えた、964や993ライクな低いボディも、ルーフ社オリジナルのカーボンファイバー製。シュツットガルトで作られた911と、共有するパネルは一切ない。
ルーフ社がこれまで手掛けてきた独創的なチューニング・ポルシェを、ご存じの方も多いと思う。だがSCRは、従来のルーフとはまったく異なるモデルだといえる。
このSCRは、ルーフ社の代表を務めるアロイス・ルーフ・ジュニア氏が追い求める、究極のリアエンジン・パフォーマンスカーが体現されたモデル。ドイツ南部、ファッフェンハウゼンの工場で製造され、1台のお値段、実に77万ポンド(約1億1935万円)なり。
3.6Lメツガー・ユニットを源流に510ps
間違いなく高価なクルマだが、施された技術力も不足なく大きい。シンガー社がレストモッドする964ベースのDLSでは、100万ポンド(約1億5500万円)を超える値段が付いているから、この手の市場では法外な金額とはいえないだろう。
惜しみない情熱が注ぎ込まれたSCRで、最もポルシェ911に近いといえる要素の1つが、8700rpmまで回る水平対向6気筒エンジン。ブロックは社内で鋳造されているものの、設計自体は997 GT3用の3.6Lメツガー・ユニットを源流としている。
度重なる試行錯誤を経て、最高出力とエンジンとしての個性、費用対効果などのバランスを考慮し、排気量は4.0Lがベストだと判断されたという。増やされた容積に対応するため、アグレッシブなカムシャフトと、レース仕様のECUも採用されている。
もちろん、すべてはクルマのコストに反映はする。だが、日常的な乗りやすさが犠牲になってはいない。
オーバースクエアな寸法のシリンダーが与えられたブロックを覆うヘッドは、ルーフ社のオリジナル。チタン製のコンロッドや鍛造ピストンなども同様だ。そこへ、ポルシェ997 RSR用のクランクシャフトが組み合わされているという。
その結果、得られた最高出力は510ps/8270rpm。パワフルだが、2022年では驚くほどの数字ではないかもしれない。最新のBMW M3 コンペティションも、同等の馬力を発揮している。
パワーウエイトレシオは911 GT3 RS以上
ただし、ターボが一般化した現在にあって、ルーフSCRのエンジンは自然吸気。過給器に頼ることなく、水平対向6気筒が直に生み出すパワーという点で大きく異る。しかも、車重はガソリンを積んだ状態で、1250kgしかない。
パワーウエイトレシオに換算すれば、M3 コンペティションはもちろん、911 GT3 RSをも凌駕する。ちなみに伝説のCTR、通称イエローバードをオマージュしたSCRのツインターボ版は、軽く700馬力を超えるそうだ。
エンジンのパワーは、ZF社がルーフ社のために用意したシーケンシャル6速MTと、機械式リミテッドスリップ・デフを介して、センターロック・ホイールへ伝えられる。タイヤはグッドイヤー・イーグルF1 スーパースポーツRで、リア側の幅は305もある。
19インチのホイールは、美しくシンプルなデザインの鍛造品。カーボンセラミック・ブレーキを装備し、バネ下重量を一層軽くしている。
今回、完成したSCRを試乗したのは、ドイツ・バイエルン地方の一般道。路面は雨で濡れ、トラクターが泥や小石を路面に残した場所も多かった。だが、ルーフ社はSCRを普段使いもできるモデルだと説明する。理屈としては、問題ない環境ではある。
事実、500馬力のリアエンジンでも、想像以上に手懐けやすいようだ。フラット6は鼓膜をつんざくひと吠えで目を覚ますが、アイドリングに落ち着くと穏やかになる。軽量なフライホイールが組んであるものの、発進も特に難しくはなかった。
この続きは後編にて。
ルーフSCRへ試乗 NA 4.0Lフラットで510ps 1250kgのカーボンボディ 後編
上質でシンプルな車内に、良好な運転姿勢
ルーフSCRを運転するうえで重要なポイントとなるのが、グラスエリアの形状が993型のポルシェ911と同一であること。車内空間はタイトながら、開放感があり運転席からの視界はとても良い。
コニャック・レザーで仕立てられたダッシュボードには、シンプルなアナログメーターが整然と並ぶ。ステアリングホイールはモダンなデザインだが、スポークにボタンなどは一切ない。
ドライビングポジションは、最新の992型911 GT3ほど自然ではない。テストドライバーのステファン・ローザー氏の要望でボスが長く、ステアリングホイールを握りやすい。背もたれが起き気味だが、バケットシートとペダルとの位置関係も良好だ。
インテリアは、いかにもルーフ的。オリジナルの911のデザインを尊重しつつ、高度な技術を持つ職人による手仕事で、ディティールにまでこだわってある。レザー張りの内装パネルの裏側には、ボディ構造と一体となったロールケージが隠れている。
アスファルトを進み始めると、角のない全体のまとまりに驚かされる。アクセルペダルの角度に対しエンジンは敏感に反応するが、数年前に試乗したプロトタイプのように、背筋が凍るような過激さは鳴りを潜めている。いたって滑らかに、回転数が上昇していく。
電動油圧式のパワーステアリングは、驚くほど軽快で繊細。現代のポルシェよりレシオが低く、ナーバスさはない。それでいて、コーナリング時にリアタイヤをなだめるのに、充分な素早さも備えている。
軽さが生む数え切れないメリット
自信を持って、迫るコーナーを制覇できる。路面が濡れていたから、ステアリングのコミュニケーション力は充分に確かめられなかったが、道幅いっぱいに使ったタイトなコーナリングでも緊張はしなかった。
フラット6をレッドライン手前まで回しシフトアップすると、グッドイヤー・イーグルF1 スーパースポーツRは耐えきれず空転する。即座に、ベーシックなトラクション・コントロールが介入し、エンジンを絞る。スタビリティ・コントロールは備わらない。
車重は軽く、コーナリング中のグリップ力はウェットでも非常に高い。今日のような雨がちの天気なら、5段階の調整式ダンパーは最もソフトな状態にしておくと良いだろう。
乗り心地は引き締まっているが、グランドツアラー的なしなやかな洗練性も両立させている。路面状況を正確に感じ取れるだけでなく、路面に追従し落ち着いている印象だ。
車重1250kgという軽さのメリットは、数え切れない。回頭性に中間加速、減衰力、グリップ、快適性。そして、クルマとしての素性。リアエンジンながら、マクラーレンのような流暢さを獲得できている。
さらに、珠玉の自然吸気4.0L水平対向6気筒エンジンが、一生をともにしたいと思わせる。回転域を問わず、吹け上がりは痛快なほどにシャープ。アイドリングからレッドラインまで、3段階の変化も楽しめる。
ベストノイズを生む4.0Lフラット6
低回転域のサウンドは低音が中心で、ゴロゴロとビート感が強い。4000rpm以下では、普段使いしやすいマナーを備えるが、ハンドビルドされた高性能ユニットらしい緻密さもヒシヒシと伝わってくる。気持ちを刺激するように。
レブカウンターが4000rpm辺りを指すと、カーボンファイバー製のエアボックスが共鳴し、吸気ノイズが響いてくる。徐々にフィーリングは硬質なものに変化し、エンジンの本領が見え始める。
7000rpmを超えるとアグレッシブなカムの効果が発揮され、レッドライン目掛けたクライマックスが待っている。圧倒的なパワーとともに。見事な音響体験で、筆者がこれまでに体験したエンジンのなかで、ベストサウンドの1つに加えていいだろう。
50台の限定で発売された、CTRアニバーサリーを申し込んだ人の数名が、限定生産ではない自然吸気のSCRへ注文を変更したという。このエンジンを味わえば、筆者も強く賛同できる。
もし許されるなら、このルーフSCRをサーキットに持ち込み、操縦性のすべてを確かめてみたいところ。ルーフ社は、クルマを深く理解している企業だ。自然で濃密な一体感と、自信を沸き立たせてくれる落ち着きとを、見事にバランスさせている。
極めて高剛性で磨き込まれたシャシーに、リニアで躍動感に溢れる自然吸気の4.0Lフラット6が載っている。公道では確かめることができない、高次元な能力を秘めていることはいうまでもない。
ルーフSCR(欧州仕様)のスペック
英国価格:77万ポンド(約1億1935万円)
全長:4207mm
全幅:1819mm
全高:1265mm
最高速度:320km/h
0-100km/h加速:3.4秒
燃費:7.4km/L
CO2排出量:324g/km
車両重量:1250kg
パワートレイン:水平対向6気筒4000cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:510ps/8270rpm
最大トルク:47.8kg-m/5760rpm
ギアボックス:6速シーケンシャル・マニュアル
Posted at 2022/01/19 21:55:26 | |
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自動車業界あれこれ | 日記
2022年01月19日
消えたスバルの名機「EJ20」! 軒並み高騰のなかスバリストが厳選した「リーズナブル」な搭載車とは
30年の歴史に幕を閉じた「EJ20」搭載車の狙い目とは
惜しまれつつ終焉を迎えたスバルの名機「EJ20型」ターボエンジン(以下、ターボを割愛)。高回転域まで気持ちよく吹き上がる回転フィールと、炸裂する圧倒的なパワーが魅力のパワーユニットだ。環境性能こそ現行モデルには及ばないものの、その官能的な気持ち良さこそEJ20最大の魅力と言える。
極上車は限定車にも匹敵する高騰ぶりのVAB型WRX STI
EJ20エンジンを搭載する最後のモデルとなったのが、VAB型WRX STI(以下、VAB型)だ。このクルマは中古車市場でも軒並み300万円台後半のプライスを掲げ(新車価格は393万8000円~413万6000円)、走行距離1万キロ以下の極上車であれば、SシリーズやタイプRA-Rといった限定車でなくとも700万円を超える個体も存在する。
もちろん年式が新しく、走行距離の少ない新車のようなVABなら、長く付き合ううえでも安心ではあるが、一般的にはちょっと手の出ない価格といえる。とはいえ、EJ20搭載車で絞った場合、初代インプレッサWRX(GC型)は、人気と希少価値で価格がさらに高騰。30年近く前のモデルながら300万円台という強気の価格となっている。
高騰不可避でもSTI系を外せば比較的安価なモデルもある
もちろんGC型に思い入れがあったり、どうしても欲しいというユーザーは、この高騰する価格帯のなかから探す必要があるのだが、そもそも純正部品もかなりのものが廃盤となり入手困難。さらに、中古部品自体もプレミア価格で取引されていることを考えると、イニシャルコストだけでなくランニングコストもかさむため、とてもいいクルマなのだがあまりお勧めできないモデルとなってしまった。
では、GDB系と呼ばれる2代目はどうだろうか? 2代目も初代ほどではないものの価格が高騰し、STI系は軒並み300万円台。走行距離がかさんでいるモデルや、修復歴があるモデルであればグッと価格が下がるものの、状態の良いモデルを探すのは至難の業。とくにホイールのP.C.Dが114.3化された2004年以降のモデル(E/F/G型)は人気も集中している。
ただ、同じEJ20搭載モデルでも、6速MTやブレンボブレーキなどを装備するWRX STIに対し、5速MTやスバル製4POTキャリパーなどを装備するGDA型と呼ばれるWRXは、程度も良くリーズナブルな価格のモデルも多い。
スペックこそ最高出力250psとSTI系に比べると控えめだが、それでも現行モデルの多くのクルマよりもパワフル! それに加えGDA型の魅力はなんといってもその軽快感。STIに比べ、なんと100kgも車両重量が軽い。激レアではあるが、年式によってはサンルーフの設定があるモデルもチョイスできる。また、STI系ではC型と呼ばれる2002年式以降のモデルで等長等爆化されたエキゾーストだが、初代インプレッサのようにドコドコという不等長サウンドを好むユーザーにもGDA型がオススメだ。
割高感なく程度も良好なGRB前期型の価格は安定傾向
どうしても「程度の良いSTI系がいい」という人には、ハッチバックの3代目(GRB型)前期がオススメだ。WRXといえばどうしてもセダンに大きなウイングというイメージが強いが、5ドアモデルの戦闘力の高さはWRCで勝利するために生まれたボディ形状という折り紙付きだ。
さらに実用性(荷物などの積載性)も高く、日常の使用でもセダンより利便性が高いと言える。そして、この3代目に搭載されるEJ20は、スペックもVAB型と同じ308psであることに加え、マルチモードDCCDやマルチモードVDCといった、電子デバイスの基本的な部分もVAB型とほぼ変わらない点も魅力だ。
繰り返しになるが、WRX STIシリーズで現時点でもっともリーズナブルなGRB型前期がイチ押し。ただし、後期型から登場した4ドアモデルのGVB型はVAB型ほどでないものの、価格は高めだ。また、GDA型と同じく5速MTで装備とスペックを控えめにしたS-GTや2.0GT(ともにGH8型)といった5速MTモデルも、軽快で楽しめるモデルとなっている。
EJ20ターボをMTで楽しむ4代目後期レガシィもオススメ
また、WRXに捉われることなくEJ20を味わいたい人にとっては、レガシィ系が狙い目。WRXに比べて流通量も多く、4代目後期モデル(BP5型/ステーションワゴン、BL5型/セダン)には6速MTの設定もある。自主規制前のモデルであれば、ターボのMT車ならセダンのB4でもツーリングワゴンでもインプレッサと同じ280psを味わうことができる。
車両重量やリヤサスペンション構造といった部分で違いはあるものの、レガシィのターボモデルは当時からWRXを脅かすほどの存在であり、快適装備が充実している分ファミリーユースのオーナーにも受け入れやすい。
とはいえ、どうしてもGC8型(初代インプレッサWRX)/GDB型(2代目インプレッサWRX)/VAB型(WRX STI)に人気が集中し、価格も高騰しているEJ20搭載モデル。ただし、少し条件を広げればまだまだ、リーズナブルに手に入れることができるモデルも数多い。今回紹介したいずれのモデルも、高い運動性能と抜群の愉しさを兼ね備えている。
絶版国産MT車が軒並み高騰するなかでスバル車もご多分に漏れず。個体数の減少とともに高騰傾向がさらに高まるなかで、名機「EJ20」を味わい尽くせる自分にとっての理想的なモデル(個体)を探したい。
ハイパワーターボに非ずんばEJ20にあらず
って事は無いと思うんだけどね〜
Posted at 2022/01/19 21:25:46 | |
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富士重工 | 日記