2022年10月17日
カナード装着の過激な「ゴルフR」を目撃!? さらなるハードコアモデルを計画か
謎のVW『ゴルフR』をスクープサイト「Spyder7」がキャッチした。ゴルフRの20周年記念モデルをベースとしているがフロントバンパーにカナードが装着されており、さらなるパフォーマンス向上に向けたプロトタイプ車両と見られるが、果たしてその正体とは。
Spyder7がVWの情報筋から得た情報によると、「特別な車」をテストしていることが確認された。しかし、VWは別のゴルフRや『アルテオンR』など、他にいくつかのRモデルをテストしており、今回のプロトタイプがその「特別な車」であるという確証はないが、可能性は高いという。
ゴルフR 20周年記念車は、2.0リットル直列4気筒ターボエンジンに最新の全輪駆動システム「4MOTION」、それに6速マニュアルまたは7速DSGトランスミッションを組み合わせ、最高出力319ps、最大トルク400Nmを発揮する。このプロトタイプがさらなる強化モデルならば、最高出力は340ps以上が予想される。
VWは現在、ゴルフ改良新型の開発に着手しており、しばらく動向から目が離せない。最新情報が入り次第お伝えしていこう。
Posted at 2022/10/17 22:35:38 | |
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フォルクスワーゲン | 日記
2022年10月17日
ポルシェ911 GT3xGT3カップ 9割の類似性を確かめる 抜群のシャシーバランス 前編
992型911 GT3とGT3カップの類似性とは
人間のDNAはチンパンジーのものと99%の共通性がある、という話を耳にすることがある。豚とは98%、バナナとは60%程度だとか。
ポルシェによれば、カレラカップに出場するレーシングカー、最新の911 GT3カップと公道用911 GT3には、90%の類似性があると説明する。マニアならまったくの別物だ、と冷笑するかもしれないが、同社GT部門の戦略としては真面目な主張のようだ。
それでは、その90%の類似性とは何なのか。10%の違いで、どんな差が生まれるのか。これが今回、英国編集部が設定した比較テーマだ。
親切にも、こんな疑問へ答えを導くべく、ダッカムズ・ユアサ・レーシング・ウィズ・レッドライン・チームが協力に応じてくれた。最新の911 GT3カップと、911 GT3を直接乗り比べることが実現した。まずは、この場を借りてお礼を申し上げたい。
ちなみに、同一車種で競われるワンメイクGTカー・チャンピオンシップのポルシェ・カレラカップGBは、2022年で20周年を迎える。ワンメイクレースでは英国最速がうたわれ、2003年から英国ツーリングカー選手権のサポートレースとして開催されてきた。
これまでの19シーズンを通じて、6名の勝者がプロのレーシングドライバーとしてのステップアップを掴んだ。ル・マンで優勝したニック・タンディ氏もその1人。英国モータースポーツの登竜門の1つとしても機能している。
水平対向6気筒エンジンは基本的に同一
さて、もちろんレーシングカーは公道を走れない。比較場所は、グレートブリテン島中部に位置する、ドニントン・パーク・サーキットに設定された。
このダッカムズ・ユアサ・チームは、ポルシェ・カレラカップGBで過去に優勝経験を持つ。2022年シーズンは、取材時点で3位にランクインする強豪といえる。
その好成績に貢献しているのが、カレラカップGBジュニアのチームドライバー、アダム・スモーリー氏。サーキットで911を可能な限り速く走らせる方法に関しては、熟知しているといっていい。今回は彼にもご同席いただいた。心強い限りだ。
まずは、冷静に2台を観察するところから始めよう。事前に知っておくべきは、最初に開発されたのが公道用の992型911 GT3だということ。これを経て、911 GT3カップが仕上げられている。
GT3カップの4.0L水平対向6気筒エンジンは、基本的に公道用のGT3と同一。吸排気系のみがレース専用品へ交換されている。2022年のグッドウッド・フェスティバルでお会いした、ポルシェGT部門のアンドレアス・プレウニンガー氏は次のように話していた。
「公道用のGT部門とモータースポーツ部門は、本質的には同じ部署といえます。レーシングカーとしても競える堅牢さや信頼性を備えたモデルを開発することは、お互いにとって利益のあるものなのです」
実はかなり近いアグレッシブな容姿
最高出力510psを発揮する6気筒エンジンのメンテナンス間隔は、ポルシェの推奨によると本域走行で100時間毎。これに従えば、2シーズンは大きなメンテナンスなしで走れることになる。
つまり、公道用のGT3で年に数回サーキット走行を楽しんだとしても、メカニズムへ与える影響は過度に心配する必要はない。驚くべき事実だといっていい。
サスペンションも同様。GT3カップのダンパーとスプリングは、サーキット前提のアイテムが組まれている。だが、ダブルウィッシュボーン式のフロントも、マルチリンク式のリアも、GT3のものとまったく変わらない。
2台で最も大きな違いといえるのが、トランスミッション。GT3では7速デュアルクラッチAT(PDK)が標準装備となるが、GT3カップには軽量な6速シーケンシャルMTが組まれている。
アグレッシブな容姿も、実はかなり近い。並べて駐車すると、エアロキットは公道用とサーキット用で大差はない。スワンネック状のアームで支えられたリアウイングも、大きく口を開いたフロントマスクも共通している。
GT3カップの方が、カタチをなぞりながら僅かにボリュームアップしていることも事実ではある。派手なスポンサーカラーで、少々認識しにくいけれど。
明らかな相違点は、カレラ4Sのボディから派生したGT3には備わらない、リアフェンダーに開けられたエアインテークだろう。GT3カップのボディは、911 ターボをベースとしている。目的は、エアフローをモータースポーツに最適化するためだという。
この続きは後編にて。
ポルシェ911 GT3xGT3カップ 9割の類似性を確かめる 抜群のシャシーバランス 後編
親しみやすいハードコアなコクピット環境
ポルシェ911 GT3カップのポリカーボネート製ウインドウ越しに見える、ハードコアなコクピット環境に圧倒される。余計な内装トリムは省かれている。
しかし、軽いカーボンファイバー製のドアを開き、屈強そうなロールケージを乗り越えれば、親しみやすいことに感心する。空間は比較的広々としていて、ステアリングコラムは一般的なモデルのように調整が可能。
レーシングシートの高さは2段階に切り替えられる。公道用の992型ポルシェ911 GT3に近いドライビングポジションに収まることができた。
エアコンもちゃんと装備されている。取材日は最高気温が35℃もあったから、命の恩人だ。
いきなりGT3カップでドニントンパーク・サーキットのアスファルトを攻めるのは、流石にハードルが高すぎる。チームがお昼休みを取っている間に、コースレイアウトの確認を兼ねてGT3で事前に走ることにした。2周だけだが。
今回は僅かな時間だったとはいえ、筆者は1週間前にもポルシェ911でグレートブリテン島の中東部、ノース・ヨークシャーまでロングドライブを体験している。それ以外にも何度か乗り込んでいるから、すぐに感覚を掴むことはできた。
フロントがダブルウイッシュボーン式になったサスペンションの恩恵もあり、コーナーへのターンインは極めて鋭く、ステアリングホイールへ伝わるフィードバックは鮮明。タイヤとアスファルトとの関係性を明瞭に感知できる。
クルマとの深い信頼関係を築ける
ペースを速めていっても、シャシーはひたすら安定性を保つ。そしてGT3最大の美点といえるのが、速度域を問わず素晴らしく調整しろが広く、クルマと深い信頼関係を築けること。つまり、レーシングカーとしても大きな強みといえる。
その事実は、GT3カップへ乗り換えてすぐに体感できた。お昼休みが終わると、レーシングシートへ筆者の身体が固定され、ピットレーンのシグナルがグリーンに切り替わった。
GT3カップには、ABSもトラクションコントロールも備わらない。チームのメカニックは、タイヤやオイルなどすべての温度が上昇するまで、4・5周は様子を見ながら走るべきだと教えてくれた。それを心に留めながら、自分とシャシーの準備運動をこなす。
筆者はシングルシーターのフォーミュラカーでサーキットを走っていた経験もあり、冷えた状態では反応が過敏で扱いにくいと想像していた。ところが、GT3カップは公道用のGT3に遠からず、打ち解けやすい。
水平対向エンジンには公道で乗り慣れたフィーリングが伴い、太いトルクがリニアに湧き出てくる。温まりきらないタイヤでも、早めにパワーオンしていける。フロントタイヤの感触はソリッドで、ブレーキングゾーンを徐々に詰められる。ABSが備わらなくても。
数周を走った辺りで、フェラーリ488チャレンジ GT3 エボへ追いつき、2台を追い越すこともできた。ドニントンパークのストレートでは、GT3カップの方がトップスピードは上のようだ。
両者に共通する見事なシャシーバランス
ターボチャージャーで過給される公道用のフェラーリ488は、GT3を軽く凌駕する能力を備えている。しかし、GT3カップは鋭くシフトアップするシーケンシャルMTと、150kgもの軽量化で武装している。スピードの伸びが違っても当然だろう。
さらにGT3カップの真価を確認できるのが、アクセルペダル全開とまではいえない高速コーナー。コーナリング時の特性は、公道用のGT3へ似ている。だが、侵入速度や脱出速度は遥かに高い。
特に第4コーナーのオールドヘアピンや、第5・6コーナーのスターキーズブリッジで、速度差は大きいようだった。フロントタイヤを完全に制御下へ置いたまま、赤と白に塗られた縁石に乗り上げながらハイスピードで攻め込める。
チームドライバーの、アダム・スモーリー氏ほど速くはないにしても。
GT3カップを貸してくれたダッカムズ・ユアサ・チームは、懐が広い。充分な1回目のスティントの後、もう1度、短時間ながらコースインさせてくれた。
タイヤが摩耗し始めグリップ力が落ちたことで、公道用のGT3との結びつきをさらに体験することができた。GT3カップの方が限界領域は遥かに高く、違いは小さくないものの、ポルシェGT部門の主張は大げさではないようだ。
アマチュアレベルのドライバーでも、過度に恐れることなく能力を追求していくことを許す、抜群のシャシーバランスでは共通している。それが一般道でもサーキットでも、出色のドライビング体験を与えてくれる911 GT3の核心なのだと思う。
ポルシェ911 GT3とポルシェ911 GT3カップ 2台のスペック
ポルシェ911 GT3(992型/英国仕様)のスペック
英国価格:13万5700ポンド(約2239万円)
全長:4573mm
全幅:1852mm
全高:1279mm
最高速度:318km/h
0-100km/h加速:3.4秒
燃費:7.7km/L
CO2排出量:294g/km
車両重量:1435kg
パワートレイン:水平対向6気筒3996cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:510ps/8400rpm
最大トルク:47.8kg-m/6100rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック
タイヤ:255/35 ZR20 97Y(フロント)/315/30 ZR21 105Y(リア)
ポルシェ911 GT3カップ(カレラカップGB仕様)のスペック
英国価格:20万ポンド(約3300万円)
全長:−
全幅:−
全高:−
最高速度:273km/h以上
0-100km/h加速:3.4秒
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:1260kg
パワートレイン:水平対向6気筒3996cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:510ps/8400rpm
最大トルク:47.8kg-m/6150rpm
ギアボックス:6速シーケンシャル・マニュアル
タイヤ:300/65 ZR18(フロント)/310/71 ZR18(リア)
Posted at 2022/10/17 22:26:50 | |
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ポルシェ | 日記
2022年10月17日
故障も多かったけどカッコよかったよね……インダッシュナビはなぜ廃れた!?
まだまだ純正装着が少なかった時代のカーナビといえばダッシュボードなどに取り付けるオンダッシュ。そして1DINないしは2DINスペースに内蔵し、エンジンスタートともにモニターが浮き上がるインダッシュナビの2種類が存在した。
今やほとんどが据え置きナビと呼ばれるタイプに置き換わっているが、なぜインダッシュナビは廃れてしまったのか!? 確かに画面が収納されないなどのトラブルは多々あったものの、結構カッコよかったよね……。
文/高山正寛、写真/NISSAN、パイオニア、AdobeStock
■かつては1段がフツーもオーディオの進化で2倍のスペースに!
かつてはカーナビ&カーオーディオの取り付けスペースは、ドイツの工業規格である「DIN」を基本とし、1DIN、2DIN、ワイドDINなどのサイズがあった(Paylessimages@AdobeStock)
今さらの話ではあるが、かつてはカーナビ&カーオーディオ取り付けスペースの基本であったのがドイツの工業規格である「DIN」(その後国際規格として採用)。
幅180mm×高さ50mmが1DIN、それを2段重ねたのが2DIN。そして当時トヨタなどが中心となって横幅を200mmに拡大させた「ワイドDIN」というサイズも存在する。
さて、このDINだが生まれ故郷のドイツも含めて、欧州では多くのクルマに採用されてきた。そして過去、ほとんどのクルマは1DINであった。
2DINサイズに関してはカーオーディオの進化に伴って、CDやMDなどの搭載メディアへの対応、ディスプレイやスイッチ類の大型化によるUIの向上(局名や曲名の表示なども含む)、そして最後はカーナビに代表されるディスプレイを搭載するために2DINサイズは必須となったわけだ。
■ナビ本体とモニターを小スペースに集約!! インダッシュナビは見た目も超よかった
エンジンを始動するとせり出してくるモニターがメカメカしく、気持ちが盛り上がる(Amy Walters@AdobeStock)
前述したようにカーステレオであれば問題の無い1DINサイズもカーナビとなると表示部分が必要なので、基本的には無理。過去、日産マーチ(3代目)に小型カーナビも存在したが、文字通り“簡易型”だった。
そこに登場したのが、モーターを使い液晶ディスプレイの展開と格納を可能にした「電動インダッシュ機構」だ。
インダッシュ機構自体は2001年5月にカロッツェリアがサイバーナビにこの機構を搭載。
エンジン起動後、自動またはスイッチを押す(手動)ことで格納されたディスプレイがせり出してくる姿は多くのクルマ好きが「おお~何かカッコよイぞ~」って盛り上がったことは事実。実際筆者もこの機構にすっかり魅了されてしまい、その後何台も買ってしまった程だ。
余談だが、カロッツェリアのカーナビの一部には起動時にデフォルトとなる「Carrozzeria」のロゴが表示されるようになっていたが、この画面自体はカスタマイズが可能。
起動時に自分の子供や家族の写真を表示したり、筆者のようなアニメオタクは「機動戦士ガンダムSEED」で使われた「G.U.N.D.A.M.(GUNDAM)OS」の起動画面を組み込むなど、他にも様々な楽しみ方をしていたオーナーに何人も会ったことがある。オタクでごめんなさい。
■1DINサイズの全部載せモデルが大ウケ! 一部でオプション扱いに
とはいえ、冒頭で触れたように欧州車などでは当時は1DINが基本。前述したカロッツェリアなどは1DIN×2であればHDD部を別位置に設置することで対応できるが、その後登場した“2DIN一体型”になると設置は不可能だ。
そこに救世主とも言える商品が登場した。それが2005年11月に富士通テン(現、デンソーテン)が発売した「AVN075HD」という1DIN型のインダッシュモニター搭載カーナビである。
「AVN075HD」は1DINサイズに電動インダッシュモニター、20GBのHDD(それもサイズが1.8インチと超小型)、CD/DVD再生や最大で1250曲をHDDの中にリッピング(録音)できるなど当時日本のメーカーが得意としていた「高密度&小型化」の具現化した“全部入り”モデルだった。
実際、このモデルは1DINしかスペースが無い欧州車ユーザーに積極的に受け容れられたし、後継モデルはプジョー車のディーラーオプションとしても採用されるなど、大ヒットモデルとなった。
■消滅要因は故障や振動!! スペース変革で淘汰
カーナビの歴史を振り返ると電動インダッシュモニター搭載カーナビは徐々にその姿を消していった。
理由はいくつかあるのだが、まずは複雑な構造ゆえの故障、路面からの振動によってディスプレイがブルブル震えて画面が見にくい、そして日本市場では2DINスペースを採用する車種が増えてきたことで、前述したスペース上の制約が少なくなったことが挙げられる。
それでもエンジンを起動してディスプレイがウィーンとせり出す姿は当時としては「高級モデルへの憧れ」であったし、デジタルガジェッター(ガジェット好きの意味)にはたまらなく大好物であったことは間違いない。
■インダッシュナビの復活はたぶんなし……純正モニターが主流に!?
オンダッシュタイプのモニターは展開&収納のギミックは楽しめないが、モニターを大型化できるので見やすいのがメリット。このメリットはフローティングタイプモニターでも同様(YUTO PHOTOGRAPHER@AdobeStock)
では今後電動インダッシュモニターは復活しないのか、と問われるとその答えは「多分、無い」となる。
前述したようにカーナビを含む、インフォテインメントシステムは従来の2DINサイズに囚われないインパネとの一体設計になってきている。ゆえにトレンドとなる“大画面”も実現できているわけだが、この流れはしばらく続きそうだ。
一方で電動機構自体は持たないが、パナソニックのストラーダのようにディスプレイ自体を最初から外側に設置することで、2DINスペースさえあれば大画面化を可能にするフローティングディスプレイ構造が現在のトレンドとなっている。
それでも「電動インダッシュナビが欲しいんだよー」って人もいるだろう。実はAmazonなどのECサイトを見ると、1DINインダッシュナビは数種類存在する。
ナビの性能はあくまでもベーシックなものと思えるが、Android OSをベースとしているのでナビ以外のアプリも動かすことができる。ただそれでもディスプレイサイズは7型が上限であることは認識しておきたい。
今後は純正ディスプレイの大型化やHUDが進化することで安全面にも寄与したインフォテインメントシステムが多く出てくるだろう。しかし、この電動インダッシュモニターは一時代を築いた「カーナビ世界遺産(筆者勝手に命名)」として記憶に残ることは間違いない。
Posted at 2022/10/17 00:14:05 | |
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自動車業界あれこれ | 日記
2022年10月17日
ガレージに眠らせておくのはもったいない!──新型ポルシェ911 GT3 RS試乗記
ポルシェ「911」に追加されたハイパフォーマンス・バージョン「GT3 RS」に、島下泰久がイギリスで乗った!
ドライバーフレンドリーなリアルスポーツカー
歴代911 GT3 RSの中でも断トツの物々しい、あるいは攻撃的とも表現できるアピアランスを持つ最新のポルシェ911 GT3 RSを、イギリスのシルバーストーンサーキットで、まさに全開で試す機会に恵まれた。最初に結論めいたことを言うならばこのクルマ、見た目とは裏腹に実にドライバーフレンドリーなリアルスポーツカーである。
そう言ってもすぐには信じてもらえないかもしれない。何しろそのボディは、表面の至るところに大きな孔が開けられ、スリットが入り、これでもかというほどの空力パーツが備わっている。極めつけはリアウイングで、スワンネックタイプのステーは高くそびえ立ち、羽根の部分の高さはルーフすらも超えているほどなのだ。
もちろん、そこはポルシェの、ヴァイザッハの仕事。それらのすべてに、ちゃんと意味がある。このクルマ、200km/h走行時に得られるダウンフォース、つまり空気の力で車体を路面に押し付ける力は合計409kgに達するという。
この数字は先代991.2のGT3 RSの2倍、現行GT3の3倍にもなる。そして285km/hでのダウンフォース量は、実に860kg。ざっと車両重量の5割分の力でタイヤが地面にこすりつけられているわけである。当然、車両の挙動は安定し、コーナリングスピードは速くなる。
空力性能に大きく貢献しているのは、従来はフロントバンパー下側の開口部、全幅いっぱいを占めていたラジエーターが中央部分に集約されて、左右のスペースを空力のために使えるようになったことだという。車体前方下側左右には可動式のフラップが備わり、必要な時には大量の空気をホイールハウス内に取り込む。サスペンションアームは翼断面となっていて、ここでダウンフォースを獲得。一方でその空気を素早く排出できるよう、ホイールハウス後端は大きく切り欠かれ、またフェンダー上面にはスリットも刻まれている。
このフラップはやはり可動式のリアウイングと連動していて、走行中は自動的に最適な状態が導かれる。直線で加速中には抵抗をなくすために寝かされ、ブレーキングやコーナリングでは立ち上がって挙動を安定させるといった具合である。
さらに、ステアリング・ホイール上のボタンによって、任意のタイミングでウイングをフラットにすることもできる。F1マシンでお馴染みのDRS(ドラッグ・リダクション・システム)で、つまり追い越し時に直線スピードを稼ぐことが可能なのだ。
サーキットでの走りにフォーカスして再チューニングされたシャシーにも、きめ細かな調整機能が備わる。ダンパーは前後の減衰力をそれぞれ伸び側、縮み側別々にセットすることができ、また電子制御LSDのPTV Plusも加速側、減速側のそれぞれに締結力を調整することができる。これらはすべて走行中に、ステアリングスイッチで行なうことが可能である。
コーナリングスピード&スタビリティ重視まさに物々しい外観を作り出しているエアロダイナミクス、そしてシャシーにはこうして大掛かりに手が入れられている911 GT3 RSだが、一方で水平対向6気筒4.0L自然吸気エンジンの改良は小規模に留まる。
とはいえ、主にカムプロファイルの変更により最高出力は911 GT3の510PSから525PSに高められているし、高い横Gがかかった時のオイルの偏りを防ぐためにエンジンブロックも別物に。インテークシステムも吸気抵抗を防ぐよう加工されているなど、細部にまでしっかり目配せがされている。
さらに、7速PDKはローギアード化されていて、結果として最高速は296km/hに留まる。911 GT3のPDK仕様は318km/h出るのに、だ。911 GT3 RSがいかにコーナリングスピード、そしてスタビリティを重視したクルマなのかが、ここに端的に表れていると言っていいだろう。
実際にその走りは、強大なダウンフォースの恩恵を大いに感じられるものだ。限界はきわめて高く、ブレーキングにしてもコーナリングにしても、いつもの感覚だと大体このぐらいかな……と、思いながらアプローチしていくと、大抵コースを余らせてしまう。
もちろん、ミシュラン パイロットスポーツ カップ2という強烈なグリップ力を持つタイヤも、そんな走りに貢献しているのは間違いないが、それにしてもこの感覚の差は異次元だ。
おかげで「まだ行ける、まだ攻められる」と、ペースがどんどん上がっていくのだが、クルマからのインフォメーションは濃密だし、多少行き過ぎたからって唐突に挙動が乱れることはないから、安心して踏み込める。そして気づけば、凄まじいスピードでコーナーを駆け抜けているのである。
まさしくレース直系特に鮮烈だったのがブレーキだ。
ダウンフォースがあるので最初から思い切り躊躇せずにペダルを蹴飛ばすのが正解で、そうすればきわめて短い距離で、あっというまに速度を落とすことができる。ル・マン24時間などで活躍するレーシングドライバーで、この911 GT3 RSの開発に携わったヨルグ・ベルクマイスター選手によれば、ブレーキ開始のポイントはまさに彼が駆るレーシングカーの911 RSRと変わらないという。どうりで試乗後、首まわりが凝っていたわけだ!
9000rpmまでまわる今や希少な超高回転型自然吸気エンジンにも、文句などつける余地はない。凄まじい吹け上がり、あふれるパワー、突き抜けるようなサウンドなど、まさに究極のスポーツ心臓らしい刺激を思い切り満喫できる。電光石火の変速を可能にするPDKのマッチングは完璧で、全開走行中でもDレンジのままでもまったく痛痒を感じることはなかった。
このエンジンは前述の通り最高出力は525psを発揮するが、パワーを持て余したという感じは無く、思う存分アクセルを踏み込むことが出来た。それは残念ながら私に特別なスキルがあるからというわけではなく、新しい911 GT3 RSが、大幅にアップグレードされたエアロダイナミクスとシャシーによって、誰もがある種の余裕をもって、この珠玉のエンジンの実力をフルに引き出せるクルマとして仕立てられているという話しである。
試乗の最後には、ベルグマイスター選手の運転する911 GT3 RSに同乗出来た。助手席で体験したその走りは前後左右いずれの方向にもGフォースが凄まじく、まさにタイヤの性能を使い切っている感じだったが、それでもマシンと格闘しているという雰囲気ではなかった。
もちろん、本当の限界にいけばまた違うのだろうが、耐久レースを戦うクルマは、きっと概ねこういう感じなのだろう、と、感じられたのも事実。
911 GT3 RSは、まさしくレース直系、サーキットが本拠地のコレクターズアイテムと化してはいるが、やはりガレージに眠らせておくのはもったいない1台だ。
文・島下泰久
GT3カップを超えるアクティブエアロ ポルシェ 911 GT3 RSへ試乗 前例ないシリアスさ 前編
巨大リアウイングに妥協ない空力機能
近年のバッテリーEVやハイブリッド・スーパーカーの最高出力に見慣れてしまうと、最新のポルシェ 911 GT3 RSが発揮する525psには驚かないかもしれない。だが、このクルマの核心はそこではない。
レン・スポルトを冠する軽量で特別なGT3 RSには、ワイドなボディに数多くの最新技術が投入されている。ただし、992型の911 GT3より車重は若干重く、最高出力は僅かに高いものの、最大トルクは若干だが細い。
さらに英国価格は、911 GT3より3万3000ポンド(約544万円)も高い。確かに、一見すると大きなアドバンテージはなさそうに思える。
しかし、このGT3 RSはポルシェのGT部門が手掛けた、エクストラ・スペシャルな911だと断言できる。実際、ファンの間では極めて高い人気を誇り、購入希望者のなかでも手にできる人は一握りに限られる。
彼らは、凄まじいダウンフォースに吸い寄せられているのかもしれない。何しろ、911のレーシングカーより強力なのだ。
過去に例がないほど、最新のGT3 RSには巨大なリアウイングが与えられた。その高圧的にすら見える幅や高さには驚かされる。加えて、空力的な付加物にも妥協はない。いかにもレーシングカー然とした容姿だ。
ボディ幅いっぱいに広がったリアウイングには、油圧で角度が変化する、アクティブ・ドラッグリダクション・ベーンと呼ばれる機能も組み込まれている。フロントノーズの下側には、同様に働くアクティブ・フラップが内蔵されている。
GT3カップより強力なアクティブエアロ
これらが機能すると、284km/hでの走行中に最大860kgのダウンフォースが生成されるという。実に、991型911 GT3 RSの2倍以上の力でボディが路面へ押さえつけられることになる。マクラーレン・セナが同等の速度で生む力より大きい。
さらにいうなら、最新の911 GT3カップ・レーシングカーよりも強い。ポルシェの開発ドライバーが公道用のGT3 RSからスリックタイヤを履くGT3カップに乗り換えた場合、コーナーではスピードを若干落とす必要があるかもしれない。
このアクティブエアロの賢いところは、ダウンフォースを必要な時に必要なだけ生み出せること。ドライバーはボタン1つで、アクティブエアロのスイッチを切ることができる。そうすれば、抵抗を抑えて直線スピードを稼ぐこともできる。
オンの状態なら、必要なダウンフォースを生成するよう、制御をGT3 RSにお任せできる。グリップ状態に合わせて。
ポルシェは、ワイドなボディや広がったトレッド、大径のホイール、アクティブエアロにまつわる電動アクチュエーターや油圧システムなどで増える重量を、可能な限り相殺した。その結果、車重は1450kgに留めている。
フロントフェンダーやバンパー、ドア、ルーフ、ボンネットはカーボンファイバー製。クラブスポーツ・パッケージに設定されるスチール製のロールケージも、希望すればカーボン製に変更できる。
路面が濡れていても確実に機能する
それでも、GT3 RSは同等の装備のGT3より15kg重いという。直線加速の勢いではGT3 RSの方が勝るが、それは専用のカムシャフトが生むプラス15psと、ショート化されたギア比による結果だ。
今回試乗した英国シルバーストーン・サーキットの路面が乾いていれば、この壮大なGT3 RSの能力をしっかり確かめられただろう。突出した横方向のグリップ力や高速域での安定性、強力な制動力に、舌を巻いていたに違いない。
ところが実際はウェット。既に手を焼くほど速いGT3に対して、どこまでGT3 RSの能力が高められているのが、つぶさに判断することは難しかったといわざるを得ない。多少は確かめられたけれど。
GT3 RSは、これまでのGT3より目に見えて鋭く加速するわけではないようだ。カタログ値の0-100km/h加速は3.4秒に対し、3.2秒がうたわれている。
しかし、よりダイレクトなステアリング・レスポンスと、それに同調する鋭い身のこなしを実現させている。歴代の、ボディ幅の広いRSモデルを特徴付けてきたものといえる。
今回の目玉といえるアクティブエアロは、路面が濡れていても確実に機能する。タイヤがアスファルトへ押さえつけられているのを体感できる。シャシーはピタリと路面へ吸い付き、高速コーナーでの安心感には関心する。
スピードが落ちるとダウンフォースが減り、グリップ力も明らかに落ちる。雨の日には、ミシュランのカップ・タイヤだけでは充分なグリップ力を得られないことを、思い出させてくれた。
この続きは後編にて。
GT3カップを超えるアクティブエアロ ポルシェ 911 GT3 RSへ試乗 前例ないシリアスさ 後編
スプリングレートはGT3の50%増し
今回ポルシェが設定してくれた試乗会では、通常の992型911 GT3を腕の立つインストラクターがドライブし、新しい911 GT3 RSを運転するジャーナリストが追走するというスタイルだった。テクニカルなシルバーストーン・サーキットで。
先行するGT3は、後続の人の技術に合わせて速度を調整するつもりだったのかもしれない。だが実際は、濡れた高速コーナーでグリップ力やブレーキング時の安定性を保つことに苦労する様子を、観察することになった。
筆者が運転するGT3 RSが、比較的安定してアスファルトを掴み続けるのとは対象的なほど。最新のアクティブ・エアロの効果は大きい。
また今回は広く平滑なサーキットだったということもあり、公道での印象はお伝えできない。GT3でも既にスプリングレートは充分高いが、GT3 RSではさらに50%も引き締められている。乗り心地は褒めにくいのではないかと予想するが、それは後日だ。
少なくとも、普段乗りに対する妥協が1つはある。このGT3 RSには、フロントボンネットを開くと通常なら備わる荷室がないのだ。
ポルシェによると、アクティブエアロ・システムを搭載する都合上、エンジンの冷却系を一新する必要があったという。そのため、従来は荷室だった場所に大きなラジエターが固定されている。助手席後方のロールケージの間には、鞄を置けると思うが。
手元で瞬時に変更できるシャシー特性
足まわりでは、GT3 RS専用となるマルチアジャスタブル・アダプティブダンパーとアクティブLSDを搭載。独自チューニングのトラクション・コントロールにスタビリティ・コントロールも実装される。
ステアリングホイールのボスを取り囲むように、それらを調整するロータリーノブがレイアウトされ、ドライバーは走りながら任意にシャシー特性を変更できる。ドイツ・ヴァイザッハの技術者が手掛けた例としては、初めてといえる内容だろう。
そのノブを回すことで、アダプティブダンパーの圧縮時と伸長時の硬さを瞬時に調整可能。通常のGT3と同等のレベルにまで、柔らかくすることもできる。またアクティブLSDの設定も、加速と減速時の効きを手動で変えられる。
最初は、濡れたサーキットを高速で走行しながら、それらのノブを意識して回すことが複雑に感じられた。しかしメーター用モニターに操作内容が表示され、各ノブの中央のボタンを押しながら設定項目を選べるため、慣れると意外なほど簡単だった。
ドライバーがコーナリングラインを自在に調整したい場合は、トラクション・コントロールを弱め、圧縮時のダンパーを少し緩くし、減速時のLSDの効きを弱くすればいいだろう。縁石に乗り上げた時の安定性を高めたい場合も、ノブ1つで調整できる。
歴代モデルより遥かに高いシリアス度
最新のポルシェ911 GT3 RSは、明らかに歴代のモデルより遥かにシリアス度が高い。従来以上にサーキットへベクトルが向けられたマシンといえる。同時に、知的な技術を搭載することで、状況への順応幅もより広い。
雨のシルバーストーン・サーキットでも、素晴らしい能力を味わうことを許してくれたことが、それを証明している。濡れながら、GT3 RSは静かに強く輝いていた。これが晴れていればと、もどかしい気持ちにさせられた。
911 GT3 RSを運転するのに最適な条件の日に、ブレーキングポイントを削りながらタイトコーナーへ飛び込んでみたい。センセーショナルという言葉では表現しきれないほど、圧巻の走りを披露してくれるのだろう。
その事実を、自ら確かめられる時が待ち遠しい。具体的な評価も、その時までお預けとしよう。
ポルシェ911 GT3 RS(欧州仕様)のスペック
英国価格:17万8500ポンド(約2945万円)
全長:4572mm
全幅:1900mm
全高:1322mm
最高速度:296km/h
0-100km/h加速:3.2秒
燃費:7.9km/L
CO2排出量:305g/km
乾燥重量:1450kg
パワートレイン:水平対向6気筒3996cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:525ps/8500rpm
最大トルク:47.3kg-m/6300rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック
Posted at 2022/10/17 00:00:23 | |
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