2022年12月13日
スバルとSTI、2022年のニュルブルクリンク24時間耐久レースを振り返る
STI(スバルテクニカインターナショナル)は3日、東京・三鷹市にあるSTIギャラリーにて、リタイアにて終わった2022年ニュルブルクリンク24時間レースの振り返り報告会を行い、「人材育成・車両開発の観点からニュルブルクリンクへのチャレンジをやめるわけにはいかない」と次に向けて行くことを語った。
2008年から始まったドイツ・ニュルブルクリンク24時間レースチャレンジ。2009年からSTIが独自プログラムとして車両開発やチーム運営を行い、『SUBARU WRX STI』を用いてチャレンジしている。2011年と2012年、2015年と2016年、2018年と2019年とSP3Tクラス(2リッター以下のターボ車)で連続クラス優勝を成し遂げるなど輝かしい成績を残している。
STIは2020年と2021年も参戦するために車両開発を行い、いつでもドイツに旅立てるように準備していた。しかしながらコロナウイルスの世界的流行により参戦を断念した。
2022年はコロナウイルスの流行が少し落ち着いたこともあり、STIは3年ぶりにニュルブルクリンク24時間レースに挑戦した。日本からドイツに渡り現地のチームに合流して参戦するドライバーは複数いたが、メーカー系チームとしてはSTIだけとなった。
2020年、2021年からアップデートしたSUBARU WRX STIを持ち込み、クラス優勝はもちろん総合順位でもトップ10を目指す意気込みでドイツに渡った。スーパーGTでスバルからレースに参戦している井口卓人・山内英輝が、ニュルブルクリンク24時間レースでもレギュラードライバーして参戦しているが、今年はスーパーGTとの日程が重なってしまったこともあり、両ドライバーの参戦は叶わず、佐々木孝太が2014年以来ステアリングを握ることとなった。
ティム・シュリック、カルロ・ヴァン・ダム、佐々木孝太、マセール・ラッセーというSTIのニュルブルクリンク24時間レースではおなじみのメンバーで参加した2022年。予選をクリアし決勝でも順調に周回をこなしている最中、現地時間の午前3時ごろに佐々木選手がドライブ中にアクシデントが発生し、コースサイドのガードレールにヒットしてしまう。修復は困難と判断してリタイアとなってしまった。
そのクラッシュした車両がこのたび日本にやっと帰国を果たした。STIとしてもファンにちゃんとした報告をしていなかったと言う気持ちがあったため、「STI Live STI NBR CHALLENGE 2022 Review」としてSTIギャラリーで少人数を招いて報告会を実施した。コロナ感染防止を懸念して少人数にしたため、多くの人にも見てもらいたいとしてYouTubeでの配信も行った。
ニュルブルクリンク24時間チャレンジの総監督を努める辰己英治、監督の沢田拓也、ドライバーの佐々木孝太が登場した。佐々木は「トラブル当時250km近い速度が出ている最中で、瞬間的に回避行動をとったがあえなくガードレールに接触してしまった」と当時を振り返った。辰己総監督も「トラブルが発生するとは思っていなかった。現場は全開走行で速度がでる場所だったため、佐々木選手の体も心配したが、何もなくて良かった」と振り返る。
辰己総監督は「車両がピットに戻ってきてからデータを見ると、その現場はアクセル全開で走る抜ける場所だが、佐々木選手は何か瞬間的に異常を感じたのか、わずか1秒ほどアクセルを緩めている。その1秒アクセルを緩めたことで、この程度で済んだのかもしれない。そのままアクセルを踏み続けていればもっと大きくクラッシュしていてもおかしくなかった。ドライバーの本能的な何かが働いたのかもしれない」と推測した。
元から持っているボディ剛性の良さと車両の作り込みが良かったのか、ガードレールにあたった右前方は大きく損傷しているが、右ドアは普通に開閉できるという。フロント部分は少し損傷しているものの、左側から見れば綺麗な車体を維持しているのが分かる。車両の損傷具合だけ見れば大きなクラッシュをしたとはとても思えないほどだ。
全国のディーラーから選抜されたメカニックに対してクラッシュしてしまった佐々木選手は、「ゴールまでマシンを持って来れなくてゴメンな」と声をかけたと言う。ディーラーメカニックも3年越しで参戦できたとあり悔しさを滲ませていたが、佐々木選手の声かけにより苦労も報われたのではないかと辰己総監督は思いを馳せる。
ニュルブルクリンク24時間レースは人材育成と車両開発を目的に行っており、今回クラッシュしたからといって参戦を取りやめることはなく、このクラッシュで得たことを次の車両に活かし、その先には量産車へのフィードバックとして返ってくると言う。来シーズンに関しては何も語ることはなかったが、もちろん来シーズンに向けて準備をしていると想像される。
ファンとこの悔しさを共有して来シーズンに向けていきたいという思いもあり、STIギャラリーではこのクラッシュしたマシンを12月いっぱい展示して公開するという。ファンはもちろん、モータースポーツの貴重な証拠として見る価値のある展示となっている。
Posted at 2022/12/13 22:46:51 | |
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富士重工 | 日記
2022年12月13日
ロータスを復活させた「エリーゼ」のシャシーは68キロ! 軽さこそ正義の「Mk1」はスパルタン過ぎました
ロータスのDNAが継承された1台だった
かつて栄華を誇っていたイギリスの自動車産業は、今や国内メーカー(ブランド)の多くが海外メーカー/資本の傘下に組み込まれるなど、厳しい時代を迎えています。そんななか、クルマ趣味の王道として根強い人気を保っているのがロータスです。レーシングカーでその歴史が始まり、かつてはF1GPでトップに立ったことのあるロータスらしく、軽量こそ正義を貫くロータスの中でもスパルタンなエリーゼMk1を振り返ります。
バックヤード・ビルダーから始まった歴史
ロータスは、故コリン・チャップマンがロンドン大学の学生だった当時、アルバイトとして売買していた中古車の1台を自らのレース用に仕立てたことが起源です。当時付き合っていた彼女で、のちにチャップマン夫人となるヘイゼル・ウィリアムズの実家のガレージで、ワンオフに近い状態のレーシングカーを作り続けた“バックヤードビルダー”でした。
大学を卒業し兵役についたチャップマンは、退役後にブリティッシュ・アルミニウム社へ就職し開発技術者として勤務。勤務を終えると新型マシンの構想を練る日々が続いていました。1952年にはロータス・エンジニアリング社を設立したものの、ブリティッシュ・アルミニウム社での勤務を終えるとロータス・エンジニアリングの仕事に精を出すという日々が続いていました。
1954年にはヘイゼルと結婚し、ブリティッシュ・アルミニウム社を退職。ロータス・エンジニアリング社に専念することになります。
ロータスの発展を支えたエリート
話は少し前後しますがロータス・エンジニアリング社を設立した翌1953年に、ロータスとして初の量産モデル、マーク6が登場。さらに1957年のロンドン・ショーにおいてはオープンホイールのスポーツカーである“セブン”とともに、ロータスとしては初となるクローズドボディのGTスポーツ、タイプナンバー14を与えられたエリートが登場しています。
エリートには、ロータスとしてはもちろん、世界初となるポリエステル積層材を使ったガラス繊維強化プラスチック(FRP)製モノコックを採用。エンジンやフロントサスペンションのマウント部分には鋼板のサブフレームが取り付けられ、またドア・ヒンジやフロントのウインドスクリーン部分には鋼管(角パイプや丸パイプ)で補強が施されていました。
リヤサスペンションに関してはコイルスプリング/ダンパーユニットの頂部とラジアスロッドの前端は、FRPモノコックに直接取り付けられるという革新的な構成でした。エリートは大ヒット商品となり、ロータスの発展を支えることになったのです。
その後もエランやヨーロッパ、エラン+2、エスプリなど数々のスポーツカーをリリースしていき、バックヤードビルダーは、いつのまにか自動車メーカーとしても確立することになります。またフォード・コーティナ・ロータスのような大メーカーのクルマ開発をアシストする仕事でも、高い評価を受けるようになっていきました。
しかし1982年に創業者であるチャップマンが急逝すると、状況が変わってきます。経営難が深刻化し、1986年にはゼネラルモータース(GM)の傘下に入り、グループ内のスポーツカーメーカーとしてスポーツモデルの開発などを担当することになったのです。
さらにその後、GMの経営状況が悪化しブガッティに売却されるもブガッティ自体が破産、1996年にはマレーシアの国営メーカーであるプロトンに売却されることになりました。そんなローリングストーンとなったロータスをよみがえらせることになったのが、今回の主人公エリーゼでした。
ロータスのDNAとなった「軽量こそ正義」
エリーゼは1995年のフランクフルトショーでデビューしています。レーシングカーでも長年戦ってきたロータスだけに、スポーツカーの永遠の真理である「軽量こそ正義」が企業DNAとして根付いていたのでしょうか。最大の特徴は軽量化を徹底的に追求したことでした。軽量化の手法としては、まずはシャシーの構成が挙げられます。
当時スーパーカーではカーボンファイバーで成形したモノコックを採用するケースも出てきていましたが、軽量コンパクトなスポーツカーにおいてはコストも考えておかなくてはなりません。そこでロータスが考え出したのがアルミ合金製のパーツを接着剤で接合して組み立てたバスタブ形状のフレームに、FRP製の外装パネルを組み付けたボディの構成でした。
シャシー単体重量は68kg
先に紹介したエリートではFRPのバスタブを鋼管で補強したフレームを採用した経験もありましたが、よりハイパワーを生み出すエンジンや進化したタイヤなどを考えるなら、もう少し剛性を挙げておきたいところです。そこでアルミ製のモノコックとなるのですが、通常ならパネルを折り曲げてツインチューブを成形し、リベットを使って接合します。
しかし近代のロードカーとしてはスペース効率も考えておく必要があります。そこでロータスではアルミの押し出し材で基本骨格を構成し、それらを接着剤で接合する方法をとったのです。結果的にシャシー単体で68kgに収まり、軽量化に大きく寄与しました。
2001年には対衝突の車両規制に対応するためにモデルチェンジを経てMk2(あるいはシリーズ2)に移行。その際に少し重くなってしまいましたが、エアコンやパワーステアリングなどが省略されていたMk1(あるいはシリーズ1)では車両重量は690kgに抑えられていました。軽量こそ正義。ぜひとも見習いたいものです。
エリーゼのもうひとつの特徴は、さまざまなバリエーションが存在していたことです。国内に正規に輸入されたモデルとしては、Mk1(あるいはシリーズ1)では当初はスタンダードモデルで、ローバー社から提供されていた1796cc(ボア×ストローク=80.0mmφ×89.3mm)直4ツインカム/最高出力は120psのKシリーズ・ユニットを搭載した111のみでした。
軽量を貫いたMk1こそロータスの真骨頂
1998年にKシリーズにVVCが組み込まれた最高出力145psユニットが搭載された111Sが追加されています。また派生モデルの340Rや高性能なクーペバーションとしてのエキシージもリリースされています。2001年にはMk2(あるいはシリーズ2)に移行し、さらに2010年にはマイナーチェンジを受けてMk3(あるいはシリーズ3)に移行していますが、そのいずれにもさまざまなバリエーションが登場しています。
ただし「軽量こそ正義」を貫いていたという点では、最初に登場したMk1(あるいはシリーズ1)の初期ロットのモデル(以後のモデルではスチール製に置き換えられるリヤのハブキャリアやブレーキローターにアルミ製の軽量なパーツが使用されていた)に勝るものはありませんでした。
ただオーバー5LのV12が搭載されているような“スーパーカー”とは異なりエンジンは直4で、アンダーパワーでも十分なパフォーマンスを示していたのはすべて「軽量こそ正義」を実践していたからでしょう。経営体制が変わろうともロータスのDNAは継承されています。
Posted at 2022/12/13 22:43:06 | |
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自動車業界あれこれ | 日記
2022年12月13日
「マルチリンク」と「ストラット」「トーションビーム」の違いを説明できる? サーキット走行に向いているサスペンションをお教えします
さまざまあるサスペンション形式の違いとは?
エンジンと同じか、それ以上に走りへの影響が大きい足まわり。ストラット/ダブルウィッシュボーン/マルチリンク/トーションビームなど、車種によってさまざまな形式が存在するが、果たして違いは何なのだろうか。
大きく分けると左右の車輪が独立して動く「独立懸架」と、左右の車輪が繋がっており一体になって動く「車軸懸架」だ。独立懸架は路面変化への対応がしやすく、バネ下の重量を軽くできるなどのメリットがある。乗用車のフロントはほとんどが独立懸架を採用しており、リヤも前輪駆動のクルマを除き主流といっていいだろう。
レーシングカーにも多く採用される「ダブルウィッシュボーン」
まずは独立懸架タイプの足まわりから説明したい。スポーツカーやレーシングカーで多いのが「ダブルウィッシュボーン」だ。名前の由来は鳥の叉骨(ウィッシュボーン)に似た形状のアームが上下ふたつ(ダブル)あることで、サスペンション剛性の高さやストロークした際の対地キャンバーが少ないことが利点とされている。
いっぽう構成部品が多いためスペースの制約が厳しく、コストや重量が増えることがデメリットといえるだろう。
走りにこだわるクルマが採用する「マルチリンク」
ダブルウィッシュボーンの進化バージョンといえるのが「マルチリンク」。複数のリンクで車輪を支えることでロールしたときのトー変化を抑えるほか、トレッドや対地キャンバーの変化をなくすといった数多くのメリットがある。
ただし構造はより複雑となり部品点数も増え、取り付けの高い精度も求められるため、採用は一部の車種に限られるのが実情だ。
スタンダードなタイプといえる「ストラット」
もっともオーソドックスな形式といえるのは「ストラット」で、開発者の名前から「マクファーソン・ストラット」と呼ぶことも。ダンパーとスプリングを同じ軸上に配置しつつ、ひとつのサスペンションアームで車輪を支持。シンプルがゆえに省スペースとコストダウンできることが魅力で、重量の面でもダブルウィッシュボーンやマルチリンクより有利だ。ただし、剛性やアライメント変化の少なさにおいては及ばない。
コストや整備性などでメリットのある「トーションビーム」
左右一体型になったアームを持つ「トーションビーム」は、車軸懸架に分類されることもあるが、左右をトーションバー式のスタビライザーで連結しているため独立懸架の一種と考えていい。
部品の点数が少なく整備を含めコストや手間がかからないことや、ストローク時の対地キャンバーとトレッド変化が少ないこと、省スペースがメリットで小型の前輪駆動車のリヤに多く使われる。
サーキット走行に向いているのはダブルウィッシュボーンやマルチリンク
いずれのサスペンションも一長一短があるのは分かってもらえたと思うが、サーキットでのスポーツ走行に限定したときの優劣はあるのだろうか。構造や特性だけを考えればダブルウィッシュボーンやマルチリンクが向いており、4輪ダブルウィッシュボーンを高性能の証としてアピールするクルマもあった。
ただし高性能スポーツカーのすべてが同じ形式というワケじゃなく、とくに最近ではリヤがトーションビームのスポーツカーも少なくない。ましてチューニングとなれば車高調を筆頭に、調整式アームなど手段はいくらでもある。サスペンションの形式に捉われすぎることなく、好きなクルマを社外パーツでカスタムするのが正解だろう。
Posted at 2022/12/13 22:38:57 | |
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自動車業界あれこれ | 日記